オンサイト潤滑油診断-可搬型摩耗診断装置-

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
回転機器類の転がり軸受における CBM には,温度 法・振動法・AE法・電気抵抗法・潤滑油法などの診断 方法が用いられている。中でも,振動法は,測定が比 較的容易であるため、設備診断には数多く使用されて いるが,損傷の初期段階に発生する微小な異常信号と ノイズとの判別がしにくく,異常の兆候を的確に捉え にくい特性がある.そのため,これに代わる診断法の 確立が求められている.1966年にイギリスで唱えられた「Tribology」を活用 した潤滑油診断法は,すべり軸受やギヤ,あるいは転 がり軸受の転動体,転動面,軌道面等の摺動面から発 生する摩耗粒子を直接分析し,振動法や音響法では捉 えにくい初期異常をいち早く知る技術として 1980 年 代前半から注目され, CBMの実施に有力な設備診断法 として多くの実績を挙げている.潤滑油診断法は、発光分光分析装置(SOAP) などの 高額な装置と充分な経験,知識,そして高度な技術を 持つ専門スタッフが必要である.そこで,本報では東 京電力と共同開発した現場(オン-サイト)で迅速(オン-タイム) かつ正確に行う新型摩耗粒子診断装置と診 断手法とを紹介し,同システムを使用した転がり軸受 の劣化試験において,従来からの診断方法(SOAP 法) と比較しながら,異常の兆候を早期に捉える診断シス テムの有用性を説く.
2. 実験・研究
2.1 新型摩耗粒子診断装置診断用に開発した装置の 概要を図1に示す.1 Sample Supplier 摩耗粒子の捕捉は,特殊設Sample Oil 計を施したコア磁石上のデ ータプレート(DP)に,サData Plate/(DP) プライヤーからサンプルオ イルを投入し, DP を一定速 度で回転させ, サンプルを一 定量で滴下させて行なう.Magnet 滴下された潤滑油は, 遠心。(cored) 力により DP 中心部から外周Fig.1 Analysis Device 方向へ流れ, 磁場によって摩耗粒子のみが捕捉される.上記の工程により得ら れた DP 上では, 摩耗粒子 が,図2に示す2つのリン グとして観察される. DP を熱処理して摩耗粒子を 定着させ,これにより、摩 耗粒子の材質特有のテン パーカラーを得る.Large Particle Point Small Particle Point Fig.2 Observation Points2.2 摩耗粒子観察・分析装置DP 上には, 図2に示すようにふたつのリングがあり, 内側のリングには大きな摩耗粒子(≧5μm)が配列され, 外側のリングには小さな摩耗粒子が配列される.摩耗粒子は,落射光および透過光を備えた金属顕微 鏡で Large Particle Point(LPP)と Small Particle Point(SPP) の各位置をそれぞれ90度角ごとに4点を観察する.はじめに, 顕微鏡に備えられた接眼レンズ側から DP へ照射される落射光,および DP 裏側より照射される 透過光の両方を用いて観察を行なう.その結果,図3 に例示する写真が CCDカメラによって撮影され,それ ぞれの摩耗粒子の詳細な形状や表面素性を観察するこ とができる.また, DP の熱処理により発色したテン パーカラーを観察し,粒子の材質特定を行なう.以上 の工程による分析を定性診断として位置づける.次に,透過光のみにより摩耗粒子を影として映し出 し,これを CCDカメラによって撮影する. 撮影した画 像は,ソフトウェアによって処理され、図4のように 白色と黒色(二値化)として認識され、視野中におけ る摩耗粒子の割合を解析する.これにより, DP に堆積 した摩耗粒子の量が求められる.この工程を、上記の 定性診断に対して,定量診断と呼ぶ.Fig.3 Picture forFig.4 Picture for Qualitative DiagnosisQuantitative Diagnosis 2.3 転がり摩擦試験と摩耗粒子診断本研究では,図5に示す試験機を用いて転がり軸受 の加速劣化試験を実施し,摩耗粒子を採取した.試験 用転がり軸受は「Bearing No.6006」を使用した.試験部を図6に示す.試験部は油槽内にあり,荷重は転が り軸受ケースを押し下げる方法である. 試験条件を表 1に示す.MotorTorque MeterShaftBLoadBasementSupport Bearings Test Bearing Fig.5 Bal-Bearing Testing MachineFig.6 Ball Bearing Testing Part55Table 1 Testing ConditionsSingle-row TypeDeep-GrooveRadial Ball Bea Bearing No.6006Inside Test30 Boundary diameter Piecedimension Outside [mm] diameterWidth 13 Basic dynamic load13200(1350 kg) rating [N] Test Load [N]| 17500(1785.6 kg) Rotational Speed [rpm]1500ISO VG10 , Sample OilContamination Controlled一般に,劣化は図7に示されるような「時間による 摩耗進行度の推移」で進行すると考えられ,図中A点 を境に,異常の進行度は加速度的に速くなり、一気に 損傷へと至る.温度診断法および振動診断法では,異常摩耗が進行 した損傷速度の速い図中 A 点以降の状態を捉えるため, 機械の損傷を未然に防ぐことは難しい.