新保全技術の技術基準への適合性確認について

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カテゴリ: 第6回
1. はじめに
原子力安全・保安院(以下、「NISA」という。)は、 原子力発電所のより一層の安全性確保のために、平成 21年1月、法令を改正し、「保全プログラム」を基礎と する検査制度に移行した。その目的の一つに、トラブ ルや水平展開の予防保全の着実な実行が必要であると 認識している。新検査制度の下では、技術的に既知の範囲で発生す る管理ミスによるトラブルについては、根本原因分析 など品質保証の体系化で対応することとしている。 一方、トラブル等が発生した場合に、予防保全、補修 等の実機への適用に際し、技術評価が必要な場合に、 これに要する時間や許認可手続きの不透明感等から、 事業者において、データの蓄積や新工法の開発が必ずしも積極的になされる環境が整備されていない面が見 受けられる。このような現状に鑑み、今後導入が見込 まれる新たな保全技術や検査技術について、NISA とし ても積極的に情報収集を行い、その適用性や許認可手 続き上の位置付け等について、余裕をもって事前検討 し、より円滑な導入環境を整備し、原子力発電所の予 防保全の迅速かつ着実な実効を可能とすることが必要 であると認識している。このため、NISA は、(独)原 子力安全基盤機構(以下、「JNES」という。)に検討支 援体制(検討会)を整備し、原子炉安全小委員会「検の審議を受けつつ導査技術評価ワーキンググループ」の審議を受けつつ導 入促進を図る体制を構築した。
2.検討内容
2.1 JNES での検討作業会 - 平成20年6月、JNES に電力関係者、メーカ、NISA 及び JNES 等のメンバーで構成される「新保全技術適 合性検討作業会(以下、「RNP'」という。)」を設置し、 平成 21 年 6月末日までに9回開催した。RNP では、 導入が想定される技術課題の抽出、技術基準への適合 性確認の進め方等を検討し、円滑な技術導入に関する 検討を行っている。(Fig.1 参照) 2.2 検討課題の抽出早急に導入が見込まれる保全技術から、RNP の進め 方を検討する上でも、雛形となる技術要素を抽出した。 1 テンパービード溶接工法本工法は、溶接施工技術に特化した導入検討例とし て選定。維持規格補修章に規定された技術要素である。 2 キャップ工法本工法は、溶接施工技術要素に加えて、導入のため には原子炉圧力バウンダリーとして、構造上の技術基 準適合性の評価が必要な課題である。ひび等の欠陥を 残した状態で補修される技術要素であり、維持規格補 修章に規定された技術要素である。 3 ウェルドオーバレイ(以下、「WOL」という。)工法 本工法は、ひび等の欠陥を残した状態で補修がなさRNP; Review of New Procedure for Technical Standards of Electric Facilities.191れる補修溶接技術であり、溶接金属が新たな構造強度 を確保するための部材となる。現在のところ維持規格 補修章には規定されていない技術である。 2.3 新技術導入のプロセス平成18年1月1日、NISA は、新技術の導入促進を 図るために技術基準を性能規定化した。一方この性能 規定化にともなって、従前、「特認」と称された明確な 手続きが容易に活用できない状態となったものの、こ れに代わる技術基準適合性確認手順が明確に制度化さ れていない状況下、「特認」に代わる新しい技術基準適 合性確認手法の明確化が望まれている。一般に、新技術の導入に対しては、先ず、その適用 範囲を限定して技術基準への適合性を確認し、実機に 適用を図る。その後、学協会がその適用範囲を再検討 の上、規格を制定し、NISA の技術評価を経て、エンド ースへと段階的に検討が進められる。長期間に亘るこのような新技術の導入プロセスに対 して、現在の性能規定化された技術基準に照らし、適 用範囲の明確化等の具体的な課題等を事業者、NISA 及 び JNES 間で共通認識を持つことが重要である。新技 術導入のプロセスは、次の3種類に分類整理した。 