非破壊手法によるウラン・プルトニウム組成比決定法の研究
公開日:
カテゴリ: 第5回
1. 緒言
再処理工場や MOX 燃料加工工場等の核燃料施設 で排出される廃棄物には多種の放射性核種が含まれ ているが、その中でも特に、ウラン以上の原子番号 を持つ核種を正確に定量することは、その物理的、 化学的毒性の高さから処分時の評価上最も重要であ る。特に Pu-239 は、U-235 と同じ核分裂性核種で あるが、その比放射能は U-235 の 10000 倍程度であ り、廃棄物処分時の評価において、非常に重要度が 高い。近年、核分裂性核種を評価するために、アク ティブ中性子法を用いて、即発核分裂中性子を測定 することが、最も有望視されている。その中で我々 は、アクティブ中性子法の改良手法である高速中性 子直接問いかけ法[1]の研究開発を行ってきた。この 手法は、廃棄物自身の減速効果によって減速した中 性子による核分裂中性子を測定する手法で、従来の アクティブ中性子法において問題となっていた、セメント固化体のような中性子の吸収が多い測定対 象物における位置感度差の問題を解決し、感度を 2 桁以上向上させた。よって、現在この手法が核分裂 性核種の定量に最も有効であると考えられる。しか しながら、この手法だけでは即発中性子が核種毎の 特徴を持たないので、Pu-239 と U-235 が混在し、 かつ核種組成の情報が機知で無い場合、各々の存在 量を決定することができない。これらの組成比が正 確に決定できなければ、過大評価による経済損失(過 剰な遮や厳しい処分区分等に起因する)あるいは過 小評価による安全性の欠如に繋がる恐れがある。 * 上記の問題を受けて、この手法の解析法をさらに 工夫し、核分裂中性子の中の、即発中性子と遅発中 性子の両方の計数情報を取り出し、これらを組み合 わせることによって、Pu-239 と U-235 の割合を算 出することを考案し、測定実験によって、これが可 能であることを確認した。本報告では、その新手法 と確認実験の結果について紹介する。
2. 即発・遅発中性子計数の抽出法
1 高速中性子直接問いかけ法は、D-T 中性子源から 放出される、14MeV 中性子を入射し、廃棄物自身の 減速能力によって減速された中性子によって核分裂 を誘起し、その即発核分裂中性子を測定することに よって、核分裂性核種を評価する手法である。この手法の測定・解析手法を工夫し、即発中性子 計数と遅発中性子計数を取り出すための方法を考案 し、その確認実験を行った。実験体系の垂直断面図 を図 1-a に,水平断面図を図 1-bに示す。 * 実際の廃棄物の多くはドラム缶サイズに処理加工 され封入されるが、手始めとして遅発中性子を検出この手法の測定・解析手法を工夫し、即発中性子 計数と遅発中性子計数を取り出すための方法を考案 し、その確認実験を行った。実験体系の垂直断面図 を図 1-a に,水平断面図を図 1-b に示す。実際の廃棄物の多くはドラム缶サイズに処理加工 され封入されるが、手始めとして遅発中性子を検出Time (ch Ich=18 u sec )14MeV中性子源を用いたときの 高速中性子検出器の応答・・・体系空間グラファイト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・.高速中性子出器バンクポリエチレン ボロン入りポリエチレンポリエチレン容器アルミ..カドミウムリムTime (ch Ich=18 u sec )図1-a 新手法の実験体系の垂直方向断面図He3ディテクターポリエチレン図3 14MeV中性子源を用いない場合の高速中性子検出器の応答 しやすい厚さ 2cm の円筒型ポリエチレン容器(図 1-a,b 中心部に設置)に、濃縮度 3.4%のウラン試料 47g(U-235 含有量 1.6g)と Pu-239 が 97%のプル トニウム試料 900mg を封入した。図 1-a,b 中の点線 部は、通常廃棄物ドラム缶を設置する部分である。 この周辺には 14MeV 中性子源と高速中性子検出器 バンクが対面上に設置されている。これらの周辺を 内側からカドミウム版、グラファイト層、ポリエチ レン層、ボロン入りポリエチレン層が覆っている。