電磁診断技術による傷付与転がり軸受の測定及び信号処理による傷大きさの推定法
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カテゴリ: 第6回
1.緒言
特に、回転機器の主要な劣化が軸受であることを考 緒言慮すると、電磁診断技術が軸受の新たな劣化診断技術 原子力施設の保守については、設備の信頼性を維持 の一つであると言える。 るため、TBM(Time Based Maintenance:時間基準保 , 本研究は、電磁診断技術の劣化診断への適用方法の やCBM(Condition Based Maintenance:状態監視保 一つとして実施されたもので、回転機の不具合事象と 等の保全方式を組み合わせることによる、最適なして挙げられる内輪傷および外輪傷を模擬した軸受を 全方法が検討されている。対象とし、電磁診断技術を用いて分解せずに外部から 保全方式の一つである CBM を用いて保全方法の最 劣化状態を確認したものである。本研究では、内輪お 化を実現させるためには、設備の劣化状態を的確によび外輪に傷を付与した軸受の挙動を、電磁診断技術 屋できる設備診断技術が必要である。現在、原子力を用いて測定し、傷の大きさと電磁信号との関係を明 タの保守現場では、回転機器に対し振動測定による らかにすることを目的とした。 営診断法が導入されつつある。振動測定による機器 見は長い歴史を持っており、膨大な量のデータベー
2. 電磁診断技術の原理 が蓄積され、カテゴリ化されており、言わば、成熟 こ技術である。しかしながら、回転機器の部位によ 導電体が静磁場を横切ることによって導電体表面に くは振動測定データに異常状態が反映されないこと、渦電流静?場 こ放射性物質で汚染された場合の手入れ前状態確認 できず、判定基準の精度を高められないこと、等のも有する。そのため、これらの課題を解決できる こな状態監視技術の開発が望まれている。 司転機器に対する新たな状態監視技術として、電磁 新技術が挙げられる「1-5)。
Fig.1 測定原理 3が蓄積され、カテゴリ化されており、言わば、成熟 した技術である。しかしながら、回転機器の部位によ っては振動測定データに異常状態が反映されないこと、 た放射性物質で汚染された場合の手入れ前状態確認 できず、判定基準の精度を高められないこと、等の 果題も有する。そのため、これらの課題を解決できる 〒たな状態監視技術の開発が望まれている。回転機器に対する新たな状態監視技術として、電磁 診断技術が挙げられる5。
46 -振動センサ (ねじ止め>電磁センサ15mmFig.2 軸受断面図及びセンサ取り付け位置磁石コイル (500 ターン)20mm直径高さ 表面磁束密度20mm0.5TFig.3 センサ外観及びセンサ仕様 島電流が発生する。回転機器に外部より静磁場が与えFig.3 に電磁センサの外観及び電磁センサの仕様を っれている場合、軸受などの回転体においても材質が示す。電磁センサは静磁場を与えるための永久磁石 (ネ 3電体であれば回転体の表層に渦電流が発生するオジム磁石)と回転体表面に発生した渦電流を捕らえ (Fig.1)。この渦電流は、回転体の振動や回転体のブレ るためのコイルからなる。センサに使用した永久磁石 によって変化するので、この渦電流の変化を磁場センは直径 20mm、高さ 20mm、表面磁束密度は 0.5T であ チで捉えることにより軸受の状態を診断する一つの方り、コイルの巻き数は 500 ターンである。 とすることができる。3.2 試験条件 3. 検証実験、自動調心玉軸受の外輪及び内輪に傷を模擬したスリ 3. 1 軸受及び電磁センサットを設け測定を行った。Fig.4に外輪傷の概略図と外 測定対象として、軸受には自動調心玉軸受 1204S を 輪傷2の写真を示し、Fig.5に内輪傷の概略図と内輪傷2 用いた。Fig.2 に、軸受の断面図及びセンサの取り付け の写真を示す。図に示すように外輪及び内輪の一か所 立置を示す。軸受の主な仕様は外径47mm、内径 20mm、 にスリット状の加工を施した。スリット加工は2 列の 昼 14mm、転動体数は 12 個×2 列である。軸受ホルダ転動面の一方にのみ施した。 こ設置した軸受とセンサとの距離は約5mm であり、軸 受ホルダの材質は S45C である。