高経年化情報ネットワークと劣化管理表

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
平成 22 年には運転開始後 30 年を超えるプラントが 20 基となり、同年には運転開始後 40 年を迎えるプラ ントが現れてくる。このような状況の中、原子力発電 所の高経年化対策は、原子力発電所の安全性、信頼性 維持の観点から重要な課題の一つとなっている。一般 的には、運転年数の長い原子力発電プラントではトラ ブルの発生件数が増加すると考えられているが、実際 は、運転年数の増加に伴ってその発生件数が増加して いる傾向は無く、高経年化が直接的に問題となること はないと考えられる。しかしながら、原子力発電プラ ントの安全性に対しては万全を期することは非常に重 要であるため、運転開始後 30 年を経過するプラントに ついて高経年化対策に着手することが適切である。な お、高経年化対策の推進に当たっては、立地地域を始 め社会的な理解を得ることが必要であるが、“高経年 化”という問題は、一般的に馴染みが薄く、運転年数 が長い原子力プラントの安全性が損なわれると受け止 められる懸念がある。このような意識や懸念を十分に 踏まえ、必要となる技術開発の推進や技術情報の収 集・蓄積に努め、それらの情報を提供することにより 理解と協力を得ることが重要である。 このような背景があり、原子力安全基盤機構(以下: JNES) は、原子力発電プラントの高経年化に対する効果
的な安全規制の実施に寄与すること、並びに社会の理 解の醸成を図ることを目的として原子力発電所の高経 年化対策のための技術情報基盤の整備を開始した。2. 技術情報基盤の整備原子力安全・保安院 (以下:NISA) は「実用発電用原子 炉施設における高経年化実施ガイドライン」 [1]、「実用 発電用原子炉施設における高経年化対策標準審査要領 内規 (内規)」 [2] を公表している。JNESはこれらのガイ ドラインの策定を支援するとともにJNESの経年劣化事 象別「高経年化技術評価審査マニュアル」 [3] 策定、高経 年化技術評価等を実施するため最新の技術的知見反映 のため技術情報基盤の整備を行ってきた。「実用発電用原子炉施設における高経年化実施ガイ ドライン」において、「高経年化対策の実施に当たって は、経年劣化等に関連する様々な知見、データを整備 し、有効活用することが不可欠である」とあり、更に「国 内外の知見、データ等を収集・整備し、ネットワーク を構築して有効活用するとともに、これに高経年化対 策に関連する安全研究を組み込んで、総合的な体系を 有する技術情報基盤として整備し、高経年化対策実施 の基礎として活用できるようにする必要がある。」と提 言されている。 ・ また、「産学官は、それぞれが有する技術情報や安全 研究成果が高経年化対策へ効果的に活用されるよう、 相互に有機的な連携を保つことが重要である。このた
め、産学官それぞれが、技術情報基盤の整備・運営状 況について情報を交換し、内容に共通性のある部分の 連携や組織ごとに有する技術情報の相互融通等を図る ベきである。さらに、他産業での経験を十分に参考に することや高経年化対策が行われている海外の知見を 十分に活用できるよう国際協力を充実する必要があ る。」と述べられている。3.劣化管理表(標準審査管理表)NISAの「実用発電用原子炉施設における高経年化実 施ガイドライン」、「実用発電用原子炉施設における高 経年化対策標準審査要領内規 (内規)」、JNESの経年劣化 事象別「高経年化技術評価審査マニュアル」などを整備 すると同時に標準的な機器構造物の各部位に生じる経 年劣化事象を網羅した「標準審査管理表」を整備した。 この「標準審査管理表」はJNESが現在まで行ってきた 原子力プラントの高経年化技術評価の審査の中で、経 年劣化事象の発生部位及び管理手法等を取り纏めたも ので、高経年化対策上着目すべき経年劣化事象を考慮 するべき部位の全体を把握し、かつ代表性をもって評 価する部位を抽出するために用いる事が可能である。 JNESはこれから「原子炉冷却系」「工学的安全系」「補 助系」「蒸気・電気変換系」「構造物と機器の支持構造 物」「電気機器」の6グループに分類し、それぞれの炉 型、2構造物及び/又は機器毎、3使用材料、1使用 環境、G想定される経年劣化事象、6適用する経年管 理プログラム、などの項目で整理し、審査の標準化に 向け検討を実施している。4. 高経年化情報ネットワーク- 高経年化情報ネットワークには以下の7つの項目が あり、それらを一般公開している。 (http://www.agingdb.jp/) ・「試験研究成果報告書」 *国の研究プロジェクト報告書(発電技検報告書や JNES報告書)及びJNESのSSレポートを掲載 ・「高経年化技術評価マニュアル」JNESが策定した経年劣化事象別「高経年化技術評 価審査マニュアル」の掲載 ・「高経年化技術評価審査報告書」原子力プラントの高経年化技術評価等報告書のJNESによる審査報告書 ・「NRC情報の経年劣化事象毎の分析結果」NRCO) “Bulletins” “Generic Letter” “Information Notice““の整理及び概要説明の掲載 ・「原子力安全・保安院発行指示文章」NISAより発行された高経年化関連指示文章の掲載 ・「国際会議情報」JNES内の国際協力WGの活動や国際会議の参加状況 ・「高経年化対策知識基盤」NISAの委託事業「高経年化対策強化基盤事業」の 成果がまとめられている「実用原子力発電施設の高 経年化対策知識基盤ポータルサイト」へのリンク この高経年化情報ネットワークは平成20年4月より 運用を開始しており、産学官及び学協会が蓄積した技 術情報の円滑に活用するために今後もさらなる情報を 収集する予定である。5.結言この高経年化情報ネットワークや標準審査管理表は、 高経年化技術評価等を主体とした専用データーベース システムとしては今までにないものであり、産学官の 協調、共有ネットワークによる総合的かつ有機的連携 によって日本の高経年化対策を実施することが可能と なる。現在、積極的に経年劣化に関連した、技術情報 や運転経験、保全情報などを産学官各々がそれぞれの 役割に応じて情報の収集、整備が行われ、その活用が 図られつつある。 - 今後、産学官による情報ネットワークに掲載する収 集情報の“共有化”と“公開”の棲み分けの検討、新 検査制度への対応などを検討し、これら情報の有効利 用のため、継続的な検討と仕組み作りを行っていく必 要がある。参考文献[1] 原子力安全・保安院、“実用発電用原子炉施設における高経年化実施ガイドライン” 2005, 12, 26 [2] 原子力安全・保安院、“実用発電用原子炉施設における高経年化対策標準審査要領内規(内規)”2005, 12,26 [3] 原子力安全基盤機構、“高経年化技術評価審査マニ ニュアル” 2005, 12, 26“ “高経年化情報ネットワークと劣化管理表“ “橋倉 靖明,Yasuaki HASHIKURA,菅野 眞紀,Masanori KANNO,北條 智博,Tomohiro HOJO
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