「もんじゅ」の運転再開に向けた設備健全性確認と保全プログラム

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
高速増殖原型炉「もんじゅ」は、平成7年 12月の 2 次主冷却系ナトリウム(Na)漏えい事故以降、約 14 年間停止状態にあるが、この間原子炉には燃料が 装荷されており、原子炉の安全を確保する上で必要 な設備は運転を継続している。これら運転中設備は、 定期的な点検を実施して設備の機能・性能を維持し ている。運転再開に向け、これら運転中設備及び停 止中設備に関し点検(補修、設備更新、改造)、試験・ 検査を計画的に実施することにより安全に試運転が 行えるプラント状態を確立することを目的に平成 18 年に長期停止プラントの設備健全性確認計画書 を策定した。順次点検・試験を進め、平成 21 年 5 月末の段階で約 90%の設備に関する健全性を確認 した。健全性を確認した設備に関しては、平成 21 年1月に導入した保全計画に点検内容を反映し、設 備の健全性を維持し、運転再開の準備を進めている。
2. 設備健全性確認計画
2.1 「もんじゅ」の設備状態「もんじゅ」は、2次主冷却系Na漏えい事故以来、 長期間プラントの運転を停止しているが、全ての設 備が運転を停止しているわけではなく、運転を継続 している設備と停止している設備がある。「運転中設備」は、原子炉に燃料が装荷されてい ることから、原子炉の安全を確保する上で必要な設」 備である。代表的設備としては、1次主冷却系設備、 原子炉補機冷却水設備、常用/非常用電源設備、換気 空調設備などが挙げられる。停止している設備には、「休止中設備」と「保管中 設備」があり、「休止中設備」は、窒素ガス、アルゴ ンガスなどの不活性ガス環境下にあり、プラントが 長期停止状態において劣化の進行が小さいと考えら れる機器・設備である。「保管中設備」は、長期停止状態において設備維持 のため、長期保管対策をしている設備である。水・ 蒸気系設備は、原子力及び火力プラントでの長期保 管の実績を参考にして、分解保管、乾燥空気保管、 窒素ガス封入保管等、長期停止期間中の劣化防止対 策を講じている。2.2 設備健全性確認計画 - 設備健全性確認計画は、設備の状態に応じて、経年 的な影響、Na 系機器の特徴、プラント経験情報の反映 及び設備の重要度を考慮している。また、設備健全性114確認は、設備点検による機器・設備レベルの健全性確 認と改造工事確認試験、プラント確認試験による系 統・プラントレベルの健全性確認に分けて計画を策定 した。設備健全性確認計画書策定時に考慮した劣化事象は、 高速炉(FBR)の事例として、「常陽」高経年化評価 ) 及び海外 FBR の不具合事例、国内軽水炉のトラブル事例、「もんじゅ」安全性総点検にて確認した事例である。 * これらの知見を反映して、考慮すべき劣化事象を整 理し、劣化事象毎に対象となる設備、その影響度、点 検方針を策定した。 1.設備点検として、安全機能の重要度、保守管理上の 重要度が高い設備については、分解点検などの点検を 行う計画としている。ただし、Na 系機器は、使用環境 が不活性ガス雰囲気で Na の純度管理(酸素濃度を低く 抑える)がなされているため腐食はほとんど無視でき る。なお、「常陽」の実績から Na 系機器の腐食減肉が ないことが確認されている。したがって、Na系機器は、 バウンダリを開放しての点検は不要であり、外観点検、 漏えい確認を主体とした点検計画とした。3.設備健全性確認の実施状況3.1 改造工事 (1) Na漏えい対策の設備改善 - Na漏えいの早期検出、抑制、影響緩和及びその他の Na 漏えい対策の4つに分け、平成 19 年までに設備改 善を完了した。 1) Na漏えいの早期検知Na 漏えいの早期検知に係る改善策としては空気 雰囲気セルモニタを設置するとともに、中央制御室 内に Na 漏えい関連情報を集約して表示できるよう 設備改善を行った。 