炉内構造物等点検評価ガイドラインにおける補修・取替・予防保全の考え方について

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
て開発していたが、その記載内容の類似性から全体構 近年、国内外の軽水炉の炉内構造物に応力腐食割れ 造と体系化について検討し、その検討結果から「検討 (以下、SCC と言う)による損傷事例が散見されるよ対象機器」「技術評価」「保全措置」という階層構造を うになった。これまでは損傷が発見される都度、そのなしていることを確認した。また、この3つの要素は、 対応が検討されていたが、対象が炉内構造物という安 検討対象とする機器の選択し、その機器に損傷の発 全上重要な機器であることから、炉内構造物の検査の生・進展を考慮した構造強度解析等を実施し、その結 あり方が注目されるところとなった。果を踏まえて、当該機器の安全機能、構造強度を維持 上記のような状況に鑑み、国内外の知見、損傷事例できるように点検時期や補修の要否等の保全措置を決 などを参考に、今後の国内軽水炉における炉内点検の定するという保全計画立案の流れであることを確認し あり方を広く一般に提言することを目的とした炉内構 た。現在、点検評価ガイドラインの一部は、日本機械 造物点検等のガイドラインを以下の方針で検討・策定 学会の維持規格に取り込まれるとともに、国の技術評 してきている。価が終了し、供用中の炉内構造物等に対する技術基準 1. 経年変化が想定される炉内構造物等を対象とする。 への適合性確認に使用されており、まさに、炉内構造 1. 経年変化の発生・進展を予測し、その結果に基づ物等の保全計画立案の基礎となっている。き炉内構造物の安全機能が常に確保されるように点検評価ガイドラインは既に炉内構造物の保全計画 点検時期を定める。(点検計画)の基礎となっている。今後、その点検の 欠陥が発見された場合の構造強度・機能を評価す。 結果から補修等が必要となった場合や予防保全を実施る方法などに関する標準的なルールを策定する。 した場合の運用を明確にし、適用していくことが重要 ・ これらのルールの技術的根拠や合理性を明示する。 となってきており、炉内構造物点検評価ガイドライン - 策定されたガイドラインは、炉内構造物等を構成し、 検討会において、補修・取替・予防保全に関する基本 ている機器毎に点検評価ガイドライン(個別点検、一 的な考え方を含めて体系化しているところである。 一般点検)、補修工法ガイドライン、及び予防保全ガイド 本稿では、この炉内構造物等に係る補修・取替・予 ラインから構成されている (Fig.1) 111。防保全に関する基本的な考え方について紹介する。
個別点檢 ガイドライン点検評価 ガイドライン一般点検 ガイドライン」| 炉内構造物 |等点検評価 ガイドライン|補修工法 | ガイドライン予防保全工法 ガイドライン|ガイドラインFig.3 保全措置及び評価の体系と補修・取替・予防保全の位置付け題在Fig.1 ガイドラインの全体構成供用開始後における対応取替 2. 補修・取替・予防保全の位置付け| 予防保全補修 炉内構造物等点検評価ガイドラインは、原子炉の設事象 計からの時間軸で考えると、運転開始後の保全措置の・き裂発生進展・減府発生進展 実施において活用され、その保全措置の中に補修・取 替・予防保全が位置付けられる(Fig.2)。頭在化 保全措置及び評価の体系における補修・取替・予防検出限界 保全の位置付けの詳細を Fig.3 に示す。点検計画から実 施・評価までの保全措置の内、補修・取替・予防保全一時間経過 は、点検及び評価により経年劣化事象が顕在化する前潜在 後のいずれの場合においても適宜実施される。補修に供用開始 ついては、点検において経年劣化事象の顕在化後に実 施される。取替については、経年劣化事象の顕在化にFig. 4 時間軸における補修・取替・予防保全 係らず点検後、もしくは定められた期間の供用後に実 施される。また、予防保全については、経年劣化事象 が顕在化する前に実施される。以上の補修・取替・予3. 補修・取替・予防保全の考え方 防保全の実施時期を時間軸に対して整理すると Fig.4 3.1 補修・取替・予防保全の分類と適用 のようになる。