円筒形炉内構造物に対する評価における未点検範囲の扱いに関するガイドラインの改訂について
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カテゴリ: 第5回
1.緒言
(社)火力原子力発電技術協会(以下、「火原協」と いう)が発行した炉内構造物等点検評価ガイドライ ン(以下、単に「ガイドライン」という)においては、 炉心シュラウド等の円筒形炉内構造物に対する応力 腐食割れを想定した点検規定と、点検の結果欠陥が 検出された場合の欠陥評価の方法が規定されているガイドラインではその使用者が点検範囲を定め、 点検範囲と点検結果を結びつけた欠陥評価を行うこ とで、点検に対する動機付けを行っている。欠陥評 価においては、点検していない範囲(以下、「未点検 範囲」という)を貫通欠陥と仮定した欠陥想定を行わ なければならない。これは最も保守的な想定ではあ るものの、未点検範囲が多くなると過度に保守的に なると考えられる。このため、著者らは簡単な確率論の適用に基づき、 未点検範囲に対するより現実的な欠陥想定法を提案 した「21。その後、火原協ガイドラインを引き継いだ 有限責任中間法人 日本原子力技術協会(以下、「原技 協」という)の炉内構造物等点検評価ガイドライン検討会において、この欠陥想定法を取り入れたガイド ライン改訂版が発行された[3][。検討会において欠 陥想定法をガイドライン化するに当たっては、欠陥 想定法の理論的側面の確認とともに、実機炉心シュ ラウドのひびデータに基づく欠陥想定法の妥当性確 認も合わせて行われた。本報では、未点検範囲に対 する欠陥想定法に関するガイドライン改訂の技術的 根拠について、既報の理論的側面及び実機データに よる確認の概要をまとめるとともに、実機データを 確認した結果をガイドラインの点検及び評価規定に フィードバックしていくことの意義についても合わ せて述べることとする。
2. 未点検範囲に対する評価法の概要 2.1 欠陥想定法の考え方
これまでのガイドラインでは、点検の結果欠陥が 検出された場合の欠陥評価において、点検を実施し ない範囲(未点検部位)を残存断面積に含めず欠陥 と同等に扱い評価を実施することを規定している。 これは欠陥評価において最も保守的な取扱いとなる ため、より適切な保守性を有した未点検範囲の想定 欠陥方法を検討するため、以下に示す想定を新たに
設定し比較する。 ・ケース1:点検実施範囲での欠陥割合と同じ割* 合で、未点検範囲に欠陥を想定する。 ・ケース2:点検実施範囲での欠陥割合に信頼度99%での統計的推定(信頼区間)の上限 値を加えた割合を、全体の欠陥の割合と想定する。 全体の範囲Lに対する点検割合をX、点検した範 囲Li のなかで発見された欠陥長さLc の割合(点検 欠陥比率)をYとした場合に想定される点検範囲全 体に対する欠陥割合(想定欠陥割合)を P (X, Y) とす る。それぞれの想定に基づく欠陥想定を以下のよう に算出する。 1 これまでのガイドラインによる想定欠陥割合:未点検範囲を全て欠陥と想定するため、想定 欠陥割合は点検範囲で発見された欠陥長さに 未点検範囲を加えた長さを、全体の範囲で除し た値となり、式(1) に示す通りとなる。 P(x,y)=(L +(L-L, ))/ L
2 ケース 1 による想定欠陥割合:点検欠陥割合は、点検範囲で発見された欠陥 の割合と等しく、式(2)に示す通りとなる。P(x,y)=Y(2) 3 ケース2による想定欠陥割合:点検数を母集団M、点検範囲(標本数) をN、 Nのうちの欠陥部分をmとした場合の、ある点 検欠陥比率の信頼区間 Ap を式(3)に示す。
想定欠陥割合は、点検欠陥比率Yに信頼度 99% となる信頼区間の上限値を加えたものであり、 7(0.01/2)=2.58、X=N/M、Y=m/N を用いて式(4) に示す通りとなる。
