照射損傷評価のための遠隔操作式振動試料型磁力計の開発
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カテゴリ: 第6回
1.緒言
原子炉容器や炉内構造物等のように比較的低い放射 線環境下に長時間継続的にさらされ、かつ寿命中の交 換が困難な鉄鋼材料構造物に対して、その照射損傷を 適切に把握し管理することは、プラントの経年評価や 健全性確保のために重要である。これまでの研究によ り、照射損傷指標のひとつとして、弾き出し損傷量の 有効性が示されている[1-3]。例えば、宮地らは、中性 子照射した SUS316 について 400°Cと 500°Cにて引張試 験を実施し、弾き出し損傷量とともに破断伸びが漸減 し、0.2%耐力が漸増することを示している[1]。したが って、弾き出し損傷量を非破壊で評価できる手法が開 発されれば、高経年化原子力プラントの健全性確保に 貢献するものと期待される。我々はこれまでに、磁気特性が微細組織や局所的な 化学組成等の変化に敏感であり、非破壊非接触での測 定が可能であることに着目して、代表的な原子炉構造材料である SUS304 鋼及び SUS316 鋼について、永久 磁石を用いて試料を着磁した後に、フラックスゲート センサを用いて漏えい磁束密度を測定し、その結果と 弾き出し損傷量との関係を調べてきた[4]。その結果、 弾き出し損傷量とともに漏えい磁束密度が大きくなる ことを明らかにし、漏えい磁束密度測定による弾き出 し損傷量評価の可能性を示した[4]。但し、SUS316 鋼 については、2~5dpa 以下の弾き出し損傷量では、漏 えい磁束密度の増加を確認することができず、漏えい 磁束密度が増加するためのしきい値が存在する可能性 が示唆された。Stanly らも、振動試料型磁力計 (VSM) の一種を用いた測定により、高速中性子 (E > 0.1 MeV) フルエンスの増加とともに、磁化が大きくなることを 報告しているが、彼らの結果からも約 6 dpa に磁気特 性変化のしきい値が存在する可能性が示されている[5]。 以上のように、フラックスゲートセンサを用いた漏え い磁束密度測定による弾き出し損傷量評価については、 低照射量域での評価に課題が示された。同評価におい ては、残留磁化状態で漏えい磁束密度の測定を行って いるが、磁気特性変化に基づく弾き出し損傷量評価の 低照射量域での適用性を検討するためには、低照射量 の照射試料について、残留磁化だけでなく飽和磁化や保磁力など他の磁化特性についても評価を実施し、磁 気特性変化のための弾き出し損傷量のしきい値の存在 の有無や、低照射量域での弾き出し損傷量と磁化特性 の関係を明らかにする必要がある。 1 飽和磁化、残留磁化、保磁力等の磁化特性は磁化曲 線から評価することができる。磁化曲線を詳細に分析 するための装置としては、例えば、リング状の試験片 に対して磁場印加用と磁化測定用の二つのコイルを巻 きつけた磁束計が挙げられるが、マニプレータを用い て遠隔で正確にコイルを巻くのは極めて困難である。 そこで、本研究では VSM を採用した。ここで VSM と は、均一な外部磁界中で試料を振動させることにより 発生する誘導起電力から、試料の磁化を測定する装置 である。試料に直接コイルを巻く必要がないため、磁 束計に比べて測定が容易であると期待される。但し、 市販の VSM では、ホットセル内への設置やマニプレ ータを用いた遠隔操作は不可能である。そこで、新た に照射試料用の遠隔操作式 VSM を開発することとし た。 また、中性子スペクトルは原子炉によって異なって いる。磁気特性を用いて、中性子スペクトルに依らず に弾き出し損傷量を評価可能か検討するために、 SUS316 鋼を対象として、日本原子力研究開発機構の高 速実験炉「常陽」(高速中性子炉)及び研究用原子炉 「JRR-3」(熱中性子炉)を利用して、各原子炉での単 独照射試験と両原子炉を使った組み合わせ照射試験を 実施し、照射試料を磁気特性測定に供した。組み合わ せ照射については、順序効果を検討するため、常陽→ JRR-3、JRR-3→常陽の双方向の照射試験を実施した。
2. 遠隔操作式 VSM の開発
図1に、製作した遠隔操作式 VSM の外観写真を示 す。装置の劣化抑制、保守管理の容易さ、装置を破棄 する際の放射性廃棄物量の低減のために、試料の近傍 に配置する必要のある外部磁界を発生させるための電 磁石や試料を振動させるための加振器等の測定部と、 試料の近傍に配置する必要のない制御用 PC をはじめ とする制御部の二つに装置を分離させた構造とし、測 定部をホットセル内に、制御部をホットセル外の操作 室内に設置することとした。また、測定試料は、図1(a) 中に示した振動棒の先端に取り付けられているが、こ の試料の振動部先端への取り付けや、試料を電磁石間の中心へと移動させるための位置調整作業等の測定に 係る作業を、マニプレータを用いた遠隔操作によって 容易にできるように、ジグの製作や装置の各所へのハ ンドルやつまみの取り付けを行った。外部磁界強度の 測定は、通常、ホール素子を利用したガウスメータに よって行われるが、半導体であるホール素子は、照射ManipulatersVibrationunitHandles for remote operationVibrating rodSampleDirection of vibratingDirection of externalmagnetic fieldElectric magnet(a) Measurement unit (set in a hot cell).3(b) Control unit (set in an operation room). Fig.1 Photograph of a remote operated VSM.441試料の測定中に放射線にさらされることにより特性が 変化し、測定精度が劣化する恐れがある。そのため、 本 VSM では、ガウスメータは照射試料が無い状態で 装置の校正を行う場合のみに用い、照射試料の測定の 際には、予め調べた印加電流と発生磁界強度の関係を 用いて電流値から発生磁界強度の推定が行えるように 試料の測定中に放射線にさらされることにより特性が 変化し、測定精度が劣化する恐れがある。