セーフエンド溶接部に対するUTサイジング手法の高度化

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カテゴリ: 第6回
1.緒言
本報告ではセーフエンド溶接部に対する内面からの サイジング手法の高度化を目指した開発事例を示す。 欠陥はセーフエンド溶接部の軸方向に発生しているた め、UT による欠陥サイジングは溶接の直上にプローブ を配置して検査している。このため、溶接による超音 波の減衰や散乱の影響が大きく難しいため、高度化手 法としてフェーズドアレイ UT を使った手法を開発し、 サイジング精度の向上を図っている。プローブ開発に は UT シミュレーション技術も適用し、設計パラメータ の最適化も行っている。なお、開発には以下の目標を 設定した。蒸気発生器セーフエンドで検出されたような 一般 SCC についてはサイジング精度の更なる向 上を目指す。 ・原子炉容器セーフエンドで検出されたような深 くて細長く、かつ先端の長さが短い SCC につい ては端部エコーの検出性向上によりサイジング の実現を目指す。
2.フェーズドアレイ UT 探触子の開発
セーフエンド溶接部のサイジング精度向上や端部エ コーの検出性向上を目的に探触子の開発を行った。欠 陥は軸方向欠陥であるため、探触子は溶接直上を走査 することになり、溶接による超音波の散乱や減衰の影 響を受ける。そこで超音波ビームのフォーカシングや スキャンニングが可能なフェーズドアレイ UT 技術を ベースに探触子の設計を行った。また、原子炉容器に 対して適用した接触法の現行 UT では欠陥端部エコー が検出できなかったが、当該部位は平滑面であり倣い 性も悪くないのでフェーズドアレイ UT でも現行 UT と 同様に接触法で高度化を進めることとした。探触子を 設計するにあたり、サイジングすべき領域が深いため 深さに応じて2種類の探触子を開発した。浅い領域に対しては表面近傍の欠陥サイジングを実 現するため小型の左右分割型(TRL) フェーズドアレイ 探触子とした(Fig.3-1)。また深い領域に対しては探 触子を大型化して深い位置でのビーム集束性を向上さ せ、さらにマトリックスアレイ化で 3 次元ビームスキ ・ャンにより溶接部の超音波曲りの影響を補正できるよ うな構造とした (Fig.3-2)。 マトリックスアレイは点 集束ビームとなるため、原子炉容器セーフエンドで検 出されたような欠陥先端部が細い欠陥のサイジングにも有効と考えられる。また、浅い欠陥では超音波の曲 がりの影響も小さく、比較的ビーム集束性も優れてい る小型 TRL フェーズドアレイで対応可能である。開発 した探触子の仕様を Tablel に示す。また探触子の外観 写真を Fig. 4-1 と Fig. 4-2 に示す。
Fig.3-1 Small TRL PA| T、R Type |Fig.3-2 TRL Matrix PA Table1 Probe Specification For Shallow Defect For Deep Defect ~10mm)(10~40mm) TRL PATRL Matrix PA 5MHz2MHzTypeFrequencyPiezo Size10×10(T、R) 120ch ×2043(T、R)64ch×2No. of Elements02030040-5060.10.08Fig.4-1 Probe view of Small TRL PAFig.4-2 Probe view of TRL Matrix PA1900/08/243.検証試験結果開発した探触子を用いて欠陥が挿入された試験体の 探傷試験を行った。試験体はスリット試験体と SCC 試 験体を準備した。なお、欠陥形状について、今回は一 般的な形状であり、原子炉容器セーフエンドで検出さ れた欠陥形状は模擬していない。試験体の外観写真を Fig.5-1 と Fig.5-2 に示す。Notch profile: rectangularFig.5-1 Slit Mock UpSCC profile: D/L <1Fig. 5-2 SCC Test Piece 探傷はエンコーダを使って位置情報も併せて採取し た。また前述したように浅い欠陥には小型 TRL フェー ズドアレイ探触子を適用し、深い欠陥には TRL マトリ ックスアレイ探触子を適用した。浅い欠陥に対する探 傷結果を Fig.6-1 に示す。また、深いスリットに対す る探傷結果を Fig.6-2 に、深い SCC に対する探傷結果 をFig. 6-3 に示す。 - 5mm 深さのスリットでは縦波前後 2分割法である現 行 UT で若干過大評価傾向であるが、小型 TRL フェーズ ドアレイ UT はサイジング精度±1mm以内であった。3mm 程度の浅い SCC に対しては現行 UT と小型 TRL フェーズ ドアレイ UT でサイジング精度にあまり差はなかったが、端部エコーの検出しやすさでは小型 TRL フェーズ ドアレイ UT の方が溶接部ノイズのレベルが低く、端部 エコーの S/N 比で現行 UT より2倍近く高い結果となっ た。深いスリットに対して 20mm 程度までは現行 UT で もサイジング精度はよいが、40mm 近い深さでは現行 UT ではサイジング困難であった。しかし、TRL マトリッ クスアレイ UT により±1mm のサイジング精度であった。 深さ 20mm の深い SCC に対して現行 UT のサイジング精 度は±5mm 程度であったが TRL マトリックスアレイ UT では±1mm のサイジング精度であった。スリット、SCC とも TRL マトリックスアレイは端部エコーの信号レベ ルと分解能が優れているためサイジング精度向上の要 因になっているが、これは原子炉容器で検出されたよ うな深くて細長く、かつ先端の長さが短い欠陥に対し ても有効であると思われる。