Mは点検時において点検最小範囲をどのよう に考えるかによって決められる。炉心シュラウ ドの目視点検実績では、数 mm~数十 mm のひび が多く確認されていることから、炉心シュラウ ドのガイドラインで目視点検によって検知可能 なSCCによるひび割れを長さ 10mm としてい ることは保守側の適切な設定と考えられる。従 って点検最小範囲を 10mm とし、シュラウド周溶 接線の全周がおよそ 10~15m であることから、 シュラウド全周の 母数 M を (10,000 ~ 15,000/10) ⇒1,000 とする。図1に点検欠陥比率(Y) が 0.5 の場合の点検割合 (X) と想定欠陥割合 (P(X, Y))の関係を、これまでのガ イドラインによる想定(以下ガイドラインの想定) 及び各ケースでの想定別に示す。ガイドラインの想 定は、点検範囲が 0.5 以下の場合、工学的に最も妥 当であるケース2と比べて大きく保守側の想定欠陥 割合を示すことが分かる。ケース 1 は概ねケース2 と同等で合理的と考えられるが、点検割合(X) が非常 に小さい場合は非保守側となる懸念がある。
2.2 新たな欠陥想定法の提案 - 以上の比較結果より、想定欠陥割合のばらつきが 大きくなる点検範囲が小さい領域では想定欠陥比率 を保守的なものとし、想定欠陥割合のばらつきが小 さくなっていく点検割合が大きい領域では想定欠陥 比率をより現実に即したものとするため、想定欠陥 割合を以下に示す直線として提案する。 ・点検割合が 0.5 を超えている場合は、想定欠陥 割合はケース 1 (点検範囲での欠陥割合に等し い)とする。
点検割合が 0.5 未満の場合は、点検割合が 0 の ときの想定欠陥割合を1、点検割合が 0.5 の時の 想定欠陥割合を点検割合での点検欠陥比率として、この間を線形補間する。 提案した直線を図1上に重ねて示す。2.3 実機データによる確認これまでの検討により示した想定欠陥割合の妥当 性を確認するため、実機データとの比較を行った。 実機データは、炉内構造物(シュラウド)点検実績 のうち、欠陥割合が確定できるように点検割合が 100%で、ひびが全周にわたり分散していた実機デー タを用いた。点検の順序による点検欠陥比率の推移 のばらつきを考慮した比較を行うため、シュラウド 円周上の 0°,90° ,180°,270°の各方位から点検
Examination rate of the total area (X) Fig.2 (3) Assumed flaw rate (Case2)を開始し順次時計回りに点検を進めたと仮定した4 ケースの点検欠陥比率の推移を実機データより求め た。図2に点検割合(X)及び点検欠陥比率(Y)に対応し た想定欠陥割合 (P)の関係を、前述した4つの想定毎 に等高線図に示す。また実機データから求めた点検 欠陥比率の推移も、併せて各々の等高線図に示す。 * 実機データは、点検割合 0.2~0.3 では点検欠陥比 率が 0.07~0.4 と大きくばらつくが、点検割合が 0.4 を超えると点検欠陥比率が 0.19~0.28 に収束して いき、最終的な欠陥比率は 0.23 となる。点検割合 0.3 及び 0.8 の場合に、実機データから 求められる各々の想定欠陥割合 (P) の比較を表1に 示す。保守性の確認であるため、4つの方位から点 検を開始した実機データが示す最も小さい点検欠陥