そのため、 本 VSM では、ガウスメータは照射試料が無い状態で 装置の校正を行う場合のみに用い、照射試料の測定の 際には、予め調べた印加電流と発生磁界強度の関係を ・用いて電流値から発生磁界強度の推定が行えるように した。 - 製作した装置の仕様を表1に示す。また、主な性能 確認試験の結果を以下に示す。なお、本性能確認試験 は、一部を除き、装置を操作室内へ搬入後、測定部を ホットセル内に設置する前に実施した。 * 製作した装置の仕様を表 1 に示す。また、主な性能| 確認試験の結果を以下に示す。なお、本性能確認試験 は、一部を除き、装置を操作室内へ搬入後、測定部を ホットセル内に設置する前に実施した。 * 磁化測定部の感度については、試料を振動棒に取り 付けず、振動棒だけの状態で、印加磁界を±0.5/40 Alm の範囲で変化させて、磁化の測定を行い評価した。結 の範囲で変化させて、磁化の測定を行い評価した。結 果を図2に示す。振動棒の極微弱な磁化に起因すると 思われるわずかな変化が認められるものの、その変化 量は、5×10°Amよりも小さく、磁化測定部の感度は、 それよりも良いことがわかる。 * 電流値から推定した発生磁界強度とガウスメータに よる測定値を比較した結果を図3に示す。ガウスメー 付けず、振動棒だけの状態で、印加磁界を±0.5/Lo Am の範囲で変化させて、磁化の測定を行い評価した。結 果を図2に示す。振動棒の極微弱な磁化に起因すると 思われるわずかな変化が認められるものの、その変化 量は、5×10 Amよりも小さく、磁化測定部の感度は、 それよりも良いことがわかる。電流値から推定した発生磁界強度とガウスメータに よる測定値を比較した結果を図 3 に示す。ガウスメー タによる測定結果から、0.5/us A/m 以上の磁界を発生可 能であることがわかる。また、電流値からの推定値と ガウスメータによる測定値の差が 2%以内であり、電流 値から精度よく発生磁界強度を推定可能であることが それよりも良いことがわかる。 - 電流値から推定した発生磁界強度とガウスメータに よる測定値を比較した結果を図3に示す。ガウスメー タによる測定結果から、0.5/40 A/m 以上の磁界を発生可 能であることがわかる。また、電流値からの推定値と ガウスメータによる測定値の差が 2%以内であり、電流 値から精度よく発生磁界強度を推定可能であることが わかる。 - 以上のような性能確認試験を実施し、開発した遠隔 操作式 VSM が、仕様を満たすことを確認した後、測 定部の配線を取り外し、ホットセル内への搬入及び設 置を行った。測定部の配線は操作室側からホットセル 内に引き込み、再度接続した。 - SUS316 の受入れ材について、今回製作した遠隔操作 式 VSM の測定部をホットセル内に設置した後に測定 した結果と、ほぼ同等の性能を有する通常の VSMを 用いて測定した結果を図4に示す。測定結果はよく一 致しており、今回、照射試料を測定するために行った 測定部と制御部の分離、マニプレータ操作用ハンドル 等の付加、電流値からの発生磁界推定、及び測定部の ホットセル内への設置が、測定結果に与える影響は無 視できることが確認できた。M (106A.m2)I 1 x 10-Am-0.50.5H (1/10A/m)Fig. 2Sensitivity of magnetization measurement unit.Magnetic field evaluated by kauss motor it's Am10. 50.510.520.53 0.540.55 0.560.570.58 0.59 0.6Magnetic field evaluated from current (IR A'm) Fig. 3 Relationship between magnetic fields evaluatedfrom current and by gauss meter.以上のような性能確認試験を実施し、開発した遠隔 操作式 VSM が、仕様を満たすことを確認した後、測 定部の配線を取り外し、ホットセル内への搬入及び設 置を行った。測定部の配線は操作室側からホットセル 内に引き込み、再度接続した。 - SUS316 の受入れ材について、今回製作した遠隔操作 式 VSM の測定部をホットセル内に設置した後に測定 した結果と、ほぼ同等の性能を有する通常の VSMを 用いて測定した結果を図4に示す。測定結果はよく一 致しており、今回、照射試料を測定するために行った 測定部と制御部の分離、マニプレータ操作用ハンドル 等の付加、電流値からの発生磁界推定、及び測定部の ホットセル内への設置が、測定結果に与える影響は無 視できることが確認できた。Table 1 List of the spec of remote operated VSM. Magnetization measurement unit RangeVariable in the range form +1 X100 to +0.2 Arm2. Sensitivity ? 5 ×10 Am Magnetic field measurement unit Range±0.5/Alm LinearityWithin +2% Sensitivity | Within ±2% Electromagnet Maximum20.5 /us Alm at the center magnetic field Uniformity ±1%/10mmDSV Diameter of55 mmg magnetic cores0.60.590.58570.560.55054 0.53 0.52 0.51 0.5 0.5 0.51 - 442 -10.520.530.540.550.560.570.580.590.6-0.10.080.06 0.04Magnetization (10-3 Am2)2019/11/04-2200.2 0.406 -002 -0.04 -0.06-Developed VSM**Normal VSM -0.08External magnetic field (1/40 A/m) Fig. 4 Comparison of magnetic loops of SUS316 measured by the developed remote operated VSM and a normal VSM.3. 