リスク情報を活用した保全計画信頼性評価手法の検討Ⅱ-その2:機器の部位の劣化状態の分析に基づく機器故障率評価の適用例

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カテゴリ: 第6回
.緒言
「リスク情報を活用した保全計画信頼性評価手法 つ検討II(その1)」(以下、「(その1)」と言う)に ついては、【劣化状態から機器の機能喪失状態への進 長】の設定の詳細化として、健全状態から劣化状態、能喪失状態に進展するプロセスの検討を行い、保全 [画信頼性評価手法における機器故障率の変化割合 の定式化を行った。機器故障率の変化割合の実際的な評価においては、 今化事象発生率や点検モードの検知確率等、各種パラ マータへの数値設定が必要であるが、実績データから 女値設定を行うことは簡単ではない。そこで本稿では、各評価パラメータに対して基準を 設け、その基準に応じた相対値を適用して、機器故障 昼の変化割合の評価の試行を行った。機器故障率の変割合の評価の試行には、実プラントで運用されてお コ、劣化事象毎に点検タスクと保全周期が取り纏めら した関西電力の「保全指針」を利用した。
幾器故障率の変化割合の体系的評価方法 2.機器故障率の変化割合の体系的評価方法 の検討(その1)では、保全計画変更前後の機器故障率の 変化割合は、3式で表されることを示した。 al 2b
...3 機器故障率の変化割合の評価の試行を行う 下の検討を行った。機器故障率の変化割合の評価の試行を行うため、以 この検討を行った。機器故障率の変化割合の評価式の簡略化 評価パラメータの設定基準検討152 -2.1 機器故障率の変化割合の評価式の簡略化保全計画変更による状態監視の拡充(振動診断の導 入)の影響に注目して評価を行うため、以下に示す仮 定を導入して、2式の簡略化を行った。CM4 以外の【運転パラメータ監視(CM1)】【 回点検(CM2)】 【機能確認試験(CM3)】【分解点 検(CMS)】の検知確率が劣化事象毎で変化せず 一様であるという仮定 (CM1、CM2、CM3、CMS のそれぞれの検知確 率 a ojagja kja f は、部位 i 劣化事象jに依存しない形 a on agnak、 a rで表される。) また、全部位の劣化事象発生率を2,とする場合、 R;; が 2'に対する部位i劣化事象jの劣化事象発生率 2'の占有割合とすると、4式の関係が成り立つ。2°= 'XR; ...の式 上記の仮定および4式を3式に適用することによ り、検知確率の評価パラメータ aoyagnak、a f お よび2'は分母・分子で相殺され、最終的に以下に示 す5式が導かれる。 2 al 2bSRX (1- a os) × (1-ags) × (1- axis) × (1- a sis) | | (1-agi) × (1-75) XIMP;JR × (1-a os)×1-a es) × (1- aki)×(1- ass) ×(1-73) XIMP;「R×(1-a)×(1-a)×(1ax)×(1-ass)×(1-a)×(1-13) XIMP;][R;(1-a) ×(1-ag) × ( 1 - ax)×(1-a)×(1-ys) XIMP;Sa'(1-a)×(1-allyTlRj× ( 1 - asis) × (1-y g)×4 1 ×(1-a)×(1-a) (S I MP:Ja'×(1-a)×(1-aB× (1-01)× (1-a)DR × (1-ys) XIMP;-R × (1-ass) × (1-vy) XIMP; }{ RX (1-ya) IMP2.2 評価パラメータの設定基準の検討5式の評価を行うため、R、Vj、IMP;、 a sj の評 価パラメータに対して数値を設定する必要はあるが、実績データより絶対値を与えることは簡単ではない。 ここで、5式の分母と分子は同じ形で展開されている ことに注目すると、評価パラメータに対して絶対値を 設定せず、相対値を与えることでも評価が可能となる。そこで、各評価パラメータに設定する相対値を与え るべく、以下の Table 1 ~ Table 4 に示す設定基準 (大・中・小といった定性的・相対的なスコアリング 基準)を検討した。この設定基準は、数名の専門家が 集まり議論を行い、設定を実施した。