加圧水型原子力発電プラントに対する保全(応力腐食割れ対策)
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カテゴリ: 第6回
1. はじめに
- 加圧水型原子炉発電プラント(以下、PWR)600 系ニ ッケルクロム鉄合金(以下、600 系合金) 使用部では応力 腐食割れ(以下、SCC)の懸念があり、SCC による損傷・ 漏えいを防止し原子力プラントの信頼性向上を達成する ため、検査技術、劣化緩和技術、材料改善技術及び取替・ 補修技術の開発・検証に対して総合的に取り組んでいる。このうち応力改善による予防保全策として図1 に示す ウォータジェットピーニング[1](以下、WJP)、超音波シ ョットピーニング[2](以下、USP)を開発・検証し、原 子炉容器(以下、RV)や蒸気発生器(以下、SG)へ適用 してきた。 - 昨今、国内外 PWR プラントで SCC が顕在化している 状況を踏まえ、微小な欠陥が存在する箇所にピーニング を施工した場合の欠陥に対する悪影響の有無、残留応力 改善効果の有効性を確認することは、ピーニングを施工 した機器・配管の保全を検討する上で重要である。そこで、本研究では平板試験体を製作し、試験体に欠 陥を導入した後にピーニングを施工し、欠陥に対するピ ーニングの影響、及び欠陥近傍での応力改善効果の有効 性を評価した。
ウォータジェットピーニング(WP)の基本原理おきキャビテーション気泡群 を伴うウォータジェットキャビテーション崩壊時 の衝撃圧にて、表層面に 塑性歪を付与超音波ショットピーニング(USP)の基本原理ショット材取動源 (ピエゾ素子)粒径の大きいショット材10ショット衝突力にて、表層面 に塑性歪を付与図1 応力改善技術の概要 2.応力改善技術の適用条件と試験計画-国内 PWR プラントに WJP/USP を適用するにあたって は、施工面に有害な欠陥がないことを施工前に目視試験 又は渦流探傷試験(以下、ECT)等で確認し、有意な指 示が確認された場合は施工しない運用としている。 本研究では、施工前のECT による確認で検出されない-271欠陥(以下、潜在欠陥)として、『WJP 又は USP により 圧縮応力が付与できる深さ以下の微小な SCC』を想定し、 表1に示す代表的な WJP/USP 施工条件を用いて潜在欠陥 に対するピーニングの影響、潜在欠陥近傍での応力改善 効果の有効性を実験で確認した。表1 本研究で用いたピーニング施工条件 適用 | 想定する適用箇所健全な施工面に施工した 技術場合の残留応力低減効果 WJPRV 出入口管台セーフエン | 表面から深さ 1.0 mmの位置 ド溶接部で残留応力が 0MPa以下 USPSG 出入口管台セーフェン | 表面から深さ 10mmの位 ド溶接部で残留応力が 0MPa以下3. 潜在欠陥へのピーニングの影響の確認 12 (延性き裂進展確認試験) 3.1 試験の目的WJP/USP 施工により、潜在欠陥から延性き裂が生じな いことを実験で確認する。3.1 試験片の製作及び試験手順 * 製作した平板試験片を図 2 に示す。試験片は SUS316と NCF600 を 600 系合金相当の溶材で溶接した平板から 長さ 150 mm×幅 30 mm×厚さ 10 mmに切り出した平板継手 試験片と、SUS316平板から長さ 150 mm×幅 30 mm×厚さ 10 mmに切り出した平板試験片の2種類を製作した。試験片はポリチオン酸溶液中で 4 点曲げにより応力付 加し、600系溶接金属又はSUS316母材に欠陥を導入した。試験体に欠陥導入後、30 mm幅の中央で切断し、一方の み WJP 又は USP を施工した。その後、破壊調査で WJP/USP 施工による延性き裂の進展の有無を確認した。 ボ リチオン酸溶液浸漬により欠陥導入切断後、WJP/USP 施工 30 mm ““ 女体入後、10mm10切断後、WJP/USP 母材(SUS310 母材(NCF600)施工せず、比較用へ 溶金(600系溶接金属) 図2 平板試験片形状(600 系溶接金属に欠陥導入した例) 3.2 試験結果試験条件毎に3体(各2 断面)の拡大観察を行い、観 察された全ての欠陥の深さを測定し、ワイブルプロット で整理した結果を図3及び図4に示す。