電磁診断技術を用いたタービン羽根の異常検出
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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
現在、原子力プラントにおけるポンプインペラ、タ ービン羽根等の非破壊検査手法としては、軸受の振動、 軸受潤滑油の性状分析等が多く用いられている。しか しながら、これらの手法は万能ではなく、軸受振動の 発生源の特定、潤滑油分析にかかる時間等、解決すべ き問題も少なくない。このような状況の中で、浜岡 5 号機と志賀 2 号機のタービンで発生した羽根の損傷事 故が発生した。これを受けて、これまでの技術では得 ることが困難であったタービン羽根の異常兆候を、早 急かつ的確に検知できる技術への要請が高まり、それ に応える技術として電磁診断技術の実機への適用につ いても検討を行っておくことは有意義と考えられる。(株)IIUの最近の研究において、回転機器の内 部回転体の状態を、ケーシングの外側から電磁的に診 断する技術の検討が進められている[1]。これは、非破 壊検査技術として実用化されている渦電流探傷試験の 技術を発展させたものであり、本技術が実用化できれ ば、既存設備の大幅な改造無しに内部回転体の状態監 視精度を向上させることが期待できる。ポンプインペ ラ等の回転体への適用について検討を行いその可能性 を確認したが、ポンプと比べ遥かに大きいタービンヘ の適用について可能性はあるものの、感度向上のため のセンサの改良、取り付け方法の改善等多くの課題が あることが分かった。 このため、本研究では実機タービンへの適用について検討することより実用化検討を進め、原子力発電所 の信頼性向上に資することを目的とする。その第一歩 として、小型の試験用電動駆動タービンを用いた試 験・分析を実施した。
2.タービン試験 2.1 タービン試験装置 - 電磁センサを対象物である回転体の回転部付近に配 置し、アンプを用いて検出コイルに誘導される電圧を 増幅し、その電圧を AD 変換によってパソコンに取り 込む。計測システムのブロック図を Fig. 1 に示す。
AnalogDigitalProbeDC AmplifierPCDataRaw DataLow PassFilterTI FilterGain{ can !A/D ConverterFileProbeDC AmplifierLow PassRaw DataFilterFig. 1 Block diagram of measurement system従来の渦電流探傷法と異なり、ここで提案した電磁 診断技術は交流磁場ではなく静磁場を使用する。静磁 場中回転する導電性羽根には、電磁誘導により渦電流 が誘導され、その渦電流を検出することで羽根の状態 を調べることができる。電磁センサは、永久磁石に検 出コイルを直接に巻くものである。センサの写真を Fig. 2 に示す。予備計算の検討結果を考慮し、より感度の 良い直径 35mm の磁石を使用した。実験用センサの仕 様を Table 1 にまとめた。132Fig. 2Photograph of the electromagnetic sensor(a) Sensor position (axial direction)able 1Specification of the electromagnetic sensor Diameter LengthTurns (mm)(mm)Cagnet35 (outer)40up coil35 (inner)201000式会社日立製作所殿より提供頂いた小型の試験用 ■駆動タービンを用いて、実験を実施した。センサ 置パターンは計9種類を試したが、ここでは代表(b) Sensor position (radial direction) Photograph of the turbine and the EMsFig.3Table 1 Specification of the electromagnetic sensor Diameter LengthTurns (mm) (mm)Magnet|35 (outer)Pickup coil |35 (inner)120|1000(b) Sensor position (radial direction) Fig. 3 Photograph of the turbine and the EM sensor株式会社日立製作所殿より提供頂いた小型の試験用 電動駆動タービンを用いて、実験を実施した。センサ の設置パターンは計9種類を試したが、ここでは代表 的な 2 パターンの結果を示す。実験の対象となるター ビンの写真とセンサの設置を Fig. 3 に示す。電磁セン サはセンサケースに収めており、センサを保護すると サはセンサケースに収めており、センサを保護すると 同時に磁性体の遮蔽効果を検証する。羽根を検出するために、タービンの上蓋が開く状態 でセンサケースを治具に設置し、BNC ケーブルを穴に 通して外に出しておく。10m ほどの BNC ケーブルで信 号をアンプまで送り、適切に増幅した信号を AID 変換 電動駆動タービンを用いて、実験を実施した。センサ の設置パターンは計9種類を試したが、ここでは代表 的な 2 パターンの結果を示す。