コンクリート構造物における断面修復工法の有効性に関する検討

公開日:
カテゴリ: 第6回
1. 背景と目的
表-1 塩害劣化における構造物の外観上のグレー標準的な工法(土木学会 (2007) 1 ) より)鉄筋コンクリート構造物が塩害劣化した場合の補修 方法としては、表面処理、電気防食、電気化学的脱塩、 断面修復、増厚等の工法がある。塩害劣化における外 方法としては、表面処理、電気防食、電気化学的脱塩、 断面修復、増厚等の工法がある。塩害劣化における外 観上のグレードと標準的に採用される工法が表-1 のよ うに示されている。このうち、塩害劣化が進行した場合、 内部の塩化物イオンを除去し、劣化したコンクリート を断面修復材に置き換える、断面修復工法が選定され ることが多く、汽力発電所の海水取放水構造物などの 補修においても採用されている。 _ しかし、断面修復工法に関する技術的根拠に基づい た耐力評価等の確認はまだ十分ではないのが現状であ る。そこで、本検討では、断面修復工法による補修後 の耐力について現場条件を模擬した室内試験(曲げ耐 力試験)により評価し、断面修復工法の有効性につい て確認した。以下にこれらの検討内容の概要を報告す る。そこで、本検討では、断面修復工法による補修後 の耐力について現場条件を模擬した室内試験(曲げ耐 力計職) 17 」紙面修復工法の有効性につい
|構造物の外観上のグレード | 標準的な工法 I-1(潜伏期)表面処理I-2(進展期)表面処理,断面修復,電気防食,電気化学的脱塩II-1(加速期前期)表面処理,断面修復,電気防食,電気化学的脱塩」II-2(加速期後期)断面修復、III (劣化期)FRP 接着, 断面修復, 外ケーブル, 巻立て,増厚曲げ耐力試験の概要 2.1 試験体概要断面修復工法が曲げ耐力に及ぼす影響を把握するこ とを目的とし、断面修復箇所を模擬した梁試験体と、 健全な状態である無補修の梁試験体を作製した。試験 体の母材コンクリートは、普通ポルトランドセメント 日における圧縮強度 43.5 N/mm2、弾性係数 20.5 kN/ 試験体の形状は、海水取放水構造物等の実構造 - 359 - 1断面修復を行う範囲は、実構造物における補修範囲 を想定し深さ 140 mm程度、長さ 2,000 mmとし、壁面の 補修を模擬して横向きの吹付けとした。試験体の概要| 図を図-1 に示す。 1 試験体の作製は、1型枠・鉄筋の組立て、2母材コ ンクリート打設、3はつり作業、4断面修復工の順に 実施した。なお、はつり作業は実際の施工を想定して、 衝撃型の手ばつりで行った。試験体の作製状況を写真 物の配筋条件を模擬し、主筋を D25×150 ピッチとし て2本配置し、幅 300 mm、高さ 500 mmとした。また、 曲げ破壊させるため、せん断スパンを有効高さの3倍 の 1,200 mmおよび等曲げ区間を 400 mmとして支間長を 2,800 mmとした。断面修復を行う範囲は、実構造物における補修範囲 を想定し深さ 140 mm程度、長さ 2,000 mmとし、壁面の 補修を模擬して横向きの吹付けとした。試験体の概要 図を図-1 に示す。 - 試験体の作製は、1型枠・鉄筋の組立て、2母材コ ンクリート打設、3はつり作業、4断面修復工の順に 実施した。なお、はつり作業は実際の施工を想定して、 衝撃型の手ばつりで行った。試験体の作製状況を写真 -1 に示す。(型枠・鉄筋の組立て)月21503004002000400(無補修試験体No.1)(はつり作業)20002000 1600(引張側補修試験体No.2)Q400500レー101MUBI1500BP150月21504002000 36001950280036001400500円2000B2150300400280036002800(断面修復工)3600(圧縮側補修試験体No.3)写真-1 試験体作製状況WW2: 断面修復箇所単位(mm) 図-1 試験体の概要図3. 