「WJP/USP 施工 有り」と「施工無し」の両者の欠陥深さの分布はほぼ同 一で、欠陥深さに有意差は認められなかった。WJP/USP 施工後に欠陥破面に酸化皮膜による着色後、 破面開放した結果を図5及び図6に示す。破面観察で着 色された範囲は全てデンドライト破面(600 系溶接金属)又は粒界破面(SUS316 母材)で延性破面は認められず、 WJP/USP 施工による延性き裂の進展は確認されなかった。Some((X-I) U-)In-in(1-Fx))調?欠陷個数 WJP 施工無し:220 WIP 施工有り:204調?欠陷個数 USP 施工無し:257 JSP 施工有り:244|| WJP施工無し10USP施工無しWJP施工有り・USP施工有り0.01 0. 11 10 1000,010.11 10 100 潜在欠陥深さx (mm)潜在欠陥深さx(mm) 図3 欠陥深さのワイブルプロット結果(600 系溶接金属) ※縦軸の Fx は深さが横軸の値までである欠陥の累積頻度を示す。 ※ピーニング施工有り/施工無しの比較を行った欠陥は同一ではない。|In (-in (1-Fx))((Xi-I)III)調査欠陥個数 IwJP施工無し:54 - WJP 施工有り:60調?欠陷固数 「USP 施工無し:69USP 施工有り:580WJP施工無し小USP施工無し0WJP施工有りUSP施工有り0.01 0.1 1 10 1000 .01 0.1 1 10 100 潜在欠陥深さx (mm)潜在欠陥深さx (mm) 図4 欠陥深さのワイブルプロット結果(SUS316 母材) ※縦軸の Fx は深さが横軸の値までである欠陥の累積頻度を示す。 ※ピーニング施工有り/施工無しの比較を行った欠陥は同一ではない。WJP 施工有りUSP 施工有り着色 部分色マドライトの面格16)ンドライト破面(潜在交協)非色非色X200 100 延性破面(強制破面)いじくり0221291034生のり面】図5 ピーニング施工後の欠陥の破面観察結果(600 系溶接金属)272USP 施工有りWJP施工有りSUS316 母材部の欠陥の有る部分と無い部分で、 WJP/USP 施工後の試験片表面及び深さ方向の残留応力を 測定した結果を図9に示す。欠陥の有無に係わらず、残 留応力は同等で、表面から 1 mmまで圧縮残留応力であっ た。又、表面残留応力は SUS316 母材と 600 系溶接金属 の違いによる有意差は無く、600 系溶接金属部の深さ方向 残留応力分布も SUS316母材部と同傾向と考えられる。あとはいかなる粒界面潜在欠陥円色色以下は7万0:00:00部分にa bloト---非色残留応力(MPa)あなたの非着色 100035 / 部分-200図6 ピーニング施工後の欠陥の破面観察結果(SUS316母材)WJP 施工有り・無し600系溶接金属 潜在欠陥無し潜在欠陥有りま※600 系溶接金属は で WIP施工有り表面のみ測定。潜在欠陥有り WJP施工無し4. 潜在欠陥へのピーニングの効果の確認(残留応力確認試験)Canーーーートーー残留応力(MPa)-400USP 施工有り・無し 600系溶接金属81898/05/09潜在欠陥有り USP施工無し潜在欠陥無し潜在欠陥有り SUSP施工有り※600系溶接金属は 表面のみ測定。図8 残留応力測定結果 (600系溶接金属、試験片表面残留応力測定結果)んの事4.1 試験の目的潜在欠陥の有無に係わらず、WJP 又は USP を施工すれ ば潜在欠陥近傍の残留応力が改善されることを実験で確 認する。 4.1 試験片の製作及び試験手順製作した平板試験片を図7に示す。試験片は3項と同 様、長さ 150mm×幅30mm×厚さ10mmのNCF600/SUS316 平板継手試験片と、同寸の SUS316 平板試験片の2種類 を製作した。試験片はポリチオン酸溶液中で4 点曲げにより応力付 加し、600系溶接金属又はSUS316母材に欠陥を導入した。試験体に欠陥導入後、WJP 又は USP を施工し、X線回 折法による残留応力測定を実施した。WJP/USP施工後、 ボリチン酸溶液浸漬により欠陥導入へ欠陥の有る部分 無い部分で3箇所ずつ測定 30 mm/| 潜在欠陥有り | 潜在欠陥無して日一長手方向残留応力AbabNAMI.残留応力(MPa)WJP 施工有り・無し SUS316母材10. 