伝熱管内壁検査補修技術開発(その2)ソフトウエア開発と性能試験準備
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カテゴリ: 第6回
1. 背景と目的
高速増殖炉においては中性子の減速が少ない金属ナ トリウムによる冷却が有効である。これまでの開発に おいては、1次系と2次系の両方に金属ナトリウムが 使用されており、特に伝熱管内部に通水する2次系熱 交換器の伝熱管の健全性の確保が重要である。これま では渦電流探傷(ECT)による検査により伝熱管に欠陥 が発見された場合、伝熱管を施栓により塞ぐのが対処 の基本である。しかしながら施栓の割合が高くなると 有効伝熱面積の減少となり、結局は熱交換器の寿命を 縮めることとなる。現在、ECT の検出性能の向上とと もに伝熱管内壁の微細な欠陥の発見が可能となりつつ あり、発見した微細な欠陥を補修することで施栓を回 避し熱交換器の寿命を延ばすことが望まれる。このため原子力機構では、平成19年度より3年間 をかけて、FBR伝熱管を従来の検査だけでなく欠陥 の発見に併せてその場での補修を試みる新型プローブ の開発を進めている[1,2]。このプローブは、全長 100mのヘリカル型伝熱管を検査補修に必要な要素技術とし て、ECT 検査技術、複合型光ファイバ技術、レーザー 熱加工および超短パルスレーザー加工技術を統合させ る。こうして、従来の ECT による検査機能を高度化さ せるとともに、新たに補修・保全機能を備えている。 * 本報告では、平成19年度から3年間をかけて開発を 開始した新プローブ要素技術を紹介する。プロジェク ト2年目の開発成果として、ECT による欠陥計測とレ ーザー加工ヘッド制御のためのソフトウェア制作及び レーザー光と画像を分離・統合するためのカップリン グ装置の製作について報告する。さらに、このプロー ブを用いた模擬伝熱管の検査補修の試験準備につい ても述べる。
2. 開発内容 2.1 概要 - Fig.1 に新プローブの概要を示す。 開発のコアとなる 技術は、伝熱管内壁の映像を伝送する画像用光ファイ バと欠陥部位のレーザー熱加工溶接による補修のため のエネルギー伝送用光ファイバを同軸構造に組み合わ せた複合型光ファイバスコープである。レーザーとし
250ては、小型高性能化の高出力ファイバレーザーを使用 する。複合型光ファイバの周りには照明用のライトガ イドも設けられている。このファイバの先端には伝熱 管の内壁の撮影と加工補修のためのレーザー加工ヘッ ドを接続する。レーザー加工ヘッドは、伝熱管内壁を 360 度スキャンできる。さらに、レーザー照射位置の 微調整機能を有する。レーザー加工ヘッドの直近には 複合型光ファイバスコープを抱え込む形でECT用マル チコイルセンサを取り付けた。高出力ファイバーFOTK器 ソフトウェアECTケーブルマルチプレクサマルチコイルECTセンサカラー、画像処理レーザ加工ヘッド制御(ソフトウェア)電源ケーブル複合型光ファイバーレーザー加工ヘッドFig. 1 Block Diagram of the New Probing System2.2 ECT 計測ソフトウェア - 平成 19 年度に製作した ECT 用探傷器に、ECT 信号 を保存するための ECT センサヘッド用信号保存用装 置を組込み、これと、平成 19 年度に製作した ECT 中 空センサユニットを統合した。 Fig. 2 に統合したシス テムを用いて模擬伝熱管補修試験にて用いる模擬伝 熱管内壁の欠陥を検出し、欠陥位置を表示するための ソフトウェアを開発した。複合型検査プローブSECT中空センサユニット複合型光ファイバFig. 2 Axially combined ECT sensor and a optical hybrid fiber scope・新プローブと探傷器を用いて、ECT センサのソフト ウェアの開発を行った。具体的には試験で得られたア ナログ信号をデジタル化し、フィルタリング処理を施 すことで欠陥識別の妨げとなる雑音成分を除去した。 さらに、欠陥を視覚的に理解できるように3次元表示が可能なソフトウェアを開発した。 - 原信号をフィルタリング処理することでノイズ成分 を除去できることを確認した。このノイズ成分とは、 伝熱管製造時の圧延加工時にできた管内面の周期的な 形状変化によるもので、欠陥との識別を困難にする。 フィルタリング処理後、欠陥のCスコープ表示(平面画 像)やFig.3 に示す3次元表示(鳥瞰図)を行うことで、 欠陥のみを識別しやすくなり、位置を特定することが 可能となった。10.505.......周方向ノッチ W0.3×L10550%t_0.2-5Fig. 3 Three dimensional displays for cracks on an inner surface of a heat exchanger tube2.3 レーザー加工ヘッド用制御ソフトウェアレーザー加工ヘッドと複合型光ファイバスコープの 統合に関して、ファイバスコープ部分のステンレス管 にレーザー加工ヘッド取り付けのための金具を取り付 け、レーザー加工ヘッド側に設けた3箇所のネジ穴と をボルトで結合させた。また、レーザー加工ヘッドの 可動スリーブ先端に内蔵したミラーからの映像をファ イバスコープで取り込むと共にファイバスコープ外周 部分に設けたライトガイドにより対象を照明できるこ とを確認した。レーザー加工ヘッドの動作については、 直線及び回転動作を独立して行い、伝熱管内壁に対し て接触等による動作不良の生じないことを確認した。Fig. 4 Laser processing head and its operational PC system with a stick controller251* 製作した制御用ソフトウェアを用いて、管内壁の欠 陥を模したアクリル製パイプ内壁にテストパターン紙 を貼付け撮影像の取得を行い、ソフトウェアによりこ の撮影パターン上を手動で追従させ動作履歴を記録し 再現する試験を行った。Fig.5 は横軸を Port1 (直動方 向)の駆動量(回転角)、縦軸を Port2 (回転方向)の駆 動量(回転角)を示した。操作・復元・トレースの軌跡 を重ねて表示した。復帰動作によってほぼ操作開始点 に復帰しており、良好なトレース結果が得られた。-340-14060-5401-340-140-740 700140操作 復元 ートレース-160-260Port2[deg]-360 -460 --560 -660 -760-860 600-200 -300-300 -200 -1000_100200300400500.300 L L 」-300 -200 -1000100」 200」 300400」 500」 600Portl[deg]Fig. 5 Manual motions of a laser processing head displayed on an axial direction (Portl) and a rotational direction (Port2),2.4 カップリング装置平成19年度の詳細設計に基づきカップリング装 置の製作を実施した。高出力ファイバレーザーとの接 続部は QBH コネクターとした。レーザーと伝熱管内壁 からの映像との統合・分離を行うためのダイクロイッ クミラーには、温度上昇を監視できるように熱電対を 取り付けた。レーザー光を製作した複合型光ファイバ スコープの接続部端面に導くため、レーザー光を平行 光にするためのコリメータを製作した。また、加工の ための高出力レーザー光の波長と集光位置調整のため の内蔵ガイド光レーザーの波長が異なる。この波長の 違いによる色収差現象を補正する補正光学系を設けた。 また、集光位置を外部から微調整できる機構を設けた。 複合型光ファイバスコープからの映像はダイクロイッ クミラーを通過し、CCDカメラ上に結像する配置と した。以上の基本設計を基に各光学部品配置の組み立 てを行いカップリング装置を製作した。Fig. 6Inside view of the coupling device* 製作したカップリング装置に複合型光ファイバを接 続し、ファイバレーザー出力値を設定最低値から順次 上げながら、カップリング装置内コリメータ直後のレ ーザー出力とスコープ先端出口で導光されたレーザー 出力をパワーメータにて計測し伝送率を算出した。