超高速二相流によりオリフィス下流域に発生するエロージョン現象の解明(2)

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カテゴリ: 第6回
1.緒言
る。本研究にてクローズアップする管オリフィ そのような配管減肉をもたらす要素のひとつで 蒸気流や湿り度の高い空気といった二相流を扱 では、この管オリフィスの直下流域壁面や下流 ・エルボ背面にしばしば液滴衝撃エロージョン(Liquid Droplet Impingement : LDNによるものと思われ る減肉が発生することが知られている。高温の蒸気や 放射性の気体を扱う配管においては、このような損傷 が深刻な問題に発展する恐れも懸念される。実際、東北電力女川原子力発電所2号機において、 オリフィスの下流域 0.5D[D=配管径)に幅 0.2D 程度の 著しい減肉、およびオリフィスより 13D 程度下流に位 置する 90 度エルボの背側に貫通穴を伴う楕円状の著 計・製作し、可視化による観測実験を行って現象を模 擬する条件を探ること行った。本研究では、オリフィス下流域にて発生する複雑流 - 397 -動現象による複合的な減肉現象のメカニズムを解明し、 現行プラントにおける損傷ポテンシャルを低減させる ことを目的とする。
2. 実験装置および方法2.1 実験装置の概略本研究では空気流に水の霧状液滴を混入することで 蒸気流を模擬する。試験に用いる装置の概略図をFig.2 に示す。装置は、主流供給部・液滴供給部・試験部の 3 パートからなる。56mm| オリフィス 試験が726mmスプレーノズル1. 圧縮空気 2. 圧力調整器 3. オリフィス型流量計 4. 貯水用耐圧タンク1液滴供給部全長4~5mFig.2 装置概略図主流供給部では圧縮空気ボンベによって、主流とし て空気を供給する。主流の流速は入口圧力を調節する ことによって操作し、0-1MPa の範囲で調節することが できる。主流部円管は内径 54.9mm の SUS製である。液滴供給部では水の入った耐圧タンクを加圧し、気 流中に水の霧状液滴を混入する。SUS 管部は外径 21.7 mmで、水は液滴の出口部分に取り付けられたノズル によって霧状にされる。主流と差圧 0.1MPa以上で液滴 噴霧が可能である。液滴の加圧タンクの最高入力圧力 は 1.0MPa で、本実験においては、主流と液滴タンクと の差圧は 0.1-0.4MPa とした。試験部は内部を可視化できるようにアクリル管やガ ラス管を用いた。どちらの管を使うかは可視化装置に より決まる。試験部に設置するオリフィスには、実機 の配管と同じ開口部直径を持 つ開口面積比 0.049 を有するオ リフィスを用いることにした。 Fig.3 に断面図で示す。オリフ ィス上流側の円管は、長さ 20cm と 90cm の2種類を用意し、交換が可能である。オリフ ※ィス下流の直管部は一辺 56mm の正方形断面を持っFig.3 オリフィス断面図 た矩形管であり、長さはLastok50Aフランジに接続04.4mm726mm である。さらにその下流には、一辺 56mm の正 方形断面を持つエルボ部分を設置している。エルボ下 流において、流れは大気開放となっている。2.2 実験方法 1本研究ではシュリーレン装置およびデジタルビデオ カメラを用いオリフィス上流及び下流の可視化を行っ た。シュリーレン装置による観測の際は、ガラス製試 験部を、デジタルビデオカメラによる観測の際は、ア クリル製試験部を用いた。シュリーレン装置により圧 縮性高速流れ中に存在する微量な密度差を検出し、デ ジタルビデオカメラにより気流中の液滴挙動の概要を 把握し、全体として流れがどのような傾向を示すか、 また今後流れの要素をクローズアップするにあたって 観察点を絞ることを目的とする。また感圧シートによる壁面での圧力分布の測定、超 音波探傷器によるオリフィス直後での壁面に沿う液膜 厚さの測定を行い、減肉の要因となる圧力、壁面せん 断応力の定量的評価を試みる。3. 