プロセス1 (特認等を受けた保全技術の適合性確認) 法体系が性能規定化される以前に認可等(特認)を 受ける等により、技術基準等の法令への適合性が確認 された案件については、現時点でも適合していること を明確化する。このためには、例えば、施工法の確認 だけでなく予熱、後熱処理や非破壊検査等の検査基準 についてもその取り扱いを NISA 指示文書等の発出に より、明確化する必要がある。 プロセス 2 (確性試験等を受けた新技術適合性確認)(財)発電設備技術検査協会の確性試験等により、 技術的妥当性の確認を受けている新保全技術に対して、 NISA 及び JNES は、その適用範囲、適用条件が限定的 に設定され、その枠内(範囲)で安全性、耐久性、検 査性等の技術評価が行われていることを再確認して、 このデータを根拠に、技術基準への適合性を確認する。このために、規制当局内(NISA 及び JNES)での確 認体制(前述の RNP、Fig.1 参照)を整えた。プロセス 3(保全技術の規格化及び技術評価) 12. 日本機械学会が、これまでの導入実績(テンパービ ード溶接方法等)を踏まえて、維持規格の補修章への 規格化、見直しを行い、NISA は、この民間規格を技術 評価(エンドース)することで、保全技術の導入を一一般化する。即ち、テンパービード溶接の確性試験及び 技術基準への適合性確認を受けることなく、規格通り の試験を行なうことにより、実機への適合が可能とな る。なお、規格のエンドース作業については、NISA は JNES の技術支援を踏まえて基準評価 WG や検査技術 評価 WG を活用する体制を整えており、この手順の積 極的な活用が望まれる。 2.4 現在の検討状況 プロセス1 (1) 既に、平成 19年12月6日以前に電気事業法に基づ き実施された検査で適合性が確認された溶接施工法は、 技術基準に適合しているものとする。(平成 19年 12月 6日付け NISA 文書にて指示済み) (2) 実機適用がなされていない下記 a), b)については、 a) 溶接特認を得ている条件(取得者、適用範囲、確認項目範囲内等)での新たな溶接施工法確認が必 要なもの b) (財)発電設備技術検査協会内に設置された「電気設技術基準機能性化適合調査」(RTT) 委員会や第 三者機関による確性試験の審議を経て、技術基準 適合性が確認されている条件内での新たな溶接施 工法の確認が必要なもの 平成 21年5月1日に NISA 文書「電気事業法施行規 則に基づく溶接事業者検査(原子力設備)の解釈(内 規)を改定し明確化した。なお、本解釈に、溶接後熱 処理が不要な溶接方法としてテンパービード溶接方法 を適用する場合の溶接事業者検査に係る検査の方法と して、別表 3 を新しく追加し、溶接部の材料、溶接部 の開先、溶接の作業及び溶接設備、非破壊検査の内容 を明確化した。 (3) 維持規格の補修章 RB-2800 に記載されているキャ ップによる補修方法については、実機適用がなされて いないが、確性試験を行い、RTT 委員会等で審議され、 維持規格として既に規格化されている。実機適用に向けての課題としては、 * 1 溶接規格に規定のない溶接構造を用いること2 き裂を残すことの手続き上の整理を行うこと がある。1については、キャップ工法は適用箇所及び 施工会社が限定されていることから、事業者からは法? RTT; Review of Technology for Technical Standards of Electric Facilities192令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)に よる照会の提案があり、現在、確性試験、RTT 委員会 で審議された内容等について技術基準への適合性の観 点から再確認中である。2については、キャップ部は 工事計画認可申請、き裂部は電気事業法第 55 条第3項 の報告の手続きを行う方向で検討中である。 (4) WOL 工法については、確性試験を実施し、平成 15 年に事業者からの適用にあたっての法令上の扱いにつ いて照会があり、原子炉安全小委員会機器設計 WGで 審議され、平成16年6月に WOL 工法の技術的妥当性 は確認されている。