20. 40. 60.81 表面からの距離(mm)| 潜在欠陥有り | 潜在欠陥無してさすー玉手方向応力0a .bAb'10mm---しめます母材(SUS310母材(NCF600) 溶金(600系溶接金属)(600系溶接金属に欠陥導入した例)残留応力(MPa)USP施工有り・無し SUS316母材10020. 40.6 0.8 11.214 表面からの距離(mm)4.2 試験結果600 系溶接金属部の欠陥の有る部分と無い部分で、 WJP/USP 施工後の試験片表面の残留応力を測定した結果 を図 8 に示す。欠陥の有無に係わらず、残留応力は同等 の圧縮応力であった。図9 残留応力測定結果 (SUS316 母材、試験片深さ方向残留応力分布測定結果)27345. 潜在欠陥へのピーニングの効果の確認 12 (SCC試験)5.1 試験の目的」 - WJP/USP 施工で潜在欠陥が供用中に SCC 進展しない(ピーニングが有効である)ことを実験的に確認する。 5.2 試験片の製作及び試験手順製作した平板試験片を図 10 に示す。試験片は長さ 150 mm×幅40 mm×厚さ 10 mmのNCF600/SUS316平板継手試 験片と、同寸の SUS316 平板試験片を製作した。試験片はポリチオン酸溶液中で 4 点曲げにより応力付 加し、600系溶接金属又はSUS316母材に欠陥を導入した。欠陥導入後、40 mm幅の中央で切断し、一方のみ WJP又 は USP を施工した。その後、ポリチオン酸溶液中で4点 曲げにより運転時相当応力を付加して SCC 試験を行い、 試験後の破壊調査で SCC進展の有無を確認した。 ポリチオン酸溶液浸漬により欠陥導入 切断後、WJP/USP施工。 40 mm 海入後、運転時相当応力を付 加した状態でボリチオン 酸溶液に再度浸漬。 切断後、WJP/USP施工せず、ポリチオン酸 溶金(600系溶接金属)溶液に再度浸漬。 図10 平板試験片形状 (600 系溶接金属に欠陥導入した例) 5.3 試験結果「ピーニング施工有り/無し・SCC 試験有り」(試験条 件毎に2体(各2断面))の拡大観察を行い、観察された 全ての欠陥の深さを測定し、「ピーニング施工有り・SCC 試験無し(3項の試験結果)」と合わせてワイブルプロッ トで整理した結果を図 11 及び図 12 に示す。調査欠陥個数1.ああ10 mm母材(SUS310母材(NCF600)3WH施工有り,86E試験無し204WJP 施工有り,SCC試験有り:211 21 WJP 施工無し,SCC試験有り:193調?欠陷個数 USP-施工有り,SGC試験無し:244 USP 施工有り,SOC試験有り:211 USP 施工無し、SCC試験有り:210が12008((X-)UI-OUTln(-ln(1-Fx))0WJP施工有り・●USP施工有り SCC試験無しSCC試験無し 0WJP施工有りoUSP施工有り・ SCC試験有りSCC試験有り AWJP施工無し・ム USP施工無し・ 8 A SCC試験有り| SCC試験有り-6 0.01 0.1 1 10 100 0 .01 0.1 1 10 100 潜在欠陥深さx(mm)潜在欠陥深さx(mm) 図 11 欠陥深さのワイブルプロット結果(600系溶接金属) ※縦軸のFXは深さが横軸の値までである欠陥の累積頻度を示す。 ※ピーニング施工有り/施工無し、SCC試験有り/無しの比較を行った 欠陥は同一ではない。3.調査欠陥個数WJP 施工有り:SCC試験無し:60 WJP 施工有り,SCC試験有り:40 WJP 施工無し,SCC試験有り:293.調査欠陥個数、USP 施工有り,SCC試験無し:58 USP 施工有り,STC試験有り:63 USP 施工無し,SCC試験有り:48Iとなります。((XJ-I) U-)Artcontagration344444((XA-1) ul-) UI14.8866●WJP施工有り・ SCC試験無し200pooooocochinatremenortisionaragii20.00|0WJP施工有り・SCC試験有り a WJP施工無し・ SCC試験有り・USP施工有りSCC試験無し O USP施工有り・ SCC試験有り。 USP施工無し・ SCC試験有りト0.010.1 1 10 1000 .01 0.1. 