ま た、各光学部品に設置した熱伝対よりレーザー導光中 の温度上昇の監視を行った。ファイバレーザー出力8 00Wまでは伝送率90%で一定であるが、1kWで は88%に低下した。Fig.7にカップリング装置内部 の温度測定結果を示す。顕著なエネルギー損失なくレ ーザー導光されていること及びカップリング装置内光 学素子類の異常な温度上昇や損傷がないことを確認した。コリメータ 2波長ミラー ダイクロイックミラー ファイバホルダー - 集光レンズ200Wより順次1KWまで100W,500W 100Wづつ導光出力Up...1KWで導光...............................10....温度/25......H!!!........シングルモジュールでの・低出力導光訊號内部光学素子確認 〈温度測定未実施)200.5833333333333330.6041666666666670.6250.6666666666666670.68750.645833333333333時刻0.7083333333333330.729166666666667Fig. 7 Monitored temperature for inside of the coupling device2.5 模擬伝熱管補修試験準備 1. 本試験のため欠陥を設けた模擬伝熱管は、もんじゅ 蒸発器で使用している低クロム鋼(内径1インチ直管 伝熱管)である。複合型光ファイバスコープに10W-252のイッテルビウムファイバレーザー光を入射させたと ころ、可動スリーブ内の45度に設置した金属ミラー に破損が生じるという第1の課題が明らかとなった。 対策としては、金属ミラーの代替として熱伝導率に優 れたサファイヤ基板にレーザー波長と可視光全域に対 応する誘電多層膜を表裏から蒸着させたミラーを考 案・製作することで、ミラーの耐熱性向上に関する問 題を解決した。 * 最大1kWのイッテルビウムファイバレーザーを入 射させ、1インチ伝熱管を外部から照射する予備実験 を行った。その結果、出力300W以上ではレーザー 照射部からの蒸着物により、複合型光ファイバスコー プの前面に設けた保護ガラスが汚損することが明らか となった。Fig.8 に伝熱管外部からのレーザー溶接の 模擬試験の様子を示す。仮に、レーザー加工ヘッドを 接続し伝熱管の内壁にレーザー照射を行えば、内壁か らの蒸着物によりレーザー加工ヘッドの可動スリーブ 及び45度に設置したミラーが汚損により使用不能に なるという第2の課題も明らかとなった。対策案とし て、レーザー光を斜め入射させ、且つ、伝熱管内を流 動する気流を効果的に利用することで、ミラー類の汚 損を低減できる目途を得た。また、これらの結果から、 平成21年度に使用するイッテルビウムファイバレー ザーの最高出力は300W以上500W以下が適切で あるとの結論を得た。Fig.8 Metal vapor deposition on a shield glass plate by laser welding preliminary test使用するもんじゅの蒸気発生器伝熱管モックアップ 設備は、もんじゅのヘリカル伝熱管を模擬した設備で あり、圧搾空気ガスによりプローブを挿入する。本試 験では次世代ナトリウム冷却型FBRで設計が進めら れている直管型熱交換器伝熱管の試験のため、ミラー 類の汚損を低減させるために、ガスの供給ラインを直 接直管部に接続できるように小改造を行った。次に直 管部の上部に専用の機械式挿入装置を新たに設け、これを用いて全長10mのプローブを挿入出来るようし た。これより平成21年度には、直管下部には補修試 験を行う伝熱管をフランジで接続できる。この小改造 により既存の設備を有効に利用し、次世代ナトリウム 冷却型FBRの直管型熱交換器伝熱管を想定した補修 試験が可能となった。3. 結言新プローブ要素技術に関して、制御ソフトウェアと カップリング装置の開発成果を中心に報告した。加え て平成21年度は、各業務項目において抽出した課題 を解決し、10月末を目途に各要素技術の統合を行い、 もんじゅの蒸気発生器伝熱管モックアップ設備にて模 擬伝熱管補修試験を実施する。