比率を用いて想定欠陥割合(P)を求めた。ものは破壊力学の適用が可能であり確立しているが、 - 点検割合が 0.3 の場合はガイドラインの想定では 実機データがなかったため、最も保守的な仮定をす 過大に、ケース1,2では過小に想定欠陥比率を算 ることで点検・評価を可能としたものである。 出するのに対し、提案の方法では実際の欠陥割合で その後、炉心シュラウド等で SCC を検出し、ガイ ある 0.23 に即した想定欠陥割合が算出できている。 ドラインを適用して欠陥評価を行い、評価結果に基 また、点検割合が 0.8 の場合においてもほぼ同等のづき継続使用している実機プラントのデータが得ら 想定欠陥割合を示すことが分かった。れてきていることから、2.で述べたように、未点検範囲に対する評価法を開発し、実機データとの対照 Table 1 The Assumed Flaw Rate comparison based onによる確認を行って、ガイドラインにおける規定を the measured flaw rate Examination Measured flawl Assumed (calculated) flaw rate(P)改訂した。 rate(X) | rate(min.)(Y) | Previous| case1 | Case2 | Proposal このように実機データをガイドラインにフィード 0.3 1 0 .07 0.72 T 0.07 0.10 | 0.44 0.8 | 0.19 | 0.35 T 0.19 T 0.21 0.19バックさせることは、3.1で述べたとおり、実機デ ータの蓄積とともにガイドラインのロジックをより高度な予測に基づくものへと段階的にシフトさせる 3. 実機データのガイドラインへの反映ことにつながる意義を有すると考えられる。 21 ガイドラインの一如内斗→→ 3.実機データのガイドラインへの反映
3.1 ガイドラインの一般的考え方 火原協「炉内構造物等点検評価ガイドラインにつ いて」によれば、各部位に対する個別ガイドライン における点検時期決定のロジックには類型化できる いくつかのパターンが存在している。それらのパタ ーンとは、次のようなものである5]。 * 1 想定欠陥の進展を解析評価した上で点検時期を決定したパターン 2 試験データと運転実績を踏まえて点検時期を決定したパターン 3限定された試験データに基づき点検時期を決定したパターン すなわち、SCC 進展データ等の知見が比較的多く 得られている場合には1のように解析評価に基づく 点検時期決定を行い、経年変化評価手法は確立され ているが十分な試験データがない場合には3のよう に許容基準に対して大きな余裕を取って管理基準を 定め、その管理基準に基づき点検時期決定を行って いる。2のパターンはそれらの中間的な場合である。 知見の充実に伴って、3から2、2から1のパター ンへとガイドラインのロジックをシフトしていくこ とで、より高度な予測に基づく点検・評価が可能に なると考えられる。3.2 実機データのフィードバックの意義 * 本報で述べた未点検範囲に対する評価法について 言えば、当初は3.1で述べたガイドラインのロジッ クのパターン3に相当しており、欠陥想定手法その4.結言円筒形炉内構造物の未点検範囲に対する欠陥想定 法について、これまでのガイドラインにおける保守 的想定を見直し、より現実的な欠陥想定法を取り入 れた改訂を行うとともに、実機データによる確認結 果をガイドラインに反映することの意義について考 察した。今後も点検・評価技術や実機データ等、最 新知見を反映したガイドラインの見直しを引き続き 行っていくことが重要である。5. 謝辞本件は炉内構造物等ガイドライン検討会でご審議頂い たものであり、検討会各位のご指導、ご助言に感謝する。参考文献[1] 火原協 炉内構造物等点検評価ガイドライン【炉心シュラウド】 初版~第3版 など [2] 堂崎,馬渕,伊東「円筒形炉内構造物の欠陥評価に おける未点検範囲に対する欠陥想定手法の検討」JSME M&M 2007, No.224 [3] 原技協 炉内構造物等点検評価ガイドライン【炉心シュラウド】 第4版 [4] 原技協 炉内構造物等点検評価ガイドライン【シ 1ュラウドサポート】第3版 [5] 火原協 炉内構造物等点検評価ガイドラインについて 初版及び第2版