1 10 100 潜在欠陥深さx(mm)潜在欠陥深さx (ran) 図 12 欠陥深さのワイブルプロット結果(SUS316 母材) ※縦軸のFXは深さが横軸の値までである欠陥の累積頻腹を示す。 ※ピーニング施工有り/施工無し、SCC試験有り/無しの比較を行った 欠陥は同一ではない。 ピーニング施工有りでは SCC試験有り/無しの両者で 欠陥深さに有意差はなく、SCC進展は認められなかった。WJP/USP 施工有り/無しの比較では施工無しで進展し ており、SCC試験は適切な条件であることが確認できた。6. 試験結果のまとめ WJP/USP 施工による潜在欠陥への影響及び効果を実験 で確認した結果は以下の通りである。 1WJP/USP 施工による潜在欠陥の進展は認められない。 2潜在欠陥周辺であっても、WJP/USP 施工後には表面に圧縮応力が得られる。 3潜在欠陥が存在しても、WJP/USP 施工後は SCC による潜在欠陥の進展が防止(抑制)される。 従って、WJP/USP の施工前確認のECT で検出されない 可能性のある潜在欠陥があっても、WJP/USP 技術は有効 であると判断される。7. おわりに 原子力発電プラントの安全性と信頼性を向上させ、長 期間の運転にわたって経済的に運転を継続するには、各 種保全技術が重要であると考え、今後とも各種技術の開 発・検証を積極的に推進して行く。参考文献 [1]Koji Okimura etc, Reliability of WJP as Residual StressImprovement Method for Alloy600 PWSCC Mitigation,ICONE16-48375 (2008) [2]Koji Okimura etc, PWSCC Preventive maintenanceProgram for Alloy600, ICONE16-48378(2008)274“ “?加圧水型原子力発電プラントに対する保全(応力腐食割れ対策)“ “佐藤 知伸,Tomonobu SATO,岡部 武利,Taketoshi OKABE,沖村 浩司,Koji OKIMURA,豊田 真彦,Masahiko TOYODA,前口 貴治,Takaharu MAEGUCHI
- 加圧水型原子炉発電プラント(以下、PWR)600 系ニ ッケルクロム鉄合金(以下、600 系合金) 使用部では応力 腐食割れ(以下、SCC)の懸念があり、SCC による損傷・ 漏えいを防止し原子力プラントの信頼性向上を達成する ため、検査技術、劣化緩和技術、材料改善技術及び取替・ 補修技術の開発・検証に対して総合的に取り組んでいる。このうち応力改善による予防保全策として図1 に示す ウォータジェットピーニング[1](以下、WJP)、超音波シ ョットピーニング[2](以下、USP)を開発・検証し、原 子炉容器(以下、RV)や蒸気発生器(以下、SG)へ適用 してきた。 - 昨今、国内外 PWR プラントで SCC が顕在化している 状況を踏まえ、微小な欠陥が存在する箇所にピーニング を施工した場合の欠陥に対する悪影響の有無、残留応力 改善効果の有効性を確認することは、ピーニングを施工 した機器・配管の保全を検討する上で重要である。そこで、本研究では平板試験体を製作し、試験体に欠 陥を導入した後にピーニングを施工し、欠陥に対するピ ーニングの影響、及び欠陥近傍での応力改善効果の有効 性を評価した。
ウォータジェットピーニング(WP)の基本原理おきキャビテーション気泡群 を伴うウォータジェットキャビテーション崩壊時 の衝撃圧にて、表層面に 塑性歪を付与超音波ショットピーニング(USP)の基本原理ショット材取動源 (ピエゾ素子)粒径の大きいショット材10ショット衝突力にて、表層面 に塑性歪を付与図1 応力改善技術の概要 2.応力改善技術の適用条件と試験計画-国内 PWR プラントに WJP/USP を適用するにあたって は、施工面に有害な欠陥がないことを施工前に目視試験 又は渦流探傷試験(以下、ECT)等で確認し、有意な指 示が確認された場合は施工しない運用としている。 