遠隔操作式 VSM による弾き出し損傷評 価可能性の検討3.1 実験方法 - 供試材として SUS316 鋼を用いた。化学組成を表 2 に示す。また試験片形状を図5に示す。 * 中性子照射試験は、日本原子力研究開発機構の高速 実験炉「常陽」及び研究用原子炉「JRR-3」を用いて、 各炉での単独照射及び両炉を用いた組み合わせ照射を 実施した。照射試験の雰囲気は、不活性ガス(Ar、He) 中とした。弾き出し損傷量は最大で、約 1.65 dpa とな った。また、照射温度は JRR-3 単独照射材 (467°C)を 除き、550±15°Cであった。照射試験後、試験片を 6.5 mm 長さに切断し、遠隔操 作式 VSM による測定に供した。試験片の長手方向が 印加磁場方向と一致するように試験片をセットし、最 大印加磁場は、約 0.5/uAlm とした。3.2 実験結果 . 磁化曲線測定結果を図6に示す。いずれの試験片の 磁化曲線もヒステリシスを有しており、わずかである が強磁性的な性質を示している。また、最大印加磁場 である約 0.5/Lo Alm でも、磁化は飽和には至っていな いことがわかる。ただし、印加磁場が約 1/A/m 以上 では、印加磁場を大きくして行く過程での磁化と、印 加磁場を小さくしていく過程での磁化は、ほぼ等しく ヒステリシスが無視できる程度に小さくなっているこ Table 2 Chemical composition of SUS316 (wt%) |c | si | Mn | PIs | Cu | 0.01 | 0.59 | 0.84 | 0.026 | 0.003 | 0.26 | | Ni | Cr | Mol v IN | Fe | | 11.19 | 16.87 | 2.23 | 0.08 | 0.08 | bal. 125.44.95||-(t = 1.71)Fig. 5 Dimensions of the sample.とから、得られた磁化曲線はメジャーループの一部分 であると見なすことができる。次に、磁化曲線から、単位体積当たりの残留磁化、 0.5/us Alm における磁化及び保磁力を求め、弾き出し損 傷量との関係を調べた結果を図7に示す。なお、0.5/40 Alm における磁化は、今回の測定の印加磁場範囲では 飽和に至らなかったため、飽和磁化に対応する値とし て評価した。まず、図 7(a)を見ると、残留磁化はいず れの照射試料でも 0.1×10A/m 程度と小さく、また、 弾き出し損傷量との相関は認められなかった。これま でに実施してきたフラックスゲートセンサを用いた漏 えい磁束密度測定は、永久磁石による着磁後の残留磁 化状態で行っていたことから、この結果は、約 2~5 dpa 以下の弾き出し損傷量の試験片で漏えい磁束密度変化 が認められなかった結果と一致している。 ・ 一方、0.5/Alm における磁化については、図 7(6) に示すように、照射炉や単独/組み合わせ照射及び組み 合わせ照射の際の照射順序に依らず、弾き出し損傷量 とともに増加することがわかった。飽和磁化も同様に、 弾き出し損傷量に伴い増加していると予想される。こ の結果から、中性子照射により新たに磁性相が生成さ れているものと考えられる。最後に、図 7(c)に、保磁力と弾き出し損傷量の関係 を示す。保磁力についても、照射炉や単独/組み合わせ 照射及び組み合わせ照射の際の照射順序に依らず、弾 き出し損傷量とともに単調に減少することが明らかに- 443 -なった。一般に磁化率が大きくなると、保磁力が小さ くなる傾向があることが知られている[6]。保磁力近傍 での磁化率と保磁力の関係を図8に示す。この図から、 弾き出し損傷に伴う保磁力の低下についても、磁化率 の増加が一部影響していることがわかる。また、磁化 率の増加については、図 7(b)に示した結果から、弾き 出し損傷により新たに磁性相が生成したことによるも のであると考えられる。 -- 以上の結果から、フラックスゲートセンサを用いた 漏えい磁束密度測定による弾き出し損傷量評価につい て、低照射領域での適用性に課題が示された原因とし て、残留磁化状態で測定を実施していたことが挙げら れること、また今回開発した遠隔操作式 VSM を用い て印加磁場中の磁化と保磁力を評価すれば、中性子ス ペクトルに依らずに、2 dpa 以下の低照射領域であって も弾き出し損傷量を評価できる可能性があることを示 すことができた。Magnetization (10% A-ma)oAs recieved1RR-3 02040 .6--10Y0-JRR-35IOYO JOYO JBR-3・・-0.2External magnetic field (1/40 A/m) Fig. 6 Magnetic curves of the neutron irradiated samples.4. 遠隔操作式 VSM を用いた弾き出し損傷 量評価技術の提案前節での検討により、今回開発した遠隔操作式 VSM を用いて得られる磁気特性のうち、磁場印加中磁化及 び保磁力が、弾き出し損傷量と良い相関を持つことが 明らかになった。このことから、遠隔操作式 VSM を 用いた弾き出し損傷量評価技術として次のような方法 が考えられる。まず、サーベイランス試験片について、 遠隔操作式 VSM を用いて磁化曲線を測定し、磁場印 加中の磁化及び保磁力を評価する。次に、それぞれの0.35■ JRR-3(467°C)JRR-3 JOYO =Remanent magnetization (103 A/m)JOYOJOYO7JRR-3本!0.511.5Dose (dpa)(a) Remanent magnetizationJRR-3→10YO.JOYOJRR-3JOYOMagnetization at 0.5/4, A/m (A/m)THURR.3(467C)0.515Dose (dpa)(b) Magnetization at 0.5/40 A/mJRR-3(4670)JRR-3(4670)Coercive force (104/10 A/m)JOYO -JOYO→JRR-3JRR 3- JOYO10 0. 