EMAT を用いた配管減肉寸法計測法
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カテゴリ: 第6回
.緒言
発電プラントには、高温、高圧にさらされる配管が り、流れ加速型腐食(以下、FAC)等の減肉が生じる れがある[1][2]。 そこで、日本機械学会が定める減肉 理規定[3]に基づき、定期的に配管の肉厚測定を行っ 配管の健全性を担保している。この規定では、科学 見地と経験から、レジューサ、オリフィス下流、エ ボ等において配管直径を基準に検査部位を定めてお 、減肉が発生している場合、その進展傾向から配管 交換時期を定めている。また規定ではX線や超音波、 位差法、パルス渦電流法による配管減肉寸法計測法 定められている。 発電プラントには多数の配管が存在するため、検査 所が非常に多い。十分な測定精度を担保しつつ、検 コストの低減が求められている。そこで、電磁超音 (以下、EMAT)の使用が検討されている。 EMAT は静 場を発生させる磁石と、交流磁場を送受信するコイ によって構成されている[4][5][6]。 板厚の評価はもち ん、材質の評価などにも用いられている[7]][8][9]。 プラントが必要なく、耐高温特性、コスト的な利点 ら、探触子を断熱材の内側に常時配置することが原 的に可能であり、現状の、時間を基準とした保全か 、供用期間中の常時監視、つまり状態監視保全の適 が期待できる。 一方で、これまで報告されている EMAT を用いた研 では、実機に生じる減肉の形状についての考察を行っているものは多くない。そこで本報告では、EMAT -用いた、実機に生じる複雑な形状を持つ減肉のモデ 一化を行うとともに、EMAT による寸法化について検 」を行った。
こ.1 原理 EMAT はコイルと静磁場を作る磁石によって構成さ る探触子である。本報告では横波垂直型の EMAT を 目いた。その構造を Fig. 1に示す。コイルに任意の周 ミ数のバースト波を印加することで、適用する試験体 ●材質が非磁性体の場合はローレンツ力、強磁性体の 号合はローレンス力と磁歪によって試験体表面に任意 ●周波数の振動を送信することができる。発生した振 コは試験体内を超音波として伝播する。受信は送信と このプロセスで行い、磁石の作る静磁場と裏面で反射 して入射面まで戻ってきた振動により、過電流が発生、 これによる磁束の変化がEMAT のコイルに誘導起電力MagnetN10mmSLCoilEddy currentUltrasonic wave Lorents forceFig. 1 Principle of EMATscillscope0HO○○○oooooooRPR-4000315mm0mmPCEMAT)Auto stage10Fig. 2 Test piece of semi ellipseFig. 3 Experimental setupSensor output (V)10_208010040 60 Time (us)して現れる。EMAT は超音波の変換に電磁場を用い ことから超音波の変換効率に優れている。本報告で 、超音波のエコー間隔から減肉の形状評価に用いる。 た、試験体の材質は非磁性体としたことから、超音 はローレンツ力によって発生する。 .2 試験体 本報告では、配管に生じる LDI や FAC を半楕円で 31 本田1 いたま験休もEin 21に示す 以区 315mm として現れる。EMAT は超音波の変換に電磁場を用い うことから超音波の変換効率に優れている。本報告で は、超音波のエコー間隔から減肉の形状評価に用いる。 ミた、試験体の材質は非磁性体としたことから、超音 支はローレンツ力によって発生する。 2.2 試験体本報告では、配管に生じる LDI や FAC を半楕円で 莫擬した。用いた試験体をFig. 2 に示す。外径315mm、 厚さ 15mm、軸方向長さ 100mm、材質 SUS304 の配管 こ、半楕円の減肉をワイヤ放電加工で加工した。これ を半楕円減肉試験体とする。加工した減肉の形状は、 或肉半径 a=4,10,15,40mm、減肉高さ b-3,5mm の組み合 つせとした。さらに、より FAC に近い減肉として、配 管内面の 120°に渡り円弧状減肉を加工した試験体を 製作した。これを模擬 FAC 試験体とする。残肉厚を 3,5,10,15mm とする4体の試験体を製作した。 2.3 実験システム日本機械学会における配管減肉管理規格では配管の 怪に応じて周方向に4点ないし8点で測定することを 求めている。しかしここでは、EMAT を減肉に対して 移動させ、減肉との相対位置を変化させたときの信号 を測定した。これは必ずしも EMAT の真下に減肉の最 も進んだ箇所が発生するとは限らないことと、EMAT と減肉の相対位置による、測定信号の変化を測定する 事を想定した。 EMAT の移動には PC により制御可能 で、十分な繰り返し位置決め精度を持つ自動テーブル を製作した。実験装置を Fig. 3 に示す。試験体と EMAT を任意の相対角度に設定することができる。