本研究では、施工前のECT による確認で検出されない-271欠陥(以下、潜在欠陥)として、『WJP 又は USP により 圧縮応力が付与できる深さ以下の微小な SCC』を想定し、 表1に示す代表的な WJP/USP 施工条件を用いて潜在欠陥 に対するピーニングの影響、潜在欠陥近傍での応力改善 効果の有効性を実験で確認した。表1 本研究で用いたピーニング施工条件 適用 | 想定する適用箇所健全な施工面に施工した 技術場合の残留応力低減効果 WJPRV 出入口管台セーフエン | 表面から深さ 1.0 mmの位置 ド溶接部で残留応力が 0MPa以下 USPSG 出入口管台セーフェン | 表面から深さ 10mmの位 ド溶接部で残留応力が 0MPa以下3. 潜在欠陥へのピーニングの影響の確認 12 (延性き裂進展確認試験) 3.1 試験の目的WJP/USP 施工により、潜在欠陥から延性き裂が生じな いことを実験で確認する。3.1 試験片の製作及び試験手順 * 製作した平板試験片を図 2 に示す。試験片は SUS316と NCF600 を 600 系合金相当の溶材で溶接した平板から 長さ 150 mm×幅 30 mm×厚さ 10 mmに切り出した平板継手 試験片と、SUS316平板から長さ 150 mm×幅 30 mm×厚さ 10 mmに切り出した平板試験片の2種類を製作した。試験片はポリチオン酸溶液中で 4 点曲げにより応力付 加し、600系溶接金属又はSUS316母材に欠陥を導入した。試験体に欠陥導入後、30 mm幅の中央で切断し、一方の み WJP 又は USP を施工した。その後、破壊調査で WJP/USP 施工による延性き裂の進展の有無を確認した。 ボ リチオン酸溶液浸漬により欠陥導入切断後、WJP/USP 施工 30 mm ““ 女体入後、10mm10切断後、WJP/USP 母材(SUS310 母材(NCF600)施工せず、比較用へ 溶金(600系溶接金属) 図2 平板試験片形状(600 系溶接金属に欠陥導入した例) 3.2 試験結果試験条件毎に3体(各2 断面)の拡大観察を行い、観 察された全ての欠陥の深さを測定し、ワイブルプロット で整理した結果を図3及び図4に示す。「WJP/USP 施工 有り」と「施工無し」の両者の欠陥深さの分布はほぼ同 一で、欠陥深さに有意差は認められなかった。WJP/USP 施工後に欠陥破面に酸化皮膜による着色後、 破面開放した結果を図5及び図6に示す。破面観察で着 色された範囲は全てデンドライト破面(600 系溶接金属)又は粒界破面(SUS316 母材)で延性破面は認められず、 WJP/USP 施工による延性き裂の進展は確認されなかった。Some((X-I) U-)In-in(1-Fx))調?欠陷個数 WJP 施工無し:220 WIP 施工有り:204調?欠陷個数 USP 施工無し:257 JSP 施工有り:244|| WJP施工無し10USP施工無しWJP施工有り・USP施工有り0.01 0. 11 10 1000,010.11 10 100 潜在欠陥深さx (mm)潜在欠陥深さx(mm) 図3 欠陥深さのワイブルプロット結果(600 系溶接金属) ※縦軸の Fx は深さが横軸の値までである欠陥の累積頻度を示す。 ※ピーニング施工有り/施工無しの比較を行った欠陥は同一ではない。|In (-in (1-Fx))((Xi-I)III)調査欠陥個数 IwJP施工無し:54 - WJP 施工有り:60調?欠陷固数 「USP 施工無し:69USP 施工有り:580WJP施工無し小USP施工無し0WJP施工有りUSP施工有り0.01 0.1 1 10 1000 .01 0.1 1 10 100 潜在欠陥深さx (mm)潜在欠陥深さx (mm) 図4 欠陥深さのワイブルプロット結果(SUS316 母材) ※縦軸の Fx は深さが横軸の値までである欠陥の累積頻度を示す。 ※ピーニング施工有り/施工無しの比較を行った欠陥は同一ではない。WJP 施工有りUSP 施工有り着色 部分色マドライトの面格16)ンドライト破面(潜在交協)非色非色X200 100 延性破面(強制破面)いじくり0221291034生のり面】図5 ピーニング施工後の欠陥の破面観察結果(600 系溶接金属)272USP 施工有りWJP施工有りSUS316 母材部の欠陥の有る部分と無い部分で、 WJP/USP 施工後の試験片表面及び深さ方向の残留応力を 測定した結果を図9に示す。