漏えい磁束密度測定による照射誘起応力腐食割れ感受性評価
公開日:
カテゴリ: 第5回
1.緒言
軽水炉において、高経年化対策の重要性が再認識さ れている。また、より過酷な照射環境及び高温環境で 使用される超臨界圧水冷却型高速炉等の次世代型原子 炉についても、高経年化対策は重要な問題となること が予想される。考慮すべき高経年化事象のひとつとし ては、照射誘起応力腐食割れ (IASCC) が挙げられる。 著者らのこれまでの研究により、オーステナイト系ス テンレス鋼高純度モデル合金に関して、IASCC 感受性 と漏えい磁束密度の間に相関があることが実験的に示 されている[1]。このことから、漏えい磁束密度測定に より、IASCC 発生前の予兆段階において、その材料劣 化を非破壊的に評価できる可能性がある。ただし、中 性子照射による漏えい磁束密度の増加の機構や、漏え い磁束密度の増加と IASCC 感受性の増加の相関の原 理については、まだ不明な点が多い。そこで、本研究 では、IASCC の主原因のひとつであると考えられてい る結晶粒界近傍における照射誘起偏析や格子欠陥が、 磁気特性に及ぼす影響を調べるために、照射誘起偏析 模擬材を用いて歪み量をパラメータとした高温環境下 引張試験及び比較のための熱時効試験を実施し、漏え い磁束密度の測定を行った。さらに、化学組成変化や
空孔が磁気モーメントに与える影響を評価するために 第一原理計算を実施した。2. 試験方法2.1 試験片 - 供試材は、オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304 の結晶粒界における中性子照射偏析をバルク全体の化 学組成で模擬した材料(照射誘起偏析模擬材)を用い た。化学組成を Table 1 に示す。通常の SUS304 鋼と比 較して、Cr 濃度が約 10 wt%と低いこと、逆に Ni 濃度 が 30 wt%と高いことが特徴である。なお溶体化処理は、 1100°Cでの 30 分間保持及び水冷により行っている。 - 引張試験片形状を Fig.1 に示す。引張軸が圧延方向に、 漏えい磁束密度測定面が圧延面に一致するように、素 材板厚中央部から試験片を採取した。 引張試験条件を、Table 2 に示す。漏えい磁束密度変 化の歪み量依存性を調べるために、公称歪み 10%、20% 及び 30%までの各中断試験を実施した。試験温度は 650°Cとし、昇温時間を約 35 分、引張開始前の均熱時 間を 25 分とした。また、磁束密度変化に対する引張試験中の高温環境 下保持のみによる影響を評価するために、引張試験とSi*Table 1 Chemical compositions (wt%) | Mn | Cr | Ni | | 1.02 | 10.3 | 30.0 ||FeN 0.0030.0343.02Bal.Measurement areaM18×2.5-30| 10 |GL = 30110Fig. 1 Dimensions of tensile test specimen (t = 4)Table 2Tensile test conditionsTemperature650°CStrain rate0.3%/min (0~3%) 7.5%/min (>3%)Interruptioncondition10%、20%、30%(Nominal strain)EnvironmentIn Air同一の加熱炉で、同一形状の試験片を用い、熱時効試 験を実施した。熱履歴条件は、公称歪み 30%までの引 張試験時の条件に一致させた。2.2 漏えい磁束密度測定 引張試験及び熱時効試験の前後に、Fig.1 に示す範囲 において漏えい磁束密度分布の測定を行った。測定の 前に変動交流磁場を用いて試験片を消磁し、その後、 上下1対の永久磁石間に試験片を保持することによっ て板厚方向への着磁を行った。永久磁石による磁場の 強さは、0.25 T 程度である。着磁後、フラックスゲー ト型磁気センサを用いて、室温にて残留磁化状態での 漏えい磁束密度の板厚方向成分の測定を実施した。試 験片表面-センサ間距離は 0.5 mm とした。センサの分 解能は、約1uTである。2.3 第一原理計算による磁気モーメント評価 - 照射欠陥(空孔)導入による漏えい磁束密度変化の 可能性を検討するために、SUS304 の主要元素である Fe、Cr、Ni の3元素について、磁気モーメントの格子定数依存性を評価した。結晶構造は、SUS304 と同じ面 心立方格子構造とした。磁気モーメントの原因として、 スピン磁気モーメントのみを考慮すると[2]、磁気モー メント(M)と、UP スピンをもつ電子の数(n)、DOWN スピンをもつ電子の数(n)の間には、次の関係が成 り立つ。_M = fua(n-n.)-1ここで、gはボーア磁子である。