補修試験では、高出力 イッテルビウムファイバレーザー装置を使用する。ま た、今年度製作したカップリング装置には、伝熱管内 壁を撮影するCCDカメラ及び主要光学部品の温度上 昇監視のための記録計の組み込みを行うことで装置を 完成させる。 また、各要素技術の開発を通じて抽出された課題の 内、ECT とレーザー加工ヘッドに関しては、それぞれ の制御ソフトウェアの高度化及び ECT 信号線減数化の ためのマルチプレクサの導入で対処する。次世代 FBR 熱交換器には 1/2 インチ伝熱管が候補として検討され ている。小径の伝熱管にはマルチチャンネル ECT の信 号線を通すことは困難であり、マルチプレクサの導入 により信号線の数を減らすことは重要課題である。謝辞本報告は、特別会計に関する法律(エネルギー対策」 特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業として 日本原子力研究開発機構の西村昭彦が実施した平成2 0年度原子力システム研究開発事業「レーザー加工技 術の組み合わせによる FBR 熱交換器伝熱管検査補修技 術の高度化に関する技術開発」の成果です。 関連各位に厚く御礼申し上げます。参考文献 [1]科学技術振興機構報第 394 号, 平成 19年4月 19 日,(http://www.jst.go.jp/pr/info/info394/index.html) [2]原子力システム研究開発事業、平成 20 年度成果報告会、平成 21 年1月28日、東京(コクヨホール)-253“ “?伝熱管内壁検査補修技術開発(その2)ソフトウェア開発と性能試験準備“ “西村 昭彦,Akihiko NISHIMURA,岡 潔,Kiyoshi OKA,山口 智彦,Toshihiko YAMAGUCHI,赤津 朋宏,Tomohiro AKATSU,関 健史,Takeshi SEKI,ミハラケ オビデウ,Ovidiu MIHALACHE,島田 幸洋,Yukihiro SHIMADA,田川 明広,Akihiro TAGAWA,山下 卓哉,Takuya YAMASHITA
高速増殖炉においては中性子の減速が少ない金属ナ トリウムによる冷却が有効である。これまでの開発に おいては、1次系と2次系の両方に金属ナトリウムが 使用されており、特に伝熱管内部に通水する2次系熱 交換器の伝熱管の健全性の確保が重要である。これま では渦電流探傷(ECT)による検査により伝熱管に欠陥 が発見された場合、伝熱管を施栓により塞ぐのが対処 の基本である。しかしながら施栓の割合が高くなると 有効伝熱面積の減少となり、結局は熱交換器の寿命を 縮めることとなる。現在、ECT の検出性能の向上とと もに伝熱管内壁の微細な欠陥の発見が可能となりつつ あり、発見した微細な欠陥を補修することで施栓を回 避し熱交換器の寿命を延ばすことが望まれる。このため原子力機構では、平成19年度より3年間 をかけて、FBR伝熱管を従来の検査だけでなく欠陥 の発見に併せてその場での補修を試みる新型プローブ の開発を進めている[1,2]。このプローブは、全長 100mのヘリカル型伝熱管を検査補修に必要な要素技術とし て、ECT 検査技術、複合型光ファイバ技術、レーザー 熱加工および超短パルスレーザー加工技術を統合させ る。こうして、従来の ECT による検査機能を高度化さ せるとともに、新たに補修・保全機能を備えている。 * 本報告では、平成19年度から3年間をかけて開発を 開始した新プローブ要素技術を紹介する。プロジェク ト2年目の開発成果として、ECT による欠陥計測とレ ーザー加工ヘッド制御のためのソフトウェア制作及び レーザー光と画像を分離・統合するためのカップリン グ装置の製作について報告する。さらに、このプロー ブを用いた模擬伝熱管の検査補修の試験準備につい ても述べる。
2. 開発内容 2.1 概要 - Fig.1 に新プローブの概要を示す。 開発のコアとなる 技術は、伝熱管内壁の映像を伝送する画像用光ファイ バと欠陥部位のレーザー熱加工溶接による補修のため のエネルギー伝送用光ファイバを同軸構造に組み合わ せた複合型光ファイバスコープである。レーザーとし