トスリットFig.4 外輪傷の概略図及び外輪傷2の写真 ig.4 外輪傷の概略図及び外輪傷2スリット外輪傷及び内輪傷は大きさの異なる3種類を用意した。 島の加工方法には、ダイヤモンドビットを用いてグラ インダ加工を施した。Tablel に外輪傷及び内輪傷を付 与した軸受と付与した傷の開口幅を示す。傷の開口幅 は、転動体が傷部を通過する転動面の中心付近の傷の 品を示している。試験軸受切断試験の結果、内輪、外 論ともに傷の開口幅は小さいものから約 0. 4mm、約Fig.5 内輪傷の概略図及び内輪傷2の写真外輪傷及び内輪傷は大きさの異なる3種類を用意した。Table 1 傷部の開口幅 あの加工方法には、ダイヤモンドビットを用いてグラ傷部の開口幅 インダ加工を施した。Tablel に外輪傷及び内輪傷を付外輪傷10.4mm 与した軸受と付与した傷の開口幅を示す。傷の開口幅外輪傷22.1mm は、転動体が傷部を通過する転動面の中心付近の傷の外輪傷33.7mm 幅を示している。試験軸受切断試験の結果、内輪、外内輪傷10.4mm 輪ともに傷の開口幅は小さいものから約 0.4mm、約内輪傷22.1mm 2.1mm、及び約 3. 7mm~3.8mm とした。本実験は、軸受内輪傷33.8mm の劣化における内輪傷と外輪傷のフレーキングの進展 する過程を模擬しており、内輪傷と外輪傷の同定、及 1-3.3 信号処理手法と自己相関法 び内輪と外輪の傷上を転動体が通過する傷開口幅の同電磁診断による現状での軸受の信号処理手法、診断 定を目的とした試験体である。過程、及び自己相関関数を用いた診断手法を説明する。 Fig.6 に信号処理手法の流れを示す。1で時系列信号をする過程を模擬しており、内輪傷と外輪傷の同定、及 び内輪と外輪の傷上を転動体が通過する傷開口幅の同 定を目的とした試験体である。 Table 1 傷部の開口幅傷部の開口幅 外輪傷10.4mm 外輪傷22.1mm 外輪傷33.7mm 内輪傷10.4mm 内輪傷22.1mm 内輪傷33.8mm3.3 信号処理手法と自己相関法 * 電磁診断による現状での軸受の信号処理手法、診断 過程、及び自己相関関数を用いた診断手法を説明する。 Fig.6 に信号処理手法の流れを示す。1で時系列信号を - 448 -確認し、周波数分析により各周波数帯の特徴を観察す る。次にバンドパスフィルタにより傷信号に対応する 周波数成分を取り出す。バンドパスフィルタは軸受の 種類や機器の大きさ、質量、材質等により変化させ、 詳細な分析が必要である。2でフィルタリングされた 信号の包絡線を取り、周波数分析を行うことで高周波 成分の周期性を確認し、また、軸回転周波数や軸受の 傷に対応する周波数成分が含まれているか判断する。 Fig.7 及びFig.8に外輪傷、内輪傷の包絡線を取り、周波 数分析した結果を示す。外輪傷の場合は97.3Hz、内輪 傷の場合は143Hzの周波数成分が確認された。傷の無いSignal ProcessingMeasuredSignalFFTBand Pass FilteriFFTFiltered SignalFiltered SignalabsolutevalueEnvelope #FFT| autocorrelationAutocorrelationcoefficientsAutocorrelationcoefficientsFFTEnvelope -autocorrelationpower spectrumFig.6 信号処理Envelope-FFTD.CO40Q.co3SH97.3Hz0.0030.00254Signak)2000200.001500010-.-.---C.coota0000-1440 Anywayandahlent LINE 110023630040050600700000 9001C00Frequency (Hz)Fig.7 エンベロープ(外輪傷)Fig.8 エンベロープ(内輪傷)正常な軸受の場合はこれらの周波数成分は検出され ないため、これらの周波数成分の有無を確認すること により傷の有無、傷の位置(内輪、外輪)の区別が可 能である。Fig.9に自己相関法の結果を示す。フィルタ リングされた信号の包絡線の自己相関係数を算出する ことで、相関性の無いノイズを相対的に小さくし、高 周波成分の周期性を確認しやすくするとともに、高周 波成分の相関性の高さを確認する。