(3)海外におけるオンラインメンテナンスの現状

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カテゴリ: 第6回
1. 海外の実施状況
原子炉運転中に保守を実施する、いわゆるオンライ ンメンテナンス(OLM)の各国の実施状況を表1に示 す。なお、本表では特に安全系のオンラインメンテナ ンスに注目してその実施状況をまとめた。Table 1 Status of OLM in each country 国 | 安全系実施状況 OLM のリスクの増分が小さい範囲で実施する等、リ アメリカN+1)| スクを管理した状態で、可能なものはほぼ実施。| OLM 期間 14日間を目処に ドイツN+2実施単一故障基準が満足され、N+2 リスクの増分が少ない場合 フィンランドに実施。 | N+1 「限定的米国同様、リスクを管理し スペインN+1た状態で実施リスクの増分に応じて 10 | N+2| ~30日間で実施| N+1 | 実施せず (N:定格に必要な系統数 +1 or + 2:冗長系の数) 以上、N+2 のプラントでは、1系統を保守のため待 機除外としても単一故障基準が成立するため、リスク の増分が小さいことを確認して、OLM を実施している ことが多い。スイスまた、N+1 のプラントではリスクの増分を管理した 上でOLM を実施しているか、OLM を実施をしていな いかであった。特に米国ではリスクを管理し、運転中 に実施可能なほぼ全ての系統でOLMを実施しており、 我が国(N+1) の OLM実施の参考になると考えられる。
2. IAEA 安全基準における取り扱いIAEA の安全基準でOLMがどのように扱われている かを調査するため、次の安全基準について調べた。 NS-R-2 安全運転要求 NS-G-2.2 運転上の制限と条件、及び運転手順のガイド NS-G-2.6 保守、サーベランス及び ISI のガイド上記の安全基準の調査の結果、OLM に関連するもの として次のものがあった。 NS-G-2.6 保守、サーベランス及び ISI のガイド 5. 12 いくつかの保守・サーベランス及びISIでは安 全上重要な系統もしくは機器を供用外とする必要に なるため、そのような系統や機器を供用外とする場 合の前提条件、並びに確実かつ適切に供用に戻すた めの特別の指示を記載し、通常運転に対する制限及 び条件を逸脱しないことを確実にすべきである。 また、待機所外時間を制限するガイドとして次のよ うなものがあった。 NS-G-2.2 運転上の制限と条件、及び運転手順のガイド 6.6 安全系の機器を供用外とする必要がある場合は、 安全系ロジックが設計上の規定に適合するような構 成とすべきである。 6.7 安全関連系統に対する運転可能性要求については、39、多重性、機器の信頼性、機器が運転できない場合の リスク増加が容認できる程度に小さい時間にすべき である。 6.8 容認可能な運転不能時間とその組み合わせた影響 を評価し、リスク増加が容認できる水準に維持され ていることを確認すべきである。この評価のために 最も適切な方法として、確率論的安全評価(PSA) と信頼性解析の方法が使用されるべきである。既存 の安全研究や運転経験に基づき、PSAから求めら れる時間より短い時間が運転制限条件として規定さ れるべきである。 以上、IAEA の安全基準の中では、保守等のため待機 除外とすることは特に禁止されているものではなく、 その際のリスクの増加を容認できる程度に小さい時間 にすべきであること、リスクの増加の評価については PSA や信頼性解析を用いるべきであること等が言われ ている。これらが、世界の OLM に対する取り扱いで あり、今後、我が国でも参考とすべきものと考える。3. 米国の実施状況 3.1 経緯 - 米国では 1980年代より、許容待機除外時間を利用し た OLM が特に制限無く実施されていた。このため、 複数の安全系機器を同時に保守を実施するなど、原子 力安全に考慮を払わないこともあったとのことである。 このため米国 NRC は保守実施の際の安全機能遂行に 対する影響評価を求めたが(should) (1991 年の 10CFR50.65 保守規則の公表)、その後の検査で保守前 のリスク評価が適切に行われていないことがわかり、 1999 年に保守前のリスク評価を強制的要件(shall)と し、今日に至っている。従って現在では、運転中、停止中を問わず保守前に リスク評価(=PSA による炉心損傷頻度等の増分の評 価)を実施することが義務付けられている。しかしな がら、リスク評価結果がよければ、複数の安全系の同 時OLM の実施等も認められ結果となっている。また、リスク情報から許容待機所外時間を評価し、 評価結果が現状より長ければ、その延長を図り、OLM の実施内容を充実する試みも多くなされている。 3.2 実施状況OLMを実施している機器設備の範囲の考え方を表2 に示す。OLM 実施する機器設備については、12 週間 前から計画作成を開始する。OLM 対象機器設備は、事故または発電上のリスクに大きな影響を与えないで待 機除外できる特定の系統又はそのグループ(=機能別 設備グループ (FEG: Functional Equipment Group)) に分 類し、FEG 単位で隔離をして、そのグループに集中し てOLM を実施する。このようなグループ化によって、 個々の部品に関連する全ての作業を特定し、保守作業 を同じ時期に計画できることになり、待機除外となる 回数を最小化することができる。 Table 2. Idea of equipment that executes OLM in US 格納容器内 OLM 実施不可運転上の制限内 Tech. Spec.であり、リスク (保安規定)格納容器外 小、発電に影響 対象機器が無ければ OLM 実施 出力低下・停止の必要が無く、 発電をサポート労働安全上許容 する機器 Tech. Spec.可であれば (保安規定)OLM 実施 非対象機器労働安全上許容 発電をサポート | 可であり、その する機器以外 | 他の制限が無ければ OLM実施 安全関連設備の OLM では、「許容待機除外時間 (AOT)の半分以下の時間で作業を実施できるか」が 具体的な保守内容を決定する際の一つの基準となって いる。また、保守する系と反対側の系統については健 全性を維持するため、特に配慮をして実施している。4. まとめ海外では、冗長系が我が国と同じ(N+1)の国の中 で米国が積極的にオンラインメンテナンスを行ってお り、我が国の参考となる。また、IAEA の安全基準等でも運転中の保守等を前提 としており、これがグローバルな考え方である。米国においては、安全の評価に PSA の結果を活用し ており、リスクを管理しながらオンラインメンテナン スを実施している。これらを参考に我が国におけるオ ンラインメンテナンスを検討していく必要がある。40,
“ “海外におけるオンラインメンテナンスの現状“ “水町 渉,Wataru MIZUMACHI,小林 正英,Masahide KOBAYASHI
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