結果および考察3.1 液滴衝突点位置の評価 - 液滴を主流中に混入させると、オリフィス下流域で は、気流中液滴が再付着点で壁面に付着し液膜を形成 する。この液膜は再循環領域では上流側に、それより 下流では下流側に流動する。オリフィス直下流域壁面 を観測し衝突点を記録した結果を Fig.4 に示す。横軸は 主流流速、縦軸は衝突点のオリフィスからの距離であ実機における衝突点位置 (外挿により予測)オリフィスからの距離/配管径[-]実験における衝突点位置実機における 「減肉領域10_50_100 150 200 「250300主流流束[m/s]Fig.4 衝突点位置398- Fig.4 中の帯状に着色した部分は、実機の配管の損傷 部分である。実験によって得られた衝突点位置と比較 すると、はるか上流側に位置していることが分かる。 ここで考えられる可能性は、モデルとした配管に発生 したオリフィス直下の減肉は、オリフィスを通過して きた液滴が直接壁面に衝突することによるもの(LD) ではなく、液膜によるせん断力の発生(FAC)によるもの ではないかということである。3.2 二相流が壁面に与える影響Fig.5 に高速気液二相流によりジェットが存在して いる状態(ノズルとオリフィスの距離 20cm、主流管と 貯水タンクの差圧 0.2MPa、液滴の噴量 62.9mL/min)で オリフィス直下流域壁面における圧力分布を感圧シー トで測定したものを示す。「オリフィスフランジ位置!Flow 液滴衝突点11回目20510MPa 0.3MPa2回目。GOTO |||||||||||||||||||0.2MPa 0.1MPa201(cm)Fig.5 オリフィス直下流域壁面における壁面圧力分布Fig.5 から液滴の衝突点では比較的圧力が低いこと がわかる。圧力が最も高い部分は膜状となった液体が オリフィス開口部から噴出するジェット流に再び巻き 込まれ始める領域である。このことから、オリフィス 直下流域壁面での減肉は LDIエロージョンによるもの ではなく FAC の可能性が極めて高いと言える。 FAC の 発生には壁面におけるせん断応力が大きな影響を及ぼ すため、液膜の速度および厚さから壁面せん断力を求 める。本研究において液膜速度を測定するにあたり適当な 流量計を用意することができなかった。そこで、本研 究では液滴を管内に混入させた状態にてシュリーレン システムを用いて液膜の可視化を行い、波面の速度か ら液膜速度を求めるものとした。ジェットが存在して いる状態(ノズルとオリフィスの距離 20cm、主流管と 貯水タンクの差圧 0.2MPa、液滴の噴量 62.9mL/min)の 場合、液膜速度は 0.175m/s と算出された。超音波探傷器を用いてジェットが存在している状態 (ノズルとオリフィスの距離 20cm、主流管と貯水タン クの差圧 0.2MPa、液滴の噴量 62.9mL/min)で複数点の 液膜厚さを測定し、平均した結果、液膜厚さ れ (-)を表 す式として以下の近似式が得られた。h= 0.6682 ln(x)+ 0.6362-1ここで x はオリフィスからの距離を無次元化した値で ある。今回循環渦に巻き込まれなかった液滴が滞留す る箇所は液膜流の境界付近に位置していると考えられ るため、近似式から除外した。 - 配管内の流れをクエット流れと仮定すると壁面せん 断応力は以下の式で表される。t=(2)式に(1)式を代入して、横軸にオリフィスからの距離、 縦軸に壁面せん断応力を表したグラフを Fig.6 に示す。壁面せん断応力[Pa]0.51.5 12 オリフィスからの距離L/D[-]Fig.6 オリフィス直下流域壁面における辟不ん断応力0E10_05 11.5 22.5オリフィスからの距離L/D[-]Fig.6 オリフィス直下流域壁面における壁面せん断応力Fig.6 から液膜厚さが薄くなる上流側では急激に壁 面せん断力が増加することがわかる。また FAC によっ て壁面を磨耗させるのに必要な壁面せん断応力は数Pa のオーダーと言われている。このことからオリフィス 直下流域壁面における減肉は LDI によるものではなく FAC によるものであると言うことができる。