2ではフィルタリ ングされた信号の包絡線の自己相関係数を周波数分析 することにより、再度軸回転周波数や軸受の傷に対応 する周波数成分が含まれているかを確認する。Envelope-FFT0.0020円0.0018143Hz0.00160.0014430.00124Signal()5000100.000-0.000640.00340.0032TT01100200300400 15006c0700019001000 Frequency (Hz)1449Filtered Signal| absolutevalueEnvelope| autocorrelationAutocorrelationcoefficientsNomalzed-envelope-autoconeleNormalized-envelope-autocorrelationalooorrelation coefficientsautocorroration:200ficients12000,010.020030,040.05.069071,080,09410Detasy timauced)10.000,010,020.03.042,080,080,070,080890.10Delay time sealHealthy BearingOuter race defectFio.9 自己相関法Fig.9 自己相関法Normalized-envelope-autocorrelationNormalized-envelope-autocorrelation0.0037secOuter defect 3Outer delect 2 |-... (inter totact 1- Healthy| 0.00349 secInner defect 3 Inner defect2 Inner defect 1 Healthy0.00185sec| 0.0019 secautocorrelation coefficientsautocorrelation coefficients......-------0.240.0000,0020.0040.006 '0.00 '0010 'c012'0018 '0.016 '0018 '0.020Delay time(sec)-0.44 0.0400.04200440,04600480,0500,0520.05400560.0580,060Delay time(sec)Fig.10 自己相関分析結果(外輪傷)* Fig.11 自己相関分析結果(内輪傷) Fig.10 及びFig.11に外輪傷及び内輪傷の自己相関分の一点を通過する転動体の周波数は97.3Hz であるの 析結果を示す。外輪傷の場合は約97.3Hz の周期で振幅で、転動体が10.39mm 進む時間は約0.0103秒となる。 を確認できるが、転動体と接触する転動面の傷の幅が。 外輪傷3 の場合、実際の傷の幅は約3.9mm 程であり、 ある程度広ければ、約97.3Hz の周期の振幅の左右に極 転動体が外輪の転動面の3.9mm の距離を通過する時間 大値が確認される。傷の幅が広いほど極大値と極大値 は約0.0038 秒となる。この場合の分析結果では極大値 との時間差が大きくなる。外輪の転動面の直径は約と極大値との時間差は約0.0037 秒で、この時に推測さ 39.7mm であるので、円周は約124.7mm となり、一列のれる傷の幅は3.7mm~3.8mm となり実際の傷の幅とよ 転動体数は12 個なので隣り合う転動体と転動体とのく一致する。外輪傷2 の場合、実際の傷の幅は約2.0mm 距離は約10.39mm である。内輪一回転あたりの外輪上程であり、転動体が外輪の転動面の2.0mm の距離を通450過する時間は約0.0019 秒となる。この場合の分析結果 では極大値と極大値との時間差は約0.0018 秒~ 0.0019 秒で、この時に推測される傷の幅は1.9mm ~ 2.0mmとなり実際の傷の幅とよく一致する。外輪傷1の 場合、実際の傷の幅は約0. 4mm 程であるが、傷の幅に 対応している極大値は観測されない。理由としては包 絡線処理や自己相関係数を算出する際にノイズに埋も れたことや、傷の幅が狭いために振動や転動体の挙動 に影響していない等の可能性が考えられる。