“ “?円筒形炉内構造物に対する評価における 未点検範囲の扱いに関するガイドラインの改訂について“ “堂崎 浩二,Koji DOZAKI,伊東 敬,Takashi ITO,馬渕 靖宏,Yasuhiro MABUCHI
(社)火力原子力発電技術協会(以下、「火原協」と いう)が発行した炉内構造物等点検評価ガイドライ ン(以下、単に「ガイドライン」という)においては、 炉心シュラウド等の円筒形炉内構造物に対する応力 腐食割れを想定した点検規定と、点検の結果欠陥が 検出された場合の欠陥評価の方法が規定されているガイドラインではその使用者が点検範囲を定め、 点検範囲と点検結果を結びつけた欠陥評価を行うこ とで、点検に対する動機付けを行っている。欠陥評 価においては、点検していない範囲(以下、「未点検 範囲」という)を貫通欠陥と仮定した欠陥想定を行わ なければならない。これは最も保守的な想定ではあ るものの、未点検範囲が多くなると過度に保守的に なると考えられる。このため、著者らは簡単な確率論の適用に基づき、 未点検範囲に対するより現実的な欠陥想定法を提案 した「21。その後、火原協ガイドラインを引き継いだ 有限責任中間法人 日本原子力技術協会(以下、「原技 協」という)の炉内構造物等点検評価ガイドライン検討会において、この欠陥想定法を取り入れたガイド ライン改訂版が発行された[3][。検討会において欠 陥想定法をガイドライン化するに当たっては、欠陥 想定法の理論的側面の確認とともに、実機炉心シュ ラウドのひびデータに基づく欠陥想定法の妥当性確 認も合わせて行われた。本報では、未点検範囲に対 する欠陥想定法に関するガイドライン改訂の技術的 根拠について、既報の理論的側面及び実機データに よる確認の概要をまとめるとともに、実機データを 確認した結果をガイドラインの点検及び評価規定に フィードバックしていくことの意義についても合わ せて述べることとする。
2. 未点検範囲に対する評価法の概要 2.1 欠陥想定法の考え方
これまでのガイドラインでは、点検の結果欠陥が 検出された場合の欠陥評価において、点検を実施し ない範囲(未点検部位)を残存断面積に含めず欠陥 と同等に扱い評価を実施することを規定している。 これは欠陥評価において最も保守的な取扱いとなる ため、より適切な保守性を有した未点検範囲の想定 欠陥方法を検討するため、以下に示す想定を新たに
設定し比較する。 ・ケース1:点検実施範囲での欠陥割合と同じ割* 合で、未点検範囲に欠陥を想定する。 ・ケース2:点検実施範囲での欠陥割合に信頼度99%での統計的推定(信頼区間)の上限 値を加えた割合を、全体の欠陥の割合と想定する。 全体の範囲Lに対する点検割合をX、点検した範 囲Li のなかで発見された欠陥長さLc の割合(点検 欠陥比率)をYとした場合に想定される点検範囲全 体に対する欠陥割合(想定欠陥割合)を P (X, Y) とす る。それぞれの想定に基づく欠陥想定を以下のよう に算出する。 1 これまでのガイドラインによる想定欠陥割合:未点検範囲を全て欠陥と想定するため、想定 欠陥割合は点検範囲で発見された欠陥長さに 未点検範囲を加えた長さを、全体の範囲で除し た値となり、式(1) に示す通りとなる。 P(x,y)=(L +(L-L, ))/ L
2 ケース 1 による想定欠陥割合:点検欠陥割合は、点検範囲で発見された欠陥 の割合と等しく、式(2)に示す通りとなる。P(x,y)=Y(2) 3 ケース2による想定欠陥割合:点検数を母集団M、点検範囲(標本数) をN、 Nのうちの欠陥部分をmとした場合の、ある点 検欠陥比率の信頼区間 Ap を式(3)に示す。
想定欠陥割合は、点検欠陥比率Yに信頼度 99% となる信頼区間の上限値を加えたものであり、 7(0.01/2)=2.58、X=N/M、Y=m/N を用いて式(4) に示す通りとなる。