3 オリフィスへの二相流の流入状態 ズルとオリフィスの距離が 20cm と 90cm ではオリ399フィス近傍における二相流の流入状態が異なる。ノズ ル-オリフィス間距離が 20cm のとき、主流管と貯水タ ンクとの差圧が 0.1~0.4MPa の噴流すべてでエルボに 衝突する液滴ジェットが確認された。このとき、オリ フィス上流側ではスプレーノズルより噴霧した液滴が 一様に分散し、壁面に付着せずに直接オリフィス背面 へ衝突した後、開口部に流入する。ノズル-オリフィス 間距離が 90cm のとき、主流管と貯水タンクとの差圧 が 0.1、0.2MPa の噴流では連続的な液滴ジェットは観 則されなかった。主流管と貯水タンクとの差圧が 0.3、 .4MPa の噴流では連続的な液滴ジェットが観測され た。主流管と貯水タンクとの差圧が 0.3、0.4MPa のと き、ジェットが出始めるまでに数秒の時間を要した。 このことから液滴が噴霧されてからオリフィス開口部 こ流入するまでの間に、オリフィス上流側に液滴が溜 まっていることがわかる。主流管と貯水タンクとの差圧が 0.1、0.2MPa の噴流 で連続的な液滴ジェットが発生しないことをあわせて 考えると、オリフィス上流側に液滴が滞留してオリフ ィスに流入する場合は、多くの液滴が溜まらないとジ ェットが発生しないことが言える。すなわち、高流量 下では多量の液体の存在がジェットを発生させると考 えられる。3.4 オリフィス下流側エルボ部の圧力分布オリフィス下流側エルボ部の圧力分布を感圧シート こよって測定した結果を Fig.7 に示す。条件は入口圧力 .3MPa、主流管と貯水タンクの差圧 0.2MPa、オリフィ スから下流側エルボまでの距離は 15cm である。この 条件はジェット流が確認できる液滴噴出である。2 →Flowアルミテープ縁配管壁面102D配管壁面一Fig.7 エルボ部での圧力分布Fig.7 より周囲に比べ力が強くかかった点が確認さ てた。この点はエルボ上流部の直管部の管中心軸上に 立置しているため、オリフィスから噴出した液滴ジェ ットの衝突点と考えられる。ここで感圧シートにおい比較的圧力が高くなっている箇所を縁取ると、衝突 京のほうがわずかに大きいがほぼ同程度の大きさであ ることがわかる。すなわち、オリフィスからわずかに 広がった状態で壁面に衝突していると考えられる。一方、ジェット流が存在しない条件で同じ実験を行 っても、エルボ部に比較的高い圧力は見られなかった ことからもジェット流による LDI エロージョンの可能 主が高いと言える。4.結言以上の実験より、以下の事柄が判明した。 0 オリフィス直下流域壁面に、液滴の衝突点が確認され、その衝突点より上流側に液膜が形成される。 D液膜は壁面に対し、部分的に強いせん断力をもたらす。 ・オリフィス開口部に流入する液適量が多く、かつ、 オリフィス背後を伝ってオリフィス開口部に進入す る液滴が存在する場合に、液滴ジェットの噴出が確 認される。 ・ジェットが下流側のエルボ背側に衝突する場合、そ の衝突点はオリフィスの開口部とほぼ同程度の大き さとなる。 以上のことから、流路内に管オリフィスを有する配管 ミの減肉現象の原因としては、 オリフィス直下流域壁面に発生する減肉現象は、液 滴の直接衝突よりも循環領域に形成される液膜が原 因となり FAC を起こしている可能性が高い。 オリフィスに流入する液体が多量な場合、下流側に ジェット噴流が高流速で噴出し、LDI によってエル ボ部分に著しい減肉をもたらす可能性が高い。 上の二点を挙げることができる。辞本研究は東北電力の委託を受けて東北放射線科学セ ターと共同で研究を行っているものである。ここに して謝辞の意を表する。“ “?超高速二相流によりオリフィス下流域に発生するエロージョン現象の解明(2)“ “梅原 真弘,Masahiro UMEHARA,阿部 祐子,Yuko ABE,結城 和久,Kazuhisa YUKI,戸田 三朗,Saburo TODA,秋葉 真司,Shinji AKIBA
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