2040.6 0.8 11.214 1.6 1.8 Dose (dpa)(c) Coercive force .. Fig. 7 Relationships between dose and magnetic properties of the neutron irradiated samples.and magnetic特性と弾き出し損傷量の関係から、独立に弾き出し損 傷量を評価する。最後に、両者を比較し、保守的な値 を弾き出し損傷量の最終的な評価結果として採用する。 二つの磁気特性を用いて評価することで、単一の磁気 特性を用いた評価よりも信頼度の高い評価が可能にな444Magnetic susceptibility (wa)10_ 20 4 0 60 80 100 120 140 160 180Coercive force (10^/4, A/m) Fig. 8 Relationship between coercive force and magneticsusceptibility of the neutron irradiated samples.る。さらに、遠隔操作式 VSM の測定は比較的短時間 で終わるため、複数の試験片について測定を実施すれ ば、より信頼性の高い評価が行えるものと期待される。 また、遠隔操作式 VSM は非破壊測定であるため、測 定後にサーベイランス試験片を原子炉内に戻すことが できる。これにより、限られた試験片本数でもプラン トの全寿命期間に渡って弾き出し損傷量を評価するこ とが可能になり、また同一試験片を用いて繰り返し評 価することで、材料に起因するばらつきなく弾き出し 損傷量の経時変化を把握することが可能になる。5.結言実炉照射材の測定が可能な遠隔操作式 VSM を開発 し、整備した。性能確認試験を実施した結果、仕様の 性能を有していることを確認した。さらに、常陽と JRR-3 を用いて単独照射または組み 合わせ照射を実施した SUS316 の磁化曲線を、遠隔操 作式 VSM により測定し、得られた各種磁気特性と弾 き出し損傷量の関係を検討した。その結果、約 2 dpa までの低照射量域において、残留磁化については弾き 出し損傷量に伴う有意な変化は認められなかったが、 磁場印加中磁化については弾き出し損傷量とともに増 加すること、また保磁力については減少することが明 らかになった。照射炉の違いによる影響は認められな かった。従って、遠隔操作式 VSM を用いて評価した 磁場印加中磁化及び保磁力に基づき、中性子スペクト ルに依らずに約 2 dpa 以下の弾き出し損傷量を評価できる可能性がある。 - 以上の知見に基づき、サーベイランス試験片を用い た弾き出し損傷量の非破壊評価技術を提案した。磁場 印加中磁化及び保磁力の二つの磁気特性を用いて評価 することで、単一の磁気特性を用いて評価した場合よ りも信頼度の高い評価が可能になる。また非破壊測定 であるために、限られた試験片本数でもプラントの全 寿命期間に渡って弾き出し損傷量を評価することが可 能になる。「謝辞- 本報告の内容は、特別会計に関する法律(エネルギ ー対策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業 として、独立行政法人日本原子力研究開発機構が実施 した平成19年度及び平成20年度「長寿命プラント 照射損傷管理技術の開発」の成果です。参考文献 [1] 宮地紀子、阿部康弘、浅山泰、青砥紀身、鵜飼重治、“ステンレス鋼の引張およびクリープ特性に及ぼ す中性子照射効果”、材料、Vol. 46、No.5 (1997)pp.500-505. [2] M.N. Gusev, O.P. Maksimkin, O.V. Tivanova, N.S.Silnaygina, F.A. Garner, “Correlation of yield stress and microhardness in 08Cr16Ni11M03 stainless steel irradiated to high dose in the BN-350 fast reactor”, J.Nucl. Mater. Vol. 359 (2006) pp.258-262. [3] C. Pokor, Y. Brechet, P. Dubusson, J.P. Massoud, X.Averty, “Irradiation damage in 304 and 316 stainless steels: experimental investigation and modeling. Part II: Irradiation induced hardening““, J. Nucl. Mater. Vol. 326(2004) pp.30-37. [4] S. Takaya, Y. Nagae, K. Aoto, I. Yamagata, S. Ichikawa,S. Konno, R. Ogawa, E. Wakai, “Nondestructive evaluation of neutron irradiation damage on austenitic stainless steels by measurement of magnetic flux density”, Proc. of the 17th international conference onnuclear engineering, Brussels, 2009, ICONE17-75215. [5] J.T. Stanley and L.E. Hendrickson, “Ferrite formation inneutron-irradiated austenitic stainless steel”, J. Nucl.Mater. 80 (1979) pp.69-78. [6] 近角聰信、強磁性体の物理(上)、裳華房 (1978).445“ “?照射損傷評価のための遠隔操作式振動試料型磁力計の開発“ “高屋 茂,Shigeru TAKAYA,山県 一郎,Ichiro YAMAGATA,永江 勇二,Yuji NAGAE,若井 栄一,Eiichi WAKAI,青砥 紀身,Kazumi AOTO