Mは点検時において点検最小範囲をどのよう に考えるかによって決められる。炉心シュラウ ドの目視点検実績では、数 mm~数十 mm のひび が多く確認されていることから、炉心シュラウ ドのガイドラインで目視点検によって検知可能 なSCCによるひび割れを長さ 10mm としてい ることは保守側の適切な設定と考えられる。従 って点検最小範囲を 10mm とし、シュラウド周溶 接線の全周がおよそ 10~15m であることから、 シュラウド全周の 母数 M を (10,000 ~ 15,000/10) ⇒1,000 とする。図1に点検欠陥比率(Y) が 0.5 の場合の点検割合 (X) と想定欠陥割合 (P(X, Y))の関係を、これまでのガ イドラインによる想定(以下ガイドラインの想定) 及び各ケースでの想定別に示す。ガイドラインの想 定は、点検範囲が 0.5 以下の場合、工学的に最も妥 当であるケース2と比べて大きく保守側の想定欠陥 割合を示すことが分かる。ケース 1 は概ねケース2 と同等で合理的と考えられるが、点検割合(X) が非常 に小さい場合は非保守側となる懸念がある。
2.2 新たな欠陥想定法の提案 - 以上の比較結果より、想定欠陥割合のばらつきが 大きくなる点検範囲が小さい領域では想定欠陥比率 を保守的なものとし、想定欠陥割合のばらつきが小 さくなっていく点検割合が大きい領域では想定欠陥 比率をより現実に即したものとするため、想定欠陥 割合を以下に示す直線として提案する。 ・点検割合が 0.5 を超えている場合は、想定欠陥 割合はケース 1 (点検範囲での欠陥割合に等し い)とする。
点検割合が 0.5 未満の場合は、点検割合が 0 の ときの想定欠陥割合を1、点検割合が 0.5 の時の 想定欠陥割合を点検割合での点検欠陥比率として、この間を線形補間する。 提案した直線を図1上に重ねて示す。2.3 実機データによる確認これまでの検討により示した想定欠陥割合の妥当 性を確認するため、実機データとの比較を行った。 実機データは、炉内構造物(シュラウド)点検実績 のうち、欠陥割合が確定できるように点検割合が 100%で、ひびが全周にわたり分散していた実機デー タを用いた。点検の順序による点検欠陥比率の推移 のばらつきを考慮した比較を行うため、シュラウド 円周上の 0°,90° ,180°,270°の各方位から点検
Examination rate of the total area (X) Fig.2 (3) Assumed flaw rate (Case2)を開始し順次時計回りに点検を進めたと仮定した4 ケースの点検欠陥比率の推移を実機データより求め た。図2に点検割合(X)及び点検欠陥比率(Y)に対応し た想定欠陥割合 (P)の関係を、前述した4つの想定毎 に等高線図に示す。また実機データから求めた点検 欠陥比率の推移も、併せて各々の等高線図に示す。 * 実機データは、点検割合 0.2~0.3 では点検欠陥比 率が 0.07~0.4 と大きくばらつくが、点検割合が 0.4 を超えると点検欠陥比率が 0.19~0.28 に収束して いき、最終的な欠陥比率は 0.23 となる。点検割合 0.3 及び 0.8 の場合に、実機データから 求められる各々の想定欠陥割合 (P) の比較を表1に 示す。保守性の確認であるため、4つの方位から点 検を開始した実機データが示す最も小さい点検欠陥
比率を用いて想定欠陥割合(P)を求めた。ものは破壊力学の適用が可能であり確立しているが、 - 点検割合が 0.3 の場合はガイドラインの想定では 実機データがなかったため、最も保守的な仮定をす 過大に、ケース1,2では過小に想定欠陥比率を算 ることで点検・評価を可能としたものである。 出するのに対し、提案の方法では実際の欠陥割合で その後、炉心シュラウド等で SCC を検出し、ガイ ある 0.23 に即した想定欠陥割合が算出できている。 ドラインを適用して欠陥評価を行い、評価結果に基 また、点検割合が 0.8 の場合においてもほぼ同等のづき継続使用している実機プラントのデータが得ら 想定欠陥割合を示すことが分かった。