く、WSHHMTable 1 占有割合 RF の設定基準 R; : 全部位の劣化事象発生率2'に対する、部位 i 劣 化事象の劣化事象発生率2の占有割合 大「劣化事象発生率は比較的高い 中「発生するが、(高/低)どちらとも言えない 小「劣化事象発生率は比較的低い スコアリング基準:摩耗、剥離、面荒れ、エロージョ ン、ピッチング等、分解点検時に確認された経験があ ると判断される劣化事象は基本的に『中』、その他は 『小』とする。えるTable2 非遷移確率y の設定基準 y:機器の部位i劣化事象による劣化状態から部位 | の機能喪失状態への非遷移確率部位の機能喪失状態まで進展する確率は低 い(偶発・突発的) 進展するが、(高/低)どちらとも言えない 部位の機能喪失状態まで進展する確率は高大|中|小}スコアリング基準:取替、寸法計測(トレンド管理) の点検内容が適用される劣化事象は、基本的に『中』 とする。その他の劣化事象は基本的に『大』とする。 ただし、劣化事象が破損の場合のみ『小』とする。}}Table3 機器故障率における部位の機能喪失が占める割合 IMP; の設定基準 IMP; : 機器故障率における部位iの機能喪失が占める 割合当該部位の機能喪失が機器故障率に占める割合は高い(重要な劣化・故障モード) | 中 「占める割合は(高/低)どちらとも言えない |当該部位の機能喪失が機器故障率に占める割合は低い スコアリング基準:部位や構造から、機器故障率に対 し当該部位の機能喪失が占める割合が高いと判断し た劣化事象は『大』とする。機器故障率に占める割合 がないと判断した劣化事象は『小』とする。|大|中|小|山)153Table 4 検知確率 a s の設定基準 | as: 【振動診断(CM4) 】に基づく機器の部位i劣化」 事象による劣化状態の検知確率 大「振動診断による劣化状態の検知確率は高い振動診断による劣化状態の検知確率は高い、 あるいは、低い以外の状態。 振動診断による劣化状態の検知確率は低い 振動診断による劣化状態の検知確率は不可|中|小|||スコアリング基準:経験上、振動事象として出現し易 いと判断される劣化事象は『大』とする。経験上、振 動事象に出現し難いと判断される劣化事象は『小』、 その他は『中』とする。3. 機器故障率の変化割合の評価の試行 3.1 ポンプを対象とした評価の試行劣化事象毎に点検タスクと保全周期が取り纏めら れた関西電力の「保全指針」を利用して、2.2 の設定 基準に基づき、充てん/高圧注入ポンプ(CH/SIP) の機器故障率の変化割合の評価の試行を行った。 Tables に評価パラメータの相対値の設定例を示す。以下に、評価パラメータの相対値の設定プロセスを 示す。 1 CH/SIP の 47 部位(I=47) ・53 タスク (J,=53)に対して、Table 1 ~ Table 4 の設定基準に基づき、 R、Y、IMP;、asの相対値を設定。(例:『大 =0.7』『中=0.5』『小=0.3』) y、asi に関しては、各タスクに対して、設定する相対値をそのまま適用。 3R、IMP, に関しては、タスク全体の相対値合計を「1」とした相対値の割合を、各タスクに適用。『大』、『中』、『小』に与える相対値には、ベースケ ースの評価として適切になるよう、中間的な数値と考 えられる『0.7』、『0.5』、『0.3』を適用した。その結果、 機器故障率は約43%低減する結果が得られた。(Iaa/ 2b]=0.571)Table 5 評価パラメータの相対値の設定例(充てん/高圧注入ポンプ)■部位の 「劣化事象点検部位No機器名称検知確率部位機器故障率における部 点検占有割合非遷移確率位の機能喪 周期 、失が占める NA IMP;劣化事象モード点検内容11A充てん/高圧注入ポンプ | TBM|1| 1カップリングキー変形1.VT 12. PT 3. 寸法計測 (1.2に関しては定事検対象) |PT/VT |寸法計測小中大大中大大大2 A充てん/高圧注入ポンプ|TBM 2 | メカスリーブキー変形 [3]A充てん/高圧注入ポンプ | TBM 31 1 主軸/カップリングはめあい部「摩耗大日 大 中大中また今回の試行は、各評価パラメータに対して、技 術的判断に基づく大まかな相対値を与えたものであ り、今後詳細な検討の余地がある。今回の試行においては、特に、機器故障率における 部位の機能喪失が占める割合 IMP; について、以下に 示す問題点が挙げられる。 ・ 劣化事象は、機器の機能喪失の主要因となり得る ポンプ主軸の機能喪失を引き起こす「疲労き裂」 や「摩耗」から、機器の機能喪失の要因とはなり 得ない可視窓の「汚れ」まで存在し、機器の機能 喪失への影響度は幅が広い。 