Conventional UT Small TRL PA-UT1900/07/16 16:04:48Slit defect 5mm depth| Evaluation: 6.5mm | Evaluation: 4.3mmSCC defect 2.6mm depth| Evaluation: 2.8mm ||| Evaluation: 2.7mm (nominalS/N ratio: 3.6 || S/N ratio: 6.8 depth)Fig.6-1 Test result for shallow slit and SCCConventional UTTRL Matrix PA-UTTip echoSlit defect 23mm depthTip echo?Evaluation:21.8mmEvaluation:23.0mmTip echoSlit defect 38mm depthTip echo?Evaluation:19.5mmEvaluation:37.4mmFig.6-2 Test result for deep slit1900/08/25Conventional UTTRL Matrix PA-UTSCC defect 20.8mm depthTip echo?Tip echoEvaluation: 16.1mmEvaluation: 20.9mmFig.6-3 Test result for deep SCC1900/01/03原子炉容器で検出された形状の欠陥への - 適用性 今回開発した探触子は前述したように一般的な形状 ・スリットや SCC に対してはサイジング精度の向上が られた。この探触子の原子炉容器セーフエンドで検 depth || Evaluation: 16.1mm Evaluation: 20.9mmSimulation modelGeometric echoFig.6-3 Test result for deep SCCTip echo Tip echo? RectangularActual defect L model| mode! Conventional UTGeometric echo20mmTip echoRectangular modelActual defect modelBestimeMatrix phased UTFig.7 UT simulation results4.原子炉容器で検出された形状の欠陥への適用性 今回開発した探触子は前述したように一般的な形状 のスリットや SCC に対してはサイジング精度の向上が みられた。この探触子の原子炉容器セーフエンドで検 出されたような深くて細長く、かつ先端の長さが短い SCC に対する有効性を確認するために UT シミュレーシ ョンを用いて評価を実施した。シミュレーションは現行の探触子と TRL マトリック スアレイ探触子を矩形スリットと原子炉容器セーフエ ンドで検出された欠陥形状に適用したときの探傷波形 を求めた。結果を Fig.7 に示す。矩形スリットに対し ては現行法でも明瞭に端部エコーを検出しているが、 深くて細長く、かつ先端の長さが短い欠陥に対しては 現行法では端部エコーが微弱である上に形状エコーが 大きくなるため、端部エコーの識別が困難である。一 方 TRL マトリックスアレイ探触子では深くて細長く、 かつ先端の長さが短い欠陥の先端エコーの信号レベル も高く、形状エコーとも分離できているため端部エコ ーの識別が容易でサイジングが可能となっている。こ れはマトリックスアレイでは超音波ビームが点集束さ れるため、細い欠陥の先端エコーのみを捉えることが できたためと考えられる(Fig.8 参照)。以上から、今 回開発した探触子は深くて細長く、かつ先端の長さが 短い SCC に対しても有効であると推定される。 スアレイ探触子を矩形スリットと原子炉容器セーフエ ンドで検出された欠陥形状に適用したときの探傷波形 を求めた。結果を Fig.7 に示す。矩形スリットに対し ては現行法でも明瞭に端部エコーを検出しているが、 深くて細長く、かつ先端の長さが短い欠陥に対しては 現行法では端部エコーが微弱である上に形状エコーが 大きくなるため、端部エコーの識別が困難である。一 方 TRL マトリックスアレイ探触子では深くて細長く、 かつ先端の長さが短い欠陥の先端エコーの信号レベル も高く、形状エコーとも分離できているため端部エコ ーの識別が容易でサイジングが可能となっている。こ れはマトリックスアレイでは超音波ビームが点集束さ れるため、細い欠陥の先端エコーのみを捉えることがConventional UTPhased-arrayUTできたためと考えられる(Fig.8 参照)。以上 回開発した探触子は深くて細長く、かつ先端の 短い SCC に対しても有効であると推定される。 Rectangular Actual defectmodel model ProbeConventional UTPhased-arrayUTGeometricechoTip echoFig.8 Beam Focusing Image - 239 - 5.結言今回、蒸気発生器セーフエンドおよび原子炉容器 ーフエンド溶接部で検出された軸方向欠陥に対して 面からの UT サイジング精度の向上を目的にフェー ドアレイ技術を使った探触子を開発した。探触子は、 陥深さに応じて小型 TRL フェーズドアレイと TRL マ 回、蒸気発生器セーフエンドおよび原子炉容器セ エンド溶接部で検出された軸方向欠陥に対して内 らの UT サイジング精度の向上を目的にフェーズ レイ技術を使った探触子を開発した。探触子は欠 さに応じて小型 TRL フェーズドアレイと TRL マト 陥深さに応じて小型 TRL フェーズドアレイと TRL マト」 リックスアレイの2種類とした。 1 蒸気発生器セーフエンドで検出されたような一般的 な形状のスリットや SCC の試験体に対して開発した手 法は現行法より高い欠陥サイジング精度が得られた。 原子炉容器セーフエンドで検出されたような深くて細 長く、かつ先端の長さが短い形状の結果に対してはシ ミュレーション評価を行い、開発した手法は現行法で は困難であった欠陥サイジングが可能となった。今後、 深くて細長く、かつ先端の長さが短い欠陥に対しては SCC 試験体を製作して本手法の有効性を実験的にも確 認していく。また、実機適用化に向けた準備も進め、 今後セーフエンドに指示が検出されても適切な欠陥サ イジング手法を適用し、原子力プラントの保全に努め ていく。参考文献[1] S.Kawanami”7th international conference on NDE in relation to structural integrity for nuclear and pressurized components”, 2009- 240 -“ “?セーフエンド溶接部に対する UT サイジング手法の高度化“ “西田 純一朗,Jun-ichiro NISHIDA,川浪 精一,Seiichi KAWANAMI,黒川 政秋,Masaaki KUROKAWA,井手尾 光司,Mitsushi IDEO,松浦 貴之,Takayuki MATSUURA,平野 伸郎,Shinro HIRANO,瀬良 健彦,Takehiko SERA
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