PD資格試験開始から2年の実施状況
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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
(財)電力中央研究所は原子力発電プラントの信頼性向 上への貢献を目的に, 平成17年11月に材料科学研究所 に PD センターを設立し,電力, (財)発電設備技術検査協 会及びメーカーなどの協力を得ながら PD 試験実施の体 制作りを進め, 平成18年3月から日本非破壊検査協会規 格 NDIS 06032005 の附属書に従った軽水型原子力発電所 のオーステナイト系ステンレス鋼配管溶接部のき裂深さ測 一定の PD 資格試験を開始した。 - 昨年は PD センターが実施した第1期から第3期までの PD 資格試験の結果を報告した[1]。本報告では, PD センターで実施した第 4, 5期 PD 資格 試験の結果を報告するとともに,これまで実施した計 18 回 の PD 資格試験を振り返り, PD 資格試験開始から2年の実 施状況と試験結果の傾向について報告する。
2. 第4,5期の PD 資格試験実施結果 2.1 受験者について
PD センターは第4期試験として平成 19 年7月から平成 19年8月までに3回, 第5期試験として平成 20年1月か ら平成 20 年3月までに3回, 計6回の PD 資格試験を行 った。この間の受験者は 10 名で, 再受験を加えた延べ受 験者数は 13 名である。このうち合格基準に達した方は 5 名であり, 第1期からの合格者の累計は 22 名で, 受験者 数あたりの合格率は 61%である。 合格者のうち初めての受連絡先:電力中央研究所材料科学研究所 PD センター, * 〒240-0196 神奈川県 横須賀市長坂 2-6-1 ,http://criepi.denken.or.jp/jp/pd/index.html験で合格した方は1名, 再受験で合格した方は4名である。 表1は初回受験合格者数と再試験合格者数を示している。 期を重ねるにつれ初回試験での合格率が低下しているが, 再試験合格確立は安定している。このことは以下の2つに よると推測している。1) UTによるSCC 深さ測定に対して各社の教育システム が機能するようになってきた * 2) 再試験受験者は初回試験で 10 体の SCC 試験体の 探傷を経験し, PD 研修機関や自社でトレーニングを受け, SCC 深さ測定の技術が向上した。 2)に関しては、 PD 資格試験実施後のアンケートで「SCCを 探傷する機会が少なく, 試験中に多くのことを学べ, スキ ルアップできた」という感想が多く見られることからもうかが い知ることが出来る。表 1 初回試験合格者数と再試験合格者数初回試?初回試験での再試映再試験での合格者数合格率(%)合格者数合格率(%)第1期第1期第2期第2期100第3期第3期66第4期第4期75第5期第5期50図1に第1期から5期の受験者の RMSE 値と試験体一 体あたりの平均探傷時間との関係を示す。一試験体あたり の深さ測定に要する探傷から解析・判定には 2~3 時間を前回, “慎重な探傷を怠った結果, 測定値一方, 不合格者の方々には 2 つの傾向が見られる。図 3 召えて下回った」という理由のみでの不合格 中の示している(A)というグループは慎重な探傷を怠った 数名いらっしゃるという”という報告[1]により, 結果, 測定値が「4.4mm を超えて下回った」という理由の が慎重な探傷を行っている現われであるとみでの不合格になった方々のグループである。また, (B)と 費やしている。前回, “慎重な探傷を怠った結果, 測定値 が「4.4mm を超えて下回った」という理由のみでの不合格 になった方が数名いらっしゃるという”という報告[1]により, 受験者の方々が慎重な探傷を行っている現われであると 考えられる。また, 第 4, 5 期でのほとんどの受験者の方々 の RMSEは4以下であり, 全体的に技術が向上しているこの RMSEは4 とがわかる。合格者 (第1-3期) 不合格者(第1-3期)+ OX合格者 (第4,5期) 不合格者 (第4.5期)RMSE (mm)textRMSE=3.2 (mm)---+-200200100 平均探傷時間 (min.) 平均探傷時間 (min.)図1 平均探傷時間と RMSE の関係RMSE (mm)2 に第 4, 5 期における再受験の方の RMSE 値の変図 2に第 4, 5 期における再受験の方の RMSE 値の変 化(再試験のRMSEを基準として規格化)を示す。再受験合 格者の方は目覚しく探傷技術が向上したことが読み取れ平均誤差 (mm)図 3 全受験者の平均誤差と RMSE の関係RMSEの比 [(新規受験) (再受験]新規」再|受験者A新規再B規 再「新規再 「新規」再 | 受験者の | 受験者D「受E | 受験者F【第4.5%)SCC出曲部のエコート図2 第 4,5期での再受験者の RMSE の変化(再受験の RMSE を1として規格化。