今回は試 験体と EMAT の相対位置を 1mm ピッチで変化させな がら測定を行った。3. 実験結果 3. 1 半楕円減肉試験体減肉半径 a=15mm、減肉高さ b-3mm の検出信号を Fig. 4 に示す。入射面、反射面が曲面であるが、Fig. 4(a)Experimental setup8010040 60 Time (us)a) Sensor position: 60mmSensor output (V)10_80100204060Time (us)(b) Sensor position: Omm~Sensor output (V)-60-40-200_204060Sensor position(mm)(b) Sensor position: OmmLite-60-40-20_0_204060 Sensor position(mm)(c) Sensor position profile Fig. 4 Measurement results (a=15mm, b=3mm)5においては、特に大きな減衰もなく、エコー きている。健全部の管厚は 15mm であり、エ 高は9.46usであるから音速は次の式で求められの健全部においては、特に大きな減衰もなく、エコー が観測できている。健全部の管厚は 15mm であり、エ コー間隔は9.46us であるから音速は次の式で求められ- 437 -1210Table 1. Test piece of half ellipse wall thinningMeasurement True valueresult Thickness(mm) Width (mm)15.0 Thickness(mm) 17 Width (mm)2027.0 Thickness(mm)16.2 Width (mm)36.0 Thickness(mm) 1716.2 Width (mm) | 801 91.0173010る。15mm×2 __ 3 17x102 m/s19.46usFig. 4(b)は減肉中央の検出信号であるが、エコーを検出 できており、その間隔は 7.68us である。よって厚さはんのずで皮TOR/× 1.68 S _122mmt%3D3C15mm×2_3 17x102 mls 9.46usFig. 4(b)は減肉中央の検出信号であるが、エコーを検出 できており、その間隔は 7.68us である。よって厚さは 次の式で求められる。13 17x104 m/sx7.681S _122mmt%3D中央部の減肉高さ b は 3mm であるから、肉厚 12mm を評価できている。次に減肉幅の測定のため、検出信 号の B2 付近におけるセンサ位置プロファイルを測定 した。結果を Fig. 4(c)に示す。減肉端部において急激 な減衰が見られた。測定結果からエコー間隔、エコー 振幅の減衰傾向から、寸法化を行った結果を Table 1 に示す。 3.2 模擬 FAC 減肉FAC の様なアスペクト比(減肉高さ/減肉半径)の低い 減肉は定量的な減肉評価が可能であるとの知見が得ら れた。そこで、より問題となりやすい周方向の広い領 域に発生した、模擬 FAC試験体において測定を行った。 この試験体は周方向 120°に渡って円弧状の減肉を加 工している。円弧であるから、半楕円減肉試験体と比較して減肉端がより滑らかになっている。半楕円減肉 この場合は減肉端が 90度になっているため、減肉端におけるエコーの減衰が検出しやすいと考えられるが、減 肉端の配管肉厚が滑らかに変化するこの試験体は減肉 端におけるエコーの急激な減衰は半楕円減肉ほど期待 できないと思われる。半楕円減肉試験体と比較して、Table 2. Test piece of FAC wall thinningMeasurement True valueresult Thickness(mm)1716.9 Width ()120125 Thickness(mm)14.9 Width (9)120115 Thickness(mm)1011.2 Width (°)120119 Thickness(mm)5.84 Width ()120124155Sensor output (V)10_2040 60Time (us)80100(a) Sensor position: 60°Sensor output (V)-0.05-0.110_2040 60Time (us)80_100(b) Sensor position: 0°Wall thinning(mm)-60-40 -20_ 0_2040601Sensor position(deg) -40 -20_0_204060Sensor position(deg)-60(c) Sensor position profileFig. 5 Measurement results (FAC b=3mm) より FAC に近い模擬減肉試験体であると考える。検出 信号の一部を Fig. 5 に示す。Fig. 5(a)は減肉端とセンサ4384[2]健全部と比較して大きな減衰は見られなかった。F 5(b)は減肉中央の検出信号である。エコーが確認で る。