これに対し,異常の初期段階の現象を検知する能力 に優れている潤滑油診断法では,機械の損傷を未然に 防ぐことによって経済的なダメージを抑え,有効なメ ンテナンス方法を提示することが可能となる.Sample Oil68BreakageLubricous diagnosisTemperature diagnosisAdvance of the WearVibration diagnosis/Early wear state is graspedThe prevention effect of wearEarly wearRegular wearUnusual weartimeFig. 7 Breakage process of Machine and Lubricous Diagnosis3. 考察1. 本研究で開発した新型摩耗粒子診断装置による診断 パラメータを Is 値(a)として表す.Is = PLE - PS2.... (a)今回の装置による摩耗粒子測定結果を比較するため, SOAP(Spectrometric Oil Analysis Program)法のデータと 併せて評価する.試験中にサンプリングした潤滑油に含まれる摩耗粒 子について, Is値を算出して SOAP 法による摩耗粒子 濃度と比較したデータを図8に示す.1000-IS ---SOAP (ppm)100““Is““ NumberE+01SOAP, ppm1- 50T00160, 200 25000.1-0.5Testing Time, ainFig. 8 Change in number and density of wear particles図8は,摩耗粒子の発生試験結果である。試験は, 一定荷重を付加し続けた加速劣化試験で, 2.4×105回 の繰返し荷重付加後,摩耗粒子の急激な発生を示し, 最終的に 3.3× 105回の繰返し経過後, インナーレース および保持器の破損に至った.図9 (a)-(d)は、試験開始から終了までの摩耗粒子発 生状態を表す.今回の結果では,発生した摩耗粒子の 量は2.4×105回の繰返し荷重付加後に多くなることが観察された.また,観察結果より,「黒色酸化粒子」ま た, 「シビア摩耗粒子」と呼ばれる摩耗粒子が多く見ら れ、中には,20 um 前後の大型の摩耗粒子も観察された. これは,転動体がスリップし,転がり摩擦と同時にす べり摩擦が発生していたことを示唆するものであると 推定された.このような定性診断により,本試験では 試験開始から「弾性流体潤滑領域」ではなく、「混合潤 滑領域」が生じていたことが推測される.(a) 5 min. . Sample : 10 ml, ““5““ : -4.6 × 100(b) 157 min. , Sample : 3 ml, ““is““ : -1.8 × 10'(C) 183 min., Sample : 4 ml, ““ls““ : 6.4 × 100(d) 213 min. , Sample : 3 ml. ““ls““ : 1.3×10Fig. 9Pictures of wear particles試験片とした転がり軸受の内輪観察結果を図 10 に 示す. 光学顕微鏡および SEM (Scanning Electron Licroscope) による観察から, 内輪の損傷形態と摩耗粒 子による診断結果の整合性が確認された.2010 10000Fig.10 Pictures of inner race [SEM, Optical Microscope]以上の結果より,新型摩耗粒子診断装置は,オン-サ イト, オン-タイムで初期段階の異常を的確に検知する 主能があることを確認した.4.結言* 本研究で開発した新型摩耗粒子診断装置により,次 に挙げる成果が得られた. (1) 従来の診断装置では、高度な技術を持つ専門スタッフによるオペレーションが必要であったが,本 研究により診断は自動化され再現性の良いデー タの確保が可能となった.また,図 11 に示すよ うな診断ソフトの使用によって,様々な機械設備 ごとの傾向管理と個別管理が可能となった.サンプルも70.09おおもとすいませ(こちらいやいていきたいさいさいときでは・月2.5SE・XL:1 .なび りなりにRSS18E・定また時はお分解日LD2リッター のかもELVIC121433、P2Pソックリンクの2ションインスタンダーを2)診断にかかる所要時間は,従来の診断法に比較して六分の一の 15 分程度であり,オン-タイムでの - 定量的診断が可能となった. 3) 本システムは、持ち運びが可能なコンパクトサイズであるため,オン-サイト診断が可能となった. 1) 摺動面における初期の異常を検知・診断することが可能となった. 5) 図 12 に示すように,ネットワークを通じ,測定現場からインターネットを利用して診断データを 精密分析センターに送信し,専門家によるより詳 細な診断を受けることが可能である.Oil samplingObject equipmentAnalysis Center TRIBOTEXAnalysis deviceILDATASend a Data Internetata Plate (DP)Microscope, Camera, LaptopFig.12 Diagnosis System最後に,本装置は,航空機,発電設備,船舶,鉄道 自動車など幅広い分野での有効なメンテナンス手段 して利用が見込まれる.辞 本研究は,平成 13 年から平成 15 年まで東京電力株 会社と実施した共同研究により開発したシステムで り,共同研究に携わった関係各位に心から謝意を表 ます.ニ考文献赤垣友治、加藤康司、川畑雅彦、“フェログラフ ーおよび発光オイル分析法によるジャーナル軸受の 常診断に関する研究”、 トライボロジスト、 Vol.39, 11、1993、pp.979-986.“ “?オンサイト潤滑油診断 - 可搬型摩耗診断装置 -“ “宮田 昇,Noborn MIYATA,神谷 徹,Toru KAMIYA,川畑 雅彦,Masahiko KAWABATA
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