れてきていることから、2.で述べたように、未点検範囲に対する評価法を開発し、実機データとの対照 Table 1 The Assumed Flaw Rate comparison based onによる確認を行って、ガイドラインにおける規定を the measured flaw rate Examination Measured flawl Assumed (calculated) flaw rate(P)改訂した。 rate(X) | rate(min.)(Y) | Previous| case1 | Case2 | Proposal このように実機データをガイドラインにフィード 0.3 1 0 .07 0.72 T 0.07 0.10 | 0.44 0.8 | 0.19 | 0.35 T 0.19 T 0.21 0.19バックさせることは、3.1で述べたとおり、実機デ ータの蓄積とともにガイドラインのロジックをより高度な予測に基づくものへと段階的にシフトさせる 3. 実機データのガイドラインへの反映ことにつながる意義を有すると考えられる。 21 ガイドラインの一如内斗→→ 3.実機データのガイドラインへの反映
3.1 ガイドラインの一般的考え方 火原協「炉内構造物等点検評価ガイドラインにつ いて」によれば、各部位に対する個別ガイドライン における点検時期決定のロジックには類型化できる いくつかのパターンが存在している。それらのパタ ーンとは、次のようなものである5]。 * 1 想定欠陥の進展を解析評価した上で点検時期を決定したパターン 2 試験データと運転実績を踏まえて点検時期を決定したパターン 3限定された試験データに基づき点検時期を決定したパターン すなわち、SCC 進展データ等の知見が比較的多く 得られている場合には1のように解析評価に基づく 点検時期決定を行い、経年変化評価手法は確立され ているが十分な試験データがない場合には3のよう に許容基準に対して大きな余裕を取って管理基準を 定め、その管理基準に基づき点検時期決定を行って いる。2のパターンはそれらの中間的な場合である。 知見の充実に伴って、3から2、2から1のパター ンへとガイドラインのロジックをシフトしていくこ とで、より高度な予測に基づく点検・評価が可能に なると考えられる。3.2 実機データのフィードバックの意義 * 本報で述べた未点検範囲に対する評価法について 言えば、当初は3.1で述べたガイドラインのロジッ クのパターン3に相当しており、欠陥想定手法その4.結言円筒形炉内構造物の未点検範囲に対する欠陥想定 法について、これまでのガイドラインにおける保守 的想定を見直し、より現実的な欠陥想定法を取り入 れた改訂を行うとともに、実機データによる確認結 果をガイドラインに反映することの意義について考 察した。今後も点検・評価技術や実機データ等、最 新知見を反映したガイドラインの見直しを引き続き 行っていくことが重要である。5. 謝辞本件は炉内構造物等ガイドライン検討会でご審議頂い たものであり、検討会各位のご指導、ご助言に感謝する。参考文献[1] 火原協 炉内構造物等点検評価ガイドライン【炉心シュラウド】 初版~第3版 など [2] 堂崎,馬渕,伊東「円筒形炉内構造物の欠陥評価に おける未点検範囲に対する欠陥想定手法の検討」JSME M&M 2007, No.224 [3] 原技協 炉内構造物等点検評価ガイドライン【炉心シュラウド】 第4版 [4] 原技協 炉内構造物等点検評価ガイドライン【シ 1ュラウドサポート】第3版 [5] 火原協 炉内構造物等点検評価ガイドラインについて 初版及び第2版
“ “?円筒形炉内構造物に対する評価における 未点検範囲の扱いに関するガイドラインの改訂について“ “堂崎 浩二,Koji DOZAKI,伊東 敬,Takashi ITO,馬渕 靖宏,Yasuhiro MABUCHI