なお本計算では、擬ポテンシャルと密度汎関数法を 用いた平面波展開により第一原理計算を実施する市販 のソフトウェア「Advance/PHASE」を利用した[3]。ま た、第一原理計算により求められる磁気モーメントは 絶対零度における値である。3.結果3.1漏えい磁束密度測定試験 * Fig.2(a)-(e)に、10-30 材の受入れ材、熱時効材、引張 試験中断材(公称ひずみ:10、20、30%)に関する残留磁 束密度測定結果をそれぞれ示す。なお、図中の点線に 挟まれた領域に試験片が存在している。Fig.2(a)から、受入れ材の漏えい磁束密度は環境磁場 とほぼ同等であることがわかる。一方、熱時効材では、 環境磁場に比べ残留磁束密度がわずかに1uT程度増加 していた。さらに、引張試験材では、3~4uT 程度まで 漏えい磁束密度が増加し、試験片平行部の識別が明確 にできるほどまでになっている。センサの分解能は約 1uTであるため、この差は十分有意なものである。た だし、中断時の公称歪みの違いによる漏えい磁束密度 の変化は特に認められなかった。このことから、歪み が漏えい磁束密度変化に与える影響は、10%までに飽 和したものと考えられる。3.2 第一原理計算による磁気モーメント評価Fe、Cr、Ni の 3 元素に関する磁気モーメントの格子 定数依存性を Fig.3 に示す。ここで、SUS304 の格子定 数は、約 3.59 A である。Fe、Crについては、格子定数506198765432107477547agi1.48121620242832E+16mm(a) As-received samplemm1.48121620242832E+16As-received sample合に、磁気モーメントは変わらないか、あるいは大き くなる傾向があることがわかった。19876543210771597s9712 162024283236mmlUp spin - Down spin atom(b) Aged sampleONI2521293133 35 37 Lattice constantA39414345は76543210713 15 9790Fig.イ」4.81216202428323E+15mmterrupted tensile test specimen (nominal strain: ~10%)mm1.48121620242832E+16mm!relatego!1.98765432107737E+194.81216202428323E+15mm(c) Interrupted tensile test specimen (nominal strain: ~10%)えっちなこ19676549210TY7TSFファイ14812162024283236mm(d) Interrupted tensile test specimen (nominal strain: ~20%)mm1.08876543210717E+212024283(e) Interrupted tensile test specimen (nominal strain: ~30%)14812162024283236(e) Interrupted tensile test specimen (nominal strain:Fig.2 Leakage magnetic flux density (unit: 1 T)があるしきい値以下では磁気モーメントは変化しない が、しきい値以上では格子定数が大きくなるにしたが って磁気モーメントが増加することが示された。一方、 Ni については、評価した格子定数の範囲においては、 格子定数とともに磁気モーメントが単調に増加するこ とが示された。このことから、いずれの元素について も、空孔が導入されて局所的に格子定数が広がった場 合に、磁気モーメントは変わらないか、あるいは大き くなる傾向があることがわかった。UNI ACT252129313941 434533 35 37 Lattice constant 1 AFig. 3 Dependency of magnetic moment on lattice constant4.考察照射誘起偏析模擬材について、熱時効後に漏えい磁 束密度が増加することが示された。著者らは、SUS304 鋼に関して、熱時効により結晶粒界上に Cr 炭化物が析 出し、その近傍の Cr 濃度が低下した領域において、マ ルテンサイト変態開始温度が上昇した結果、同領域に 強磁性体であるマルテンサイト相が生成されることを 明らかにしている[4]。しかしながら、オーステナイト 相安定化元素である Ni の濃度が 30 wt%と高い 10-30 材については、同機構により残留磁束密度の増加を説 明することは困難である。