回転機器への音響診断適用について
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カテゴリ: 第6回
1.緒言
回転機器の診断において、回転機器から異音が発生 二機器の異常が疑われる場合、振動診断を行うのが常 であるが、特に異常は認められず異音の発生原因が解 らないことがある。そこで、採取した振動データーを 音として再現し、音そのものを分析して異音の発生原 因を探る音響診断法を試みた。本報告は、その有効性 こついて記したものである。
2. 異音の発生状況についてある回転機器を聴診したところ、異音が発していた ため振動診断を行った。その結果、振動オーバーオー レ値は前回の定期振動測定結果となんら変わらない 直であり、特に異常は認められなかった。詳細に振動 直をFFT分析した結果、高周波の加速度が前回と比 べてわずかながら高い傾向はあったものの、問題とな る値ではなかった。振動値には異常が見つからないた め、様子を見ながらその機器の運転を続けると、異音
はいつの間にか消えてしまった。結果は良好とし とで落ち着いた。しかしながら、異音の発生は、 らかの異常兆候を示すものであるため、数値デー として収録し、分析を行う必要があった。3. 振動データーを利用した音響診断の適用3.1 音響診断法概要 - 異音が聞こえていた理由は、振動ピーク値が変動し ており、その結果、音圧レベルが変動する形となって 変動音として聞こえていたのではないか、と推測でき る。そこで、異音と感じる音を収録・再生し、周波数 分析する手法を試みることとした。音の分析は、聴診 棒によって聞いた軸受け音を再現して分析できるよ うに、次の方法で行った。1) 加速度ピックアップを用いて振動データーを採取する。機器構成を Fig.1 に示す。 2) 採取した振動データーを音に変換して再生できるソフトウェアを使って、異音と感じる音を周 波数フィルターで抽出し、周波数分析を行う。画面を Fig.2 に示す。 3) 抽出した音のレベルをレベルメーターで測定し、変動していることを捉える。102PC変換器アンプ加速度ピックアップスピーカーFig.1 Acoustic diagnosis system9:00ここがロマサーシャイニーシーンFig.2 Analysis Screen3.2 診断結果今回は、異音を発している機器がなかったため、 正常な機器の軸受け音を収録し分析を行った。 1KHz以上の分析結果を Fig.3、1KHz以下の分析結 果を Fig. 4 に示す。Fig. 3は、バンドリジェクトフィルタとパラメト リックイコライザを使用し、音が聞こえなくなるよ うにフィルタリングした様子である。その結果、聞 こえていた音は主に、1800 Hz, 2800 Hz, 6800 Hz の 周波数を中心とした音が和音として聞こえていた という結果が得られた。音が出なくなった (レベル0)主な音源の中心周波数 1800Hz, 2800Hz, 6800HzFig.3 Feature of the sounds over 1 KHzFig.4 は、ローパスフィルタで1 KHz以上の音を カットし、1 KHz以下の音をパラメトリックイコラ イザでフィルタリングした様子である。初めにロー パスさせた段階では音は聞こえなかったが、パラメ トリックイコライザでレベルを上げて探っていく と、140 Hz と 400 Hz の音が出ているという結果が 得られた。GOLD音が最大となったInstartrankin NainNくびれくらい で設定にはなくアイス主な音源の中心周波数 140Hz, 400HzFig.4 Feature of the sounds under 1 KHzその他、周期性のない音や、うなりの現象、レベル 変動のある現象をレベル(dB)や周波数の数値とし て捉えることができた。詳細な結果を Table 1 に示す。103Table 1 Feature of sounds of rotating machinesEw周波数領域軸受け音の特徴全体的にレベル(dB)が低く、レベル を上げなければ聞こえなかった。回転周波数に起因した周波数の音が聞こ えているが、レベルは非常に小さい。低周波 | 電源周波数に起因した周波数の音が聞こ (1KHz以下) えているが、レベルは非常に小さい。聞こえている音のレベルは、同型の機器 間で比べると、大小の違いが見られた。同型の機器間で、聞こえる音と聞こえな い音があった。主に2~3種類の周波数の音が和音とな って聞こえていた。高周波 (1KHz以上)主な周波数は、その種類の数からベアリ ングの構成部品(内輪、外輪、転動体) の固有振動数と考えられる。主な周波数は、それぞれ幅を持っており、 同型の機器間で比べると、中心周波数は ほぼ同じであるが、帯域幅に大小の違い が見られた。うなっている音だけを抽出し、その間隔 と、音色、周波数帯を確認することがで きた。周期性のない音を抽出し、その音色と、周波数帯を確認することができた。 