この体系内で 14MeV 中性子源から、5.5× 105 (個 | パルス)のパルス中性子を 100Hz 500 秒発生させ、 高速中性子バンクで捕らえられる、10msec(パルス 間隔)毎の中性子計数の時間変化(以下中性子計数 時間分布とする)を積算した。このデータを、指数」 関数フィッティングによって解析した結果を図2に 示す。図2を見て解るように、この中性子計数時間 分布は3つの指数関数成分とフラット成分から構成 されていることがわかる。第1成分は入射中性子にグラファイト高速中性子発生装置ポリエチレン ボロン入りポリエチレンカドミウム版図1-b 新手法の実験体系の水平方向断面図IFTTTTTTTTTTTTTTTTIntensity (count)フラット成分1-a,b 中心部に設置)に、濃縮度 3.4%のウラン試料 47g(U-235 含有量 1.6g)と Pu-239 が 97%のプル トニウム試料 900mg を封入した。図 1-a,b 中の点線 部は、通常廃棄物ドラム缶を設置する部分である。 この周辺には 14MeV 中性子源と高速中性子検出器 - 482 - よる時間成分、第2成分はポリエチレン内で減速し た熱中性子によって引き起こされる、核分裂時に放 出される即発中性子によるものである。第3成分に ついての説明は本報告では省略する[2]。 ・ 核分裂時、即発中性子以外にも中性子過剰核とな った多くの種類の核分裂片が生成されるので、それ らのB崩壊に伴い、遅発中性子が放出される。核分 裂片の半減期は第2成分の死滅時間より十分に長い ので、この計数成分は図2のフラット成分中に表れ、 このフラット成分中には遅発中性子に加え、(a,n) 中性子、Pu-239 試料にわずかに含まれる Pu-240 に よる自発核分裂中性子、及びバックグラウンドが混 在していると考えられる。この中から遅発中性子の 計数のみを取り出すためには、D-T 中性子源を用い ずに、高速中性子法と同様の時間、中性子測定を行 い、(a,n)中性子及び、バックグラウンドが混在して いる平らな時間成分(図 3 のフラット成分)を取り、 図2のフラット成分からこれを差し引けば、遅発中 性子の計数が得られるはずである。そこで、遅発中 性子成分を取り出すために、中性子源を用いずに、 図2の測定と同じ時間(500 秒)中性子を測定した結 果を図3に示す。図を見てわかるように、フラット 成分のみが現れている。図2のフラット成分の計数 が 2412(count)に対し、図3では、1238(count)とな っている。この 1174(count)の差は、【遅発中性子 +(a,n)中性子+自発核分裂中性子+バックグラウン ド]-[(a,n)中性子+自発核分裂中性子+バックグラ ウンド]=遅発中性子計数である。このようにして、 遅発中性子計数と即発中性子計数を取り出すことが 可能であることがわかった。3. 即発・遅発中性子計数比とU-235・Pu-239 比の相関関係全核分裂中性子中の遅発中性子の割合は核種によ って異なる。特に、U-235 の遅発中性子割合(0.0065) は、Pu-239(0.0021)の3倍以上大きい。したがっ て測定対象物中の Pu-239 と U-235 の割合は、即発 中性子計数と遅発中性子計数の割合に相関関係を持 つはずである。そこで、ポリ容器内の Pu 試料と U試料の割合を 0.1~30 程度まで変化させ、前述した実験と同じ手順の操作(遅発・即発中性子計数の抽出)を繰り返 した。横軸に遅発中性子と即発中性子計数の比、縦 軸を Pu と U の質量比としてプロットした結果を統 計誤差(10)と合わせて図 4 に示す。また、図4 中の実線は、理論的な考察から導き出した分数関数 (本報告では説明を省略する)を、実験値にフィッ ティングしたものである。 x二乗検定の結果、R 値 が約 0.99 となり、理論値と実験値が良く合っている ことがわかった。また、図4を見てわかるように、 多くの実験値の統計誤差範囲に、理論値が入ってい ることがわかる。これらの結果から、Pu-239 と U-235 の質量比は遅発中性子と即発中性子の計数比 に相関があることを確認し、この手法によって質量 比を精度良く決定できることがわかった。