しかし、今回の試行では、各劣化事象の IMP;に、 『大』、『中』、『小』の相対値を適用した結果、そ れぞれ、『2.6%』、『1.9%』、『1.1%』の割合が与え られた。 機器の機能喪失の主要因となるものと、そうでは ない劣化事象の IMP; には、より幅の広い相対値 の設定が必要であるが、今回の試行では、その差 が狭くなっている。 この問題の解決のため、今後、部位毎の評価パラメ ータに設定するより詳細な相対値の検討、及び、蓄積 する保全実績データ(不適合データ、点検記録、As Found データ等)の利用を考えていく必要がある。3.2 評価パラメータに設定する相対値の感度 解析3.1 の結果を基に、各評価パラメータに設定する 『大』、『中』、『小』の相対値を変更して、機器故障率 の変化割合 【2a/2b】の感度解析を実施した。その 結果を、Table 6に示す。この感度解析の結果より、相対値の与え方により、 機器故障率の変化割合が大きく変動することが分か る。特に、各評価パラメータの値が大きくなるほど、 【2a/2b】が小さくなることがわかる。154、Table 6 CH/SIP の振動診断導入による 機器故障率の変化割合の感度解析結果5必< .10.3 | 03評価パラメータに 機器故障率設定する相対値 の変化割合 (大、中、小の相対値) 【2a/2b】 | 小 | 中 | 大 | 0.1 | 0.1 | 01 | 0.950.30.85 | 0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.75 0.7 0.7 0.70.65 | 0.9 | 09 | 0.9 | 0.55 0.10.70.45 0.1 0.50.31 0.3 0.50.57 0.3 0.5 0.90.450.50.90.74.結言 10 (その1)で定式化した機器故障率の変化割合の 評価を試行した。試行に際しては、実プラントで 運用されている「保全指針」を利用して、各評価 パラメータに対して基準を設け、その基準に応じ た相対値を設定して試行した。 2) 今回の機器故障率の変化割合の評価の試行では、 式の簡略化により振動診断のみの影響を扱うこと とした。今後は、他の設備診断技術の影響についても考慮する必要がある。 3) 今回の検討での評価パラメータに設定した相対値と、(将来的に)実績データから求められる相対値 には、大きな差があると考えられる。今後、部位毎の評価パラメータに設定するより 詳細な相対値の検討、及び、蓄積する保全実績デ ータ(不適合データ、点検記録、As Found データ 等)の利用を考え、評価精度の向上を図る必要が ある。 4) 感度解析の結果より、評価パラメータに設定する 相対値により、機器故障率の変化割合が大きく変 動し、設定する相対値の重要性が確認できた。ま た、評価パラメータに設定する相対値に大きな数 値を与えるほど、機器故障率の低減効果は大きく なることがわかった。5.今後の取り組み今後の取り組みとして、以下の検討を実施していく 必要がある。 <評価パラメータに設定する相対値>部位毎の評価パラメータに設定する相対値の詳 細検討(静的部位と動的部位、電気系部位と機械 系部位といった部位の劣化事象毎で設定する、或 いは、R、Y、IMP,asi といったパラメータ毎 に設定する。) 蓄積する保全実績データ(不適合データ、点検記 録、As Found データ等)の評価パラメータに設定 する相対値への利用検討。<機器故障率の変化割合の評価手法>今回の評価では、【振動診断(CM4)】のみの検知確 率を考慮するため簡略化を行った。実際の保全活動を 鑑みた場合、今後、以下の検討が必要となる。 ・ 全ての状態監視の点検モードに基づく部位・劣化 事象の検知確率を考慮する。 部位・劣化事象に対する状態監視の点検モード間 の検知確率の関係(重複等)を整理する。-ド間 - 155 -“ “リ?スク情報を活用した保全計画信頼性評価手法の検討ーその2:機器の部位の劣化状態の分析に基づく機器故障率評価の適用例“ “千種 直樹,Naoki CHIGUSA,成宮 祥介,Yoshiyuki NARUMIYA,出野 利文,Toshifumi IDENO,関村 直人,Naoto SEKIMURA,藤田 智,Satoshi FUJITA,清水 俊一,Shunichi SHIMIZU,倉本 孝弘,Takahiro KURAMOTO,東山 太一,Taichi HIGASHIYAMA
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