原子炉容器や炉内構造物等のように比較的低い放射 線環境下に長時間継続的にさらされ、かつ寿命中の交 換が困難な鉄鋼材料構造物に対して、その照射損傷を 適切に把握し管理することは、プラントの経年評価や 健全性確保のために重要である。これまでの研究によ り、照射損傷指標のひとつとして、弾き出し損傷量の 有効性が示されている[1-3]。例えば、宮地らは、中性 子照射した SUS316 について 400°Cと 500°Cにて引張試 験を実施し、弾き出し損傷量とともに破断伸びが漸減 し、0.2%耐力が漸増することを示している[1]。したが って、弾き出し損傷量を非破壊で評価できる手法が開 発されれば、高経年化原子力プラントの健全性確保に 貢献するものと期待される。我々はこれまでに、磁気特性が微細組織や局所的な 化学組成等の変化に敏感であり、非破壊非接触での測 定が可能であることに着目して、代表的な原子炉構造材料である SUS304 鋼及び SUS316 鋼について、永久 磁石を用いて試料を着磁した後に、フラックスゲート センサを用いて漏えい磁束密度を測定し、その結果と 弾き出し損傷量との関係を調べてきた[4]。その結果、 弾き出し損傷量とともに漏えい磁束密度が大きくなる ことを明らかにし、漏えい磁束密度測定による弾き出 し損傷量評価の可能性を示した[4]。但し、SUS316 鋼 については、2~5dpa 以下の弾き出し損傷量では、漏 えい磁束密度の増加を確認することができず、漏えい 磁束密度が増加するためのしきい値が存在する可能性 が示唆された。Stanly らも、振動試料型磁力計 (VSM) の一種を用いた測定により、高速中性子 (E > 0.1 MeV) フルエンスの増加とともに、磁化が大きくなることを 報告しているが、彼らの結果からも約 6 dpa に磁気特 性変化のしきい値が存在する可能性が示されている[5]。 以上のように、フラックスゲートセンサを用いた漏え い磁束密度測定による弾き出し損傷量評価については、 低照射量域での評価に課題が示された。同評価におい ては、残留磁化状態で漏えい磁束密度の測定を行って いるが、磁気特性変化に基づく弾き出し損傷量評価の 低照射量域での適用性を検討するためには、低照射量 の照射試料について、残留磁化だけでなく飽和磁化や保磁力など他の磁化特性についても評価を実施し、磁 気特性変化のための弾き出し損傷量のしきい値の存在 の有無や、低照射量域での弾き出し損傷量と磁化特性 の関係を明らかにする必要がある。 1 飽和磁化、残留磁化、保磁力等の磁化特性は磁化曲 線から評価することができる。磁化曲線を詳細に分析 するための装置としては、例えば、リング状の試験片 に対して磁場印加用と磁化測定用の二つのコイルを巻 きつけた磁束計が挙げられるが、マニプレータを用い て遠隔で正確にコイルを巻くのは極めて困難である。 そこで、本研究では VSM を採用した。ここで VSM と は、均一な外部磁界中で試料を振動させることにより 発生する誘導起電力から、試料の磁化を測定する装置 である。試料に直接コイルを巻く必要がないため、磁 束計に比べて測定が容易であると期待される。但し、 市販の VSM では、ホットセル内への設置やマニプレ ータを用いた遠隔操作は不可能である。そこで、新た に照射試料用の遠隔操作式 VSM を開発することとし た。 また、中性子スペクトルは原子炉によって異なって いる。磁気特性を用いて、中性子スペクトルに依らず に弾き出し損傷量を評価可能か検討するために、 SUS316 鋼を対象として、日本原子力研究開発機構の高 速実験炉「常陽」(高速中性子炉)及び研究用原子炉 「JRR-3」(熱中性子炉)を利用して、各原子炉での単 独照射試験と両原子炉を使った組み合わせ照射試験を 実施し、照射試料を磁気特性測定に供した。組み合わ せ照射については、順序効果を検討するため、常陽→ JRR-3、JRR-3→常陽の双方向の照射試験を実施した。
2. 遠隔操作式 VSM の開発
図1に、製作した遠隔操作式 VSM の外観写真を示 す。装置の劣化抑制、保守管理の容易さ、装置を破棄 する際の放射性廃棄物量の低減のために、試料の近傍 に配置する必要のある外部磁界を発生させるための電 磁石や試料を振動させるための加振器等の測定部と、 試料の近傍に配置する必要のない制御用 PC をはじめ とする制御部の二つに装置を分離させた構造とし、測 定部をホットセル内に、制御部をホットセル外の操作 室内に設置することとした。また、測定試料は、図1(a) 中に示した振動棒の先端に取り付けられているが、こ の試料の振動部先端への取り付けや、試料を電磁石間の中心へと移動させるための位置調整作業等の測定に 係る作業を、マニプレータを用いた遠隔操作によって 容易にできるように、ジグの製作や装置の各所へのハ ンドルやつまみの取り付けを行った。外部磁界強度の 測定は、通常、ホール素子を利用したガウスメータに よって行われるが、半導体であるホール素子は、照射ManipulatersVibrationunitHandles for remote operationVibrating rodSampleDirection of vibratingDirection of externalmagnetic fieldElectric magnet(a) Measurement unit (set in a hot cell).3(b) Control unit (set in an operation room). Fig.1 Photograph of a remote operated VSM.441試料の測定中に放射線にさらされることにより特性が 変化し、測定精度が劣化する恐れがある。そのため、 本 VSM では、ガウスメータは照射試料が無い状態で 装置の校正を行う場合のみに用い、照射試料の測定の 際には、予め調べた印加電流と発生磁界強度の関係を 用いて電流値から発生磁界強度の推定が行えるように 試料の測定中に放射線にさらされることにより特性が 変化し、測定精度が劣化する恐れがある。