7103110[delayed neutron/prompt neutron](log scale)2 1030.1 1 110 100 [U-235/Pu-239 (mass ratio)](log scale) 図4 U-235とPu-239の質量比に対する、遅発中性子と即発中性子計数比4. 結論と今後の課題実験結果で示したように、遅発中性子計数と即発 中性子計数の割合は、U-235 と Pu-239 の存在比に 相関関係があることがわかった。これによって、高 速中性子直接問いかけ法の操作及び解析手法を工夫 すれば、U-235 と Pu-239 の存在比を、高い精度で 決定できることがわかった。 ・ しかしながら、U-235/Pu-239 が 5以上のプロッ トにおいて、統計誤差内に理論式が入っていない。 この原因は、測定対象物(ポリエチレン容器)内の- 483 -核分裂性物質による自己吸収効果、及び U-238 の高 速核分裂による遅発中性子を考慮していないことに よるものであると考えられる。したがって今後はこれらを考慮した解析、及び実」 験を行い、その結果を元に再評価し、統計誤差以外 の要因によるフィッティング関数からの乖離を減ら 核分裂性物質による自己吸収効果、及び U-238 の高 速核分裂による遅発中性子を考慮していないことに よるものであると考えられる。したがって今後はこれらを考慮した解析、及び実 験を行い、その結果を元に再評価し、統計誤差以外 の要因によるフィッティング関数からの乖離を減ら す努力が必要である。 更に、セメント固化体、金属廃棄物等のマトリク 験を行い、その結果を元に再評価し、統計誤差以外 の要因によるフィッティング関数からの乖離を減ら す努力が必要である。更に、セメント固化体、金属廃棄物等のマトリク ス中に核分裂性核種が存在する場合、遅発中性子は 即発中性子に比べ、放出数が 1/100 以下であり平均 エネルギーも2桁程度低いので、廃棄物放射能評価 に有効な検出下限値が得られるかどうか、検証しな ければならない。 - 今後これらの問題が解決されれば、多種多様な 廃棄物中の U-235 と Pu-239 の存在比を精密に測定 することが可能となり、処分コストの削減や安全な今後これらの問題が解決されれば、多種多様な 廃棄物中の U-235 と Pu-239 の存在比を精密に測定 することが可能となり、処分コストの削減や安全な 処理・処分に大きく貢献することが期待される。References[1] M. Haruyama, K. Ara, M. Tkase, ““High-sensitivity detection of fissile material in a waste dram by direct interrogation of 14 MeV Acc neutrons” Nihon-Genshiryoku-Gakkai Shi G. At. Energy Soc. Japan), 43[4], 397-404 (2001) [in Japanese] [2] M. Haruyama, M. Tkase, H. Tobita “Improvement of Detection Limit in 14MeV Neutron Direct Interrogation Method by Decreasing Background““ j. At. Energy Soc. Japan, 45[5], 432-440 (2008) [1] M. Haruyama, K. Ara, M. Tkase, “High-sensitivity detection of fissile material in a waste dram by direct interrogation of 14 MeV Acc neutrons” Nihon-Genshiryoku-Gakkai Shi (. At. Energy Soc. Japan), 43[4], 397-404 (2001) - 484 -“ “非破壊手法によるウラン・プルトニウム組成比決定法の研究“ “高峰 潤,Jun TAKAMINE,春山 満夫,Mitsuo HARUYAMA,高瀬 操,Misao TAKASE