全周波数、 (10~24kHz)同じ音がしていても、測定場所によって レベルが違っていた。配管や、基礎から伝わってくる雑音を除 いて、問題となる音だけを抽出して分析 することができた。2)3 考察 * 振動値を音として再現することで、振動FFT 分析結果からは読み取れなかったうなり音や、 音圧レベル変動などの現象を耳で捉え、レベル 値(dB)や周波数帯として数値に表すことができ た。得られた数値から、異音の発生原因の推測 ができると考えられる。 振動診断におけるFET分析結果に現れた密集 しているスペクトル帯の中の、主になっている 周波数を探ることができた。この周波数は、軸 受け構成部品の固有振動数と判断できるため、 それぞれの部品がどのくらいの劣化状態にある のか、ということを周波数帯の広がり度合いや、 レベルの大きさを傾向監視することで把握でき るのではないかと考えられる。 聴診棒では聞き取れなかった低周波帯の音もレ ベルを上げて再生することで聞き取ることがで きた。低周波帯は、回転周波数に起因する周波 数であるため、これらのレベルを上げて聞くこ とが出来る装置を使うことで、現場でも音によ る低周波帯の診断ができる可能性がある。4 結言 今回試みた音響診断法で、振動診断では顕著に」 現れない音の発生現象を捉えることができた。 音の発生原因を探るだけでなく、音色を数値化 することで、軸受けの疲れ具合を測ることがで きる可能性もあり、余寿命診断にも発展させる 要素がある。 振動ピックアップで収録した振動データーを、 音と数値で人に伝え、分析することができた。 現場巡視員が聴診棒を使って発見した異音を、 繰り返し再現して分析することが可能である。 聴診棒などで軸受けの音を聞いて、 シャー”と いう磨耗音と、“ シャリシャリ”という異物の混 入音を聞き分けるという音色識別は従来から行 われてきたが、音の表現は口伝えや、文字によ るものであるため個人差が生じていた。音色識 別は、従来の振動診断では困難であり、今後も 必要とされる技術である。今回の音響診断法は、 聴診音を数値化することで標準化を図ることが 可能となるため、聴診技術の伝承において大変 有効なものである。 今後は、多くの基礎データーを収集し、故障探 査と傾向観察を続け、振動データーを利用した 音響診断法の更なる有効性を検証していきたい。104“ “回転機器への音響診断適用について“ “神保 吉秀,Yoshihide JIMBO,黒柳 克巳,Katsumi KUROYANAGI,瀬戸脇 浩友,Hirotomo SETOWAKI,肥田 茂,Shigeru HIDA
回転機器の診断において、回転機器から異音が発生 二機器の異常が疑われる場合、振動診断を行うのが常 であるが、特に異常は認められず異音の発生原因が解 らないことがある。そこで、採取した振動データーを 音として再現し、音そのものを分析して異音の発生原 因を探る音響診断法を試みた。本報告は、その有効性 こついて記したものである。
2. 異音の発生状況についてある回転機器を聴診したところ、異音が発していた ため振動診断を行った。その結果、振動オーバーオー レ値は前回の定期振動測定結果となんら変わらない 直であり、特に異常は認められなかった。詳細に振動 直をFFT分析した結果、高周波の加速度が前回と比 べてわずかながら高い傾向はあったものの、問題とな る値ではなかった。振動値には異常が見つからないた め、様子を見ながらその機器の運転を続けると、異音
はいつの間にか消えてしまった。結果は良好とし とで落ち着いた。しかしながら、異音の発生は、 らかの異常兆候を示すものであるため、数値デー として収録し、分析を行う必要があった。3. 振動データーを利用した音響診断の適用3.1 音響診断法概要 - 異音が聞こえていた理由は、振動ピーク値が変動し ており、その結果、音圧レベルが変動する形となって 変動音として聞こえていたのではないか、と推測でき る。そこで、異音と感じる音を収録・再生し、周波数 分析する手法を試みることとした。音の分析は、聴診 棒によって聞いた軸受け音を再現して分析できるよ うに、次の方法で行った。1) 加速度ピックアップを用いて振動データーを採取する。機器構成を Fig.1 に示す。 2) 採取した振動データーを音に変換して再生できるソフトウェアを使って、異音と感じる音を周 波数フィルターで抽出し、周波数分析を行う。画面を Fig.2 に示す。 3) 抽出した音のレベルをレベルメーターで測定し、変動していることを捉える。102PC変換器アンプ加速度ピックアップスピーカーFig.1 Acoustic diagnosis system9:00ここがロマサーシャイニーシーンFig.2 Analysis Screen3.2 診断結果今回は、異音を発している機器がなかったため、 正常な機器の軸受け音を収録し分析を行った。 1KHz以上の分析結果を Fig.3、1KHz以下の分析結 果を Fig. 4 に示す。