SUS304鋼平滑材の疲労過程における塑性誘起マルテンサイト変態量の発展
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カテゴリ: 第5回
1.緒 言
2. 実 験 方法 SUS304 鋼は、不安定なマルテンサイト相を持つオー 2.1 SUS304 鋼平滑平板疲労試験 ステナイト系ステンレス鋼として知られており、通常、 供試材には、表1に示す化学成分を持つオーステナ 室温近傍において延性かつ非磁性的特性を示すが、強 イト系ステンレス鋼 SUS304 を、また、試験片として 変形や大きな応力を受けると、SUS304 鋼中のオーステは図1に示す平滑平板試験片を用いた。 ナイト相の一部がマルテンサイト相に変態して、その 疲労試験は、室温 (297 K)下、繰返荷重速度 1 Hz、応 部分が脆性かつ強磁性的な特性を示すようになる。 力比 R-0.1、応力範囲を数レベル変化させて行った。これまでに、著者らは、SUS304 鋼の室温中疲労にお図2に本試験で得られた S-N 線図を示す。なお、試験 いて、疲労き裂近傍に塑性誘起変態によって発生した中は適当な繰返数で試験を中断し、次項に述べる手順 a'マルテンサイト相(以下、「a'相」と略記) の分布状態に従って、試験片スパン中央の平滑平行部におけるa' を定量的に明らかにし、その変態領域を強制磁化して変態率 Vを測定した。また、繰返し数毎の荷重変化に 得られるき裂近傍の漏洩磁束密度分布からき裂長と負
Table 1 Chemical composition of SUS304 tested (mass%). 荷された応力拡大係数の最大値 Kamaが推定できること | Material | c | si | Mn | P | S | Ni | Cr | を示した[1-4]。
| sus304 | 0.06 | 0.50 | 0.87 | 0.037 | 0.01 | 8.10 | 18.21 | 本研究では、SUS304 鋼平滑平板疲労試験を室温・大ト 22 _ * 20 * 22 気中(297 K)で行い、塑性変形誘起変態によって生じた a'相量を測定し、それらの結果を応用して疲労による 劣化・損傷を受けた SUS304 鋼の非破壊検査法の可能 性を探ることとした。2-6キリ
Fig. 1 Specimen geometry (unit: mm). 03-5228-86, e-mail: nakasone@rs.kagu.tus.ac.jpて 負と00 11R12*44509TTTTApplied stress range, Ao, MPaSUS304 plates fatigued at RT in air o Fractured outsidegage length 400 m l immund link intal manual mull und 10' 10°10'10- 10°10'10'100Number of load cycles to fracture, N,Fig. 2S-N diagram of SUS304 at room temperature in air.1||----a' volume fraction, Va(VSM), %1.372008000001 2040 60 80 100a' volume fraction, V≪(FS), % Fig. 3 Comparison of values of a volume fraction Vameasured by ferrite scope and those by VSM.伴う試験片平滑平行部のゲージ長 10 mm のひずみの変 化の計測も併せて行った。 2.2 a変態率の測定 - 均一な塑性変形を起こしたと考えられる SUS304 製 平滑材の飽和磁化を検出精度の良い振動試料型磁力計 VSM で測定し、この飽和磁化からa'変態率 Vaの値を 算出した[3][5]。この結果と X 線回折法から求めた Vo. (X-ray)およびフェライトスコープ (FS) V (FS)の読み には図 3 のような良好な直線相関が見出されたことか ら[3][6]、本研究では、測定が容易な FS を用いて平滑 平行部表面における V の分布状態を決定した。すなわ ち、試験片の平滑表面に疲労変形前約 1 mm 間隔に設 定した 27 点の格子点での FS の読み V (FS)に VSM か ら求めた Va.の値と FS の読み V (FS)との関係から得ら840Cumulative strain o Ao=540MPa A Ao%3D580MPa ロ △0600MPa 70-610MPaMaximum a' volume fraction, Va'max) %Naoooo o 。 。 。 。 。10_ 10000 20000 3000040000Number of cycles, N, cycles Fig. 4 Variation of maximum a' volume fraction Va’max withthe number of stress cycles N in fatigued SUS 304 steel plates.