著者らはまた、Ni基合金で あるインコネル 600 について熱時効による磁気特性の 変化を調べており、この場合、熱時効により形成され たCr濃度低下領域において、もともと室温以下であっ たキュリー温度が室温以上まで上昇することにより、 磁気力顕微鏡を用いて結晶粒界近傍で磁化が観察でき るようになることを報告している[5]。Fe を主とする Fe-Cr-Ni-3 元系合金に関するキュリー温度の Cr 濃度及 び Ni 濃度依存性については、Bozorth の文献[6]に示さ れている。これによると、Ni 濃度が 30 wt%の場合のキ- 507 -ュリー温度は、Cr 濃度が 10%では0°C以下であるが、 Cr 濃度が5wt%まで低下すると、約 80 °Cまで上昇す ることがわかる。したがって、照射誘起偏析模擬材に ついて熱時効後に残留磁束密度が増加した原因として は、熱時効により析出した Cr 炭化物近傍の Cr 濃度低 下領域において、キュリー温度が室温以上に上昇し、 強磁性を示すようになったことが考えられる。また、高温環境下での引張により、熱時効の場合よ りもさらに漏えい磁束密度が増加することが明らかに なった。試験温度が 650°Cと高温であること、および Ni濃度が 30 wt%と高いことから、この漏えい磁束密度 の増加が、加工誘起マルテンサイト変態によるもので あるとは考えられない。ここで、第一原理計算による 磁気モーメント評価の結果からは、主要3元素ともに、 格子定数が大きくなるに従って磁気モーメントが大き くなることが示された。このことは、転位や空孔の導 入により、原子間隔が通常より広がった場合に、磁気 モーメントが大きくなる可能性を示している。したがって中性子照射材についても、Cr 濃度 10 wt%、 Ni 濃度 30 wt%よりもさらに厳しい照射誘起偏析や、そ のような照射誘起偏析領域への空孔導入によって、漏 えい磁束密度が増加している可能性があると考えられる。3.結言IASCC の主原因のひとつであると考えられている結 晶粒界近傍における照射誘起偏析や格子欠陥が磁気特 性変化に及ぼす影響を調べるために、照射誘起偏析模 機材を用いて歪み量をパラメータとした高温引張試験 及び比較のための熱時効試験を実施し、漏えい磁束密 度の測定を行った。さらに、空孔導入が磁気モーメン トに与える影響を検討するために、第一原理計算によ り磁気モーメントの格子定数依存性を評価した。その結果、以下のことを明らかにした。 (1) Cr 濃度 10 wt%、Ni 濃度 30 wt%よりさらに厳しい照射誘起偏析領域において、キュリー温度の上昇 により、室温でも強磁性を示すようになり、漏えい磁束密度が増加する可能性があること。 (2) 照射誘起偏析領域に照射欠陥として空孔が導入されることにより、さらに漏えい磁束密度が増加 する可能性があること。 本研究で得られたこれらの知見は、漏えい磁束密度 測定による IASCC 感受性の予兆診断の可能性をより高 めるものと考えられる。「謝辞本報告の内容は、特別会計に関する法律(エネルギ ー対策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業 として、(独)日本原子力研究開発機構が実施した平成 19年度「超臨界圧水冷却高速炉の炉内構造材劣化予兆 診断技術の開発」の成果です。参考文献 [1] S. Takaya, Y. Nagae, T. Yoshiake, K. Aoto, Y. Nemoro, J.Nakano, F. Ueno, T. Tsukada, Short paper proceedings of the 13th International Symposium on AppliedElectromagnetics and Mechanics, pp. 187-188, 2007. [2] 小口多美夫、宮澤弘、まてりあ、Vol.37、p.560、1998. [3]http://www.advancesoft.jp/product/advance_phase/index.html [4] S. Takaya, T. Suzuki, Y. Matsumoto, K. Demachi, M. * Uesaka, J. Nucl. Mater., Vol.327, No.1, p.19-26,2004. [5] S. Takaya, T. Suzuki, T. Uchimoto, K. Miya, J. Appl.Phys., Vol.91, No.10, pp.7011-7013,2002. [6] R. M. Bozorth, Ferromagnetism, IEEE Press, New York,p.149, 1993.508“ “?漏えい磁束密度測定による照射誘起応力腐食割れ感受性評価“ “高屋 茂,Shigeru TAKAYA,根本 義之,Yoshiyuki NEMOTO,内一 哲哉,Tetsuya UCHIMOTO,欅田 理,Satoshi KEYAKIDA
