その場計測による回転機のモニタリング
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カテゴリ: 第6回
1.緒言
プラント設備に対する状態監視技術の信頼性向上と 新技術の開発に対する期待は高い。また社会的な背景 としてさらなるプラント稼動の信頼と効率の向上が望 まれている。そのような背景から各種プラントにおい て状態監視技術のニーズは増大し、設備の状態をリア ルタイムでモニタリングし、将来的にはプラント設備 の寿命を予知できる技術の開発が求められている。 _ しかしプラント設備検査はベテラン検査員の勘にた よって良否の区別をおこなう保守作業法に負うところ が現実には多い。この場合、検査員の体調、周囲条件 等によって検査基準が変動し不良の抽出を逸する可能 性があり、状態監視での検査基準が一定で安定した新 検査技術法の開発が重要な研究アイテムのひとつとな っている。とくにプラント設備の回転機器の状態を自 動的にモニタリング検査し、不良の状態を騒音解析す ることにより分別し、その寿命を確実に予知できる新 検査システム法の開発は大いに期待されている。プラント設備における騒音信号による良品、不良品 判定に関しては、良品状態あるいは不良状態を表す騒 音信号成分よりもプラント全体のバックグラウンドノ イズの方が大きい場合が多い。本報告で考察する回転 機騒音による状態監視もその例外ではなく、プラント 設備での暗騒音が障害となり騒音信号解析による状態監視のモニタリング機器による検査法の困難さのひと つの原因になっている。本研究ではプラント設備の回転機器の状態監視技術 の開発を目的に騒音解析をおこない回転機器の状態を 正常状態、非正常状態への分類の可能性を考察した。
2.騒音波形の特徴評価
2.1 騒音波形本研究では騒音波形解析用の実験サンプルとして工 場検査員が良品および不良品と検査判定したサンプル を用いておこなった。不良品サンプルはボール音、ロ ータとステータのアンバランスにより生じる擦過音が 発生しているサンプルである。擦過音は回転周期に同 期して発生していることが観測できた。今回の実験で はプラントや工場建物内のバックグランドの騒音が 1k Hz以下の帯域では検査対象とするモータからの騒音 よりもおおきいため、騒音分析は 1kHz以上の騒音成 分を分析することとした。良品と不良品との騒音信号 の違いは時間軸波形からも考察できる。良品サンプル においては騒音波形の R.M.S(Root Mean Square)値の変 動はほとんどないが、不良品サンプルの騒音波形では R.M.S.値が変動していることが考察できる。また、時 間軸騒音波形において最大振幅値と最小振幅値の比は、 良品より不良品のほうが大きいことも考察できた。 (Fig.1,Fig2)
2.2 特徴抽出良品と各不良品の騒音波形について時間軸波形から 周波数領域への変換によるスペクトラム解析のみでは かならずしも明確に各々の不良品を分別する特徴抽出
3.結言 Fig.2. Noise from Unusual Motors.1) 回転機器の騒音波形からオクターブ解析を用いて 2.2 特徴抽出良品、不良品の分類ができる可能性を考察できた。 良品と各不良品の騒音波形について時間軸波形から2) 今後、プラント設備における回転機器のオンライン 周波数領域への変換によるスペクトラム解析のみでは- 検査技術を構築し、自動検査システムの開発へと本 かならずしも明確に各々の不良品を分別する特徴抽出研究を発展させていきたい。 はできなかった。そこで各々の不良品の特徴を明確に参考文献 するために、良品、不良品のオクターブ解析をおこな った。その結果、各々の不良品サンプルに明らかな特[1] 宇佐美照夫、小島史男、“その場計測による回転機軸受けモニタリング”、保全学、Vol.7, No.2, 2008, 徴が抽出できた。代表的な例を次に示す。 (a)良品:全体に不良品サンプルより時間軸波形での振 1 [2] 宇佐美照夫、小島史男、“波形観測にもとづくその 幅値、オクーブ解析値とも小さい。オクターブ解析で場計測と機械設備異常診断への応用”、保全学、Vol.7, No.4, 2009, pp.32-38. 1 は特に 8KH, バンドが小さくなっている。折れ線グラ[3] Teruo Usami and Fumio Kojima, “Automatic Condition フは「へ」の字型をしている。