れた係数 1.37(図 2 参照)を掛けて求められた値をその 格子点におけるa'変態率 Vaの値とした。3. 実 験 結果 3.1 a'変態率の最大値 Verma と繰返数 N の関係図4に SUS304 平滑平行部中央における Va・の最大値 Varmac の N による変化を示す。Varmac と N の関係は、今 回実験したAo=540、580、600、610 MPa、いずれの応 力レベルでも、図4のように、常に逆 S字状の曲線を 呈した。すなわち、試験開始前の FS の読みは、6フェ ライト量と考えられる 0.3 %程度であったが、第1回目 の応力負荷直後、△0の値に応じた FS の読みの急激な 上昇が見られた。応力負荷後の FS の読みの著しい上昇 は塑性誘起マルテンサイト変態による強磁性a'相の発 生によるもの、すなわち、変態率 V の増加と考えられ る。その後、この Vaの最大値 Varmaxは疲労過程の大部 分でほぼ一定の値を保ち、その値はAG値の増加ととも に 4~28%と急激に増加した。さらに、Virman は、疲労 寿命後期において急激な上昇を示し破断に至った。破 断時の Warmaxの値もAG値の増加とともに増加した。こ のことから Ver.net 値の急激な上昇を捉えることで、疲 労予寿命の推定が可能になると考えられる。 3.2 平滑試験片表面におけるa'変態率 Vの分布 図 5(a)~(d)に、Ao=600 MPa の時の N-0、2000、3000 cycles および試験片破断時 NF4837 cycles の平滑試験片510Va,% 口35-40 330-35 ロ25-30 ■20-25 □15-20 |010-15園5-10 100-5(a) N=0(b) N=2000ΔσFig. 5(c) N=3000 Contour maps of Va in a fatigued SUS304 measured by ferrite scope.Fig. 5表面におけるVの分布を示す。図の横軸は試験片の長 手方向、即ち、荷重負荷方向となっている。 図 5(a) (N=0 cycle)の見掛けのV値は全体的に 0.3~0.4 %の一様な 分布になっているが、これは6フェライト量と考えられ る。試験開始と同時に Vaの値は全体的に上昇し、 N=2000cycles(図 5(b))で中央部に Va=20~25%の高 V領域が現れ、この部分に変形が集中したことが推測 される。N=3000cycles (図 5(c)) で中央部の高 V 領域が さらに広がり、N=3800cycles で中央から少しずれた所 に Vi=32%のV値の非常に高い狭い領域が出現し、そ こから長さ約 200um の続き裂(図 6)が発生して試験片 の破断 (図 5(d))が起こった。破断後の測定から、この 領域では、Vai35~40%となり、室温中の静的引張試験 (破断時で Varauman.16%[1][3]) と比べ、非常に高い V の値を示した。他の試験片でも、Vaが最大値を示した 箇所に約 200μm の続き裂が確認できたことから、供用 中検査等で FS によって Voを測定することによって可 視き裂より小さなき裂の検出が可能になるものと思わ れる。 3.3 a’変態率の平均値 Voyと累積ひずみの関係SUS304 では、ラチェット変形によって、繰返数とと もにひずみが累積する傾向が見られた。図7にVの平 均値 Varauと疲労による累積ひずみの関係を示す。白印av(d) N-483)200μmPhotograph of an edge crack found in a high Va value.Fig. 6Accumulated strain o ao=3540MPa△o=580MPa ロ -600MPa o Ao=610MPa ? Static strainAverage a' volume fraction, Va'av, %2040601Strain, ε, % Fig.7 Variation of average a' volume fraction Varawstatic and cumulative strains.withは、A6=540、580、600、610 MPa の平滑材疲労試験に おける Varavと累積ひずみの関係、黒印は引張試験で得 られた Varauと静的ひずみの関係である。引張試験では、Verroの最大値は約 16%だったが[1][3]、 疲労試験ではラチェット変形によって累積したひずみ によって Varayの値は最大 28%となった。Ao=一定であ っても、累積ひずみによって誘起されるa’相の量は一 方向負荷の場合よりもはるかに多い。従って、FS によ る劣化・損傷の非破壊的検出は一方向負荷による変形511よりも疲労変形のほうが容易になると考えられる。た だし、図7のように、Vauと累積ひずみの関係は、Varaw と静的ひずみの関係とほぼ同じ曲線で表され、静的負 荷、疲労負荷に関わらず、ある一定の変形を受けた場 合には、ほぼ同量のa?