そのため、 本 VSM では、ガウスメータは照射試料が無い状態で 装置の校正を行う場合のみに用い、照射試料の測定の 際には、予め調べた印加電流と発生磁界強度の関係を ・用いて電流値から発生磁界強度の推定が行えるように した。 - 製作した装置の仕様を表1に示す。また、主な性能 確認試験の結果を以下に示す。なお、本性能確認試験 は、一部を除き、装置を操作室内へ搬入後、測定部を ホットセル内に設置する前に実施した。 * 製作した装置の仕様を表 1 に示す。また、主な性能| 確認試験の結果を以下に示す。なお、本性能確認試験 は、一部を除き、装置を操作室内へ搬入後、測定部を ホットセル内に設置する前に実施した。 * 磁化測定部の感度については、試料を振動棒に取り 付けず、振動棒だけの状態で、印加磁界を±0.5/40 Alm の範囲で変化させて、磁化の測定を行い評価した。結 の範囲で変化させて、磁化の測定を行い評価した。結 果を図2に示す。振動棒の極微弱な磁化に起因すると 思われるわずかな変化が認められるものの、その変化 量は、5×10°Amよりも小さく、磁化測定部の感度は、 それよりも良いことがわかる。 * 電流値から推定した発生磁界強度とガウスメータに よる測定値を比較した結果を図3に示す。ガウスメー 付けず、振動棒だけの状態で、印加磁界を±0.5/Lo Am の範囲で変化させて、磁化の測定を行い評価した。結 果を図2に示す。振動棒の極微弱な磁化に起因すると 思われるわずかな変化が認められるものの、その変化 量は、5×10 Amよりも小さく、磁化測定部の感度は、 それよりも良いことがわかる。電流値から推定した発生磁界強度とガウスメータに よる測定値を比較した結果を図 3 に示す。ガウスメー タによる測定結果から、0.5/us A/m 以上の磁界を発生可 能であることがわかる。また、電流値からの推定値と ガウスメータによる測定値の差が 2%以内であり、電流 値から精度よく発生磁界強度を推定可能であることが それよりも良いことがわかる。 - 電流値から推定した発生磁界強度とガウスメータに よる測定値を比較した結果を図3に示す。ガウスメー タによる測定結果から、0.5/40 A/m 以上の磁界を発生可 能であることがわかる。また、電流値からの推定値と ガウスメータによる測定値の差が 2%以内であり、電流 値から精度よく発生磁界強度を推定可能であることが わかる。 - 以上のような性能確認試験を実施し、開発した遠隔 操作式 VSM が、仕様を満たすことを確認した後、測 定部の配線を取り外し、ホットセル内への搬入及び設 置を行った。測定部の配線は操作室側からホットセル 内に引き込み、再度接続した。 - SUS316 の受入れ材について、今回製作した遠隔操作 式 VSM の測定部をホットセル内に設置した後に測定 した結果と、ほぼ同等の性能を有する通常の VSMを 用いて測定した結果を図4に示す。測定結果はよく一 致しており、今回、照射試料を測定するために行った 測定部と制御部の分離、マニプレータ操作用ハンドル 等の付加、電流値からの発生磁界推定、及び測定部の ホットセル内への設置が、測定結果に与える影響は無 視できることが確認できた。M (106A.m2)I 1 x 10-Am-0.50.5H (1/10A/m)Fig. 2Sensitivity of magnetization measurement unit.Magnetic field evaluated by kauss motor it's Am10. 50.510.520.53 0.540.55 0.560.570.58 0.59 0.6Magnetic field evaluated from current (IR A'm) Fig. 3 Relationship between magnetic fields evaluatedfrom current and by gauss meter.以上のような性能確認試験を実施し、開発した遠隔 操作式 VSM が、仕様を満たすことを確認した後、測 定部の配線を取り外し、ホットセル内への搬入及び設 置を行った。測定部の配線は操作室側からホットセル 内に引き込み、再度接続した。 - SUS316 の受入れ材について、今回製作した遠隔操作 式 VSM の測定部をホットセル内に設置した後に測定 した結果と、ほぼ同等の性能を有する通常の VSMを 用いて測定した結果を図4に示す。測定結果はよく一 致しており、今回、照射試料を測定するために行った 測定部と制御部の分離、マニプレータ操作用ハンドル 等の付加、電流値からの発生磁界推定、及び測定部の ホットセル内への設置が、測定結果に与える影響は無 視できることが確認できた。Table 1 List of the spec of remote operated VSM. Magnetization measurement unit RangeVariable in the range form +1 X100 to +0.2 Arm2. Sensitivity ? 5 ×10 Am Magnetic field measurement unit Range±0.5/Alm LinearityWithin +2% Sensitivity | Within ±2% Electromagnet Maximum20.5 /us Alm at the center magnetic field Uniformity ±1%/10mmDSV Diameter of55 mmg magnetic cores0.60.590.58570.560.55054 0.53 0.52 0.51 0.5 0.5 0.51 - 442 -10.520.530.540.550.560.570.580.590.6-0.10.080.06 0.04Magnetization (10-3 Am2)2019/11/04-2200.2 0.406 -002 -0.04 -0.06-Developed VSM**Normal VSM -0.08External magnetic field (1/40 A/m) Fig. 4 Comparison of magnetic loops of SUS316 measured by the developed remote operated VSM and a normal VSM.3. 