写像法を用いた電磁超音波による配管減肉計測シミュレータの開発
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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
原子力プラントの高経年化に伴い、重要構造物の配 管に減肉が発生することが問題となっている。高経年 化により減肉箇所が増大すると、検査にかかる時間と コストが膨大になるため、状態監視保全を取り入れた 新しい配管減肉診断手法が求められている。電磁超音 波探触子(Electromagnetic Acoustic Tranceducer:EMAT) [1][2]は、磁石および励磁コイルにより、ローレンツカ を利用して超音波を発生させ、その超音波の変位と磁 場による渦電流の変化を誘導起電力として検出する非 破壊検査手法である。非接触で検査ができ、高温、高 振動の環境で使用可能なため、状態監視保全への適合 性が高いと考えられている。本研究では、EMAT を用 いた配管減肉検査の定量化を、シミュレーションを用 いた数理科学的なアプローチにより行う。減肉形状を B-spline 関数により自由にモデル化し、そのモデル化し た減肉が存在する検査領域を減肉の存在しない検査領 域からの写像法により表すことで、任意の減肉形状に 対応できる配管減肉計測シミュレータを開発した。こ れにより、さまざまな形状の配管減肉に対する超音波 伝播を可視化することができ、その物理現象の解析を 行うが可能となる。本論文では、開発したシミュレー タの有効性を確かめるため、半楕円減肉を想定し、数 値実験結果と実測定結果を比較して検証を行った。さらに超音波伝播の可視化を行い、減肉により変化する 超音波伝播の解析を行った。
2. EMAT を用いた検査の概要とモデル化
2.1 EMAT の動作原理Fig.1 に示すように、EMAT 装置はコイルと磁石から 構成されている。 まず EMAT コイルに印加した高周波 電流)により変動磁場が生じ検査対象の表面付近に渦 電流Jが発生する。磁場H と J との相互作用による電 磁力 F が発生し、検査対象表面に生じた振動が超音波 として試験体中を伝播する。超音波が反射して表面に まで戻ってくると、これによる変位 uと磁場 H との相 互作用により、過電流J'が発生する。このJ'による 磁場変化によって EMAT コイルに誘導電流が発生し電 圧変化 V を出力信号として検出する。 Fig.1 に出力信号 V を示す。信号のピーク間距離が、超音波が一往復す る時間を表し、これを TOF という。TOF と超音波の伝 播速度から検査対象の厚みを求めることができる。Coil high frequency current (1)magnetS000 BOBB Lorentz force (F)magnetic field (H)eddy current (J)uitrasonic waveFig.1 Illustration of NDT by EMAT391形状関数 c(0、4)を考慮した場合の Q(Q)を導体領域 2(g)、配管内部の空気領域 Pari-()、配管外部の空気領 域 (2aの3つの領域に分割する。それぞれの領域は以 下のように表される。2.2 配管減肉のモデリングFig.2 に示すように、配管の外半径を ra、内半径r、 配管上部に減肉のある配管モデルを考え、この配管モ デルの配管外部の空気領域を含めた2次元の検査領域 2を次のように定義する。検査領域 (9)を定義した場合、弾性体の変位u およ び磁束密度Bは極座標系を用いればr、A成分を、渦電 流 J、磁気ベクトルポテンシャル A はz成分のみを持 つ。A のz軸方向成分の関数 Art、r、)および超音波 の2次元の変位成分 u=(u(r、0)、ug(r、00)によって準定 常電磁場を表す式および電磁力が作用する弾性体の運 動を表す式は以下のように表される。送信部DA, Lv- A. = {o at2 = {(r, 0){ 0, < 0 < 0, , ““in0'ai(Q)の写像 Tar は以下のように 表される。| _““,a)-r, Xrtra) (0% < r'
原子力プラントの高経年化に伴い、重要構造物の配 管に減肉が発生することが問題となっている。高経年 化により減肉箇所が増大すると、検査にかかる時間と コストが膨大になるため、状態監視保全を取り入れた 新しい配管減肉診断手法が求められている。電磁超音 波探触子(Electromagnetic Acoustic Tranceducer:EMAT) [1][2]は、磁石および励磁コイルにより、ローレンツカ を利用して超音波を発生させ、その超音波の変位と磁 場による渦電流の変化を誘導起電力として検出する非 破壊検査手法である。非接触で検査ができ、高温、高 振動の環境で使用可能なため、状態監視保全への適合 性が高いと考えられている。本研究では、EMAT を用 いた配管減肉検査の定量化を、シミュレーションを用 いた数理科学的なアプローチにより行う。減肉形状を B-spline 関数により自由にモデル化し、そのモデル化し た減肉が存在する検査領域を減肉の存在しない検査領 域からの写像法により表すことで、任意の減肉形状に 対応できる配管減肉計測シミュレータを開発した。こ れにより、さまざまな形状の配管減肉に対する超音波 伝播を可視化することができ、その物理現象の解析を 行うが可能となる。本論文では、開発したシミュレー タの有効性を確かめるため、半楕円減肉を想定し、数 値実験結果と実測定結果を比較して検証を行った。さらに超音波伝播の可視化を行い、減肉により変化する 超音波伝播の解析を行った。
2. EMAT を用いた検査の概要とモデル化
2.1 EMAT の動作原理Fig.1 に示すように、EMAT 装置はコイルと磁石から 構成されている。 まず EMAT コイルに印加した高周波 電流)により変動磁場が生じ検査対象の表面付近に渦 電流Jが発生する。磁場H と J との相互作用による電 磁力 F が発生し、検査対象表面に生じた振動が超音波 として試験体中を伝播する。超音波が反射して表面に まで戻ってくると、これによる変位 uと磁場 H との相 互作用により、過電流J'が発生する。このJ'による 磁場変化によって EMAT コイルに誘導電流が発生し電 圧変化 V を出力信号として検出する。 Fig.1 に出力信号 V を示す。信号のピーク間距離が、超音波が一往復す る時間を表し、これを TOF という。TOF と超音波の伝 播速度から検査対象の厚みを求めることができる。Coil high frequency current (1)magnetS000 BOBB Lorentz force (F)magnetic field (H)eddy current (J)uitrasonic waveFig.1 Illustration of NDT by EMAT391形状関数 c(0、4)を考慮した場合の Q(Q)を導体領域 2(g)、配管内部の空気領域 Pari-()、配管外部の空気領 域 (2aの3つの領域に分割する。それぞれの領域は以 下のように表される。2.2 配管減肉のモデリングFig.2 に示すように、配管の外半径を ra、内半径r、 配管上部に減肉のある配管モデルを考え、この配管モ デルの配管外部の空気領域を含めた2次元の検査領域 2を次のように定義する。検査領域 (9)を定義した場合、弾性体の変位u およ び磁束密度Bは極座標系を用いればr、A成分を、渦電 流 J、磁気ベクトルポテンシャル A はz成分のみを持 つ。A のz軸方向成分の関数 Art、r、)および超音波 の2次元の変位成分 u=(u(r、0)、ug(r、00)によって準定 常電磁場を表す式および電磁力が作用する弾性体の運 動を表す式は以下のように表される。送信部DA, Lv- A. = {o at2 = {(r, 0){ 0, < 0 < 0, , ““in