ここでは Fig, 5(a),(b)しか図示しないが、模擬 FA 試験体(b=3mm)では、若干のエコー振幅の変化は見 れたが、減肉全周に渡ってエコーを測定可能であり それぞれのセンサ位置において肉厚を評価すること できた。エコー間隔から肉厚を評価した結果を F 中央が重なったときの検出信号である。半楕円減肉に謝辞 おいては、エコー振幅の減衰が見られたが、ここでは 健全部と比較して大きな減衰は見られなかった。Fig. 本研究は経済産業省原子力安全・保安院の「平成 20 5(b)は減肉中央の検出信号である。エコーが確認でき 年度高経年化対策強化基盤整備事業」において実施し る。ここでは Fig, 5(a),(b)しか図示しないが、模擬 FAC た研究である。関係各位に感謝申し上げる。 試験体(b=3mm)では、若干のエコー振幅の変化は見ら れたが、減肉全周に渡ってエコーを測定可能であり、参考文献 それぞれのセンサ位置において肉厚を評価することが できた。エコー間隔から肉厚を評価した結果を Fig. [1] 礒本良則, 宮田寛和, ““液滴衝突エロージョン現象」と実用材料の寿命予測““, 材料と環境, Vol.57, No.3, 5(c)に示す。減肉高さが小さい、初期の FAC に近い減2008, pp.146-152 | 肉試験体においては、エコー間隔から肉厚の評価は十宮澤正純:「化学プラントでのエロージョン・コ 分可能であり、減肉領域の評価はエコー間隔や振幅の ロージョン事例」,材料と環境, Vol.57, No.3,2008, pp.118-121 変化からも十分可能であると言える。一方で減肉が進[3] 日本機械学会, ““発電用設備配管減肉管理に関す 行して減肉深さが大きくなっていくと、減肉端部からる規格““, 日本機械学会, 2005 エコー間隔の測定はできなくなっていく。[4] R. Thompson, “Physical Principles of Measurements 周方向領域については最大 4%程誤差が見られるがwith EMAT Transducers”, W.P. Mason, (ed.), PhysicalAcoustics, Vol.19, Academic Press, New York, , 1990, 概ね一致しており、肉厚についてはさらに良く一致しpp. 157-200 ている。したがって、より反射面の急な半楕円減肉試[5] 山崎友祐, 河部大輔, 大谷俊博, 平尾雅彦, “電磁 験体と比較して、反射面がなだらかな減肉(例えば初期 超音波センサを用いた最適波形法による鋼管の減肉検査““,日本機械学会論文誌(A 編), Vol. 67, No の FAC)では精度良く、減肉のサイジングが可能である659, 2001, pp. 169-174 ことを確認した。他の試験体の測定結果を Table 2に示 「61 KAWASHIMA K, “Very High Frequency EMAT forgResonant Measurement”, Proc IEEE Ultrasonic Symp,Vol. 1994, No. 2, 1994, pp.1111-1119[7] Smith, B.J., Martin, R. and Holt, R.P., “The use of 4.結言EMATs for wall thickness measurements on corrodedpipes” Proc 6th Int Conf on NDT Methods, Strasbourg 減肉領域が広く、減肉深さが浅い初期の FAC につい p. 49, 1986 ては、EMAT で対応できる可能性が得られた。つまり、 [8] BOETTGER W, SCHNEIDER H, WEINGARTEN W“Prototype EMAT system for tube inspection with 十分に減肉面がなだらかな曲面を持つ減肉(例えば初。guided ultrasonic waves”, Nucl Eng Des, Vol.102. 期の FAC)であれば、TOF から肉厚の測定が可能であ No.3, pp.369-376, 1987 る。一方で管周方向の4または8点で定点監視を行う [9] 平尾雅彦, 荻博次, ““電磁超音波共鳴による疲労過程の非接触モニタリング““,非破壊検査, Vol. 51. 場合、実際の減肉の形状は環境によって異なること、No. 2, pp. 79-82 また基本的にEMAT と減肉の相対位置がどこになるか わからず、EMAT の直下が減肉部の最も角度の大きい減肉領域が広く、減肉深さが浅い初期の FAC につい ては、EMAT で対応できる可能性が得られた。つまり、 十分に減肉面がなだらかな曲面を持つ減肉(例えば初 期の FAC)であれば、TOF から肉厚の測定が可能であ る。一方で管周方向の4または8点で定点監視を行う る。一方で管周方向の4 または8点で定点監視を行う| 場合、実際の減肉の形状は環境によって異なること、 また基本的にEMAT と減肉の相対位置がどこになるか わからず、EMAT の直下が減肉部の最も角度の大きい」 肉率の算出が不可欠である。