5本ノズル型ジェットポンプの性能回復に関する研究

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
沸騰水型原子炉(BWR)においては,原子炉内部の 冷却材を循環させるためにシュラウドの周囲にジェッ トポンプ(JP)と呼ばれる静止型ポンプを設置してい るタイプが多数を占めている。JP や原子炉再循環ポン プ等により構成される原子炉再循環系は炉心流量(冷 却材の再循環流量)の制御を目的とするため,炉心流 量は JP 性能劣化の影響を受ける。近年,炉水中のクラッド(鉄酸化物等)が JP の内面 に付着し,粗度の増大に伴い性能が低下し,達成可能 な炉心流量が低下する事象が報告されている。この対 策としては、性能低下が起きにくい構造への改良,ま たは,短期間でクラッドを除去し性能を回復する方法 の考案などが求められる。これまで,当社は三重大学,(株)東芝との共同研究に より、1本ノズル型 JP の形状改良による性能向上や性 能回復方法を報告してきた[1]~[4]。また,現実的な対 処法である洗浄については、スロート(インレットミ キサー)内面を洗浄すれば効率的に性能回復できる可 能性が示唆された。しかし,5本ノズル型 JP がクラッ ド付着によって性能低下した場合の効率的な洗浄方法については十分に検討していないのが現状である。本研究では,5本ノズル型 JP におけるクラッド対策 について検討したので報告する。
2. 試験と結果 2.1 試験内容の検討
JP のノズル部やスロート部は,再循環系の中で流速 が最も速く,クラッドが付着しやすい。また,表面粗 さの影響は一般に,配管口径の増大に伴い小さくなる ため,クラッド付着の影響は再循環系の中で JP 部が最 も大きく受ける。従って,以下に示す通りクラッド付 着量の影響把握試験は JP について実施した。 2.2 試験装置Fig.1 に示すとおり,実機 JP の 1/5 サイズのモック アップ試験装置を用いた。流量計生まれ、Eライン|スルフロートディフューザ駆動水|、 整流板一日流量計,遠心ポンプFig.1 JP 試験装置外観と系統図2132.3 クラッド付着模擬試験クラッド付着量の性能劣化への影響を把握するため, 模擬クラッドによる性能低下度を測定した。なお,指 標となる JP 性能(n)は流量比(M)と圧力比(N) を用いて(1)式で与えられる。n = MXN(1)ノズル Fig.2 に示すように出口付近に3種類の粗度のサンド ペーパーを張り付け,サンドペーパーを張り付ける前 のノズルに対しての性能低下量を実測した。その結果, Fig.2 の右の表に示すように,低下量は最大でも 1.5% 程度であることがわかった。サンドペーパー貼付部位とΔη (%)粗度(μm)サンドペーパー最大(内面に貼付け)ノズル-1.5程度Fig.2 ノズル内面粗さと性能測定結果(2) スロート, ディフューザ Fig.3 に示すとおり,模擬クラッドとしてサンドペー パーをスロート3箇所やディフューザ1箇所に順次貼 り付けていき,性能の低下度を実測した。HALLA - - - - - TRITTERTR-1 TR-2 TR-3TR-4サンドペーパースロート 貼付位置 | TR-1 | TR-2 | TR-3 △n(%) | -4.5 | -5.6 | -4.9 |ディフューザTR-4 -0.8|Fig.3 サンドペーパー貼付位置と性能測定結果測定の結果, Fig.3 下に示す表のように,粗度 25 um の サンドペーパーをスロート入口(TR-2)に貼り付けた 場合に最も大きな性能低下を示した。また,TR-2 に貼 り付けるサンドペーパーの粗さを 8, 18, 25 um と変 えて性能測定を行った結果,粗さの増大と共に性能低 下度も大きくなる傾向を示した。3.結論--再循環系全体へのクラッド付着に対し,口径や流速 の観点から洗浄を検討すべき箇所として JP を選定し た。さらに,模擬クラッドを付与した JP モックアップ 試験体にて性能測定試験を行い,以下の知見を得た。 1) ノズル部にクラッド模擬で 25 um の粗面のサンド - ペーパーを付与しても性能へ及ぼす影響は小さい。 2) スロート,ディフューザに 25 um の粗面のサンドペーパーを付与した場合, ノズル部より比較的大きな 性能低下が見られた。 影響の最も大きい粗面位置は スロート入口部近くであり,また,この部位は粗度 の影響を受けやすい。4. まとめ原子炉再循環系のクラッド付着による性能低下に対 しては,JP スロート入口側のクラッド除去が最も効果 的であるとの知見を得た。参考文献[1] ジェットポンプの効率的な性能回復に関する研究 -- 保全学会 第4回学術講演会 2007.7.3 (福井大学) [2] Y. Yamazaki et at., ““Studies on Mixing Process andPerformance Improvement of Jet Pump““, Trans. ofJSME, Series B, Vol. 71, No.701 (2005), pp. 147-153. [3] Y. Yamazaki et al., ““Effect of Throat Surface Roughnesson Jet Pump Performance““, Trans. of JSME, Series B,Vol. 72, No.720 (2006), pp.1895-1900. [4] H. Yuya et al., ““Studies on recovery of BWR jet pumpefficiency““, 15th International Conference on Nuclear Engineering, (Nagoya, Japan), 2007, ICONE15-10266.214“ “5本ノズル型ジェットポンプの性能回復に関する研究“ “熊野 秀樹,Hideki YUYA,原 哲哉,Tetsuya HARA,鈴木 純也,Junya SUZUKI,伊藤 圭介,Keisuke ITOU,鍵谷 幸生,Yukio KAGIYA,社河内 敏彦,Toshihiko SHAKOUCHI
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