■:合格,““:不合格)開口部エコー2.1 試験結果の傾向について図3は全受験者の平均誤差と RMSE の関係を示してい図.4 SCC き裂深さ測定における各 る。図3からほとんどの合格者の平均誤差は±1以内であ り,合格者の方々の SCC 深さ測定技術の高さがわかる。 2.3 受験者の年齢分布ついて 試験結果の傾向について は全受験者の平均誤差と RMSE の関係を示してい 3からほとんどの合格者の平均誤差は±1 以内であ 各者の方々の SCC 深さ測定技術の高さがわかる。 一方, 不合格者の方々には 2 つの傾向が見られる。 図 3 中の示している(A)というグループは慎重な探傷を怠った 結果, 測定値が「4.4mm を超えて下回った」という理由の みでの不合格になった方々のグループである。また, (B)と いうグループは「SCC 先端を特定する手順或いは技術に 不備がある」受験者の方々のグループである。つまり,母 材と溶接部の境界面エコーの判別手段或いは技術が不 十分なケースにあたる。図4にき裂深さ測定において出現 する各種のエコーの起源を示しているが,(B)グループの 方々は, 端部探しで疑心暗鬼になり, 全てのエコーが端部| エコーに見えてしまうことにより、正確な測定が行えず, 合 格できなったと考えられる。 SCC の先端エコーと溶接境界 部エコーの判別手法については様々な方法があるが,確 信のおける手法を選定し受験前に実践的な訓練を納得行 くまで行う必要がある。 、 ム 以円九りAUN LA J ループは慎重な探傷を怠った -超えて下回った」という理由の このグループである。また, (B)と 号を特定する手順或いは技術にのグループである。つまり,母 一の判別手段或いは技術が不 4にき裂深さ測定において出現 を示しているが, (B)グループの 青鬼になり, 全てのエコーが端部 より, 正確な測定が行えず,合 SCC の先端エコーと溶接境界 いては様々な方法があるが,確 受験前に実践的な訓練を納得行合格者(第1-5期) X 不合格者(第1-5期)X(B)..- RMSE = 3.2 mm04-20 2 46平均誤差 (mm) -7図5に全受験者年齢分布を示している(年齢は 2008年 5月1日現在)。 図 5(a)は全受験者と全合格者の年齢分布 を示しており, 30 歳代から 50 歳代の方がまんべんなくPD 資格試験に合格されていることがわかる。 図 5(b)は全受験 者と初回試験での合格者の年齢分布を示しており, 初回 試験での 45 歳以上の方々の合格率が低いことがわかる。 45 歳以上の初回試験での合格者(図中の*印)のお二人 は共に従来手法(A スコープのみ)による手順書によって合 格している。つまり, 45 歳以上の初回試験受験者で従来 手法とフェーズドアレイ装置との組み合わせた手順書で合 格された方はいらっしゃらない。一方, 44 歳以下の初回試 験での合格者の9名の方のうち8名が従来手法とフェーズ ドアレイ装置との組み合わせた手順書で合格されている。 フェーズドアレイ手法は比較的新しい手法であり, 44 歳以 下の技術者は UT 技術習得はじめからフェーズドアレイ装 置に慣れ親しんでいることも一因かと思われる。 図 5(c)は 再受験者とその合格者の年齢分布を示している。 45 歳未 満の受験者の再受験合格率が比較的高いことがわかる。3. 結言PD 資格試験は平成 18年3月の開始から2年が経過し, 計 18 回の試験が実施され,合格基準をクリアした方は 22 名となった。今後とも PD センターは、 公平(中立), 公正か つ透明性を堅持して PD 資格試験の運営と試験の実施を 行い, 原子力発電用機器に対する非破壊検査の信頼性 向上に貢献していくことを目指して活動いたします。試験 の結果などの情報に関しても,適宜電力中央研究所材料 科学 研 究 所 PD センター ホームページ (http://criepi.denken.or.jp/jp/pd/index.html)や学会等を 通じて公開してまいります。参考文献 [1] 笹原,直本,秀,神戸,“PD 資格試験開始から一年の実施状況”第4回保全学会予稿集, 福井, 2007.人数130~341140aa格者 45~491 50~54|@usa格者 55~59)年齡(a) 全受験者と全合格者人数るでの合格しのみ回は初回での 合も初回での 合格者454050-54年齢(6) 全受験者と初回試験合格者人数ら6Pでの も再受験を再受験でのらぼ合格も再受験も再受験も両受験受験での 合格者55~59年齢(c) 再試験受験者と再試験合格者 図.5 受験者の年齢分布(2008.5.1 現在)図.5a0“ “PD 資格試験開始から2年の実施状況 “ “直本 保,Tamotsu JIKIMOTO,笹原 利彦,Toshihiko SASAHARA,秀 耕一郎,Koichiro HIDE