減肉率を算出するために は最低でも時系列で2点の測定が必要であり、早期に 減肉率を算出するためには肉厚測定において高い分解す。儀本良則, 宮田寛和,““液滴衝突エロージョン現象 と実用材料の寿命予測”, 材料と環境, Vol.57, No.3, 2008, pp.146-152 宮澤正純:「化学プラントでのエロージョン・コ ロージョン事例」,材料と環境, Vol.57, No.3, 2008, pp.118-121 日本機械学会, 発電用設備配管減肉管理に関す る規格”,日本機械学会, 2005 R. Thompson, “Physical Principles of Measurements with EMAT Transducers”, W.P. Mason, (ed.), Physical Acoustics, Vol.19, Academic Press, New York, , 1990, pp. 157-200 山崎友祐, 阿部大輔, 大谷俊博, 平尾雅彦, “電磁 超音波センサを用いた最適波形法による鋼管の 減肉検査““,日本機械学会論文誌(A 編), Vol. 67, No. 659, 2001, pp. 169-174 KAWASHIMA K, “Very High Frequency EMAT for Resonant Measurement”, Proc IEEE Ultrasonic Symp, Vol. 1994, No. 2, 1994, pp.1111-1119 Smith, B.J., Martin, R. and Holt, R.P., “The use of EMATs for wall thickness measurements on corroded pipes” Proc 6th Int Conf on NDT Methods, Strasbourg, p. 49, 1986 BOETTGER W, SCHNEIDER H, WEINGARTEN W, “Prototype EMAT system for tube inspection with guided ultrasonic waves”, Nucl Eng Des, Vol.102, No.3, pp.369-376, 1987 平尾雅彦, 荻博次,““電磁超音波共鳴による疲労過 程の非接触モニタリング”, 非破壊検査, Vol. 51, No. 2, pp. 79-82“ “?EMAT を用いた配管減肉寸法計測法“ “小坂 大吾,Daigo KOSAKA,小島 史男,Fumio KOJIMA,山口 紘史,Hiroshi YAMAGUCHI
発電プラントには、高温、高圧にさらされる配管が り、流れ加速型腐食(以下、FAC)等の減肉が生じる れがある[1][2]。 そこで、日本機械学会が定める減肉 理規定[3]に基づき、定期的に配管の肉厚測定を行っ 配管の健全性を担保している。この規定では、科学 見地と経験から、レジューサ、オリフィス下流、エ ボ等において配管直径を基準に検査部位を定めてお 、減肉が発生している場合、その進展傾向から配管 交換時期を定めている。また規定ではX線や超音波、 位差法、パルス渦電流法による配管減肉寸法計測法 定められている。 発電プラントには多数の配管が存在するため、検査 所が非常に多い。十分な測定精度を担保しつつ、検 コストの低減が求められている。そこで、電磁超音 (以下、EMAT)の使用が検討されている。 EMAT は静 場を発生させる磁石と、交流磁場を送受信するコイ によって構成されている[4][5][6]。 板厚の評価はもち ん、材質の評価などにも用いられている[7]][8][9]。 プラントが必要なく、耐高温特性、コスト的な利点 ら、探触子を断熱材の内側に常時配置することが原 的に可能であり、現状の、時間を基準とした保全か 、供用期間中の常時監視、つまり状態監視保全の適 が期待できる。 一方で、これまで報告されている EMAT を用いた研 では、実機に生じる減肉の形状についての考察を行っているものは多くない。そこで本報告では、EMAT -用いた、実機に生じる複雑な形状を持つ減肉のモデ 一化を行うとともに、EMAT による寸法化について検 」を行った。
こ.1 原理 EMAT はコイルと静磁場を作る磁石によって構成さ る探触子である。本報告では横波垂直型の EMAT を 目いた。その構造を Fig. 1に示す。コイルに任意の周 ミ数のバースト波を印加することで、適用する試験体 ●材質が非磁性体の場合はローレンツ力、強磁性体の 号合はローレンス力と磁歪によって試験体表面に任意 ●周波数の振動を送信することができる。発生した振 コは試験体内を超音波として伝播する。受信は送信と このプロセスで行い、磁石の作る静磁場と裏面で反射 して入射面まで戻ってきた振動により、過電流が発生、 これによる磁束の変化がEMAT のコイルに誘導起電力MagnetN10mmSLCoilEddy currentUltrasonic wave Lorents forceFig. 