Fig. 3は、バンドリジェクトフィルタとパラメト リックイコライザを使用し、音が聞こえなくなるよ うにフィルタリングした様子である。その結果、聞 こえていた音は主に、1800 Hz, 2800 Hz, 6800 Hz の 周波数を中心とした音が和音として聞こえていた という結果が得られた。音が出なくなった (レベル0)主な音源の中心周波数 1800Hz, 2800Hz, 6800HzFig.3 Feature of the sounds over 1 KHzFig.4 は、ローパスフィルタで1 KHz以上の音を カットし、1 KHz以下の音をパラメトリックイコラ イザでフィルタリングした様子である。初めにロー パスさせた段階では音は聞こえなかったが、パラメ トリックイコライザでレベルを上げて探っていく と、140 Hz と 400 Hz の音が出ているという結果が 得られた。GOLD音が最大となったInstartrankin NainNくびれくらい で設定にはなくアイス主な音源の中心周波数 140Hz, 400HzFig.4 Feature of the sounds under 1 KHzその他、周期性のない音や、うなりの現象、レベル 変動のある現象をレベル(dB)や周波数の数値とし て捉えることができた。詳細な結果を Table 1 に示す。103Table 1 Feature of sounds of rotating machinesEw周波数領域軸受け音の特徴全体的にレベル(dB)が低く、レベル を上げなければ聞こえなかった。回転周波数に起因した周波数の音が聞こ えているが、レベルは非常に小さい。低周波 | 電源周波数に起因した周波数の音が聞こ (1KHz以下) えているが、レベルは非常に小さい。聞こえている音のレベルは、同型の機器 間で比べると、大小の違いが見られた。同型の機器間で、聞こえる音と聞こえな い音があった。主に2~3種類の周波数の音が和音とな って聞こえていた。高周波 (1KHz以上)主な周波数は、その種類の数からベアリ ングの構成部品(内輪、外輪、転動体) の固有振動数と考えられる。主な周波数は、それぞれ幅を持っており、 同型の機器間で比べると、中心周波数は ほぼ同じであるが、帯域幅に大小の違い が見られた。うなっている音だけを抽出し、その間隔 と、音色、周波数帯を確認することがで きた。周期性のない音を抽出し、その音色と、周波数帯を確認することができた。 全周波数、 (10~24kHz)同じ音がしていても、測定場所によって レベルが違っていた。配管や、基礎から伝わってくる雑音を除 いて、問題となる音だけを抽出して分析 することができた。2)3 考察 * 振動値を音として再現することで、振動FFT 分析結果からは読み取れなかったうなり音や、 音圧レベル変動などの現象を耳で捉え、レベル 値(dB)や周波数帯として数値に表すことができ た。得られた数値から、異音の発生原因の推測 ができると考えられる。 振動診断におけるFET分析結果に現れた密集 しているスペクトル帯の中の、主になっている 周波数を探ることができた。この周波数は、軸 受け構成部品の固有振動数と判断できるため、 それぞれの部品がどのくらいの劣化状態にある のか、ということを周波数帯の広がり度合いや、 レベルの大きさを傾向監視することで把握でき るのではないかと考えられる。 聴診棒では聞き取れなかった低周波帯の音もレ ベルを上げて再生することで聞き取ることがで きた。低周波帯は、回転周波数に起因する周波 数であるため、これらのレベルを上げて聞くこ とが出来る装置を使うことで、現場でも音によ る低周波帯の診断ができる可能性がある。4 結言 今回試みた音響診断法で、振動診断では顕著に」 現れない音の発生現象を捉えることができた。 音の発生原因を探るだけでなく、音色を数値化 することで、軸受けの疲れ具合を測ることがで きる可能性もあり、余寿命診断にも発展させる 要素がある。 振動ピックアップで収録した振動データーを、 音と数値で人に伝え、分析することができた。 現場巡視員が聴診棒を使って発見した異音を、 繰り返し再現して分析することが可能である。 聴診棒などで軸受けの音を聞いて、 シャー”と いう磨耗音と、“ シャリシャリ”という異物の混 入音を聞き分けるという音色識別は従来から行 われてきたが、音の表現は口伝えや、文字によ るものであるため個人差が生じていた。音色識 別は、従来の振動診断では困難であり、今後も 必要とされる技術である。今回の音響診断法は、 聴診音を数値化することで標準化を図ることが 可能となるため、聴診技術の伝承において大変 有効なものである。 今後は、多くの基礎データーを収集し、故障探 査と傾向観察を続け、振動データーを利用した 音響診断法の更なる有効性を検証していきたい。104“ “回転機器への音響診断適用について“ “神保 吉秀,Yoshihide JIMBO,黒柳 克巳,Katsumi KUROYANAGI,瀬戸脇 浩友,Hirotomo SETOWAKI,肥田 茂,Shigeru HIDA