再処理工場や MOX 燃料加工工場等の核燃料施設 で排出される廃棄物には多種の放射性核種が含まれ ているが、その中でも特に、ウラン以上の原子番号 を持つ核種を正確に定量することは、その物理的、 化学的毒性の高さから処分時の評価上最も重要であ る。特に Pu-239 は、U-235 と同じ核分裂性核種で あるが、その比放射能は U-235 の 10000 倍程度であ り、廃棄物処分時の評価において、非常に重要度が 高い。近年、核分裂性核種を評価するために、アク ティブ中性子法を用いて、即発核分裂中性子を測定 することが、最も有望視されている。その中で我々 は、アクティブ中性子法の改良手法である高速中性 子直接問いかけ法[1]の研究開発を行ってきた。この 手法は、廃棄物自身の減速効果によって減速した中 性子による核分裂中性子を測定する手法で、従来の アクティブ中性子法において問題となっていた、セメント固化体のような中性子の吸収が多い測定対 象物における位置感度差の問題を解決し、感度を 2 桁以上向上させた。よって、現在この手法が核分裂 性核種の定量に最も有効であると考えられる。しか しながら、この手法だけでは即発中性子が核種毎の 特徴を持たないので、Pu-239 と U-235 が混在し、 かつ核種組成の情報が機知で無い場合、各々の存在 量を決定することができない。これらの組成比が正 確に決定できなければ、過大評価による経済損失(過 剰な遮や厳しい処分区分等に起因する)あるいは過 小評価による安全性の欠如に繋がる恐れがある。 * 上記の問題を受けて、この手法の解析法をさらに 工夫し、核分裂中性子の中の、即発中性子と遅発中 性子の両方の計数情報を取り出し、これらを組み合 わせることによって、Pu-239 と U-235 の割合を算 出することを考案し、測定実験によって、これが可 能であることを確認した。本報告では、その新手法 と確認実験の結果について紹介する。
2. 即発・遅発中性子計数の抽出法
1 高速中性子直接問いかけ法は、D-T 中性子源から 放出される、14MeV 中性子を入射し、廃棄物自身の 減速能力によって減速された中性子によって核分裂 を誘起し、その即発核分裂中性子を測定することに よって、核分裂性核種を評価する手法である。この手法の測定・解析手法を工夫し、即発中性子 計数と遅発中性子計数を取り出すための方法を考案 し、その確認実験を行った。実験体系の垂直断面図 を図 1-a に,水平断面図を図 1-bに示す。 * 実際の廃棄物の多くはドラム缶サイズに処理加工 され封入されるが、手始めとして遅発中性子を検出この手法の測定・解析手法を工夫し、即発中性子 計数と遅発中性子計数を取り出すための方法を考案 し、その確認実験を行った。実験体系の垂直断面図 を図 1-a に,水平断面図を図 1-b に示す。実際の廃棄物の多くはドラム缶サイズに処理加工 され封入されるが、手始めとして遅発中性子を検出Time (ch Ich=18 u sec )14MeV中性子源を用いたときの 高速中性子検出器の応答・・・体系空間グラファイト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・.高速中性子出器バンクポリエチレン ボロン入りポリエチレンポリエチレン容器アルミ..カドミウムリムTime (ch Ich=18 u sec )図1-a 新手法の実験体系の垂直方向断面図He3ディテクターポリエチレン図3 14MeV中性子源を用いない場合の高速中性子検出器の応答 しやすい厚さ 2cm の円筒型ポリエチレン容器(図 1-a,b 中心部に設置)に、濃縮度 3.4%のウラン試料 47g(U-235 含有量 1.6g)と Pu-239 が 97%のプル トニウム試料 900mg を封入した。図 1-a,b 中の点線 部は、通常廃棄物ドラム缶を設置する部分である。 この周辺には 14MeV 中性子源と高速中性子検出器 バンクが対面上に設置されている。これらの周辺を 内側からカドミウム版、グラファイト層、ポリエチ レン層、ボロン入りポリエチレン層が覆っている。