1 Principle of EMATscillscope0HO○○○oooooooRPR-4000315mm0mmPCEMAT)Auto stage10Fig. 2 Test piece of semi ellipseFig. 3 Experimental setupSensor output (V)10_208010040 60 Time (us)して現れる。EMAT は超音波の変換に電磁場を用い ことから超音波の変換効率に優れている。本報告で 、超音波のエコー間隔から減肉の形状評価に用いる。 た、試験体の材質は非磁性体としたことから、超音 はローレンツ力によって発生する。 .2 試験体 本報告では、配管に生じる LDI や FAC を半楕円で 31 本田1 いたま験休もEin 21に示す 以区 315mm として現れる。EMAT は超音波の変換に電磁場を用い うことから超音波の変換効率に優れている。本報告で は、超音波のエコー間隔から減肉の形状評価に用いる。 ミた、試験体の材質は非磁性体としたことから、超音 支はローレンツ力によって発生する。 2.2 試験体本報告では、配管に生じる LDI や FAC を半楕円で 莫擬した。用いた試験体をFig. 2 に示す。外径315mm、 厚さ 15mm、軸方向長さ 100mm、材質 SUS304 の配管 こ、半楕円の減肉をワイヤ放電加工で加工した。これ を半楕円減肉試験体とする。加工した減肉の形状は、 或肉半径 a=4,10,15,40mm、減肉高さ b-3,5mm の組み合 つせとした。さらに、より FAC に近い減肉として、配 管内面の 120°に渡り円弧状減肉を加工した試験体を 製作した。これを模擬 FAC 試験体とする。残肉厚を 3,5,10,15mm とする4体の試験体を製作した。 2.3 実験システム日本機械学会における配管減肉管理規格では配管の 怪に応じて周方向に4点ないし8点で測定することを 求めている。しかしここでは、EMAT を減肉に対して 移動させ、減肉との相対位置を変化させたときの信号 を測定した。これは必ずしも EMAT の真下に減肉の最 も進んだ箇所が発生するとは限らないことと、EMAT と減肉の相対位置による、測定信号の変化を測定する 事を想定した。 EMAT の移動には PC により制御可能 で、十分な繰り返し位置決め精度を持つ自動テーブル を製作した。実験装置を Fig. 3 に示す。試験体と EMAT を任意の相対角度に設定することができる。今回は試 験体と EMAT の相対位置を 1mm ピッチで変化させな がら測定を行った。3. 実験結果 3. 1 半楕円減肉試験体減肉半径 a=15mm、減肉高さ b-3mm の検出信号を Fig. 4 に示す。入射面、反射面が曲面であるが、Fig. 4(a)Experimental setup8010040 60 Time (us)a) Sensor position: 60mmSensor output (V)10_80100204060Time (us)(b) Sensor position: Omm~Sensor output (V)-60-40-200_204060Sensor position(mm)(b) Sensor position: OmmLite-60-40-20_0_204060 Sensor position(mm)(c) Sensor position profile Fig. 4 Measurement results (a=15mm, b=3mm)5においては、特に大きな減衰もなく、エコー きている。健全部の管厚は 15mm であり、エ 高は9.46usであるから音速は次の式で求められの健全部においては、特に大きな減衰もなく、エコー が観測できている。健全部の管厚は 15mm であり、エ コー間隔は9.46us であるから音速は次の式で求められ- 437 -1210Table 1. Test piece of half ellipse wall thinningMeasurement True valueresult Thickness(mm) Width (mm)15.0 Thickness(mm) 17 Width (mm)2027.0 Thickness(mm)16.2 Width (mm)36.0 Thickness(mm) 1716.2 Width (mm) | 801 91.0173010る。15mm×2 __ 3 17x102 m/s19.46usFig. 4(b)は減肉中央の検出信号であるが、エコーを検出 できており、その間隔は 7.68us である。よって厚さはんのずで皮TOR/× 1.68 S _122mmt%3D3C15mm×2_3 17x102 mls 9.46usFig. 4(b)は減肉中央の検出信号であるが、エコーを検出 できており、その間隔は 7.68us である。よって厚さは 次の式で求められる。13 17x104 m/sx7.681S _122mmt%3D中央部の減肉高さ b は 3mm であるから、肉厚 12mm を評価できている。次に減肉幅の測定のため、検出信 号の B2 付近におけるセンサ位置プロファイルを測定 した。