250ては、小型高性能化の高出力ファイバレーザーを使用 する。複合型光ファイバの周りには照明用のライトガ イドも設けられている。このファイバの先端には伝熱 管の内壁の撮影と加工補修のためのレーザー加工ヘッ ドを接続する。レーザー加工ヘッドは、伝熱管内壁を 360 度スキャンできる。さらに、レーザー照射位置の 微調整機能を有する。レーザー加工ヘッドの直近には 複合型光ファイバスコープを抱え込む形でECT用マル チコイルセンサを取り付けた。高出力ファイバーFOTK器 ソフトウェアECTケーブルマルチプレクサマルチコイルECTセンサカラー、画像処理レーザ加工ヘッド制御(ソフトウェア)電源ケーブル複合型光ファイバーレーザー加工ヘッドFig. 1 Block Diagram of the New Probing System2.2 ECT 計測ソフトウェア - 平成 19 年度に製作した ECT 用探傷器に、ECT 信号 を保存するための ECT センサヘッド用信号保存用装 置を組込み、これと、平成 19 年度に製作した ECT 中 空センサユニットを統合した。 Fig. 2 に統合したシス テムを用いて模擬伝熱管補修試験にて用いる模擬伝 熱管内壁の欠陥を検出し、欠陥位置を表示するための ソフトウェアを開発した。複合型検査プローブSECT中空センサユニット複合型光ファイバFig. 2 Axially combined ECT sensor and a optical hybrid fiber scope・新プローブと探傷器を用いて、ECT センサのソフト ウェアの開発を行った。具体的には試験で得られたア ナログ信号をデジタル化し、フィルタリング処理を施 すことで欠陥識別の妨げとなる雑音成分を除去した。 さらに、欠陥を視覚的に理解できるように3次元表示が可能なソフトウェアを開発した。 - 原信号をフィルタリング処理することでノイズ成分 を除去できることを確認した。このノイズ成分とは、 伝熱管製造時の圧延加工時にできた管内面の周期的な 形状変化によるもので、欠陥との識別を困難にする。 フィルタリング処理後、欠陥のCスコープ表示(平面画 像)やFig.3 に示す3次元表示(鳥瞰図)を行うことで、 欠陥のみを識別しやすくなり、位置を特定することが 可能となった。10.505.......周方向ノッチ W0.3×L10550%t_0.2-5Fig. 3 Three dimensional displays for cracks on an inner surface of a heat exchanger tube2.3 レーザー加工ヘッド用制御ソフトウェアレーザー加工ヘッドと複合型光ファイバスコープの 統合に関して、ファイバスコープ部分のステンレス管 にレーザー加工ヘッド取り付けのための金具を取り付 け、レーザー加工ヘッド側に設けた3箇所のネジ穴と をボルトで結合させた。また、レーザー加工ヘッドの 可動スリーブ先端に内蔵したミラーからの映像をファ イバスコープで取り込むと共にファイバスコープ外周 部分に設けたライトガイドにより対象を照明できるこ とを確認した。レーザー加工ヘッドの動作については、 直線及び回転動作を独立して行い、伝熱管内壁に対し て接触等による動作不良の生じないことを確認した。Fig. 4 Laser processing head and its operational PC system with a stick controller251* 製作した制御用ソフトウェアを用いて、管内壁の欠 陥を模したアクリル製パイプ内壁にテストパターン紙 を貼付け撮影像の取得を行い、ソフトウェアによりこ の撮影パターン上を手動で追従させ動作履歴を記録し 再現する試験を行った。Fig.5 は横軸を Port1 (直動方 向)の駆動量(回転角)、縦軸を Port2 (回転方向)の駆 動量(回転角)を示した。操作・復元・トレースの軌跡 を重ねて表示した。復帰動作によってほぼ操作開始点 に復帰しており、良好なトレース結果が得られた。