この体系内で 14MeV 中性子源から、5.5× 105 (個 | パルス)のパルス中性子を 100Hz 500 秒発生させ、 高速中性子バンクで捕らえられる、10msec(パルス 間隔)毎の中性子計数の時間変化(以下中性子計数 時間分布とする)を積算した。このデータを、指数」 関数フィッティングによって解析した結果を図2に 示す。図2を見て解るように、この中性子計数時間 分布は3つの指数関数成分とフラット成分から構成 されていることがわかる。第1成分は入射中性子にグラファイト高速中性子発生装置ポリエチレン ボロン入りポリエチレンカドミウム版図1-b 新手法の実験体系の水平方向断面図IFTTTTTTTTTTTTTTTTIntensity (count)フラット成分1-a,b 中心部に設置)に、濃縮度 3.4%のウラン試料 47g(U-235 含有量 1.6g)と Pu-239 が 97%のプル トニウム試料 900mg を封入した。図 1-a,b 中の点線 部は、通常廃棄物ドラム缶を設置する部分である。 この周辺には 14MeV 中性子源と高速中性子検出器 - 482 - よる時間成分、第2成分はポリエチレン内で減速し た熱中性子によって引き起こされる、核分裂時に放 出される即発中性子によるものである。第3成分に ついての説明は本報告では省略する[2]。 ・ 核分裂時、即発中性子以外にも中性子過剰核とな った多くの種類の核分裂片が生成されるので、それ らのB崩壊に伴い、遅発中性子が放出される。核分 裂片の半減期は第2成分の死滅時間より十分に長い ので、この計数成分は図2のフラット成分中に表れ、 このフラット成分中には遅発中性子に加え、(a,n) 中性子、Pu-239 試料にわずかに含まれる Pu-240 に よる自発核分裂中性子、及びバックグラウンドが混 在していると考えられる。この中から遅発中性子の 計数のみを取り出すためには、D-T 中性子源を用い ずに、高速中性子法と同様の時間、中性子測定を行 い、(a,n)中性子及び、バックグラウンドが混在して いる平らな時間成分(図 3 のフラット成分)を取り、 図2のフラット成分からこれを差し引けば、遅発中 性子の計数が得られるはずである。そこで、遅発中 性子成分を取り出すために、中性子源を用いずに、 図2の測定と同じ時間(500 秒)中性子を測定した結 果を図3に示す。図を見てわかるように、フラット 成分のみが現れている。図2のフラット成分の計数 が 2412(count)に対し、図3では、1238(count)とな っている。この 1174(count)の差は、【遅発中性子 +(a,n)中性子+自発核分裂中性子+バックグラウン ド]-[(a,n)中性子+自発核分裂中性子+バックグラ ウンド]=遅発中性子計数である。このようにして、 遅発中性子計数と即発中性子計数を取り出すことが 可能であることがわかった。3. 即発・遅発中性子計数比とU-235・Pu-239 比の相関関係全核分裂中性子中の遅発中性子の割合は核種によ って異なる。特に、U-235 の遅発中性子割合(0.0065) は、Pu-239(0.0021)の3倍以上大きい。したがっ て測定対象物中の Pu-239 と U-235 の割合は、即発 中性子計数と遅発中性子計数の割合に相関関係を持 つはずである。そこで、ポリ容器内の Pu 試料と U試料の割合を 0.1~30 程度まで変化させ、前述した実験と同じ手順の操作(遅発・即発中性子計数の抽出)を繰り返 した。横軸に遅発中性子と即発中性子計数の比、縦 軸を Pu と U の質量比としてプロットした結果を統 計誤差(10)と合わせて図 4 に示す。また、図4 中の実線は、理論的な考察から導き出した分数関数 (本報告では説明を省略する)を、実験値にフィッ ティングしたものである。 x二乗検定の結果、R 値 が約 0.99 となり、理論値と実験値が良く合っている ことがわかった。また、図4を見てわかるように、 多くの実験値の統計誤差範囲に、理論値が入ってい ることがわかる。これらの結果から、Pu-239 と U-235 の質量比は遅発中性子と即発中性子の計数比 に相関があることを確認し、この手法によって質量 比を精度良く決定できることがわかった。