その際課題とされた 60度制限につ いても、その後規格の整備が行われたことから技術基 準の解釈により撤廃となっており、実機適用に向けた 残りの課題としては、次の2点である。 1WOL施行部位が技術基準第9条 15号を満たすものであることの明確化 2技術基準第9条の2を満たすため、WOL 施工部位に対するき裂に関する検査方法等の明確化 1については、上記の機器設計 WG で審議され妥当 性が確認され、性能規定化の後に、新たに NISA 基準 評価 WG に諮られ、「技術基準解釈」に別記-13 とし て再構成され明確化された。また、2については、NISA の検査技術評価 WGに諮られ、以下の適用条件が付記 され、省令 62 号第9条の2の解釈としているき裂解釈 別紙1の「非破壊試験の方法について」に WOL 工法適 用部位の供用期間中検査に関する要求事項を規定する こととなった。「WOL 施行部位の超音波探傷試験を行う検査員は、 オーステナイト系ステンレス鋼(ステンレス鋳鋼を除 く)配管突合せ溶接継手に発生したき裂深さを配管外 表面から測定する技術に関する、日本非破壊検査協会 規格「超音波探傷試験システムの性能実証における技 術者の資格及び、認証」(NDIS 0603:2005)の「附属書 (規定)軽水型原子力発電所用機器に対する PD 資格 試験」に合格し認証を受けた超音波深傷試験技術者 (PD技術者)または、ASME Section XI、Appendix VII Supplement 11 に合格したPD 技術者としての資格を維 持し、WOL 部試験体を用いた深傷研修を WOL部の超3 民間企業等が、将来行おうとする事業活動について の具体的行為が特定の法令の規定に照らして問題と なるかどうか、予めその法令を所管する行政機関に問 い合わせ、その行政機関が回答を行うとともに、照会 内容と回答を公表する手続をいう。音波深傷試験実施前1年以内に1回以上実施し、WOL 部の深傷を確実に実施できることが立証された者であ ることとする。」 これらは、6月 30 日に開催された上部委員会である 原子炉安全小委員会で了承され、今後、意見公募を経 て、発出される予定である。 プロセス2 * 6層テンパービード溶接施工法(予熱ありの異種材 溶接)及び常温テンパービード溶接施工法(予熱なし の異種材溶接及びクラッド溶接)については、確性試 験委員会での審議を終了し、RNP のタスクグループで 技術評価書を取り纏め中である。 プロセス3現在、日本機械学会にて、公衆審査の開始時期を 2009 年末(予定)として維持規格補修章の見直しを図って いる。これを受けて NISA 及び JNES は技術評価(エン ドース)を行う予定である。新保全技術適合性検討作業会 (RNP)検討課題:1技術の適用性(導入可能性)2規制上の取扱い(省令62号適合性等) 3必要な指示(NISA文書) @検査の方法NISA 基盤課意見 NISA審査課 検査技術評価WG | NISA 検査課NISA文書等、1課題登録 2検討状況説明JNES作業会 ・課題の抽出 ・技術検討 ・規制上の扱い学協会参加電気事業連合会 | プラントメーカー ]Fig. 1 Confirmation system of New Maintenance Techniques3. おわりに * 新保全技術の円滑な導入には、電気事業者、原子炉 製造メーカ等とNISA及びJNES との密なコミュニケー ションが不可欠であり、今後も、積極的に推進してい きたい。参考文献 [1] 第 32 回検査技術評価 WG(平成 20 年 10月8日)、資料30-4「新保全技術に関する検討状況」 [2] 第24回原子炉安全小委員会(平成21年6月30日)、資料 24-5-1「WOL 工法の適用経緯と今後の対応に ついて」、資料 24-5-3 「WOL 工法により施行された 部位に係る供用期間中検査について」“ “新保全技術の技術基準への適合性確認について“ “前川 之則,Yukinori MAEKAWA,菅野 眞紀,Masanori KANNO
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