軽水炉において、高経年化対策の重要性が再認識さ れている。また、より過酷な照射環境及び高温環境で 使用される超臨界圧水冷却型高速炉等の次世代型原子 炉についても、高経年化対策は重要な問題となること が予想される。考慮すべき高経年化事象のひとつとし ては、照射誘起応力腐食割れ (IASCC) が挙げられる。 著者らのこれまでの研究により、オーステナイト系ス テンレス鋼高純度モデル合金に関して、IASCC 感受性 と漏えい磁束密度の間に相関があることが実験的に示 されている[1]。このことから、漏えい磁束密度測定に より、IASCC 発生前の予兆段階において、その材料劣 化を非破壊的に評価できる可能性がある。ただし、中 性子照射による漏えい磁束密度の増加の機構や、漏え い磁束密度の増加と IASCC 感受性の増加の相関の原 理については、まだ不明な点が多い。そこで、本研究 では、IASCC の主原因のひとつであると考えられてい る結晶粒界近傍における照射誘起偏析や格子欠陥が、 磁気特性に及ぼす影響を調べるために、照射誘起偏析 模擬材を用いて歪み量をパラメータとした高温環境下 引張試験及び比較のための熱時効試験を実施し、漏え い磁束密度の測定を行った。さらに、化学組成変化や
空孔が磁気モーメントに与える影響を評価するために 第一原理計算を実施した。2. 試験方法2.1 試験片 - 供試材は、オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304 の結晶粒界における中性子照射偏析をバルク全体の化 学組成で模擬した材料(照射誘起偏析模擬材)を用い た。化学組成を Table 1 に示す。通常の SUS304 鋼と比 較して、Cr 濃度が約 10 wt%と低いこと、逆に Ni 濃度 が 30 wt%と高いことが特徴である。なお溶体化処理は、 1100°Cでの 30 分間保持及び水冷により行っている。 - 引張試験片形状を Fig.1 に示す。引張軸が圧延方向に、 漏えい磁束密度測定面が圧延面に一致するように、素 材板厚中央部から試験片を採取した。 引張試験条件を、Table 2 に示す。漏えい磁束密度変 化の歪み量依存性を調べるために、公称歪み 10%、20% 及び 30%までの各中断試験を実施した。試験温度は 650°Cとし、昇温時間を約 35 分、引張開始前の均熱時 間を 25 分とした。また、磁束密度変化に対する引張試験中の高温環境 下保持のみによる影響を評価するために、引張試験とSi*Table 1 Chemical compositions (wt%) | Mn | Cr | Ni | | 1.02 | 10.3 | 30.0 ||FeN 0.0030.0343.02Bal.Measurement areaM18×2.5-30| 10 |GL = 30110Fig. 1 Dimensions of tensile test specimen (t = 4)Table 2Tensile test conditionsTemperature650°CStrain rate0.3%/min (0~3%) 7.5%/min (>3%)Interruptioncondition10%、20%、30%(Nominal strain)EnvironmentIn Air同一の加熱炉で、同一形状の試験片を用い、熱時効試 験を実施した。熱履歴条件は、公称歪み 30%までの引 張試験時の条件に一致させた。2.2 漏えい磁束密度測定 引張試験及び熱時効試験の前後に、Fig.1 に示す範囲 において漏えい磁束密度分布の測定を行った。測定の 前に変動交流磁場を用いて試験片を消磁し、その後、 上下1対の永久磁石間に試験片を保持することによっ て板厚方向への着磁を行った。永久磁石による磁場の 強さは、0.25 T 程度である。着磁後、フラックスゲー ト型磁気センサを用いて、室温にて残留磁化状態での 漏えい磁束密度の板厚方向成分の測定を実施した。試 験片表面-センサ間距離は 0.5 mm とした。センサの分 解能は、約1uTである。2.3 第一原理計算による磁気モーメント評価 - 照射欠陥(空孔)導入による漏えい磁束密度変化の 可能性を検討するために、SUS304 の主要元素である Fe、Cr、Ni の3元素について、磁気モーメントの格子定数依存性を評価した。結晶構造は、SUS304 と同じ面 心立方格子構造とした。磁気モーメントの原因として、 スピン磁気モーメントのみを考慮すると[2]、磁気モー メント(M)と、UP スピンをもつ電子の数(n)、DOWN スピンをもつ電子の数(n)の間には、次の関係が成 り立つ。_M = fua(n-n.)-1ここで、gはボーア磁子である。