(財)電力中央研究所は原子力発電プラントの信頼性向 上への貢献を目的に, 平成17年11月に材料科学研究所 に PD センターを設立し,電力, (財)発電設備技術検査協 会及びメーカーなどの協力を得ながら PD 試験実施の体 制作りを進め, 平成18年3月から日本非破壊検査協会規 格 NDIS 06032005 の附属書に従った軽水型原子力発電所 のオーステナイト系ステンレス鋼配管溶接部のき裂深さ測 一定の PD 資格試験を開始した。 - 昨年は PD センターが実施した第1期から第3期までの PD 資格試験の結果を報告した[1]。本報告では, PD センターで実施した第 4, 5期 PD 資格 試験の結果を報告するとともに,これまで実施した計 18 回 の PD 資格試験を振り返り, PD 資格試験開始から2年の実 施状況と試験結果の傾向について報告する。
2. 第4,5期の PD 資格試験実施結果 2.1 受験者について
PD センターは第4期試験として平成 19 年7月から平成 19年8月までに3回, 第5期試験として平成 20年1月か ら平成 20 年3月までに3回, 計6回の PD 資格試験を行 った。この間の受験者は 10 名で, 再受験を加えた延べ受 験者数は 13 名である。このうち合格基準に達した方は 5 名であり, 第1期からの合格者の累計は 22 名で, 受験者 数あたりの合格率は 61%である。 合格者のうち初めての受連絡先:電力中央研究所材料科学研究所 PD センター, * 〒240-0196 神奈川県 横須賀市長坂 2-6-1 ,http://criepi.denken.or.jp/jp/pd/index.html験で合格した方は1名, 再受験で合格した方は4名である。 表1は初回受験合格者数と再試験合格者数を示している。 期を重ねるにつれ初回試験での合格率が低下しているが, 再試験合格確立は安定している。このことは以下の2つに よると推測している。1) UTによるSCC 深さ測定に対して各社の教育システム が機能するようになってきた * 2) 再試験受験者は初回試験で 10 体の SCC 試験体の 探傷を経験し, PD 研修機関や自社でトレーニングを受け, SCC 深さ測定の技術が向上した。 2)に関しては、 PD 資格試験実施後のアンケートで「SCCを 探傷する機会が少なく, 試験中に多くのことを学べ, スキ ルアップできた」という感想が多く見られることからもうかが い知ることが出来る。表 1 初回試験合格者数と再試験合格者数初回試?初回試験での再試映再試験での合格者数合格率(%)合格者数合格率(%)第1期第1期第2期第2期100第3期第3期66第4期第4期75第5期第5期50図1に第1期から5期の受験者の RMSE 値と試験体一 体あたりの平均探傷時間との関係を示す。一試験体あたり の深さ測定に要する探傷から解析・判定には 2~3 時間を前回, “慎重な探傷を怠った結果, 測定値一方, 不合格者の方々には 2 つの傾向が見られる。図 3 召えて下回った」という理由のみでの不合格 中の示している(A)というグループは慎重な探傷を怠った 数名いらっしゃるという”という報告[1]により, 結果, 測定値が「4.4mm を超えて下回った」という理由の が慎重な探傷を行っている現われであるとみでの不合格になった方々のグループである。また, (B)と 費やしている。前回, “慎重な探傷を怠った結果, 測定値 が「4.4mm を超えて下回った」という理由のみでの不合格 になった方が数名いらっしゃるという”という報告[1]により, 受験者の方々が慎重な探傷を行っている現われであると 考えられる。また, 第 4, 5 期でのほとんどの受験者の方々 の RMSEは4以下であり, 全体的に技術が向上しているこの RMSEは4 とがわかる。合格者 (第1-3期) 不合格者(第1-3期)+ OX合格者 (第4,5期) 不合格者 (第4.5期)RMSE (mm)textRMSE=3.2 (mm)---+-200200100 平均探傷時間 (min.) 平均探傷時間 (min.)図1 平均探傷時間と RMSE の関係RMSE (mm)2 に第 4, 5 期における再受験の方の RMSE 値の変図 2に第 4, 5 期における再受験の方の RMSE 値の変 化(再試験のRMSEを基準として規格化)を示す。再受験合 格者の方は目覚しく探傷技術が向上したことが読み取れ平均誤差 (mm)図 3 全受験者の平均誤差と RMSE の関係RMSEの比 [(新規受験) (再受験]新規」再|受験者A新規再B規 再「新規再 「新規」再 | 受験者の | 受験者D「受E | 受験者F【第4.5%)SCC出曲部のエコート図2 第 4,5期での再受験者の RMSE の変化(再受験の RMSE を1として規格化。