欠陥の有無に係わらず、残 留応力は同等で、表面から 1 mmまで圧縮残留応力であっ た。又、表面残留応力は SUS316 母材と 600 系溶接金属 の違いによる有意差は無く、600 系溶接金属部の深さ方向 残留応力分布も SUS316母材部と同傾向と考えられる。あとはいかなる粒界面潜在欠陥円色色以下は7万0:00:00部分にa bloト---非色残留応力(MPa)あなたの非着色 100035 / 部分-200図6 ピーニング施工後の欠陥の破面観察結果(SUS316母材)WJP 施工有り・無し600系溶接金属 潜在欠陥無し潜在欠陥有りま※600 系溶接金属は で WIP施工有り表面のみ測定。潜在欠陥有り WJP施工無し4. 潜在欠陥へのピーニングの効果の確認(残留応力確認試験)Canーーーートーー残留応力(MPa)-400USP 施工有り・無し 600系溶接金属81898/05/09潜在欠陥有り USP施工無し潜在欠陥無し潜在欠陥有り SUSP施工有り※600系溶接金属は 表面のみ測定。図8 残留応力測定結果 (600系溶接金属、試験片表面残留応力測定結果)んの事4.1 試験の目的潜在欠陥の有無に係わらず、WJP 又は USP を施工すれ ば潜在欠陥近傍の残留応力が改善されることを実験で確 認する。 4.1 試験片の製作及び試験手順製作した平板試験片を図7に示す。試験片は3項と同 様、長さ 150mm×幅30mm×厚さ10mmのNCF600/SUS316 平板継手試験片と、同寸の SUS316 平板試験片の2種類 を製作した。試験片はポリチオン酸溶液中で4 点曲げにより応力付 加し、600系溶接金属又はSUS316母材に欠陥を導入した。試験体に欠陥導入後、WJP 又は USP を施工し、X線回 折法による残留応力測定を実施した。WJP/USP施工後、 ボリチン酸溶液浸漬により欠陥導入へ欠陥の有る部分 無い部分で3箇所ずつ測定 30 mm/| 潜在欠陥有り | 潜在欠陥無して日一長手方向残留応力AbabNAMI.残留応力(MPa)WJP 施工有り・無し SUS316母材10. 20. 40. 60.81 表面からの距離(mm)| 潜在欠陥有り | 潜在欠陥無してさすー玉手方向応力0a .bAb'10mm---しめます母材(SUS310母材(NCF600) 溶金(600系溶接金属)(600系溶接金属に欠陥導入した例)残留応力(MPa)USP施工有り・無し SUS316母材10020. 40.6 0.8 11.214 表面からの距離(mm)4.2 試験結果600 系溶接金属部の欠陥の有る部分と無い部分で、 WJP/USP 施工後の試験片表面の残留応力を測定した結果 を図 8 に示す。欠陥の有無に係わらず、残留応力は同等 の圧縮応力であった。図9 残留応力測定結果 (SUS316 母材、試験片深さ方向残留応力分布測定結果)27345. 潜在欠陥へのピーニングの効果の確認 12 (SCC試験)5.1 試験の目的」 - WJP/USP 施工で潜在欠陥が供用中に SCC 進展しない(ピーニングが有効である)ことを実験的に確認する。 5.2 試験片の製作及び試験手順製作した平板試験片を図 10 に示す。試験片は長さ 150 mm×幅40 mm×厚さ 10 mmのNCF600/SUS316平板継手試 験片と、同寸の SUS316 平板試験片を製作した。試験片はポリチオン酸溶液中で 4 点曲げにより応力付 加し、600系溶接金属又はSUS316母材に欠陥を導入した。欠陥導入後、40 mm幅の中央で切断し、一方のみ WJP又 は USP を施工した。その後、ポリチオン酸溶液中で4点 曲げにより運転時相当応力を付加して SCC 試験を行い、 試験後の破壊調査で SCC進展の有無を確認した。 ポリチオン酸溶液浸漬により欠陥導入 切断後、WJP/USP施工。 40 mm 海入後、運転時相当応力を付 加した状態でボリチオン 酸溶液に再度浸漬。 切断後、WJP/USP施工せず、ポリチオン酸 溶金(600系溶接金属)溶液に再度浸漬。 図10 平板試験片形状 (600 系溶接金属に欠陥導入した例) 5.3 試験結果「ピーニング施工有り/無し・SCC 試験有り」(試験条 件毎に2体(各2断面))の拡大観察を行い、観察された 全ての欠陥の深さを測定し、「ピーニング施工有り・SCC 試験無し(3項の試験結果)」と合わせてワイブルプロッ トで整理した結果を図 11 及び図 12 に示す。