なお本計算では、擬ポテンシャルと密度汎関数法を 用いた平面波展開により第一原理計算を実施する市販 のソフトウェア「Advance/PHASE」を利用した[3]。ま た、第一原理計算により求められる磁気モーメントは 絶対零度における値である。3.結果3.1漏えい磁束密度測定試験 * Fig.2(a)-(e)に、10-30 材の受入れ材、熱時効材、引張 試験中断材(公称ひずみ:10、20、30%)に関する残留磁 束密度測定結果をそれぞれ示す。なお、図中の点線に 挟まれた領域に試験片が存在している。Fig.2(a)から、受入れ材の漏えい磁束密度は環境磁場 とほぼ同等であることがわかる。一方、熱時効材では、 環境磁場に比べ残留磁束密度がわずかに1uT程度増加 していた。さらに、引張試験材では、3~4uT 程度まで 漏えい磁束密度が増加し、試験片平行部の識別が明確 にできるほどまでになっている。センサの分解能は約 1uTであるため、この差は十分有意なものである。た だし、中断時の公称歪みの違いによる漏えい磁束密度 の変化は特に認められなかった。このことから、歪み が漏えい磁束密度変化に与える影響は、10%までに飽 和したものと考えられる。3.2 第一原理計算による磁気モーメント評価Fe、Cr、Ni の 3 元素に関する磁気モーメントの格子 定数依存性を Fig.3 に示す。ここで、SUS304 の格子定 数は、約 3.59 A である。Fe、Crについては、格子定数506198765432107477547agi1.48121620242832E+16mm(a) As-received samplemm1.48121620242832E+16As-received sample合に、磁気モーメントは変わらないか、あるいは大き くなる傾向があることがわかった。19876543210771597s9712 162024283236mmlUp spin - Down spin atom(b) Aged sampleONI2521293133 35 37 Lattice constantA39414345は76543210713 15 9790Fig.イ」4.81216202428323E+15mmterrupted tensile test specimen (nominal strain: ~10%)mm1.48121620242832E+16mm!relatego!1.98765432107737E+194.81216202428323E+15mm(c) Interrupted tensile test specimen (nominal strain: ~10%)えっちなこ19676549210TY7TSFファイ14812162024283236mm(d) Interrupted tensile test specimen (nominal strain: ~20%)mm1.08876543210717E+212024283(e) Interrupted tensile test specimen (nominal strain: ~30%)14812162024283236(e) Interrupted tensile test specimen (nominal strain:Fig.2 Leakage magnetic flux density (unit: 1 T)があるしきい値以下では磁気モーメントは変化しない が、しきい値以上では格子定数が大きくなるにしたが って磁気モーメントが増加することが示された。一方、 Ni については、評価した格子定数の範囲においては、 格子定数とともに磁気モーメントが単調に増加するこ とが示された。このことから、いずれの元素について も、空孔が導入されて局所的に格子定数が広がった場 合に、磁気モーメントは変わらないか、あるいは大き くなる傾向があることがわかった。UNI ACT252129313941 434533 35 37 Lattice constant 1 AFig. 3 Dependency of magnetic moment on lattice constant4.考察照射誘起偏析模擬材について、熱時効後に漏えい磁 束密度が増加することが示された。著者らは、SUS304 鋼に関して、熱時効により結晶粒界上に Cr 炭化物が析 出し、その近傍の Cr 濃度が低下した領域において、マ ルテンサイト変態開始温度が上昇した結果、同領域に 強磁性体であるマルテンサイト相が生成されることを 明らかにしている[4]。しかしながら、オーステナイト 相安定化元素である Ni の濃度が 30 wt%と高い 10-30 材については、同機構により残留磁束密度の増加を説 明することは困難である。