相が変態するものと考えられる。4.結言オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304 について、 室温・大気中平滑平板材疲労試験におけるa’相変態率 Vをフェライトスコープによって測定し、V...の繰返数 Nによる変化と試験片表面でのVIの分布を調べ、次の ような結論を得た。 1) 平滑平行部中央での相変態率の最大値 Varma と Nの関係は逆S字状の曲線を呈した。即ち、第1回目 の応力負荷直後の急激な Vormace値の増加、その後の 疲労寿命の大半を占めるほぼ Varmen=一定なプラト 一領域および破断直前の Vama 値の急激な増加の3 領域特性を示した。また、プラトー領域における Varmac の値と破断試験片の破面近傍における Varmax の値は、負荷応力範囲△0の値の増加とともに増加した。 2) V の分布では、疲労の進行とともに試験片中央付近に V値の高い領域が集中する傾向が見られた。このV値の局所化は、寿命後期でさらに顕著となり、 V値が最大となる箇所から長さ約 200 um の小さな 縁き裂が発生して破断を誘発した。この領域での V 値は 35~40%にも達し、室温中の静的引張試験と比べて2倍以上の高い値を示した。 3) 疲労試験では、ラチェット変形によって累積したひ ずみによって、a’相変態率の平均値 Varyは最大28% に達し、引張試験よりも高い値が得られた。ただし、 Varaw と累積ひずみの関係は Vory と静的ひずみの関 係とほぼ同じ曲線で表され、静的負荷、疲労負荷に 関わらず、ある一定の変形を受けた場合には、ほぼ 同量のa’相が変態するものと考えられる。参考文献[1] 中曽根ほか3名、機構論 No.00-17(200)、pp. 573-574. [2] 中曽根ほか3名、機構論 No.010-1(201)、pp. 107-108. [3] 日本 AEM学会、電磁破壊力学調査研究分科会報告書、JSAEM-R-9803、1999; R-9903、2000; R-0005、2001. [4] 中曽根ほか2名、機講論 No.01-16(01)、pp.579-580. [5] J. Menard et al., Advances in Cryogenic Eng., 6, pp.587-589(260). [6] 中曽根ほか3名、日本AEM学会誌、Vol. 9-No. 2 ('01)、pp. 123-130.512“ “SUS304 鋼平滑材の疲労過程における 塑性誘起マルテンサイト変態量の発展“ “中曽根 祐司,Yuji NAKASONE
2. 実 験 方法 SUS304 鋼は、不安定なマルテンサイト相を持つオー 2.1 SUS304 鋼平滑平板疲労試験 ステナイト系ステンレス鋼として知られており、通常、 供試材には、表1に示す化学成分を持つオーステナ 室温近傍において延性かつ非磁性的特性を示すが、強 イト系ステンレス鋼 SUS304 を、また、試験片として 変形や大きな応力を受けると、SUS304 鋼中のオーステは図1に示す平滑平板試験片を用いた。 ナイト相の一部がマルテンサイト相に変態して、その 疲労試験は、室温 (297 K)下、繰返荷重速度 1 Hz、応 部分が脆性かつ強磁性的な特性を示すようになる。 力比 R-0.1、応力範囲を数レベル変化させて行った。これまでに、著者らは、SUS304 鋼の室温中疲労にお図2に本試験で得られた S-N 線図を示す。なお、試験 いて、疲労き裂近傍に塑性誘起変態によって発生した中は適当な繰返数で試験を中断し、次項に述べる手順 a'マルテンサイト相(以下、「a'相」と略記) の分布状態に従って、試験片スパン中央の平滑平行部におけるa' を定量的に明らかにし、その変態領域を強制磁化して変態率 Vを測定した。また、繰返し数毎の荷重変化に 得られるき裂近傍の漏洩磁束密度分布からき裂長と負
Table 1 Chemical composition of SUS304 tested (mass%). 荷された応力拡大係数の最大値 Kamaが推定できること | Material | c | si | Mn | P | S | Ni | Cr | を示した[1-4]。
| sus304 | 0.06 | 0.50 | 0.87 | 0.037 | 0.01 | 8.10 | 18.21 | 本研究では、SUS304 鋼平滑平板疲労試験を室温・大ト 22 _ * 20 * 22 気中(297 K)で行い、塑性変形誘起変態によって生じた a'相量を測定し、それらの結果を応用して疲労による 劣化・損傷を受けた SUS304 鋼の非破壊検査法の可能 性を探ることとした。2-6キリ