曲げ耐力試験の結果3.1 載荷要領」 ース載荷は、5,000kN アムスラー型載荷試験機を用いて 、海水取放水構造物等の壁面に正負の2点静的載荷とし、試験体が破壊するまで行った。ここ する場合を想定し、補修面がそれぞれ 縮側となるよう断面修復を施した場合で、ひび割れ発生時、鉄筋ひずみがひび割れ発生時と ースとした。また、比較として無補修 降伏時の中間値(1,000u程度)に達した時点および鉄 1ケースとした。筋ひずみが降伏ひずみに達する直前(1,800 u程度)の各時点において、5kN まで除荷し再載荷した。 2.2 試験ケース - 試験ケースは、海水取放水構造物等の壁面に正負の 曲げ荷重が作用する場合を想定し、補修面がそれぞれ 引張側および圧縮側となるよう断面修復を施した場合 の試験を各1ケースとした。また、比較として無補修 の場合の試験を1ケースとした。(型枠・鉄筋の組立て) (はつり作業)載荷は、5,000kN アムスラー型載荷試験機を用いて 2点静的載荷とし、試験体が破壊するまで行った。ここ で、ひび割れ発生時、鉄筋ひずみがひび割れ発生時と 降伏時の中間値(1,000u程度)に達した時点および鉄 筋ひずみが降伏ひずみに達する直前 (1,800 u程度)の 各時点において、5 kN まで除荷し再載荷した。 - 360 -No.1No.3No.2荷重(kN)------------無補修試験体No.1 |- 引張側補修試験体No.2 . ???圧縮側補修試験体No.3-----0_1503.2 曲げ耐力 - 各試験体の荷重と中央変位の関係を図-2 に、最終破 壊状況を写真-2 に示す。また、ひび割れ発生時、引張 鉄筋降伏時および最大荷重時の各段階における荷重お よび変位の値を表-2 に示す。 ・ いずれの試験体も引張鉄筋が降伏後、試験体の変形 が進み、最終的に圧縮側コンクリートの圧縮破壊によ り荷重が低下する挙動を示した。また、引張側補修試 験体および圧縮側補修試験体の最大荷重は、無補修試 験体と同程度であり、断面修復を実施しても曲げ耐力 が低下しないことを確認した。荷重と中央変位との関係においては、引張側補修試 験体は無補修試験体と同様の関係を示すのに対し、圧 縮側補修試験体では引張鉄筋降伏後の中央変位が無補 修試験体の 1.7 倍程度となり、じん性が高くなること を確認した。これは、母材コンクリートよりも弾性係 数の小さい断面修復材が圧縮側にあることで、同じ圧 縮応力が作用した場合の圧縮側のひずみが大きくなり、 断面の曲率が大きくなったためと考えられる。10 |20 : 30 1 40変位(mm) 図-2 各試験体の荷重と中央変位の関係表-2 各段階における荷重および変位試驗体名項目ひび割れ 発生時引張鉄筋 降伏時最大荷 重時_232.95.4 238.2305.3 27.4297.7無補修 荷重(kN) 78.5 試験体 No.1 | 変位(mm) 0.9 引張側補修 | 荷重(kN) | 75.3 試験体 No.2 変位(mm) 0.8 圧縮側補修 | 荷重(kN) |.. 55.1 試験体 No.3 | 変位(mm) |035.827.5228|305.16.645.1300 ひび割れ発生----荷重(kN)最大荷重--鉄筋降伏--------++15 10 15 20 25 30変位(mm) (無補修試験体No.1の荷重と中央変位の関係)(無補修試験体No.1)| -ひび割れ発生 ----荷重(kN)最大荷重鉄筋降伏、(引張側補修試験体No.2)1 5 10 15 20 25 30変位(mm) (引張側補修試験体No.2 の荷重と中央変位の関係)ひび割れ発生 ------t(-M)最大荷重1!