実験の対象となるター ビンの写真とセンサの設置を Fig. 3 に示す。電磁セン サはセンサケースに収めており、センサを保護すると 同時に磁性体の遮蔽効果を検証する。羽根を検出するために、タービンの上蓋が開く状態 でセンサケースを治具に設置し、BNC ケーブルを穴に 通して外に出しておく。10m ほどの BNC ケーブルで信 号をアンプまで送り、適切に増幅した信号を AID 変換 器を通してデジタルデータをパソコンに取り込む。タ ービンの羽根の高周波振動を捉えるため、A/D 変換器 は 100kHz のサンプルレイトを採用した。タービンの回 転数は 500rpm~2000rpm に変化し、500rpm 刻みで測定 を行った。ここでは、羽根の公転信号を測定し、検出感度を評 価する試験を一般試験と呼ぶことにする。羽根の公転 信号を測定することによって、羽根の脱落や大きな欠 陥は検出できるが、羽根の微小な欠陥を検出すること が困難である。微小な欠陥を検出するためには、羽根 のねじれ運動のような高次振動を分析する必要がある。 本研究では、羽根に強制的な振動を加えて加振試験を 行った。加振ための高圧空気ノズルを Fig. 4 に示す。 加振前後の信号を比較することによって、羽根の高次 信号の検出可能性を検討する。Fig. 4The nozzle of high pressure air for excitation2.2 一般試験の結果と分析タービンの羽根を車室内に配置した電磁センサ を用いて測定した。羽根の枚数は 102 枚で、仮に羽 根がすべて同じであれば、羽根の信号の主な周波数 成分は回転周波数×羽根数と考えられる。実験の回 転速度は 500rpm~2000rpm に設定したので、羽根信 号の周波数は 850Hz~3400Hz と計算される。まず、センサが軸方向に設置し測定を行った。アン プの倍率は 10 である。Fig. 5 に回転速度 500rpm の場 合の検出信号を示す。(a) には 300ms 間の信号、(b) に は 30ms 間の信号、(c) には 0-5kHz の FFT 結果を示し ている。図 (a) に示したように、1 回転ごとに一つの 大きな信号が得られる。これは羽根を組立てる時、最 後の一枚は残る隙間に合わせて特別に制作したもので、* ここでは、羽根の公転信号を測定し、検出感度を評 価する試験を一般試験と呼ぶことにする。羽根の公転 信号を測定することによって、羽根の脱落や大きな欠 陥は検出できるが、羽根の微小な欠陥を検出すること が困難である。微小な欠陥を検出するためには、羽根 のねじれ運動のような高次振動を分析する必要がある。 本研究では、羽根に強制的な振動を加えて加振試験を 行った。加振ための高圧空気ノズルを Fig. 4 に示す。 加振前後の信号を比較することによって、羽根の高次 信号の検出可能性を検討する。2.2 一般試験の結果と分析タービンの羽根を車室内に配置した電磁センサ を用いて測定した。羽根の枚数は 102 枚で、仮に羽 根がすべて同じであれば、羽根の信号の主な周波数 成分は回転周波数×羽根数と考えられる。実験の回 転速度は 500rpm~2000rpm に設定したので、羽根信」 号の周波数は 850Hz~3400Hz と計算される。まず、センサが軸方向に設置し測定を行った。アン プの倍率は 10 である。Fig. 5 に回転速度 500rpm の場 合の検出信号を示す。(a) には 300ms 間の信号、(b) に は 30ms 間の信号、(C) には 0-5kHz の FFT 結果を示し ている。図 (a) に示したように、1 回転ごとに一つの - 133 -このタービンの場合ではその一枚の幅が他の羽根より 大きいである。その結果、検出した信号もほかの羽根 信号に比べて大きい。また、同一羽根に対して信号の 再現性が高く、羽根を高い精度で検出できたと考える。Raw signal (300ms)回転の一周期当Signal(V)100250300150 Time(ms)(a) Signal in 300msRaw signal (30ms)Signal(V)の大きい羽根の信号15Time(sec)(b) Signals in 30msFFT (0-SkHz)羽根の周波数 860HzSignal(V)0.0-back0500 100015002000250030003500400045005000Frequency (Hz)(c) Spectrum of the signals Fig. 5 Measured signals (500rpm, axial direction)回転速度は 1000rpm と 1500rpm と 2000rpm の場合で も同様に羽根信号を検出することができた。回転数が 上がることに連れて、検出信号の一周期の時間が短く になり、FFT の結果から確認できる回転周波数が高く なる。回転速度を 500rpm~2000rpm にするように設定 したが、実際はそれより若干速い速度で回転している。 例えば、500rpm で回転した場合の信号の FFT から羽根 の周波数は 860.0Hz と確認でき、羽根の枚数 102 で割ると回転速度は 505.9rpm と計算される。従って、電磁 センサを用いて回転速度を高精度で検出することが可 能と分かった。