次に、内 輪の転動面の直径は約27.0mm であるため、円周は約 84.8mm となり、一列の転動体数は12 個であることか ら隣り合う転動体と転動体との距離は約7.069mm であ る。内輪一回転あたりの外輪上の一点を通過する転動 体の周波数は143Hz であるので、転動体が7.069mm 進 む時間は約0.007 秒となる。内輪傷3 の場合、実際の 傷の幅は約3.8mm であり、転動体が外輪の転動面の 3.8mm の距離を通過する時間は約0.00376 秒となる。 この場合の分析結果では極大値と極大値との時間差は 約0.00349 秒で、この時に推測される傷の幅は3.5mm ~3. 6mm となり実際の傷の幅と比較してよく一致する。 内輪傷2 の場合、実際の傷の幅は約2.1mmであり、転動 体が外輪の転動面の2.1mm の距離を通過する時間は約 0.00208 秒となる。この場合の分析結果では極大値と 極大値との時間差は約0.0019 秒で、この時に推測され る傷の幅は1.9mm~2.0mm となり実際の傷の幅と比較 してよく一致する。Table 2 傷部の開口幅傷部の開口幅 | 分析結果 外輪傷10.4mm 外輪傷2 2.1mm1.9mm 外輪傷33.7mm3.7~3.8mm 内輪傷10.4mm 内輪傷22.1mm1.9~2.0mm 内輪傷3 | 3.8mm3.53mm4. まとめ(1) 電磁診断、振動加速度共に内輪傷、外輪傷に関 わらず1 回転毎の傷による信号の振幅の変化が大きい。 時系列信号の最大値やFFT 結果の高周波の振幅等のパ ラメータは、正常な軸受の測定結果と比較すると、軸 受の不具合が確認できるが、傷の幅と信号との相関に ついては、今回の傷幅の大きさの範囲では明確には確分析結果11.9mm3.7~3.8mm1.9~2.0mm3.53mm認できなかった。 (2) フィルタリングした信号の包絡線の自己相関係 数の変化を詳細分析することによって、転動体が通過 する転動面の傷の幅を確認できる見通しが得られた。 (2) フィルタリングした信号の包絡線の自己相関係 数の変化を詳細分析することによって、転動体が通過 する転動面の傷の幅を確認できる見通しが得られた。謝辞本研究の共同研究者である故 真木紘一氏のご冥福 を謹んでお祈り致します。本文中の軸受の欠陥検出試験に関して、電磁設備診 断によるデータ取得実験に全面的なご協力を頂きまし た日本原燃株式会社殿に感謝いたします。参考文献 [1]黄皓宇,宮健三,遊佐訓孝,小阪大吾,回転体異常の電磁検出,日本非破壊検査協会第 10 回表面探傷シンポジ ウム,東京都城南地域中小企業振興センター,2007/01/25-26. [2]小坂大吾、黄皓宇、遊佐訓孝、回転機器の電磁非破壊評価手法の検討 、日本保全学会第4回学術講演会、福井大学、2007/07/02-03. [3] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa and KenzoMiya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. The 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, MichiganState University, USA, 2007/09/09-12. [4] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa and KenzoMiya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. Science and Technology ofMaintenance (Under review). [5] 萱田良、黄皓宇、遊佐訓孝、電磁診断技術による異物混入軸受の挙動測定、日本保全学会 第5回学術講演会 水戸市民会館 2008/7/10-12、産学-7.- 451 -“ “?電磁診断技術による傷付与転がり軸受の測定及び信号処理による傷大きさの推定法“ “菅田 良,Ryo KAYATA,馬渡 慎吾,Shingo MAWATARI,黄 皓宇,Haoyu HUANG,ペラン ステファン,Stephane PERRIN,真木 紘一,Koichi MAKI