調査欠陥個数1.ああ10 mm母材(SUS310母材(NCF600)3WH施工有り,86E試験無し204WJP 施工有り,SCC試験有り:211 21 WJP 施工無し,SCC試験有り:193調?欠陷個数 USP-施工有り,SGC試験無し:244 USP 施工有り,SOC試験有り:211 USP 施工無し、SCC試験有り:210が12008((X-)UI-OUTln(-ln(1-Fx))0WJP施工有り・●USP施工有り SCC試験無しSCC試験無し 0WJP施工有りoUSP施工有り・ SCC試験有りSCC試験有り AWJP施工無し・ム USP施工無し・ 8 A SCC試験有り| SCC試験有り-6 0.01 0.1 1 10 100 0 .01 0.1 1 10 100 潜在欠陥深さx(mm)潜在欠陥深さx(mm) 図 11 欠陥深さのワイブルプロット結果(600系溶接金属) ※縦軸のFXは深さが横軸の値までである欠陥の累積頻度を示す。 ※ピーニング施工有り/施工無し、SCC試験有り/無しの比較を行った 欠陥は同一ではない。3.調査欠陥個数WJP 施工有り:SCC試験無し:60 WJP 施工有り,SCC試験有り:40 WJP 施工無し,SCC試験有り:293.調査欠陥個数、USP 施工有り,SCC試験無し:58 USP 施工有り,STC試験有り:63 USP 施工無し,SCC試験有り:48Iとなります。((XJ-I) U-)Artcontagration344444((XA-1) ul-) UI14.8866●WJP施工有り・ SCC試験無し200pooooocochinatremenortisionaragii20.00|0WJP施工有り・SCC試験有り a WJP施工無し・ SCC試験有り・USP施工有りSCC試験無し O USP施工有り・ SCC試験有り。 USP施工無し・ SCC試験有りト0.010.1 1 10 1000 .01 0.1. 1 10 100 潜在欠陥深さx(mm)潜在欠陥深さx (ran) 図 12 欠陥深さのワイブルプロット結果(SUS316 母材) ※縦軸のFXは深さが横軸の値までである欠陥の累積頻腹を示す。 ※ピーニング施工有り/施工無し、SCC試験有り/無しの比較を行った 欠陥は同一ではない。 ピーニング施工有りでは SCC試験有り/無しの両者で 欠陥深さに有意差はなく、SCC進展は認められなかった。WJP/USP 施工有り/無しの比較では施工無しで進展し ており、SCC試験は適切な条件であることが確認できた。6. 試験結果のまとめ WJP/USP 施工による潜在欠陥への影響及び効果を実験 で確認した結果は以下の通りである。 1WJP/USP 施工による潜在欠陥の進展は認められない。 2潜在欠陥周辺であっても、WJP/USP 施工後には表面に圧縮応力が得られる。 3潜在欠陥が存在しても、WJP/USP 施工後は SCC による潜在欠陥の進展が防止(抑制)される。 従って、WJP/USP の施工前確認のECT で検出されない 可能性のある潜在欠陥があっても、WJP/USP 技術は有効 であると判断される。7. おわりに 原子力発電プラントの安全性と信頼性を向上させ、長 期間の運転にわたって経済的に運転を継続するには、各 種保全技術が重要であると考え、今後とも各種技術の開 発・検証を積極的に推進して行く。参考文献 [1]Koji Okimura etc, Reliability of WJP as Residual StressImprovement Method for Alloy600 PWSCC Mitigation,ICONE16-48375 (2008) [2]Koji Okimura etc, PWSCC Preventive maintenanceProgram for Alloy600, ICONE16-48378(2008)274“ “?加圧水型原子力発電プラントに対する保全(応力腐食割れ対策)“ “佐藤 知伸,Tomonobu SATO,岡部 武利,Taketoshi OKABE,沖村 浩司,Koji OKIMURA,豊田 真彦,Masahiko TOYODA,前口 貴治,Takaharu MAEGUCHI