補修・取替・予防保全は以下のように定義される。補修:経年変化事象が顕在化した場合、既設構造物を 運転開始取替ることなく、経年変化事象発生部位を何ら 設計→製造/据付中 運転 → 保全措置 丁点検かの方法で補強又は、経年変化事象の進行を抑補修:経年変化事象が顕在化した場合、既設構造物を 運転開始取替ることなく、経年変化事象発生部位を何ら 設計製造/据付 運転 → 保全措置かの方法で補強又は、経年変化事象の進行を抑 一評価制するために行う保全措置のこと。補修方法は、 「設計・建設段階) 「維持段階の)機械的補修と溶接等による補修に分類できる。 しの規格を適用 【規格を適用」一取替取替:経年変化事象が顕在化した場合、又は予防保全 JSME 設計・建設規格 JSME 維持規格 原技協ガイドライン予防保全として既設構造物を新品と交換する保全措置のこと。ガイドラインにおいては、改造(材質変 Fig.2 炉内構造物等点検評価ガイドラインの適用範囲更、寸法変更等)も含む。 と補修・取替・予防保全の位置づけ予防保全:損傷事象を特定し、その事象の要因を緩和するために実施する保全措置のこと。予防保全 炉内構造物等点検評価ガイドラインの適用範囲 と補修・取替・予防保全の位置づけ検補- 545 -経年変化事象)(経年変化事象 頭在化前 頭在化後 き裂減肉無してき裂/減肉有り- - - 証継続使用継続使用 評価「点檢」評価、總統使用評画人??使用→再点檢再点検補修取替予防保全取替対応(補修/取替 予防保全)供用開始後における対応取替 予防保全 補修事象 ・き裂発生進展 ・減納発生進展顯在化検出限界一時間経過1 潜在3 題在 供用開始なる。経年変化事象が顕在化した場合、又は予防保全 として既設構造物を新品と交換する保全措置の ニズムを支配する基本的な因子や現場施工の諸条件を 方法は、材料改善(取替・クラッディング)、応 れらを規定するものとする。 力改善、及び環境緩和に分類できる。上記の考え方を踏まえ、ガイドラインにおいては、 また、補修・取替・予防保全を適用する部位は、要 1適用の効果、2前提条件、3施工部位、1使用装置、 求される機能(構造強度機能、シール機能、その他の 5施工手順・要領、6オペレータ、1その他注意事項 安全機能)に分けられ、その機能を満足するための補を規定している。 修・取替・予防保全工法ガイドラインを適用する。具体的に炉心シュラウドについて考えると、炉心シ 3.3 補修・取替・予防保全工法適用後の点検 ュラウドの機能としては、構造強度強度に加え、その 12.でも述べたが、補修・取替・予防保全は保全措 他安全機能として、炉心支持、制御棒挿入性、炉心冷 置の一部であり、適用した場合には、点検計画にフィ 却材流路の確保、及び事故時炉心再冠水機能が要求さードバックする事が重要である。フィードバックする れ、各々の機能を損なう欠陥が生じた場合には、この際には、適用した工法応じた点検を実施する必要があ 機能を回復するためのガイドラインを適用することとる。具体的には、以下のように考えられる(Fig.5)。・ 元の状態と同じもしくは同等の場合は、元の検査に戻ることとする。 3.2 ガイドラインにおいて規定すべき項目元の状態と相違がある場合は、その補修後の検査 補修工法、予防保全工法は、ある特定の現象/メカニ に ついては、別途定める必要がある。 ズムを利用し、被施工部に一定の効果を得るものであ. 元の状態よりも改善される場合は、何らかのイン り、工法の効果を確実に得るためには、その現象メカセンティブが与えられるべきである。 ニズムを支配する基本的な因子や現場施工の諸条件を 現在、予防保全に関して、点検周期の延伸等のインセ コントロールする必要がある。工法をガイドライン化 ンティブは付与されるまでには至っておらず(点検周 する上で、すべての工法に共通した基本因子(独立) 期の短縮要求の対象外となることに使用されている)、 を特定できれば、融通性の高い規定とする事ができる今後の課題である。 が、それは一般に容易ではないことから、以下の3つ の考え方を取り入れて、ガイドラインを規定すること《工法の種類》《施工後の扱い》 としている。 1.