2) Na 漏えいの抑制Na の漏えいを確認した場合、Na の早期抜き取り (ドレン)が行えるように、2次 Na 充填ドレン系等の 改造を行った。改造後、2 次系緊急ドレン試験によ り、25 分以内にドレンが完了することを確認した。 3) Na 漏えいの影響緩和Na 漏えいの影響緩和に係る改善策としては、Na が空気雰囲気の建屋内に漏えいした場合に Na 燃焼 抑制、エアロゾルの拡散防止、コンクリートからの 水分放出抑制等の観点から窒素ガス注入設備の設置、2 次主冷却系設備等エリアの区画化等の設備改善を 行った。 4)その他の Na 漏えい対策工事 ・その他の Na 漏えい対策工事として補助冷却設備 空気冷却器に Na 漏えい検出器を設置等の設備改善 を行った。3.2 設備点検 - 長期停止設備健全性確認計画に基づく点検は、試運 転再開にあたり必要となる設備について、平成 21 年5 月末現在、約 90%終了しており、残りの点検を計画的 に実施している。これまでの点検において経年的な影 響が見られた設備や精度外れの計器については補修や 計画的な校正を実施し、健全性を維持している。 - アニュラス屋外排気ダクトの腐食孔(最も減肉して いる部位の測定に関する点検方法の問題)及び 2 次系 接触型 Na 漏えい検出器の誤警報(過去に発生したイオ ンマイグレーションの対策が不十分であり、劣化傾向 の把握の問題)を踏まえ、これまで実施したすべての点 検について妥当性評価を行い、点検方法、点検結果、 対応処置について問題点の有無を洗い出すことができ、 以下の点が確認できた。 1 設備健全性確認計画の点検対象及び点検範囲につ いて最新の設備図書に基づき確認し、安全上重要な 設備がすべて点検されていること 2 原子炉や1次・2次 Na 系等の「もんじゅ」特有の 設備に関し、建設終了後の平成3年からの点検報告 書等を調査し、不具合・劣化事象を抽出した。また、 軽水炉と同様の設備に関しては、日本原子力学会標 準「原子力発電所の高経年化対策実施基準 2008」2) を調査した。 この調査を踏まえ、設備健全性確認計画における点 検が、「もんじゅ」でこれまでに生じた不具合や劣化 事象を把握できる点検方法であること、最新の知見 や軽水炉の知見を踏まえ想定される劣化事象を抽出 し、これらを漏れなく確認できる点検方法であるこ3 部品交換や補修塗装などの点検時に処置を行った 軽微な劣化を除き、原子炉補機冷却海水系配管の交 換、精度が外れている計器の校正など、劣化が確認 された設備に関しては、その補修等の計画を策定し、 計画的に実施し、判定基準を満足していること115@ 直ちに補修の必要がない場合であっても、判定基準 上問題ないことの評価、次回点検時までの健全性が 維持されることの評価、計画的な補修と、定期的な 肉厚測定や絶縁抵抗の測定等の対策が実施されてい ること 5 排気筒など一部追加点検や補修が必要な設備を明確にすることができ、その対応計画が立案され、対 - 応に長時間を要する不具合がないこと。4.「もんじゅ」保全プログラムの実施状況4.1 保全プログラムの策定屋外排気ダクトの腐食孔や Na 漏えい検出器の誤警 報と同様なトラブルが生じないよう、確実な保守管理 を行うため、「予防保全」を基本として、設備毎に点検 頻度、内容を定めた点検計画に基づく保守管理を、平 成21年1月から開始した。 - 平成21年1月1日、「常陽」の運転・保守経験、海 外FBR・国内軽水炉の運転経験及びトラブル事例等 の知見を基に「もんじゅ」の運転・保守実績を考慮し、 策定した社内基準及びメーカ基準に基づき、予防保全 を基本とした建設段階における保全プログラム(第 1 段階として炉心確認試験終了までの保全プログラム) を策定した。「もんじゅ」の保全プログラムの構成は以下の項目 に、「原子力発電所の保守管理規定」(JEAC 4209-2007) 30で要求される保全重要度の設定、保全活動 管理指標、保全の有効性評価等を追加した。