つぎ、センサが半径方向に設置し測定を行った。ア ンプの倍率は 100 である。Fig.6に回転速度 500rpm の 場合の検出信号を示す。Raw signal (300ms)Signal(V)-2.5-回転の一周期-3. 0TNE150100300150200250 Time(ms)(a) Signal in 300msRaw signal (30ms)Signal(V)での大きい羽根の信号101520Time(sec)(b) Signals in 30msFFT (0-5kHz)羽根の周波数 860HzSignal()0.05-110.00-1 10500100015002000250030003500400045005000Frequency (Hz)(c) Spectrum of the signals Fig. 6 Measured signals (500rpm, radial direction)径方向に設置した検出コイルでは、羽根に直面し たわけではなくリング状の金属ガイドに覆っており、 検出感度は軸方向に配置した場合より大幅低くなっ ている。しかし、径方向の検出はタービン羽根の径 方向の変位を捉えることができ、タービン羽根の診 断には不可欠だと考えられる。13442.3 加振試験の結果と分析タービンの羽根を高圧空気で加振しながら電磁 センサを用いて測定した。生信号と低周波成分の比較 では、加振による有意な変化が見られなかった。検出 信号は主に羽根の大きさ・材料特性およびセンサから の距離で決めており、加振による振動の振幅は僅かで あり影響が小さいと考えられる。 * 検出信号に占める割合は小さいが、5kHz 以上の成分 に加振による影響が見られる。FFT 結果(5kHz~ 20kHz) を 1kHz ごとに積分した結果を Fig. 7 と Fig. 8 に示す。加振前後に変化を現した周波数領域に丸付 けをした。回転数が 500rpm と 1000pm の場合では、 加振前後の変化が見えるが、回転数が 1500rpm と 2000rpm の場合では加振による変化が小さく、加振 前後の信号を区別できなくなることが分かった。こ れは回転速度上がることに連れて羽根の振動が大き くなり、加振の影響が相対的に小さくなったと考え られる。また、羽根の公転信号では径方向の検出感 度が軸方向より低いが、加振の影響では径方向の検 出が逆に顕著であることが分かった。3. 結言- 小型の試験用電動駆動タービンを対象に実験を実施 し、得られた結果を以下にまとめる。 1. 一般試験では、小型タービンの羽根の信号を高精度で検出することが可能と分かった。同一羽根に対し て信号の再現性が高く、回転速度を精密測定することができると分かった。 2. 軸方向と径方向に設置したセンサが共に羽根信号を検出することができる。軸方向の場合の検出感度が高いと分かった。 3. 加振試験では、検出信号の低周波領域には加振の影響が小さいが、高周波数領域に加振による変化が見 られ、信号処理技術の向上で羽根の高周波振動を検 出することが可能であることが示された。謝辞本研究は株式会社日立製作所、中部電力株式会社お よび北陸電力株式会社からの委託研究「回転体の電磁 診断研究その2」の成果の一部である。参考文献[1] D. Kosaka, H. Huang, N. Yusa and K. Miya.““Electromagnetic Nondestructive Evaluation of RotatingBlades”. The 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, Michigan State University, USA, 2007/09/09-12.without excitation with excitationintegration(mV)245000100001500020000Frequency (Hz)(a) Results of 500rpmintegration(mV)without excitation with excitation5000100001500020000Frequency (Hz)Fig. 7(b) Results of 1000rpm Comparison of the spectrum of the signals with &without excitation (axial direction)- without excitation --- with excitationintegration(mV)5000100001500020000Frequency (Hz)(a) Results of 500rpmHTTTTTTTTTTTwithout excitation --- with excitationintegration(mV)くう01 5000100001500020000Frequency (Hz)Fig. 8(b) Results of 1000rpm Comparison of the spectrum of the signals with &without excitation (radial direction)135“ “?電磁診断技術を用いたタービン羽根の異常検出“ “黄 皓宇,Haoyu HUANG,柴下 直昭,Naoaki SHIBASHITA,釘本 三男,Mitsuo KUGIMOTO,塚本 透,Toru_ TSUKAMOTO
