ショックパルス方式診断技術の適用検討

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
R値の差でショックパルスの分布を定量化し、これらを指標とし軸受け状態の判別を行う。 近年、回転機器では振動、温度、潤滑油等の機器の。 * 指標の変化の具体例を述べる。転がり軸受けに損傷 運転状態を監視することにより、保全の時期を適切に が発生した場合には大きなパルスが増加するため、L 計画する状態監視保全が試みられており、機器信頼性Rの値が大きくなるとともに、LR値とHR値の差が の向上および保全の効率化が期待されている。大きくなる。一方、油潤滑が不足し油膜の厚みが減少 - 実用化されている状態監視技術のうち、ショックパした場合は、大小のパルスが一様に大きくなり、正規 ルス方式による診断技術について、発電所実機への適分布の形を維持したまま右方向にシフトする。このた 用検討を行った。回転機器軸受けの疲労試験を行い、 め、LRとHRの差の変化は見られないもの、LRと ショックパルス方式による計測値と振動計 (加速度、 HRのそれぞれの値は増加することとなる。 速度、変位)の計測値双方の比較を行い、その結果得 られた知見について取り纏め報告する。バル発生類度)2. ショックパルス方式の概要]
* ショックパルス方式は、転がり軸受けから生ずる衝 撃波(ショックパルス)を検知し、軸受けの状態を診 断する技術である。稼働中の転がり軸受けは、通常運HR LR ショックバルスの大きさFig. 1 Shock Pulse distribution 転時より転動面(内・外輪)と転動体(ボール等)の 接触面におけるランダムな相互作用によってショック3. 適用性評価 パルスが生じている。このショックパルスを共振し易 い周波数領域に設定した加速度センサを用いて、振動 13.1 試験装置 計と同様に診断部にセンサをあてて計測する。疲労試験機は、千穂田精衝製 転がり軸受けから発生するショックパルスの発生数 学振型軸受寿命試験機 (Fig. 2) を縦軸に、ショックパルスの大きさを横軸にとると Fig. を用いた。発電所実機を模擬す 1 のとおり正規分布を示す。分布するショックパルスるため潤滑油ラインを新たに設 に対し、パルスは小さいが発生数の多いパルス (1 秒け、潤滑油はFBKタービン32 間に1000回発生)の大きさをHR、パルスは大きいが とした。試験体は、試験機回転 発生数の少ないパルス (1 秒間に40回発生)の大きさ 軸と同径のラジアル軸受け(深 をLRと設定する。LRとHRの値およびLR値とH 溝玉軸受)6206とし、各計測器 Fig. 2 Fatigue testのセンサは、軸受け設置部近傍の 連絡先:林晴久、〒459-8522 名古屋市緑区大高町字equipment 北関山 20番地の1 、中部電力(株)電力技術研究所、 電話: 050-7772-2832、 e-mail:Hayashi.Haruhisa@chuden.co.jp- 119 -信号の減衰が少ない個所へ固定した。3.2 試験結果 (1)損傷模擬の影響新品の軸受けおよび損傷模擬のため圧痕を付与した 軸受けについて、負荷荷重: 4000N、回転数:4000 rpmの試験条件にて疲労試験を実施した。その結果得られたショックパルス方式および振動計 の計測結果を Table.1 に示す。損傷模擬においては、損 傷の程度が再現できることに留意した。新品軸受けを 分解し、取り出した内輪の軌道面上に軸受け鋼球を置 き、鋼球の上より約40000Nの荷重をかけ、深さ約10 umの圧痕を付与した後、組立てを行った。17計測器 | 指標 新品軸受け 圧痕軸受け 振動計「加速度(m/s2 1471 速度 m/s 12 変位 mm 0.01」0.01 ショック LR37 計測器 157) 計測器 33 判定判定49 方式A(良好)D(損傷 LR-HRあり)パルス HR14Table.1 Measurement result新品軸受けと圧痕付与の軸受けでは、ショックパル ス方式および振動計ともに計測値に大きな変化があり、 明確に判別することができた。今回の疲労試験では、 上記の値がそのまま推移したことから、損傷が拡大す る過程をとらえることができなかった。このため、こ の経時変化の把握が今後の課題と考えている。 (2) 潤滑油の影響 ・ 新品軸受けに対し、負荷荷重:3000N、回転数: 3000rpmの試験条件で疲労試験を行い、その過程で 潤滑油供給を変化させた状況を Fig.4 に示した。横軸は 試験時間、縦軸はショクパルス方式での計測値および 振動計の加速度値を示す。試験開始より、約0.2時間後に潤滑油の供給を停止 した際、振動計では加速度値の変化は見られなかった が、ショックパルス方式では、LRとHRの差の変化 はなく、LR値およびHR値がそれぞれ上昇し、潤滑 不足としてとらえることができた。約0.7時間後の潤 滑油の再供給により計測値が復帰したため、この間の 軸受け損傷はなかったものと推定される。約1.5時間後より、潤滑油の供給を再度停止した際、 LR値およびHR値がともに高い値のまましばらく推 移した。これは、軸受けに付着した油がまだ残っており潤滑を担っていると考えられ、その影響を無くすた め、約4時間後より、油供給口から脱脂スプレーを間欠 的に注入した。スプレーの注入開始より約15分経過し た時点(スプレー注入回数:9 回)で急激に異音が発 生するとともに、振動計の加速度値の上昇が認められ た。一方、ショックパルス方式では、異音発生の10分 程前より徐々にLR値、HR値の上昇が認められ、振 動計(加速度)より早期に兆候がとらえられているこ とを確認した。その後再び潤滑油を供給したが、ショックパルス 方式および振動計(加速度) とともに計測値の上昇が認 められ、軸受けは損傷に至 ったことが確認された。当該軸受けの内輪軌道面 の損傷状況を Fig.3 に示す。 Fig.3 Damaged surface““LR-HRL R-HR-加速度(ピーク値)加速40 [m/s2]s P M 測定値10_0.5 11 .52_ 2.5_3_3.5時間 [hr]4 4.55Fig.4Measurement result4.結言ショックパルス方式による診断技術は、潤滑不良 および損傷による異常兆候の検知に対し、発電所実 機への適用が期待できる技術であることが分った。今後、経時変化のデータを取得し検討を進めてい く予定である。参考文献[1]亀井 稔、“転がり軸受けの稼働状態における的確評価の実現”、社団法人日本プラントメン テナス協会、第46回設備管理全国大会講演 (2006年12月)120“ “ショックパルス方式診断技術の適用検討“ “林 晴久,Haruhisa HAYASHI,内城 憲治,Kenji UCHIJOU
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