特に、回転機器の主要な劣化が軸受であることを考 緒言慮すると、電磁診断技術が軸受の新たな劣化診断技術 原子力施設の保守については、設備の信頼性を維持 の一つであると言える。 るため、TBM(Time Based Maintenance:時間基準保 , 本研究は、電磁診断技術の劣化診断への適用方法の やCBM(Condition Based Maintenance:状態監視保 一つとして実施されたもので、回転機の不具合事象と 等の保全方式を組み合わせることによる、最適なして挙げられる内輪傷および外輪傷を模擬した軸受を 全方法が検討されている。対象とし、電磁診断技術を用いて分解せずに外部から 保全方式の一つである CBM を用いて保全方法の最 劣化状態を確認したものである。本研究では、内輪お 化を実現させるためには、設備の劣化状態を的確によび外輪に傷を付与した軸受の挙動を、電磁診断技術 屋できる設備診断技術が必要である。現在、原子力を用いて測定し、傷の大きさと電磁信号との関係を明 タの保守現場では、回転機器に対し振動測定による らかにすることを目的とした。 営診断法が導入されつつある。振動測定による機器 見は長い歴史を持っており、膨大な量のデータベー
2. 電磁診断技術の原理 が蓄積され、カテゴリ化されており、言わば、成熟 こ技術である。しかしながら、回転機器の部位によ 導電体が静磁場を横切ることによって導電体表面に くは振動測定データに異常状態が反映されないこと、渦電流静?場 こ放射性物質で汚染された場合の手入れ前状態確認 できず、判定基準の精度を高められないこと、等のも有する。そのため、これらの課題を解決できる こな状態監視技術の開発が望まれている。 司転機器に対する新たな状態監視技術として、電磁 新技術が挙げられる「1-5)。
Fig.1 測定原理 3が蓄積され、カテゴリ化されており、言わば、成熟 した技術である。しかしながら、回転機器の部位によ っては振動測定データに異常状態が反映されないこと、 た放射性物質で汚染された場合の手入れ前状態確認 できず、判定基準の精度を高められないこと、等の 果題も有する。そのため、これらの課題を解決できる 〒たな状態監視技術の開発が望まれている。回転機器に対する新たな状態監視技術として、電磁 診断技術が挙げられる5。
46 -振動センサ (ねじ止め>電磁センサ15mmFig.2 軸受断面図及びセンサ取り付け位置磁石コイル (500 ターン)20mm直径高さ 表面磁束密度20mm0.5TFig.3 センサ外観及びセンサ仕様 島電流が発生する。回転機器に外部より静磁場が与えFig.3 に電磁センサの外観及び電磁センサの仕様を っれている場合、軸受などの回転体においても材質が示す。電磁センサは静磁場を与えるための永久磁石 (ネ 3電体であれば回転体の表層に渦電流が発生するオジム磁石)と回転体表面に発生した渦電流を捕らえ (Fig.1)。この渦電流は、回転体の振動や回転体のブレ るためのコイルからなる。センサに使用した永久磁石 によって変化するので、この渦電流の変化を磁場センは直径 20mm、高さ 20mm、表面磁束密度は 0.5T であ チで捉えることにより軸受の状態を診断する一つの方り、コイルの巻き数は 500 ターンである。 とすることができる。3.2 試験条件 3. 検証実験、自動調心玉軸受の外輪及び内輪に傷を模擬したスリ 3. 1 軸受及び電磁センサットを設け測定を行った。Fig.4に外輪傷の概略図と外 測定対象として、軸受には自動調心玉軸受 1204S を 輪傷2の写真を示し、Fig.5に内輪傷の概略図と内輪傷2 用いた。Fig.2 に、軸受の断面図及びセンサの取り付け の写真を示す。図に示すように外輪及び内輪の一か所 立置を示す。軸受の主な仕様は外径47mm、内径 20mm、 にスリット状の加工を施した。スリット加工は2 列の 昼 14mm、転動体数は 12 個×2 列である。軸受ホルダ転動面の一方にのみ施した。 こ設置した軸受とセンサとの距離は約5mm であり、軸 受ホルダの材質は S45C である。トスリットFig.4 外輪傷の概略図及び外輪傷2の写真 ig.4 外輪傷の概略図及び外輪傷2スリット外輪傷及び内輪傷は大きさの異なる3種類を用意した。 島の加工方法には、ダイヤモンドビットを用いてグラ インダ加工を施した。