現在、原子力プラントにおけるポンプインペラ、タ ービン羽根等の非破壊検査手法としては、軸受の振動、 軸受潤滑油の性状分析等が多く用いられている。しか しながら、これらの手法は万能ではなく、軸受振動の 発生源の特定、潤滑油分析にかかる時間等、解決すべ き問題も少なくない。このような状況の中で、浜岡 5 号機と志賀 2 号機のタービンで発生した羽根の損傷事 故が発生した。これを受けて、これまでの技術では得 ることが困難であったタービン羽根の異常兆候を、早 急かつ的確に検知できる技術への要請が高まり、それ に応える技術として電磁診断技術の実機への適用につ いても検討を行っておくことは有意義と考えられる。(株)IIUの最近の研究において、回転機器の内 部回転体の状態を、ケーシングの外側から電磁的に診 断する技術の検討が進められている[1]。これは、非破 壊検査技術として実用化されている渦電流探傷試験の 技術を発展させたものであり、本技術が実用化できれ ば、既存設備の大幅な改造無しに内部回転体の状態監 視精度を向上させることが期待できる。ポンプインペ ラ等の回転体への適用について検討を行いその可能性 を確認したが、ポンプと比べ遥かに大きいタービンヘ の適用について可能性はあるものの、感度向上のため のセンサの改良、取り付け方法の改善等多くの課題が あることが分かった。 このため、本研究では実機タービンへの適用について検討することより実用化検討を進め、原子力発電所 の信頼性向上に資することを目的とする。その第一歩 として、小型の試験用電動駆動タービンを用いた試 験・分析を実施した。
2.タービン試験 2.1 タービン試験装置 - 電磁センサを対象物である回転体の回転部付近に配 置し、アンプを用いて検出コイルに誘導される電圧を 増幅し、その電圧を AD 変換によってパソコンに取り 込む。計測システムのブロック図を Fig. 1 に示す。
AnalogDigitalProbeDC AmplifierPCDataRaw DataLow PassFilterTI FilterGain{ can !A/D ConverterFileProbeDC AmplifierLow PassRaw DataFilterFig. 1 Block diagram of measurement system従来の渦電流探傷法と異なり、ここで提案した電磁 診断技術は交流磁場ではなく静磁場を使用する。静磁 場中回転する導電性羽根には、電磁誘導により渦電流 が誘導され、その渦電流を検出することで羽根の状態 を調べることができる。電磁センサは、永久磁石に検 出コイルを直接に巻くものである。センサの写真を Fig. 2 に示す。予備計算の検討結果を考慮し、より感度の 良い直径 35mm の磁石を使用した。実験用センサの仕 様を Table 1 にまとめた。132Fig. 2Photograph of the electromagnetic sensor(a) Sensor position (axial direction)able 1Specification of the electromagnetic sensor Diameter LengthTurns (mm)(mm)Cagnet35 (outer)40up coil35 (inner)201000式会社日立製作所殿より提供頂いた小型の試験用 ■駆動タービンを用いて、実験を実施した。センサ 置パターンは計9種類を試したが、ここでは代表(b) Sensor position (radial direction) Photograph of the turbine and the EMsFig.3Table 1 Specification of the electromagnetic sensor Diameter LengthTurns (mm) (mm)Magnet|35 (outer)Pickup coil |35 (inner)120|1000(b) Sensor position (radial direction) Fig. 3 Photograph of the turbine and the EM sensor株式会社日立製作所殿より提供頂いた小型の試験用 電動駆動タービンを用いて、実験を実施した。センサ の設置パターンは計9種類を試したが、ここでは代表 的な 2 パターンの結果を示す。実験の対象となるター ビンの写真とセンサの設置を Fig. 3 に示す。電磁セン サはセンサケースに収めており、センサを保護すると サはセンサケースに収めており、センサを保護すると 同時に磁性体の遮蔽効果を検証する。羽根を検出するために、タービンの上蓋が開く状態 でセンサケースを治具に設置し、BNC ケーブルを穴に 通して外に出しておく。10m ほどの BNC ケーブルで信 号をアンプまで送り、適切に増幅した信号を AID 変換 電動駆動タービンを用いて、実験を実施した。センサ の設置パターンは計9種類を試したが、ここでは代表 的な 2 パターンの結果を示す。実験の対象となるター ビンの写真とセンサの設置を Fig. 3 に示す。