-340-14060-5401-340-140-740 700140操作 復元 ートレース-160-260Port2[deg]-360 -460 --560 -660 -760-860 600-200 -300-300 -200 -1000_100200300400500.300 L L 」-300 -200 -1000100」 200」 300400」 500」 600Portl[deg]Fig. 5 Manual motions of a laser processing head displayed on an axial direction (Portl) and a rotational direction (Port2),2.4 カップリング装置平成19年度の詳細設計に基づきカップリング装 置の製作を実施した。高出力ファイバレーザーとの接 続部は QBH コネクターとした。レーザーと伝熱管内壁 からの映像との統合・分離を行うためのダイクロイッ クミラーには、温度上昇を監視できるように熱電対を 取り付けた。レーザー光を製作した複合型光ファイバ スコープの接続部端面に導くため、レーザー光を平行 光にするためのコリメータを製作した。また、加工の ための高出力レーザー光の波長と集光位置調整のため の内蔵ガイド光レーザーの波長が異なる。この波長の 違いによる色収差現象を補正する補正光学系を設けた。 また、集光位置を外部から微調整できる機構を設けた。 複合型光ファイバスコープからの映像はダイクロイッ クミラーを通過し、CCDカメラ上に結像する配置と した。以上の基本設計を基に各光学部品配置の組み立 てを行いカップリング装置を製作した。Fig. 6Inside view of the coupling device* 製作したカップリング装置に複合型光ファイバを接 続し、ファイバレーザー出力値を設定最低値から順次 上げながら、カップリング装置内コリメータ直後のレ ーザー出力とスコープ先端出口で導光されたレーザー 出力をパワーメータにて計測し伝送率を算出した。ま た、各光学部品に設置した熱伝対よりレーザー導光中 の温度上昇の監視を行った。ファイバレーザー出力8 00Wまでは伝送率90%で一定であるが、1kWで は88%に低下した。Fig.7にカップリング装置内部 の温度測定結果を示す。顕著なエネルギー損失なくレ ーザー導光されていること及びカップリング装置内光 学素子類の異常な温度上昇や損傷がないことを確認した。コリメータ 2波長ミラー ダイクロイックミラー ファイバホルダー - 集光レンズ200Wより順次1KWまで100W,500W 100Wづつ導光出力Up...1KWで導光...............................10....温度/25......H!!!........シングルモジュールでの・低出力導光訊號内部光学素子確認 〈温度測定未実施)200.5833333333333330.6041666666666670.6250.6666666666666670.68750.645833333333333時刻0.7083333333333330.729166666666667Fig. 7 Monitored temperature for inside of the coupling device2.5 模擬伝熱管補修試験準備 1. 本試験のため欠陥を設けた模擬伝熱管は、もんじゅ 蒸発器で使用している低クロム鋼(内径1インチ直管 伝熱管)である。複合型光ファイバスコープに10W-252のイッテルビウムファイバレーザー光を入射させたと ころ、可動スリーブ内の45度に設置した金属ミラー に破損が生じるという第1の課題が明らかとなった。 対策としては、金属ミラーの代替として熱伝導率に優 れたサファイヤ基板にレーザー波長と可視光全域に対 応する誘電多層膜を表裏から蒸着させたミラーを考 案・製作することで、ミラーの耐熱性向上に関する問 題を解決した。 * 最大1kWのイッテルビウムファイバレーザーを入 射させ、1インチ伝熱管を外部から照射する予備実験 を行った。その結果、出力300W以上ではレーザー 照射部からの蒸着物により、複合型光ファイバスコー プの前面に設けた保護ガラスが汚損することが明らか となった。