(Fig.3)Monitoring System for Industrial Motors”, Proceeding (b)ボール音 (擦過音) : オクターブ解析では良品と同様of the 6th International Conference on Condition に「へ」の字型をしているが 5~10dB 大きい。特に 2KHzMonitoring and Machinery Failure PreventionTechnologies, June 2009, (to be published) バンドが大きい。全体に時間軸波形の振幅値、オクタ [4] 山本 鎮男、“ヘルスモニタリング”、共立出版、 ーブ解析値とも良品サンプルより値が大きい。(Fig.4)
するために、良品、不良品のオクターブ解析をおこな った。その結果、各々の不良品サンプルに明らかな特 徴が抽出できた。代表的な例を次に示す。 (a)良品: 全体に不良品サンプルより時間軸波形での振 幅値、オクーブ解析値とも小さい。オクターブ解析で
良品、不良品の分類ができる可能性を考察できた 今後、プラント設備における回転機器のオンライ 検査技術を構築し、自動検査システムの開発へと [1] 宇佐美照夫、小島史男、“その場計測による回転機軸受けモニタリング”、保全学、Vol.7, No.2, 2008,pp.37-44. [2] 宇佐美照夫、小島史男、“波形観測にもとづくその場計測と機械設備異常診断への応用”、保全学、Vol.7, No.4, 2009, pp.32-38. [3] Teruo Usami and Fumio Kojima, “Automatic ConditionMonitoring System for Industrial Motors”, Proceeding of the 6th International Conference on Condition Monitoring and Machinery Failure PreventionTechnologies, June 2009, (to be published) [4] 山本 鎮男、“ヘルスモニタリング”、共立出版、“ “その場計測による回転機モニタリング“ “宇佐美 照夫,Teruo USAMI,小島 史男,Fumio KOJIMA
プラント設備に対する状態監視技術の信頼性向上と 新技術の開発に対する期待は高い。また社会的な背景 としてさらなるプラント稼動の信頼と効率の向上が望 まれている。そのような背景から各種プラントにおい て状態監視技術のニーズは増大し、設備の状態をリア ルタイムでモニタリングし、将来的にはプラント設備 の寿命を予知できる技術の開発が求められている。 _ しかしプラント設備検査はベテラン検査員の勘にた よって良否の区別をおこなう保守作業法に負うところ が現実には多い。この場合、検査員の体調、周囲条件 等によって検査基準が変動し不良の抽出を逸する可能 性があり、状態監視での検査基準が一定で安定した新 検査技術法の開発が重要な研究アイテムのひとつとな っている。とくにプラント設備の回転機器の状態を自 動的にモニタリング検査し、不良の状態を騒音解析す ることにより分別し、その寿命を確実に予知できる新 検査システム法の開発は大いに期待されている。プラント設備における騒音信号による良品、不良品 判定に関しては、良品状態あるいは不良状態を表す騒 音信号成分よりもプラント全体のバックグラウンドノ イズの方が大きい場合が多い。本報告で考察する回転 機騒音による状態監視もその例外ではなく、プラント 設備での暗騒音が障害となり騒音信号解析による状態監視のモニタリング機器による検査法の困難さのひと つの原因になっている。本研究ではプラント設備の回転機器の状態監視技術 の開発を目的に騒音解析をおこない回転機器の状態を 正常状態、非正常状態への分類の可能性を考察した。
2.騒音波形の特徴評価
2.1 騒音波形本研究では騒音波形解析用の実験サンプルとして工 場検査員が良品および不良品と検査判定したサンプル を用いておこなった。不良品サンプルはボール音、ロ ータとステータのアンバランスにより生じる擦過音が 発生しているサンプルである。擦過音は回転周期に同 期して発生していることが観測できた。今回の実験で はプラントや工場建物内のバックグランドの騒音が 1k Hz以下の帯域では検査対象とするモータからの騒音 よりもおおきいため、騒音分析は 1kHz以上の騒音成 分を分析することとした。良品と不良品との騒音信号 の違いは時間軸波形からも考察できる。良品サンプル においては騒音波形の R.M.S(Root Mean Square)値の変 動はほとんどないが、不良品サンプルの騒音波形では R.M.S.値が変動していることが考察できる。また、時 間軸騒音波形において最大振幅値と最小振幅値の比は、 良品より不良品のほうが大きいことも考察できた。 (Fig.1,Fig2)