Fig. 1 Specimen geometry (unit: mm). 03-5228-86, e-mail: nakasone@rs.kagu.tus.ac.jpて 負と00 11R12*44509TTTTApplied stress range, Ao, MPaSUS304 plates fatigued at RT in air o Fractured outsidegage length 400 m l immund link intal manual mull und 10' 10°10'10- 10°10'10'100Number of load cycles to fracture, N,Fig. 2S-N diagram of SUS304 at room temperature in air.1||----a' volume fraction, Va(VSM), %1.372008000001 2040 60 80 100a' volume fraction, V≪(FS), % Fig. 3 Comparison of values of a volume fraction Vameasured by ferrite scope and those by VSM.伴う試験片平滑平行部のゲージ長 10 mm のひずみの変 化の計測も併せて行った。 2.2 a変態率の測定 - 均一な塑性変形を起こしたと考えられる SUS304 製 平滑材の飽和磁化を検出精度の良い振動試料型磁力計 VSM で測定し、この飽和磁化からa'変態率 Vaの値を 算出した[3][5]。この結果と X 線回折法から求めた Vo. (X-ray)およびフェライトスコープ (FS) V (FS)の読み には図 3 のような良好な直線相関が見出されたことか ら[3][6]、本研究では、測定が容易な FS を用いて平滑 平行部表面における V の分布状態を決定した。すなわ ち、試験片の平滑表面に疲労変形前約 1 mm 間隔に設 定した 27 点の格子点での FS の読み V (FS)に VSM か ら求めた Va.の値と FS の読み V (FS)との関係から得ら840Cumulative strain o Ao=540MPa A Ao%3D580MPa ロ △0600MPa 70-610MPaMaximum a' volume fraction, Va'max) %Naoooo o 。 。 。 。 。10_ 10000 20000 3000040000Number of cycles, N, cycles Fig. 4 Variation of maximum a' volume fraction Va’max withthe number of stress cycles N in fatigued SUS 304 steel plates.れた係数 1.37(図 2 参照)を掛けて求められた値をその 格子点におけるa'変態率 Vaの値とした。3. 実 験 結果 3.1 a'変態率の最大値 Verma と繰返数 N の関係図4に SUS304 平滑平行部中央における Va・の最大値 Varmac の N による変化を示す。Varmac と N の関係は、今 回実験したAo=540、580、600、610 MPa、いずれの応 力レベルでも、図4のように、常に逆 S字状の曲線を 呈した。すなわち、試験開始前の FS の読みは、6フェ ライト量と考えられる 0.3 %程度であったが、第1回目 の応力負荷直後、△0の値に応じた FS の読みの急激な 上昇が見られた。応力負荷後の FS の読みの著しい上昇 は塑性誘起マルテンサイト変態による強磁性a'相の発 生によるもの、すなわち、変態率 V の増加と考えられ る。その後、この Vaの最大値 Varmaxは疲労過程の大部 分でほぼ一定の値を保ち、その値はAG値の増加ととも に 4~28%と急激に増加した。さらに、Virman は、疲労 寿命後期において急激な上昇を示し破断に至った。破 断時の Warmaxの値もAG値の増加とともに増加した。こ のことから Ver.net 値の急激な上昇を捉えることで、疲 労予寿命の推定が可能になると考えられる。 3.2 平滑試験片表面におけるa'変態率 Vの分布 図 5(a)~(d)に、Ao=600 MPa の時の N-0、2000、3000 cycles および試験片破断時 NF4837 cycles の平滑試験片510Va,% 口35-40 330-35 ロ25-30 ■20-25 □15-20 |010-15園5-10 100-5(a) N=0(b) N=2000ΔσFig. 5(c) N=3000 Contour maps of Va in a fatigued SUS304 measured by ferrite scope.Fig. 5表面におけるVの分布を示す。図の横軸は試験片の長 手方向、即ち、荷重負荷方向となっている。 図 5(a) (N=0 cycle)の見掛けのV値は全体的に 0.3~0.4 %の一様な 分布になっているが、これは6フェライト量と考えられ る。試験開始と同時に Vaの値は全体的に上昇し、 N=2000cycles(図 5(b))で中央部に Va=20~25%の高 V領域が現れ、この部分に変形が集中したことが推測 される。