電磁セン サはセンサケースに収めており、センサを保護すると 同時に磁性体の遮蔽効果を検証する。羽根を検出するために、タービンの上蓋が開く状態 でセンサケースを治具に設置し、BNC ケーブルを穴に 通して外に出しておく。10m ほどの BNC ケーブルで信 号をアンプまで送り、適切に増幅した信号を AID 変換 器を通してデジタルデータをパソコンに取り込む。タ ービンの羽根の高周波振動を捉えるため、A/D 変換器 は 100kHz のサンプルレイトを採用した。タービンの回 転数は 500rpm~2000rpm に変化し、500rpm 刻みで測定 を行った。ここでは、羽根の公転信号を測定し、検出感度を評 価する試験を一般試験と呼ぶことにする。羽根の公転 信号を測定することによって、羽根の脱落や大きな欠 陥は検出できるが、羽根の微小な欠陥を検出すること が困難である。微小な欠陥を検出するためには、羽根 のねじれ運動のような高次振動を分析する必要がある。 本研究では、羽根に強制的な振動を加えて加振試験を 行った。加振ための高圧空気ノズルを Fig. 4 に示す。 加振前後の信号を比較することによって、羽根の高次 信号の検出可能性を検討する。Fig. 4The nozzle of high pressure air for excitation2.2 一般試験の結果と分析タービンの羽根を車室内に配置した電磁センサ を用いて測定した。羽根の枚数は 102 枚で、仮に羽 根がすべて同じであれば、羽根の信号の主な周波数 成分は回転周波数×羽根数と考えられる。実験の回 転速度は 500rpm~2000rpm に設定したので、羽根信 号の周波数は 850Hz~3400Hz と計算される。まず、センサが軸方向に設置し測定を行った。アン プの倍率は 10 である。Fig. 5 に回転速度 500rpm の場 合の検出信号を示す。(a) には 300ms 間の信号、(b) に は 30ms 間の信号、(c) には 0-5kHz の FFT 結果を示し ている。図 (a) に示したように、1 回転ごとに一つの 大きな信号が得られる。これは羽根を組立てる時、最 後の一枚は残る隙間に合わせて特別に制作したもので、* ここでは、羽根の公転信号を測定し、検出感度を評 価する試験を一般試験と呼ぶことにする。羽根の公転 信号を測定することによって、羽根の脱落や大きな欠 陥は検出できるが、羽根の微小な欠陥を検出すること が困難である。微小な欠陥を検出するためには、羽根 のねじれ運動のような高次振動を分析する必要がある。 本研究では、羽根に強制的な振動を加えて加振試験を 行った。加振ための高圧空気ノズルを Fig. 4 に示す。 加振前後の信号を比較することによって、羽根の高次 信号の検出可能性を検討する。2.2 一般試験の結果と分析タービンの羽根を車室内に配置した電磁センサ を用いて測定した。羽根の枚数は 102 枚で、仮に羽 根がすべて同じであれば、羽根の信号の主な周波数 成分は回転周波数×羽根数と考えられる。実験の回 転速度は 500rpm~2000rpm に設定したので、羽根信」 号の周波数は 850Hz~3400Hz と計算される。まず、センサが軸方向に設置し測定を行った。アン プの倍率は 10 である。Fig. 5 に回転速度 500rpm の場 合の検出信号を示す。(a) には 300ms 間の信号、(b) に は 30ms 間の信号、(C) には 0-5kHz の FFT 結果を示し ている。図 (a) に示したように、1 回転ごとに一つの - 133 -このタービンの場合ではその一枚の幅が他の羽根より 大きいである。その結果、検出した信号もほかの羽根 信号に比べて大きい。また、同一羽根に対して信号の 再現性が高く、羽根を高い精度で検出できたと考える。Raw signal (300ms)回転の一周期当Signal(V)100250300150 Time(ms)(a) Signal in 300msRaw signal (30ms)Signal(V)の大きい羽根の信号15Time(sec)(b) Signals in 30msFFT (0-SkHz)羽根の周波数 860HzSignal(V)0.0-back0500 100015002000250030003500400045005000Frequency (Hz)(c) Spectrum of the signals Fig. 5 Measured signals (500rpm, axial direction)回転速度は 1000rpm と 1500rpm と 2000rpm の場合で も同様に羽根信号を検出することができた。回転数が 上がることに連れて、検出信号の一周期の時間が短く になり、FFT の結果から確認できる回転周波数が高く なる。回転速度を 500rpm~2000rpm にするように設定 したが、実際はそれより若干速い速度で回転している。 例えば、500rpm で回転した場合の信号の FFT から羽根 の周波数は 860.0Hz と確認でき、羽根の枚数 102 で割ると回転速度は 505.9rpm と計算される。従って、電磁 センサを用いて回転速度を高精度で検出することが可 能と分かった。つぎ、センサが半径方向に設置し測定を行った。ア ンプの倍率は 100 である。Fig.6に回転速度 500rpm の 場合の検出信号を示す。