2.2 特徴抽出良品と各不良品の騒音波形について時間軸波形から 周波数領域への変換によるスペクトラム解析のみでは かならずしも明確に各々の不良品を分別する特徴抽出
3.結言 Fig.2. Noise from Unusual Motors.1) 回転機器の騒音波形からオクターブ解析を用いて 2.2 特徴抽出良品、不良品の分類ができる可能性を考察できた。 良品と各不良品の騒音波形について時間軸波形から2) 今後、プラント設備における回転機器のオンライン 周波数領域への変換によるスペクトラム解析のみでは- 検査技術を構築し、自動検査システムの開発へと本 かならずしも明確に各々の不良品を分別する特徴抽出研究を発展させていきたい。 はできなかった。そこで各々の不良品の特徴を明確に参考文献 するために、良品、不良品のオクターブ解析をおこな った。その結果、各々の不良品サンプルに明らかな特[1] 宇佐美照夫、小島史男、“その場計測による回転機軸受けモニタリング”、保全学、Vol.7, No.2, 2008, 徴が抽出できた。代表的な例を次に示す。 (a)良品:全体に不良品サンプルより時間軸波形での振 1 [2] 宇佐美照夫、小島史男、“波形観測にもとづくその 幅値、オクーブ解析値とも小さい。オクターブ解析で場計測と機械設備異常診断への応用”、保全学、Vol.7, No.4, 2009, pp.32-38. 1 は特に 8KH, バンドが小さくなっている。折れ線グラ[3] Teruo Usami and Fumio Kojima, “Automatic Condition フは「へ」の字型をしている。(Fig.3)Monitoring System for Industrial Motors”, Proceeding (b)ボール音 (擦過音) : オクターブ解析では良品と同様of the 6th International Conference on Condition に「へ」の字型をしているが 5~10dB 大きい。特に 2KHzMonitoring and Machinery Failure PreventionTechnologies, June 2009, (to be published) バンドが大きい。全体に時間軸波形の振幅値、オクタ [4] 山本 鎮男、“ヘルスモニタリング”、共立出版、 ーブ解析値とも良品サンプルより値が大きい。(Fig.4)
するために、良品、不良品のオクターブ解析をおこな った。その結果、各々の不良品サンプルに明らかな特 徴が抽出できた。代表的な例を次に示す。 (a)良品: 全体に不良品サンプルより時間軸波形での振 幅値、オクーブ解析値とも小さい。オクターブ解析で
良品、不良品の分類ができる可能性を考察できた 今後、プラント設備における回転機器のオンライ 検査技術を構築し、自動検査システムの開発へと [1] 宇佐美照夫、小島史男、“その場計測による回転機軸受けモニタリング”、保全学、Vol.7, No.2, 2008,pp.37-44. [2] 宇佐美照夫、小島史男、“波形観測にもとづくその場計測と機械設備異常診断への応用”、保全学、Vol.7, No.4, 2009, pp.32-38. [3] Teruo Usami and Fumio Kojima, “Automatic ConditionMonitoring System for Industrial Motors”, Proceeding of the 6th International Conference on Condition Monitoring and Machinery Failure PreventionTechnologies, June 2009, (to be published) [4] 山本 鎮男、“ヘルスモニタリング”、共立出版、“ “その場計測による回転機モニタリング“ “宇佐美 照夫,Teruo USAMI,小島 史男,Fumio KOJIMA