前提条件狭義の取替 「元の状態 元の検査(評価)に、 開発された工法は、施工対象等を事前に想定し、 開発されている。この前提条件を設けることにより予防保全(取替) ||検査(評価)を変 数多くの支配因子を固定する事ができる。たとえば、例)異材取替一元の状態、更(例:検査間隔 を改善の延伸) 炉内構造物への施工を考えた場合、定期検査中に実予防保全(補修)| 施することから数十度の水中、対象はステンレス鋼例)ピーニング元の検査(評価)に かニッケル基合金とすることである。|欠陥除去補修 |元の状態 ●戻る(必要に応じ+Yaの扱いを補修ガイ例)欠陥除去と同等 II. 基本支配因子肉盛溶接ドラインで規定) 前提条件の下、その他の支配因子を規定するとと補修後の検査(評価) もに、その基本となる支配因子を変化させ、その変「欠陥残留補修 |元の状態 二〉を補修ガイドライン一と相違 化範囲においてモックアップ試験を実施して工法の151) WOL,で規定封止溶接 有効性を確認すれば、その範囲内で当該工法を実機 に適用できるものとする。Fig.5 工法の分類と施工後の扱い II. 施工手順・要領等の規定事項上記の支配因子を規定しても、工法の有効性を確 認する試験と同じ施工手順や要領などの支配因子に影響する必要不可欠な最小限の条件を明確にし、そ 数多くの支配因子を固定する事ができる。たとえば、 炉内構造物への施工を考えた場合、定期検査中に実 認する試験と同じ施工手順や要領などの支配 影響する必要不可欠な最小限の条件を明確に戻る取替例)配管取替一と同じ補修狭義の補修一取替補修一狭義の補修一狭義の取替 「元の状態 - 元の検査(評価)に戻る 例)配管取替一と同じ 替 予防保全(取替) |検査(評価)を変 例)異材取替元の状態 A更(例:検査間隔 を改善の延伸) 予防保全(補修)| 例)ピーニング元の検査(評価)に 欠陥除去補修 |元の状態 戻る(必要に応じ+ 例)欠陥除去+ と一 と同等 a の扱いを補修ガイ 肉盛溶接ドラインで規定)補修後の検査(評価) 欠残留補修元の状態 二〉を補修ガイドライン 151) WOL, と相違で規定 封止溶接 - 546 - これまで炉内構造物等の点検評価ガイドラインに関 ては、日本機械学会の維持規格に取り込まれるとと に、国の技術評価を受け、現在、各プラントの保全 画立案の基礎となっている。今後の保全措置におい は、点検後の補修・取替・予防保全を実施した構造 に対する点検が重要になってくることを鑑み、炉内 造物等点検評価ガイドラインにおける補修・取替・4. 結言これまで炉内構造物等の点検評価ガイドラインに関 しては、日本機械学会の維持規格に取り込まれるとと もに、国の技術評価を受け、現在、各プラントの保全 計画立案の基礎となっている。今後の保全措置におい ては、点検後の補修・取替・予防保全を実施した構造 物に対する点検が重要になってくることを鑑み、炉内 構造物等点検評価ガイドラインにおける補修・取替・ 予防保全の位置付け、及びその考え方について整理した。現在、新たに補修・予防保全工法ガイドラインが制 定された場合においても、技術基準の適合性確認が必 要となる工法においては、タイムリーな施工ができて いないことから、今後は、新技術をよりタイムリーに 適用できるようにするための課題を満足する規定項目 など、ガイドラインのあるべき姿にすることに加え、 より実用的なものとすることに対する検討を実施する 必要がある。謝辞本稿は炉内構造物等点検評価ガイドライン検討会に おいて検討されているものである。検討会の野本委員 長を始め、多くの委員による活発な議論のもと検討さ れた結果を報告させて頂くことに感謝する。参考文献[1] 炉内構造物等点検評価ガイドラインについて(第2版) 火力原子力発電技術協会- 547 -“ “炉内構造物等点検評価ガイドラインにおける 補修・取替・予防保全の考え方について“ “坂下 彰浩,Akihiro SAKASHITA,岡田 亮兵,Ryohei OKADA,吉田 裕彦,Yasuhiko YOSHIDA,木村 賢之,Kenji KIMURA,堂崎 浩二,Koji DOZAKI
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