結果を Fig. 4(c)に示す。減肉端部において急激 な減衰が見られた。測定結果からエコー間隔、エコー 振幅の減衰傾向から、寸法化を行った結果を Table 1 に示す。 3.2 模擬 FAC 減肉FAC の様なアスペクト比(減肉高さ/減肉半径)の低い 減肉は定量的な減肉評価が可能であるとの知見が得ら れた。そこで、より問題となりやすい周方向の広い領 域に発生した、模擬 FAC試験体において測定を行った。 この試験体は周方向 120°に渡って円弧状の減肉を加 工している。円弧であるから、半楕円減肉試験体と比較して減肉端がより滑らかになっている。半楕円減肉 この場合は減肉端が 90度になっているため、減肉端におけるエコーの減衰が検出しやすいと考えられるが、減 肉端の配管肉厚が滑らかに変化するこの試験体は減肉 端におけるエコーの急激な減衰は半楕円減肉ほど期待 できないと思われる。半楕円減肉試験体と比較して、Table 2. Test piece of FAC wall thinningMeasurement True valueresult Thickness(mm)1716.9 Width ()120125 Thickness(mm)14.9 Width (9)120115 Thickness(mm)1011.2 Width (°)120119 Thickness(mm)5.84 Width ()120124155Sensor output (V)10_2040 60Time (us)80100(a) Sensor position: 60°Sensor output (V)-0.05-0.110_2040 60Time (us)80_100(b) Sensor position: 0°Wall thinning(mm)-60-40 -20_ 0_2040601Sensor position(deg) -40 -20_0_204060Sensor position(deg)-60(c) Sensor position profileFig. 5 Measurement results (FAC b=3mm) より FAC に近い模擬減肉試験体であると考える。検出 信号の一部を Fig. 5 に示す。Fig. 5(a)は減肉端とセンサ4384[2]健全部と比較して大きな減衰は見られなかった。F 5(b)は減肉中央の検出信号である。エコーが確認で る。ここでは Fig, 5(a),(b)しか図示しないが、模擬 FA 試験体(b=3mm)では、若干のエコー振幅の変化は見 れたが、減肉全周に渡ってエコーを測定可能であり それぞれのセンサ位置において肉厚を評価すること できた。エコー間隔から肉厚を評価した結果を F 中央が重なったときの検出信号である。半楕円減肉に謝辞 おいては、エコー振幅の減衰が見られたが、ここでは 健全部と比較して大きな減衰は見られなかった。Fig. 本研究は経済産業省原子力安全・保安院の「平成 20 5(b)は減肉中央の検出信号である。エコーが確認でき 年度高経年化対策強化基盤整備事業」において実施し る。ここでは Fig, 5(a),(b)しか図示しないが、模擬 FAC た研究である。関係各位に感謝申し上げる。 試験体(b=3mm)では、若干のエコー振幅の変化は見ら れたが、減肉全周に渡ってエコーを測定可能であり、参考文献 それぞれのセンサ位置において肉厚を評価することが できた。エコー間隔から肉厚を評価した結果を Fig. [1] 礒本良則, 宮田寛和, ““液滴衝突エロージョン現象」と実用材料の寿命予測““, 材料と環境, Vol.57, No.3, 5(c)に示す。減肉高さが小さい、初期の FAC に近い減2008, pp.146-152 | 肉試験体においては、エコー間隔から肉厚の評価は十宮澤正純:「化学プラントでのエロージョン・コ 分可能であり、減肉領域の評価はエコー間隔や振幅の ロージョン事例」,材料と環境, Vol.57, No.3,2008, pp.118-121 変化からも十分可能であると言える。一方で減肉が進[3] 日本機械学会, ““発電用設備配管減肉管理に関す 行して減肉深さが大きくなっていくと、減肉端部からる規格““, 日本機械学会, 2005 エコー間隔の測定はできなくなっていく。[4] R. Thompson, “Physical Principles of Measurements 周方向領域については最大 4%程誤差が見られるがwith EMAT Transducers”, W.P. Mason, (ed.), PhysicalAcoustics, Vol.19, Academic Press, New York, , 1990, 概ね一致しており、肉厚についてはさらに良く一致しpp. 157-200 ている。したがって、より反射面の急な半楕円減肉試[5] 山崎友祐, 河部大輔, 大谷俊博, 平尾雅彦, “電磁 験体と比較して、反射面がなだらかな減肉(例えば初期 超音波センサを用いた最適波形法による鋼管の減肉検査““,日本機械学会論文誌(A 編), Vol. 67, No の FAC)では精度良く、減肉のサイジングが可能である659, 2001, pp. 169-174 ことを確認した。