■:合格,““:不合格)開口部エコー2.1 試験結果の傾向について図3は全受験者の平均誤差と RMSE の関係を示してい図.4 SCC き裂深さ測定における各 る。図3からほとんどの合格者の平均誤差は±1以内であ り,合格者の方々の SCC 深さ測定技術の高さがわかる。 2.3 受験者の年齢分布ついて 試験結果の傾向について は全受験者の平均誤差と RMSE の関係を示してい 3からほとんどの合格者の平均誤差は±1 以内であ 各者の方々の SCC 深さ測定技術の高さがわかる。 一方, 不合格者の方々には 2 つの傾向が見られる。 図 3 中の示している(A)というグループは慎重な探傷を怠った 結果, 測定値が「4.4mm を超えて下回った」という理由の みでの不合格になった方々のグループである。また, (B)と いうグループは「SCC 先端を特定する手順或いは技術に 不備がある」受験者の方々のグループである。つまり,母 材と溶接部の境界面エコーの判別手段或いは技術が不 十分なケースにあたる。図4にき裂深さ測定において出現 する各種のエコーの起源を示しているが,(B)グループの 方々は, 端部探しで疑心暗鬼になり, 全てのエコーが端部| エコーに見えてしまうことにより、正確な測定が行えず, 合 格できなったと考えられる。 SCC の先端エコーと溶接境界 部エコーの判別手法については様々な方法があるが,確 信のおける手法を選定し受験前に実践的な訓練を納得行 くまで行う必要がある。 、 ム 以円九りAUN LA J ループは慎重な探傷を怠った -超えて下回った」という理由の このグループである。また, (B)と 号を特定する手順或いは技術にのグループである。つまり,母 一の判別手段或いは技術が不 4にき裂深さ測定において出現 を示しているが, (B)グループの 青鬼になり, 全てのエコーが端部 より, 正確な測定が行えず,合 SCC の先端エコーと溶接境界 いては様々な方法があるが,確 受験前に実践的な訓練を納得行合格者(第1-5期) X 不合格者(第1-5期)X(B)..- RMSE = 3.2 mm04-20 2 46平均誤差 (mm) -7図5に全受験者年齢分布を示している(年齢は 2008年 5月1日現在)。 図 5(a)は全受験者と全合格者の年齢分布 を示しており, 30 歳代から 50 歳代の方がまんべんなくPD 資格試験に合格されていることがわかる。 図 5(b)は全受験 者と初回試験での合格者の年齢分布を示しており, 初回 試験での 45 歳以上の方々の合格率が低いことがわかる。 45 歳以上の初回試験での合格者(図中の*印)のお二人 は共に従来手法(A スコープのみ)による手順書によって合 格している。つまり, 45 歳以上の初回試験受験者で従来 手法とフェーズドアレイ装置との組み合わせた手順書で合 格された方はいらっしゃらない。一方, 44 歳以下の初回試 験での合格者の9名の方のうち8名が従来手法とフェーズ ドアレイ装置との組み合わせた手順書で合格されている。 フェーズドアレイ手法は比較的新しい手法であり, 44 歳以 下の技術者は UT 技術習得はじめからフェーズドアレイ装 置に慣れ親しんでいることも一因かと思われる。 図 5(c)は 再受験者とその合格者の年齢分布を示している。 45 歳未 満の受験者の再受験合格率が比較的高いことがわかる。3. 結言PD 資格試験は平成 18年3月の開始から2年が経過し, 計 18 回の試験が実施され,合格基準をクリアした方は 22 名となった。今後とも PD センターは、 公平(中立), 公正か つ透明性を堅持して PD 資格試験の運営と試験の実施を 行い, 原子力発電用機器に対する非破壊検査の信頼性 向上に貢献していくことを目指して活動いたします。試験 の結果などの情報に関しても,適宜電力中央研究所材料 科学 研 究 所 PD センター ホームページ (http://criepi.denken.or.jp/jp/pd/index.html)や学会等を 通じて公開してまいります。参考文献 [1] 笹原,直本,秀,神戸,“PD 資格試験開始から一年の実施状況”第4回保全学会予稿集, 福井, 2007.人数130~341140aa格者 45~491 50~54|@usa格者 55~59)年齡(a) 全受験者と全合格者人数るでの合格しのみ回は初回での 合も初回での 合格者454050-54年齢(6) 全受験者と初回試験合格者人数ら6Pでの も再受験を再受験でのらぼ合格も再受験も再受験も両受験受験での 合格者55~59年齢(c) 再試験受験者と再試験合格者 図.5 受験者の年齢分布(2008.5.1 現在)図.5a0“ “PD 資格試験開始から2年の実施状況 “ “直本 保,Tamotsu JIKIMOTO,笹原 利彦,Toshihiko SASAHARA,秀 耕一郎,Koichiro HIDE