Tablel に外輪傷及び内輪傷を付 与した軸受と付与した傷の開口幅を示す。傷の開口幅 は、転動体が傷部を通過する転動面の中心付近の傷の 品を示している。試験軸受切断試験の結果、内輪、外 論ともに傷の開口幅は小さいものから約 0. 4mm、約Fig.5 内輪傷の概略図及び内輪傷2の写真外輪傷及び内輪傷は大きさの異なる3種類を用意した。Table 1 傷部の開口幅 あの加工方法には、ダイヤモンドビットを用いてグラ傷部の開口幅 インダ加工を施した。Tablel に外輪傷及び内輪傷を付外輪傷10.4mm 与した軸受と付与した傷の開口幅を示す。傷の開口幅外輪傷22.1mm は、転動体が傷部を通過する転動面の中心付近の傷の外輪傷33.7mm 幅を示している。試験軸受切断試験の結果、内輪、外内輪傷10.4mm 輪ともに傷の開口幅は小さいものから約 0.4mm、約内輪傷22.1mm 2.1mm、及び約 3. 7mm~3.8mm とした。本実験は、軸受内輪傷33.8mm の劣化における内輪傷と外輪傷のフレーキングの進展 する過程を模擬しており、内輪傷と外輪傷の同定、及 1-3.3 信号処理手法と自己相関法 び内輪と外輪の傷上を転動体が通過する傷開口幅の同電磁診断による現状での軸受の信号処理手法、診断 定を目的とした試験体である。過程、及び自己相関関数を用いた診断手法を説明する。 Fig.6 に信号処理手法の流れを示す。1で時系列信号をする過程を模擬しており、内輪傷と外輪傷の同定、及 び内輪と外輪の傷上を転動体が通過する傷開口幅の同 定を目的とした試験体である。 Table 1 傷部の開口幅傷部の開口幅 外輪傷10.4mm 外輪傷22.1mm 外輪傷33.7mm 内輪傷10.4mm 内輪傷22.1mm 内輪傷33.8mm3.3 信号処理手法と自己相関法 * 電磁診断による現状での軸受の信号処理手法、診断 過程、及び自己相関関数を用いた診断手法を説明する。 Fig.6 に信号処理手法の流れを示す。1で時系列信号を - 448 -確認し、周波数分析により各周波数帯の特徴を観察す る。次にバンドパスフィルタにより傷信号に対応する 周波数成分を取り出す。バンドパスフィルタは軸受の 種類や機器の大きさ、質量、材質等により変化させ、 詳細な分析が必要である。2でフィルタリングされた 信号の包絡線を取り、周波数分析を行うことで高周波 成分の周期性を確認し、また、軸回転周波数や軸受の 傷に対応する周波数成分が含まれているか判断する。 Fig.7 及びFig.8に外輪傷、内輪傷の包絡線を取り、周波 数分析した結果を示す。外輪傷の場合は97.3Hz、内輪 傷の場合は143Hzの周波数成分が確認された。傷の無いSignal ProcessingMeasuredSignalFFTBand Pass FilteriFFTFiltered SignalFiltered SignalabsolutevalueEnvelope #FFT| autocorrelationAutocorrelationcoefficientsAutocorrelationcoefficientsFFTEnvelope -autocorrelationpower spectrumFig.6 信号処理Envelope-FFTD.CO40Q.co3SH97.3Hz0.0030.00254Signak)2000200.001500010-.-.---C.coota0000-1440 Anywayandahlent LINE 110023630040050600700000 9001C00Frequency (Hz)Fig.7 エンベロープ(外輪傷)Fig.8 エンベロープ(内輪傷)正常な軸受の場合はこれらの周波数成分は検出され ないため、これらの周波数成分の有無を確認すること により傷の有無、傷の位置(内輪、外輪)の区別が可 能である。Fig.9に自己相関法の結果を示す。フィルタ リングされた信号の包絡線の自己相関係数を算出する ことで、相関性の無いノイズを相対的に小さくし、高 周波成分の周期性を確認しやすくするとともに、高周 波成分の相関性の高さを確認する。2ではフィルタリ ングされた信号の包絡線の自己相関係数を周波数分析 することにより、再度軸回転周波数や軸受の傷に対応 する周波数成分が含まれているかを確認する。