遠隔操作式 VSM による弾き出し損傷評 価可能性の検討3.1 実験方法 - 供試材として SUS316 鋼を用いた。化学組成を表 2 に示す。また試験片形状を図5に示す。 * 中性子照射試験は、日本原子力研究開発機構の高速 実験炉「常陽」及び研究用原子炉「JRR-3」を用いて、 各炉での単独照射及び両炉を用いた組み合わせ照射を 実施した。照射試験の雰囲気は、不活性ガス(Ar、He) 中とした。弾き出し損傷量は最大で、約 1.65 dpa とな った。また、照射温度は JRR-3 単独照射材 (467°C)を 除き、550±15°Cであった。照射試験後、試験片を 6.5 mm 長さに切断し、遠隔操 作式 VSM による測定に供した。試験片の長手方向が 印加磁場方向と一致するように試験片をセットし、最 大印加磁場は、約 0.5/uAlm とした。3.2 実験結果 . 磁化曲線測定結果を図6に示す。いずれの試験片の 磁化曲線もヒステリシスを有しており、わずかである が強磁性的な性質を示している。また、最大印加磁場 である約 0.5/Lo Alm でも、磁化は飽和には至っていな いことがわかる。ただし、印加磁場が約 1/A/m 以上 では、印加磁場を大きくして行く過程での磁化と、印 加磁場を小さくしていく過程での磁化は、ほぼ等しく ヒステリシスが無視できる程度に小さくなっているこ Table 2 Chemical composition of SUS316 (wt%) |c | si | Mn | PIs | Cu | 0.01 | 0.59 | 0.84 | 0.026 | 0.003 | 0.26 | | Ni | Cr | Mol v IN | Fe | | 11.19 | 16.87 | 2.23 | 0.08 | 0.08 | bal. 125.44.95||-(t = 1.71)Fig. 5 Dimensions of the sample.とから、得られた磁化曲線はメジャーループの一部分 であると見なすことができる。次に、磁化曲線から、単位体積当たりの残留磁化、 0.5/us Alm における磁化及び保磁力を求め、弾き出し損 傷量との関係を調べた結果を図7に示す。なお、0.5/40 Alm における磁化は、今回の測定の印加磁場範囲では 飽和に至らなかったため、飽和磁化に対応する値とし て評価した。まず、図 7(a)を見ると、残留磁化はいず れの照射試料でも 0.1×10A/m 程度と小さく、また、 弾き出し損傷量との相関は認められなかった。これま でに実施してきたフラックスゲートセンサを用いた漏 えい磁束密度測定は、永久磁石による着磁後の残留磁 化状態で行っていたことから、この結果は、約 2~5 dpa 以下の弾き出し損傷量の試験片で漏えい磁束密度変化 が認められなかった結果と一致している。 ・ 一方、0.5/Alm における磁化については、図 7(6) に示すように、照射炉や単独/組み合わせ照射及び組み 合わせ照射の際の照射順序に依らず、弾き出し損傷量 とともに増加することがわかった。飽和磁化も同様に、 弾き出し損傷量に伴い増加していると予想される。こ の結果から、中性子照射により新たに磁性相が生成さ れているものと考えられる。最後に、図 7(c)に、保磁力と弾き出し損傷量の関係 を示す。保磁力についても、照射炉や単独/組み合わせ 照射及び組み合わせ照射の際の照射順序に依らず、弾 き出し損傷量とともに単調に減少することが明らかに- 443 -なった。一般に磁化率が大きくなると、保磁力が小さ くなる傾向があることが知られている[6]。保磁力近傍 での磁化率と保磁力の関係を図8に示す。この図から、 弾き出し損傷に伴う保磁力の低下についても、磁化率 の増加が一部影響していることがわかる。また、磁化 率の増加については、図 7(b)に示した結果から、弾き 出し損傷により新たに磁性相が生成したことによるも のであると考えられる。 -- 以上の結果から、フラックスゲートセンサを用いた 漏えい磁束密度測定による弾き出し損傷量評価につい て、低照射領域での適用性に課題が示された原因とし て、残留磁化状態で測定を実施していたことが挙げら れること、また今回開発した遠隔操作式 VSM を用い て印加磁場中の磁化と保磁力を評価すれば、中性子ス ペクトルに依らずに、2 dpa 以下の低照射領域であって も弾き出し損傷量を評価できる可能性があることを示 すことができた。Magnetization (10% A-ma)oAs recieved1RR-3 02040 .6--10Y0-JRR-35IOYO JOYO JBR-3・・-0.2External magnetic field (1/40 A/m) Fig. 6 Magnetic curves of the neutron irradiated samples.4. 遠隔操作式 VSM を用いた弾き出し損傷 量評価技術の提案前節での検討により、今回開発した遠隔操作式 VSM を用いて得られる磁気特性のうち、磁場印加中磁化及 び保磁力が、弾き出し損傷量と良い相関を持つことが 明らかになった。このことから、遠隔操作式 VSM を 用いた弾き出し損傷量評価技術として次のような方法 が考えられる。まず、サーベイランス試験片について、 遠隔操作式 VSM を用いて磁化曲線を測定し、磁場印 加中の磁化及び保磁力を評価する。次に、それぞれの0.35■ JRR-3(467°C)JRR-3 JOYO =Remanent magnetization (103 A/m)JOYOJOYO7JRR-3本!0.511.5Dose (dpa)(a) Remanent magnetizationJRR-3→10YO.JOYOJRR-3JOYOMagnetization at 0.5/4, A/m (A/m)THURR.3(467C)0.515Dose (dpa)(b) Magnetization at 0.5/40 A/mJRR-3(4670)JRR-3(4670)Coercive force (104/10 A/m)JOYO -JOYO→JRR-3JRR 3- JOYO10 0. 