鉄筋降伏11 ---{10_ 5_ 10_1520 25 30 35404550変位(mm) (圧縮側補修試験体No.3 の荷重と中央変位の関係)(圧縮側補修試験体No.3) 写真-2 各試験体の最終破壊状況3613.3]3.3 各試験体における付着面の状況曲げ載荷終了後、引張側補修試験体および圧縮側補 修試験体で、変位量が最も大きいスパン中央部におい て、母材コンクリートと断面修復材との付着面からコ アを採取し、付着面の状況を確認した。その結果、両 試験体とも写真-3 に示すとおり剥離等は認められず、 母材コンクリートと断面修復材は一体として挙動した。3.3 各試験体における付着面の状況3)引張側補修試験体および圧縮側補修試験体とも付着 -- 曲げ載荷終了後、引張側補修試験体および圧縮側補 面の剥離等は認められず、母材コンクリートと断面 修試験体で、変位量が最も大きいスパン中央部におい 修復材は一体として挙動した。 て、母材コンクリートと断面修復材との付着面からコ アを採取し、付着面の状況を確認した。その結果、両 今回の検討では、断面修復工法の有効性を曲げ耐力 試験体とも写真-3 に示すとおり剥離等は認められず、 試験により確認することができ、鉄筋コンクリート構 母材コンクリートと断面修復材は一体として挙動した。 造物の保守管理に資する成果が得られた。今後は、せん断破壊先行型の破壊形態を示す構造物に対しても、 断面修復後の耐力を確認するため、断面修復後のせん断耐力について検討していく予定である。 断耐力について検討していく予定である。付着面参考文献断面修復材[1] 土木学会. コンクリート標準示方書[維持管理編].2007, p.119. [2] 土木学会. コンクリートライブラリー123. 吹付けコンクリート指針(案) [補修・補強編]. 2005, p.279. 加藤絵万、堤 知明、岩波光保、山内 浩、山路 徹、横田 浩. 港湾空港技術資料, 海洋環境下の鉄 筋コンクリート構造物に対する補修効果の定量評 価手法の構築に関する検討. No.1133,2006, p.1-12.(引張側補修試験体No.2)断面修復材断面修復材付着面(圧縮側補修試験体No.3)(は箱側袖修試験体No.3)写真-3 スパン中央における付着面の状況4.結論1)引張側補修試験体および圧縮側補修試験体の最大荷 重は、無補修試験体と同程度であり、断面修復を実 施しても曲げ耐力が低下しないことを確認した。 2)引張側補修試験体は無補修試験体と同様の荷重と変 1位の関係を示すのに対して、圧縮側補修試験体では鉄筋降伏後の中央変位が無補修試験体の 17 倍程度 となり、じん性が高くなることを確認した。3)引張側補修試験体および圧縮側補修試験体と 面の剥離等は認められず、母材コンクリート 修復材は一体として挙動した。 今回の検討では、断面修復工法の有効性を曲げ 試験により確認することができ、鉄筋コンクリー 造物の保守管理に資する成果が得られた。今後は ん断破壊先行型の破壊形態を示す構造物に対して、 断面修復後の耐力を確認するため、断面修復後の 断耐力について検討していく予定である。 土木学会. コンクリート標準示方書[維持管理編]. 2007, p.119.1 土木学会. コンクリートライブラリー123. 吹付け コンクリート指針(案) [補修・補強編].2005, p.279 加藤絵万、堤 知明、岩波光保、山内 浩、山路 徹、横田 浩. 港湾空港技術資料, 海洋環境下の鉄 筋コンクリート構造物に対する補修効果の定量評- 362 -“ “?コンクリート構造物における断面修復工法の有効性に関する検討“ “永山 一朗,Ichiro NAGAYAMA,光川 健,Ken MITSUKAWA
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)