Fig.8 に伝熱管外部からのレーザー溶接の 模擬試験の様子を示す。仮に、レーザー加工ヘッドを 接続し伝熱管の内壁にレーザー照射を行えば、内壁か らの蒸着物によりレーザー加工ヘッドの可動スリーブ 及び45度に設置したミラーが汚損により使用不能に なるという第2の課題も明らかとなった。対策案とし て、レーザー光を斜め入射させ、且つ、伝熱管内を流 動する気流を効果的に利用することで、ミラー類の汚 損を低減できる目途を得た。また、これらの結果から、 平成21年度に使用するイッテルビウムファイバレー ザーの最高出力は300W以上500W以下が適切で あるとの結論を得た。Fig.8 Metal vapor deposition on a shield glass plate by laser welding preliminary test使用するもんじゅの蒸気発生器伝熱管モックアップ 設備は、もんじゅのヘリカル伝熱管を模擬した設備で あり、圧搾空気ガスによりプローブを挿入する。本試 験では次世代ナトリウム冷却型FBRで設計が進めら れている直管型熱交換器伝熱管の試験のため、ミラー 類の汚損を低減させるために、ガスの供給ラインを直 接直管部に接続できるように小改造を行った。次に直 管部の上部に専用の機械式挿入装置を新たに設け、これを用いて全長10mのプローブを挿入出来るようし た。これより平成21年度には、直管下部には補修試 験を行う伝熱管をフランジで接続できる。この小改造 により既存の設備を有効に利用し、次世代ナトリウム 冷却型FBRの直管型熱交換器伝熱管を想定した補修 試験が可能となった。3. 結言新プローブ要素技術に関して、制御ソフトウェアと カップリング装置の開発成果を中心に報告した。加え て平成21年度は、各業務項目において抽出した課題 を解決し、10月末を目途に各要素技術の統合を行い、 もんじゅの蒸気発生器伝熱管モックアップ設備にて模 擬伝熱管補修試験を実施する。補修試験では、高出力 イッテルビウムファイバレーザー装置を使用する。ま た、今年度製作したカップリング装置には、伝熱管内 壁を撮影するCCDカメラ及び主要光学部品の温度上 昇監視のための記録計の組み込みを行うことで装置を 完成させる。 また、各要素技術の開発を通じて抽出された課題の 内、ECT とレーザー加工ヘッドに関しては、それぞれ の制御ソフトウェアの高度化及び ECT 信号線減数化の ためのマルチプレクサの導入で対処する。次世代 FBR 熱交換器には 1/2 インチ伝熱管が候補として検討され ている。小径の伝熱管にはマルチチャンネル ECT の信 号線を通すことは困難であり、マルチプレクサの導入 により信号線の数を減らすことは重要課題である。謝辞本報告は、特別会計に関する法律(エネルギー対策」 特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業として 日本原子力研究開発機構の西村昭彦が実施した平成2 0年度原子力システム研究開発事業「レーザー加工技 術の組み合わせによる FBR 熱交換器伝熱管検査補修技 術の高度化に関する技術開発」の成果です。 関連各位に厚く御礼申し上げます。参考文献 [1]科学技術振興機構報第 394 号, 平成 19年4月 19 日,(http://www.jst.go.jp/pr/info/info394/index.html) [2]原子力システム研究開発事業、平成 20 年度成果報告会、平成 21 年1月28日、東京(コクヨホール)-253“ “?伝熱管内壁検査補修技術開発(その2)ソフトウェア開発と性能試験準備“ “西村 昭彦,Akihiko NISHIMURA,岡 潔,Kiyoshi OKA,山口 智彦,Toshihiko YAMAGUCHI,赤津 朋宏,Tomohiro AKATSU,関 健史,Takeshi SEKI,ミハラケ オビデウ,Ovidiu MIHALACHE,島田 幸洋,Yukihiro SHIMADA,田川 明広,Akihiro TAGAWA,山下 卓哉,Takuya YAMASHITA