液滴衝撃エロージョン実験による配管減肉メカニズムに関する研究

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
現在、国内の多くのプラントは高経年化しつつあ る、このような発電所を使用していく上で安全性や 稼働率向上のためには高レベルの管理保全技術が必 須となってくる。この障害となる発電所内で発生す るトラブルの中に、配管の減肉による配管内物質の 漏洩がある。配管が減肉する要因は大きく分けて2つある。1 つ目は機械的な要因で、2つ目は、化学的な要因で ある。前者は配管内を流れる高速二相流中に含まれ る液滴が配管壁にぶつかることで発生し、後者は配 管内の蒸気に含まれる腐食性物質が配管壁を腐食す ることで発生する。 本研究では、前者について行った。配管内を流れる 高速二相流中の液滴が配管壁を減肉する現象は「液滴衝撃エロージョン(Liquid Droplet Impingement Erosion)」と呼ばれる。高速二相流中の液滴が配管壁面 などに衝突すると、局所的に大きな衝撃力が発生し、 機械的な減肉現象を発生させる。本研究では高速回転円盤エロージョン試験装置を用 いて、エロージョンの発生メカニズムの究明及び衝突 速度、経過時間における減肉速度の定量的評価手法の 検討を行った。 [1] [2]
2.液滴衝撃エロージョン実験
2.1 実験方法本研究で用いた実験装置を Fig.1 に示す。実験装置内 には Fig.2 で示すような高速で回転する円盤があり,そ の円盤の外縁部に2つの試験片を取り付けられる構造 になっている.そして、細い水流が噴出するノズルが, 試験片の回転軌道を水流が横切る様に取り付けてある. この円盤が高速で回転し,試験片が水流を横切ること で液滴衝撃エロージョンが発生する.415Fig. 1 Experiment overviewtest piecethickness 5mmwater jet (diameter 1.5mm) --Fig. 2 Experiment model実験に用いた試験片の材料は、アルミニウム (A5052)、真鍮(C2801)、ステンレス(SUS304) である。実験パラメータは、試験片衝突速度、試験 時間である。なお、ノズルから噴出す水流の直径は 1.5mm、流量は 260/h であり、フィルターを通してろ 過を行っている。2.2 実験結果各試験片に発生した液滴衝撃エロージョンを観察 した結果、Table 1、Table 2、Table 3 の結果が得られ た。この結果から、アルミ、真鍮、ステンレスの順 に材料の硬さが増すにつれて、耐エロージョン性が 上昇していることが分かる。また、各試験片に発生 したエロージョンの深さを測定し、その深さを1年 間でどのくらいの深さになるかを計算したところ Fig.3 のような結果が得られた。Fig.3 は、1 年間で 2mm 以上のエロージョンが発生する可能性の有無 を示しているが、今回の実験条件と実際の発電所のNo.配管内の状態を比べると、湿りが多いことに相当する ため、液滴衝撃エロージョンが厳しい結果となってい る。Table 1 (aluminum) | rotation impingement test timeerosion (rpm) | speed (m/s) | (hour) | Al | 1250 | 25 | 41 | A2 | 1500 | 30 | 1.5 | A3 | 150030 13.33 A4| 1650331.5 A5 1750 351.5 A61 1750 352.86 A7 | 2000 40 | 2.5 | o | A8 | 2250 | 45 | 2.22 | 0150 | 1.5 | 0 A101 2500 50Table 2 (brass) | rotation impingement test time (rpm) | speed (m/s) | (hour)erosion 2000 401.5 200019.5 C3| 225045 118 C4 2500501.5 2500 50 | 18A9 20002.540Table 3 (stainless steel) rotation Jimpingement| test time No.(rpm) | speed (m/s) | (hour) S11 1750 35410erosionS220004096S34019740240 7445|2000 20002250 S61 22502250 S8 | 2500| |A|A|A|A|A|o|o452404531250312S9 | 30006048S101 40008025Wastage speed over 2mm/yearImpingement speed (m/s)Wastage speed under 2mm/year |AluminumBrassStainlessmaterialsteelFig. 3 Wastage speed distribution4169次に、ステンレスを用いた試験片のエロージョン深 さを測定し、年間の減肉速度を求めてグラフにプロ ットしたところ Fig.4 が得られた。減肉速度の予測は各国で進められており、代表的 なものに Sanchez らによる減肉速度予測式がある。 なお、この予測式は経験式である。Sanchez らによる 減肉速度予測式及び各パラメータ以下の通りである。 [3]Cpm to (1-x)V*F.F.PE?AC m: Wastage speed per unit area : wear coefficient : Liquid density : Total mass flow rate : Quality : Drop Velocity : Entrainment fraction : Hitting fraction : Oxide Hardness: Critical Strain to Fracture Ac : Characteristic area k : Constant number A : Section areaこの予測式と、本研究で得られた減肉速度を比 較してみると、衝突速度が速くなるにつれて減 肉速度は加速度的に上昇している。また、予測 式を変換していくと減肉速度は衝突速度の5乗 に比例するとなり、実際の測定データと比較す ると互いに近い値をとることがわかった。_Cprin no (1-x)V*F.F.P2EAC oc km V4-1ただし、Sanchez らによる減肉速度予測式は 配管に対応することを目的とした予測式である ため、本研究で得た実験データを使用するため には各種パラメータを対応させねばならない、 これは今後の課題である。4experimental value CY=aX^5wastage speed (mm/year)112010012040 60 80_ Impingement speed (m/s)Fig. 4 wastage speed and approximate curve(Stainless steel)3. 液滴衝撃エロージョンの発生メカニズムエロージョンの発生メカニズムを調べるため、試験 片にステンレスを用いて、衝突速度を 50m/s に固定し、 試験時間を徐々に長くして実験を行った。Table 4 はそ の結果である。Fig.5 は S8-1 の表面画像であり、僅かな凹凸が確認 できる、これは液滴の衝突する箇所にのみ確認できた。 次に、このマイクロスコープを用いて、エロージョン の深さを測定した。最大で 2.1 um の凹凸が確認できた。Fig.6 は S8-3 の表面画像である。画像中央部分が液 商衝突箇所であり、左右両端は液滴が衝突していない 部分である。これを見ると凹凸の大きさにばらつきが 確認できる。矢印で示した部分は、周囲に比べて大き く凹んでいる。矢印 a の深さは 17.9μm、矢印 b の深 さは 35.8 um であった。この画像から、エロージョン はすべての衝突箇所で等しい速度で進行するのではな く、進行速度は異なることがわかった。Fig.7 は S8-4 の表面画像である。試験片表面にある 白い部分は、液滴が衝突していない部分で、黒くえぐ られている部分が、液滴の衝突によりエロージョンが 発生した部分である。この画像を観察すると、S8-3 で 見られたエロージョン痕が広範囲に広がっていること がわかる。このエロージョンの最大深さは 87.6 um で あった。また、エロージョンの出来方は液滴の衝突し た部分で一様ではなく、液滴衝突箇所の中心部では、 エロージョンは小さく、外縁部の方がより大きくエロ417 -ージョンが発生していた。この周速を固定した実験から、実験初期段階では エロージョンの発生は確認出来ず、長時間実験を続 けることでエロージョンが発生することがわかった。これは、液滴の衝突によるエネルギーが金属疲労 となって、試験片表面に蓄積し、それがある程度蓄 積され表面に剥離が発生してエロージョンとなると 考えられる。Table 4 | -| impingement | test time | impingement | | speed (m/s) | (hour) | freauencyerosion S8-1250000 S8-2 5016.7 2500000 S8-3 50166.7 | 25000000 S8-4 50312 | 46800000501.7Fig.5S8-1Fig.688-3Fig.7S8-4-. 結言液滴衝撃エロージョンに対する、耐エロージョン性 は金属によって異なり、金属材料の硬さに依存する。 また、衝突速度が速くなると液滴衝撃エロージョン| の進行速度(減肉速度)は速くなる。液滴衝撃エロージョンは実験開始直後から発生す」 るのではなく、かなりの数の液滴が何度も衝突する」 ことにより金属表面に疲労が蓄積し、それがある程 度蓄積されて初めて、金属表面が剥離し、それがエ ロージョンとして現れる。辞本研究は、東京電力株式会社との共同研究である。参考文献| EPRI. “Erosion/Corrosion in Nuclear Plant SteamPiping: Causes and Inspection Program Guidelines” ] 奈良林 直,村瀬 敏博,大森 修一,森 治嗣 “原子力発電プラントの信頼性向上に資する熱流動現 象に関する研究(1)高速回転円盤を用いた液滴衝撃 エロージョン試験”, K22, 日本原子力学会 2007年秋の大会. ] R. G. Keck, P. Griffith. “Prediction and Mitigation ofErosion-Corrosive Wear in Secondary Piping Systems of Nuclear Power Plant” U. S. Nuclear Regulatory Commission (1987).“ “?液滴衝撃エロージョン実験による配管減肉メカニズムに関する研究“ “東 侑麻,Yuma HIGASHI,奈良林 直,Tadashi NARABAYASHI,島津 洋一郎,Yoichiro SHIMAZU,辻 雅司,Masashi TSUJI,森 治嗣,Michitugu MORI,手塚 健一,Kenichi TEZUKA
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