N=3000cycles (図 5(c)) で中央部の高 V 領域が さらに広がり、N=3800cycles で中央から少しずれた所 に Vi=32%のV値の非常に高い狭い領域が出現し、そ こから長さ約 200um の続き裂(図 6)が発生して試験片 の破断 (図 5(d))が起こった。破断後の測定から、この 領域では、Vai35~40%となり、室温中の静的引張試験 (破断時で Varauman.16%[1][3]) と比べ、非常に高い V の値を示した。他の試験片でも、Vaが最大値を示した 箇所に約 200μm の続き裂が確認できたことから、供用 中検査等で FS によって Voを測定することによって可 視き裂より小さなき裂の検出が可能になるものと思わ れる。 3.3 a’変態率の平均値 Voyと累積ひずみの関係SUS304 では、ラチェット変形によって、繰返数とと もにひずみが累積する傾向が見られた。図7にVの平 均値 Varauと疲労による累積ひずみの関係を示す。白印av(d) N-483)200μmPhotograph of an edge crack found in a high Va value.Fig. 6Accumulated strain o ao=3540MPa△o=580MPa ロ -600MPa o Ao=610MPa ? Static strainAverage a' volume fraction, Va'av, %2040601Strain, ε, % Fig.7 Variation of average a' volume fraction Varawstatic and cumulative strains.withは、A6=540、580、600、610 MPa の平滑材疲労試験に おける Varavと累積ひずみの関係、黒印は引張試験で得 られた Varauと静的ひずみの関係である。引張試験では、Verroの最大値は約 16%だったが[1][3]、 疲労試験ではラチェット変形によって累積したひずみ によって Varayの値は最大 28%となった。Ao=一定であ っても、累積ひずみによって誘起されるa’相の量は一 方向負荷の場合よりもはるかに多い。従って、FS によ る劣化・損傷の非破壊的検出は一方向負荷による変形511よりも疲労変形のほうが容易になると考えられる。た だし、図7のように、Vauと累積ひずみの関係は、Varaw と静的ひずみの関係とほぼ同じ曲線で表され、静的負 荷、疲労負荷に関わらず、ある一定の変形を受けた場 合には、ほぼ同量のa?相が変態するものと考えられる。4.結言オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304 について、 室温・大気中平滑平板材疲労試験におけるa’相変態率 Vをフェライトスコープによって測定し、V...の繰返数 Nによる変化と試験片表面でのVIの分布を調べ、次の ような結論を得た。 1) 平滑平行部中央での相変態率の最大値 Varma と Nの関係は逆S字状の曲線を呈した。即ち、第1回目 の応力負荷直後の急激な Vormace値の増加、その後の 疲労寿命の大半を占めるほぼ Varmen=一定なプラト 一領域および破断直前の Vama 値の急激な増加の3 領域特性を示した。また、プラトー領域における Varmac の値と破断試験片の破面近傍における Varmax の値は、負荷応力範囲△0の値の増加とともに増加した。 2) V の分布では、疲労の進行とともに試験片中央付近に V値の高い領域が集中する傾向が見られた。このV値の局所化は、寿命後期でさらに顕著となり、 V値が最大となる箇所から長さ約 200 um の小さな 縁き裂が発生して破断を誘発した。この領域での V 値は 35~40%にも達し、室温中の静的引張試験と比べて2倍以上の高い値を示した。 3) 疲労試験では、ラチェット変形によって累積したひ ずみによって、a’相変態率の平均値 Varyは最大28% に達し、引張試験よりも高い値が得られた。ただし、 Varaw と累積ひずみの関係は Vory と静的ひずみの関 係とほぼ同じ曲線で表され、静的負荷、疲労負荷に 関わらず、ある一定の変形を受けた場合には、ほぼ 同量のa’相が変態するものと考えられる。参考文献[1] 中曽根ほか3名、機構論 No.00-17(200)、pp. 573-574. [2] 中曽根ほか3名、機構論 No.010-1(201)、pp. 107-108. [3] 日本 AEM学会、電磁破壊力学調査研究分科会報告書、JSAEM-R-9803、1999; R-9903、2000; R-0005、2001. [4] 中曽根ほか2名、機講論 No.01-16(01)、pp.579-580. [5] J. Menard et al., Advances in Cryogenic Eng., 6, pp.587-589(260). [6] 中曽根ほか3名、日本AEM学会誌、Vol. 9-No. 2 ('01)、pp. 123-130.512“ “SUS304 鋼平滑材の疲労過程における 塑性誘起マルテンサイト変態量の発展“ “中曽根 祐司,Yuji NAKASONE