7103110[delayed neutron/prompt neutron](log scale)2 1030.1 1 110 100 [U-235/Pu-239 (mass ratio)](log scale) 図4 U-235とPu-239の質量比に対する、遅発中性子と即発中性子計数比4. 結論と今後の課題実験結果で示したように、遅発中性子計数と即発 中性子計数の割合は、U-235 と Pu-239 の存在比に 相関関係があることがわかった。これによって、高 速中性子直接問いかけ法の操作及び解析手法を工夫 すれば、U-235 と Pu-239 の存在比を、高い精度で 決定できることがわかった。 ・ しかしながら、U-235/Pu-239 が 5以上のプロッ トにおいて、統計誤差内に理論式が入っていない。 この原因は、測定対象物(ポリエチレン容器)内の- 483 -核分裂性物質による自己吸収効果、及び U-238 の高 速核分裂による遅発中性子を考慮していないことに よるものであると考えられる。したがって今後はこれらを考慮した解析、及び実」 験を行い、その結果を元に再評価し、統計誤差以外 の要因によるフィッティング関数からの乖離を減ら 核分裂性物質による自己吸収効果、及び U-238 の高 速核分裂による遅発中性子を考慮していないことに よるものであると考えられる。したがって今後はこれらを考慮した解析、及び実 験を行い、その結果を元に再評価し、統計誤差以外 の要因によるフィッティング関数からの乖離を減ら す努力が必要である。 更に、セメント固化体、金属廃棄物等のマトリク 験を行い、その結果を元に再評価し、統計誤差以外 の要因によるフィッティング関数からの乖離を減ら す努力が必要である。更に、セメント固化体、金属廃棄物等のマトリク ス中に核分裂性核種が存在する場合、遅発中性子は 即発中性子に比べ、放出数が 1/100 以下であり平均 エネルギーも2桁程度低いので、廃棄物放射能評価 に有効な検出下限値が得られるかどうか、検証しな ければならない。 - 今後これらの問題が解決されれば、多種多様な 廃棄物中の U-235 と Pu-239 の存在比を精密に測定 することが可能となり、処分コストの削減や安全な今後これらの問題が解決されれば、多種多様な 廃棄物中の U-235 と Pu-239 の存在比を精密に測定 することが可能となり、処分コストの削減や安全な 処理・処分に大きく貢献することが期待される。References[1] M. Haruyama, K. Ara, M. Tkase, ““High-sensitivity detection of fissile material in a waste dram by direct interrogation of 14 MeV Acc neutrons” Nihon-Genshiryoku-Gakkai Shi G. At. Energy Soc. Japan), 43[4], 397-404 (2001) [in Japanese] [2] M. Haruyama, M. Tkase, H. Tobita “Improvement of Detection Limit in 14MeV Neutron Direct Interrogation Method by Decreasing Background““ j. At. Energy Soc. Japan, 45[5], 432-440 (2008) [1] M. Haruyama, K. Ara, M. Tkase, “High-sensitivity detection of fissile material in a waste dram by direct interrogation of 14 MeV Acc neutrons” Nihon-Genshiryoku-Gakkai Shi (. At. Energy Soc. Japan), 43[4], 397-404 (2001) - 484 -“ “非破壊手法によるウラン・プルトニウム組成比決定法の研究“ “高峰 潤,Jun TAKAMINE,春山 満夫,Mitsuo HARUYAMA,高瀬 操,Misao TAKASE