2040.6 0.8 11.214 1.6 1.8 Dose (dpa)(c) Coercive force .. Fig. 7 Relationships between dose and magnetic properties of the neutron irradiated samples.and magnetic特性と弾き出し損傷量の関係から、独立に弾き出し損 傷量を評価する。最後に、両者を比較し、保守的な値 を弾き出し損傷量の最終的な評価結果として採用する。 二つの磁気特性を用いて評価することで、単一の磁気 特性を用いた評価よりも信頼度の高い評価が可能にな444Magnetic susceptibility (wa)10_ 20 4 0 60 80 100 120 140 160 180Coercive force (10^/4, A/m) Fig. 8 Relationship between coercive force and magneticsusceptibility of the neutron irradiated samples.る。さらに、遠隔操作式 VSM の測定は比較的短時間 で終わるため、複数の試験片について測定を実施すれ ば、より信頼性の高い評価が行えるものと期待される。 また、遠隔操作式 VSM は非破壊測定であるため、測 定後にサーベイランス試験片を原子炉内に戻すことが できる。これにより、限られた試験片本数でもプラン トの全寿命期間に渡って弾き出し損傷量を評価するこ とが可能になり、また同一試験片を用いて繰り返し評 価することで、材料に起因するばらつきなく弾き出し 損傷量の経時変化を把握することが可能になる。5.結言実炉照射材の測定が可能な遠隔操作式 VSM を開発 し、整備した。性能確認試験を実施した結果、仕様の 性能を有していることを確認した。さらに、常陽と JRR-3 を用いて単独照射または組み 合わせ照射を実施した SUS316 の磁化曲線を、遠隔操 作式 VSM により測定し、得られた各種磁気特性と弾 き出し損傷量の関係を検討した。その結果、約 2 dpa までの低照射量域において、残留磁化については弾き 出し損傷量に伴う有意な変化は認められなかったが、 磁場印加中磁化については弾き出し損傷量とともに増 加すること、また保磁力については減少することが明 らかになった。照射炉の違いによる影響は認められな かった。従って、遠隔操作式 VSM を用いて評価した 磁場印加中磁化及び保磁力に基づき、中性子スペクト ルに依らずに約 2 dpa 以下の弾き出し損傷量を評価できる可能性がある。 - 以上の知見に基づき、サーベイランス試験片を用い た弾き出し損傷量の非破壊評価技術を提案した。磁場 印加中磁化及び保磁力の二つの磁気特性を用いて評価 することで、単一の磁気特性を用いて評価した場合よ りも信頼度の高い評価が可能になる。また非破壊測定 であるために、限られた試験片本数でもプラントの全 寿命期間に渡って弾き出し損傷量を評価することが可 能になる。「謝辞- 本報告の内容は、特別会計に関する法律(エネルギ ー対策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業 として、独立行政法人日本原子力研究開発機構が実施 した平成19年度及び平成20年度「長寿命プラント 照射損傷管理技術の開発」の成果です。参考文献 [1] 宮地紀子、阿部康弘、浅山泰、青砥紀身、鵜飼重治、“ステンレス鋼の引張およびクリープ特性に及ぼ す中性子照射効果”、材料、Vol. 46、No.5 (1997)pp.500-505. [2] M.N. Gusev, O.P. Maksimkin, O.V. Tivanova, N.S.Silnaygina, F.A. Garner, “Correlation of yield stress and microhardness in 08Cr16Ni11M03 stainless steel irradiated to high dose in the BN-350 fast reactor”, J.Nucl. Mater. Vol. 359 (2006) pp.258-262. [3] C. Pokor, Y. Brechet, P. Dubusson, J.P. Massoud, X.Averty, “Irradiation damage in 304 and 316 stainless steels: experimental investigation and modeling. Part II: Irradiation induced hardening““, J. Nucl. Mater. Vol. 326(2004) pp.30-37. [4] S. Takaya, Y. Nagae, K. Aoto, I. Yamagata, S. Ichikawa,S. Konno, R. Ogawa, E. Wakai, “Nondestructive evaluation of neutron irradiation damage on austenitic stainless steels by measurement of magnetic flux density”, Proc. of the 17th international conference onnuclear engineering, Brussels, 2009, ICONE17-75215. [5] J.T. Stanley and L.E. Hendrickson, “Ferrite formation inneutron-irradiated austenitic stainless steel”, J. Nucl.Mater. 80 (1979) pp.69-78. [6] 近角聰信、強磁性体の物理(上)、裳華房 (1978).445“ “?照射損傷評価のための遠隔操作式振動試料型磁力計の開発“ “高屋 茂,Shigeru TAKAYA,山県 一郎,Ichiro YAMAGATA,永江 勇二,Yuji NAGAE,若井 栄一,Eiichi WAKAI,青砥 紀身,Kazumi AOTO