著者らはまた、Ni基合金で あるインコネル 600 について熱時効による磁気特性の 変化を調べており、この場合、熱時効により形成され たCr濃度低下領域において、もともと室温以下であっ たキュリー温度が室温以上まで上昇することにより、 磁気力顕微鏡を用いて結晶粒界近傍で磁化が観察でき るようになることを報告している[5]。Fe を主とする Fe-Cr-Ni-3 元系合金に関するキュリー温度の Cr 濃度及 び Ni 濃度依存性については、Bozorth の文献[6]に示さ れている。これによると、Ni 濃度が 30 wt%の場合のキ- 507 -ュリー温度は、Cr 濃度が 10%では0°C以下であるが、 Cr 濃度が5wt%まで低下すると、約 80 °Cまで上昇す ることがわかる。したがって、照射誘起偏析模擬材に ついて熱時効後に残留磁束密度が増加した原因として は、熱時効により析出した Cr 炭化物近傍の Cr 濃度低 下領域において、キュリー温度が室温以上に上昇し、 強磁性を示すようになったことが考えられる。また、高温環境下での引張により、熱時効の場合よ りもさらに漏えい磁束密度が増加することが明らかに なった。試験温度が 650°Cと高温であること、および Ni濃度が 30 wt%と高いことから、この漏えい磁束密度 の増加が、加工誘起マルテンサイト変態によるもので あるとは考えられない。ここで、第一原理計算による 磁気モーメント評価の結果からは、主要3元素ともに、 格子定数が大きくなるに従って磁気モーメントが大き くなることが示された。このことは、転位や空孔の導 入により、原子間隔が通常より広がった場合に、磁気 モーメントが大きくなる可能性を示している。したがって中性子照射材についても、Cr 濃度 10 wt%、 Ni 濃度 30 wt%よりもさらに厳しい照射誘起偏析や、そ のような照射誘起偏析領域への空孔導入によって、漏 えい磁束密度が増加している可能性があると考えられる。3.結言IASCC の主原因のひとつであると考えられている結 晶粒界近傍における照射誘起偏析や格子欠陥が磁気特 性変化に及ぼす影響を調べるために、照射誘起偏析模 機材を用いて歪み量をパラメータとした高温引張試験 及び比較のための熱時効試験を実施し、漏えい磁束密 度の測定を行った。さらに、空孔導入が磁気モーメン トに与える影響を検討するために、第一原理計算によ り磁気モーメントの格子定数依存性を評価した。その結果、以下のことを明らかにした。 (1) Cr 濃度 10 wt%、Ni 濃度 30 wt%よりさらに厳しい照射誘起偏析領域において、キュリー温度の上昇 により、室温でも強磁性を示すようになり、漏えい磁束密度が増加する可能性があること。 (2) 照射誘起偏析領域に照射欠陥として空孔が導入されることにより、さらに漏えい磁束密度が増加 する可能性があること。 本研究で得られたこれらの知見は、漏えい磁束密度 測定による IASCC 感受性の予兆診断の可能性をより高 めるものと考えられる。「謝辞本報告の内容は、特別会計に関する法律(エネルギ ー対策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業 として、(独)日本原子力研究開発機構が実施した平成 19年度「超臨界圧水冷却高速炉の炉内構造材劣化予兆 診断技術の開発」の成果です。参考文献 [1] S. Takaya, Y. Nagae, T. Yoshiake, K. Aoto, Y. Nemoro, J.Nakano, F. Ueno, T. Tsukada, Short paper proceedings of the 13th International Symposium on AppliedElectromagnetics and Mechanics, pp. 187-188, 2007. [2] 小口多美夫、宮澤弘、まてりあ、Vol.37、p.560、1998. [3]http://www.advancesoft.jp/product/advance_phase/index.html [4] S. Takaya, T. Suzuki, Y. Matsumoto, K. Demachi, M. * Uesaka, J. Nucl. Mater., Vol.327, No.1, p.19-26,2004. [5] S. Takaya, T. Suzuki, T. Uchimoto, K. Miya, J. Appl.Phys., Vol.91, No.10, pp.7011-7013,2002. [6] R. M. Bozorth, Ferromagnetism, IEEE Press, New York,p.149, 1993.508“ “?漏えい磁束密度測定による照射誘起応力腐食割れ感受性評価“ “高屋 茂,Shigeru TAKAYA,根本 義之,Yoshiyuki NEMOTO,内一 哲哉,Tetsuya UCHIMOTO,欅田 理,Satoshi KEYAKIDA