Raw signal (300ms)Signal(V)-2.5-回転の一周期-3. 0TNE150100300150200250 Time(ms)(a) Signal in 300msRaw signal (30ms)Signal(V)での大きい羽根の信号101520Time(sec)(b) Signals in 30msFFT (0-5kHz)羽根の周波数 860HzSignal()0.05-110.00-1 10500100015002000250030003500400045005000Frequency (Hz)(c) Spectrum of the signals Fig. 6 Measured signals (500rpm, radial direction)径方向に設置した検出コイルでは、羽根に直面し たわけではなくリング状の金属ガイドに覆っており、 検出感度は軸方向に配置した場合より大幅低くなっ ている。しかし、径方向の検出はタービン羽根の径 方向の変位を捉えることができ、タービン羽根の診 断には不可欠だと考えられる。13442.3 加振試験の結果と分析タービンの羽根を高圧空気で加振しながら電磁 センサを用いて測定した。生信号と低周波成分の比較 では、加振による有意な変化が見られなかった。検出 信号は主に羽根の大きさ・材料特性およびセンサから の距離で決めており、加振による振動の振幅は僅かで あり影響が小さいと考えられる。 * 検出信号に占める割合は小さいが、5kHz 以上の成分 に加振による影響が見られる。FFT 結果(5kHz~ 20kHz) を 1kHz ごとに積分した結果を Fig. 7 と Fig. 8 に示す。加振前後に変化を現した周波数領域に丸付 けをした。回転数が 500rpm と 1000pm の場合では、 加振前後の変化が見えるが、回転数が 1500rpm と 2000rpm の場合では加振による変化が小さく、加振 前後の信号を区別できなくなることが分かった。こ れは回転速度上がることに連れて羽根の振動が大き くなり、加振の影響が相対的に小さくなったと考え られる。また、羽根の公転信号では径方向の検出感 度が軸方向より低いが、加振の影響では径方向の検 出が逆に顕著であることが分かった。3. 結言- 小型の試験用電動駆動タービンを対象に実験を実施 し、得られた結果を以下にまとめる。 1. 一般試験では、小型タービンの羽根の信号を高精度で検出することが可能と分かった。同一羽根に対し て信号の再現性が高く、回転速度を精密測定することができると分かった。 2. 軸方向と径方向に設置したセンサが共に羽根信号を検出することができる。軸方向の場合の検出感度が高いと分かった。 3. 加振試験では、検出信号の低周波領域には加振の影響が小さいが、高周波数領域に加振による変化が見 られ、信号処理技術の向上で羽根の高周波振動を検 出することが可能であることが示された。謝辞本研究は株式会社日立製作所、中部電力株式会社お よび北陸電力株式会社からの委託研究「回転体の電磁 診断研究その2」の成果の一部である。参考文献[1] D. Kosaka, H. Huang, N. Yusa and K. Miya.““Electromagnetic Nondestructive Evaluation of RotatingBlades”. The 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, Michigan State University, USA, 2007/09/09-12.without excitation with excitationintegration(mV)245000100001500020000Frequency (Hz)(a) Results of 500rpmintegration(mV)without excitation with excitation5000100001500020000Frequency (Hz)Fig. 7(b) Results of 1000rpm Comparison of the spectrum of the signals with &without excitation (axial direction)- without excitation --- with excitationintegration(mV)5000100001500020000Frequency (Hz)(a) Results of 500rpmHTTTTTTTTTTTwithout excitation --- with excitationintegration(mV)くう01 5000100001500020000Frequency (Hz)Fig. 8(b) Results of 1000rpm Comparison of the spectrum of the signals with &without excitation (radial direction)135“ “?電磁診断技術を用いたタービン羽根の異常検出“ “黄 皓宇,Haoyu HUANG,柴下 直昭,Naoaki SHIBASHITA,釘本 三男,Mitsuo KUGIMOTO,塚本 透,Toru_ TSUKAMOTO