1保全計画の策定 2保全の実施 3点検・補修等の結果の不適合管理、是正処置及び予防処置 4情報共有4.2「もんじゅ」保全プログラムの特徴 * 保全プログラムの策定においては、JEAC 4209-2007 を基本としているが、「もんじゅ」が、建設段階である こと、長期停止状態であること、Na 冷却高速増殖炉で あり、軽水炉にない系統・設備を有していることから、 以下の点を考慮した。 1)保全重要度の設定において、安全上の重要度及びリ スク重要度に加え、「もんじゅ」の特徴を考慮した重 要度設定を行った。2) 「もんじゅ」は建設段階であること、性能試験が比 較的長期であり、各性能試験間に点検を行うことか ら、点検と性能試験を組み合わせたサイクルを保全 サイクルとし、平成 21 年1月策定の保全計画は、運 転再開後の最初の性能試験である炉心性能確認試験 終了までとした。 3)保全活動管理指標の設定において、プラントレベル の指標は、高速実験炉「常陽」の実績を用い、系統 レベルについては、「原子力発電所の保守管理指針」 (JEAG 4210-2007) を参考とした。 4)過去のトラブル事例、原子炉や Na系、燃料取扱設備 - などの「もんじゅ」特有設備の点検実績、前章で述べた設備健全性確認結果を保全計画に反映している。 5)保全プログラムの策定と確実な運用のため、要領を 改正・整備した。現状は、これらの要領に基づき、運 用管理をしている。4.3 「もんじゅ」保全プログラムの今後の予定「もんじゅ」保全プログラムは、平成 21 年1月に制 定され、現在同プログラムに基づく保全活動の PDCA を 実施している。今後、保全計画に基づき計画的に点検 を行い、1点検・補修等を実施した場合において不適 合処理を含め、点検状況の結果、経年劣化の傾向監視、 メーカ点検報告書の提案・改善の確認・評価、2定期 的な保全の有効性評価、により継続的に保全計画を改 善していく。また、今後充実すべき事項を以下に示す。 1)設備健全性確認の妥当性評価の結果の反映設備健全性確認は、「もんじゅ」全設備を対象とし、 点検を実施することにより当該設備の健全性を確認 すると共に、過去の点検履歴を考慮し、健全性を維 持するための点検内容、頻度を評価している。今後 も継続して実施する設備健全性の確認結果を、保全 計画に反映する。 2)経年劣化メカニズムまとめ表原子力学会標準の、「原子力発電所の高経年化対策 実施基準」を参考にしつつ、原子炉、Na系、燃料取 扱設備などの「もんじゅ」特有設備及び軽水炉と同 様の設備について、点検履歴等を参考に、劣化メカ ニズムまとめ表を作成し、点検内容や頻度の改善を図る。3)データベース化の取り組みと保守管理システムの構 築機器データベース作成を平成 22 年度中に完了さ116・「もんじゅ」は運転再開に向け、長期停止プラント の設備健全性確認計画基づく、設備の点検、試験を進 めており、平成 21 年5月末の段階で約 90%の設備に 関する点検を終了している。終了したすべての点検に ついて点検方法、点検結果、対応処置の妥当性評価を 行い、追加点検、保修等が必要な設備の摘出とそれ以 外の設備の健全性を確認した。屋外排気ダクトの補修 工事は平成 21 年5月に終了し、2次系接触型 Na 漏え い検出器は1次系の空気置換時に実施する1個を残し、 工事は平成 21 年5月に終了し、2 次系接触型 Na 漏え い検出器は1次系の空気置換時に実施する1個を残し、 90 個の交換を完了した。今後、炉心確認試験までに確実に補修、取替え及び 追加点検を実施するとともに、残された点検を計画的する。1健全性を確認した設備に関しては、平成 21年1月に 導入された保全プログラムの保全計画に点検内容を反 映し、設備の健全性を維持し、運転再開の準備を進め - 117“ “「もんじゅ」の運転再開に向けた設備健全性確認と保全プログラム“ “仲井 悟,Satoru NAKAI,向 和夫,Kazuo MUKAI
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