他の試験体の測定結果を Table 2に示 「61 KAWASHIMA K, “Very High Frequency EMAT forgResonant Measurement”, Proc IEEE Ultrasonic Symp,Vol. 1994, No. 2, 1994, pp.1111-1119[7] Smith, B.J., Martin, R. and Holt, R.P., “The use of 4.結言EMATs for wall thickness measurements on corrodedpipes” Proc 6th Int Conf on NDT Methods, Strasbourg 減肉領域が広く、減肉深さが浅い初期の FAC につい p. 49, 1986 ては、EMAT で対応できる可能性が得られた。つまり、 [8] BOETTGER W, SCHNEIDER H, WEINGARTEN W“Prototype EMAT system for tube inspection with 十分に減肉面がなだらかな曲面を持つ減肉(例えば初。guided ultrasonic waves”, Nucl Eng Des, Vol.102. 期の FAC)であれば、TOF から肉厚の測定が可能であ No.3, pp.369-376, 1987 る。一方で管周方向の4または8点で定点監視を行う [9] 平尾雅彦, 荻博次, ““電磁超音波共鳴による疲労過程の非接触モニタリング““,非破壊検査, Vol. 51. 場合、実際の減肉の形状は環境によって異なること、No. 2, pp. 79-82 また基本的にEMAT と減肉の相対位置がどこになるか わからず、EMAT の直下が減肉部の最も角度の大きい減肉領域が広く、減肉深さが浅い初期の FAC につい ては、EMAT で対応できる可能性が得られた。つまり、 十分に減肉面がなだらかな曲面を持つ減肉(例えば初 期の FAC)であれば、TOF から肉厚の測定が可能であ る。一方で管周方向の4または8点で定点監視を行う る。一方で管周方向の4 または8点で定点監視を行う| 場合、実際の減肉の形状は環境によって異なること、 また基本的にEMAT と減肉の相対位置がどこになるか わからず、EMAT の直下が減肉部の最も角度の大きい」 肉率の算出が不可欠である。減肉率を算出するために は最低でも時系列で2点の測定が必要であり、早期に 減肉率を算出するためには肉厚測定において高い分解す。儀本良則, 宮田寛和,““液滴衝突エロージョン現象 と実用材料の寿命予測”, 材料と環境, Vol.57, No.3, 2008, pp.146-152 宮澤正純:「化学プラントでのエロージョン・コ ロージョン事例」,材料と環境, Vol.57, No.3, 2008, pp.118-121 日本機械学会, 発電用設備配管減肉管理に関す る規格”,日本機械学会, 2005 R. Thompson, “Physical Principles of Measurements with EMAT Transducers”, W.P. Mason, (ed.), Physical Acoustics, Vol.19, Academic Press, New York, , 1990, pp. 157-200 山崎友祐, 阿部大輔, 大谷俊博, 平尾雅彦, “電磁 超音波センサを用いた最適波形法による鋼管の 減肉検査““,日本機械学会論文誌(A 編), Vol. 67, No. 659, 2001, pp. 169-174 KAWASHIMA K, “Very High Frequency EMAT for Resonant Measurement”, Proc IEEE Ultrasonic Symp, Vol. 1994, No. 2, 1994, pp.1111-1119 Smith, B.J., Martin, R. and Holt, R.P., “The use of EMATs for wall thickness measurements on corroded pipes” Proc 6th Int Conf on NDT Methods, Strasbourg, p. 49, 1986 BOETTGER W, SCHNEIDER H, WEINGARTEN W, “Prototype EMAT system for tube inspection with guided ultrasonic waves”, Nucl Eng Des, Vol.102, No.3, pp.369-376, 1987 平尾雅彦, 荻博次,““電磁超音波共鳴による疲労過 程の非接触モニタリング”, 非破壊検査, Vol. 51, No. 2, pp. 79-82“ “?EMAT を用いた配管減肉寸法計測法“ “小坂 大吾,Daigo KOSAKA,小島 史男,Fumio KOJIMA,山口 紘史,Hiroshi YAMAGUCHI