Envelope-FFT0.0020円0.0018143Hz0.00160.0014430.00124Signal()5000100.000-0.000640.00340.0032TT01100200300400 15006c0700019001000 Frequency (Hz)1449Filtered Signal| absolutevalueEnvelope| autocorrelationAutocorrelationcoefficientsNomalzed-envelope-autoconeleNormalized-envelope-autocorrelationalooorrelation coefficientsautocorroration:200ficients12000,010.020030,040.05.069071,080,09410Detasy timauced)10.000,010,020.03.042,080,080,070,080890.10Delay time sealHealthy BearingOuter race defectFio.9 自己相関法Fig.9 自己相関法Normalized-envelope-autocorrelationNormalized-envelope-autocorrelation0.0037secOuter defect 3Outer delect 2 |-... (inter totact 1- Healthy| 0.00349 secInner defect 3 Inner defect2 Inner defect 1 Healthy0.00185sec| 0.0019 secautocorrelation coefficientsautocorrelation coefficients......-------0.240.0000,0020.0040.006 '0.00 '0010 'c012'0018 '0.016 '0018 '0.020Delay time(sec)-0.44 0.0400.04200440,04600480,0500,0520.05400560.0580,060Delay time(sec)Fig.10 自己相関分析結果(外輪傷)* Fig.11 自己相関分析結果(内輪傷) Fig.10 及びFig.11に外輪傷及び内輪傷の自己相関分の一点を通過する転動体の周波数は97.3Hz であるの 析結果を示す。外輪傷の場合は約97.3Hz の周期で振幅で、転動体が10.39mm 進む時間は約0.0103秒となる。 を確認できるが、転動体と接触する転動面の傷の幅が。 外輪傷3 の場合、実際の傷の幅は約3.9mm 程であり、 ある程度広ければ、約97.3Hz の周期の振幅の左右に極 転動体が外輪の転動面の3.9mm の距離を通過する時間 大値が確認される。傷の幅が広いほど極大値と極大値 は約0.0038 秒となる。この場合の分析結果では極大値 との時間差が大きくなる。外輪の転動面の直径は約と極大値との時間差は約0.0037 秒で、この時に推測さ 39.7mm であるので、円周は約124.7mm となり、一列のれる傷の幅は3.7mm~3.8mm となり実際の傷の幅とよ 転動体数は12 個なので隣り合う転動体と転動体とのく一致する。外輪傷2 の場合、実際の傷の幅は約2.0mm 距離は約10.39mm である。内輪一回転あたりの外輪上程であり、転動体が外輪の転動面の2.0mm の距離を通450過する時間は約0.0019 秒となる。この場合の分析結果 では極大値と極大値との時間差は約0.0018 秒~ 0.0019 秒で、この時に推測される傷の幅は1.9mm ~ 2.0mmとなり実際の傷の幅とよく一致する。外輪傷1の 場合、実際の傷の幅は約0. 4mm 程であるが、傷の幅に 対応している極大値は観測されない。理由としては包 絡線処理や自己相関係数を算出する際にノイズに埋も れたことや、傷の幅が狭いために振動や転動体の挙動 に影響していない等の可能性が考えられる。次に、内 輪の転動面の直径は約27.0mm であるため、円周は約 84.8mm となり、一列の転動体数は12 個であることか ら隣り合う転動体と転動体との距離は約7.069mm であ る。内輪一回転あたりの外輪上の一点を通過する転動 体の周波数は143Hz であるので、転動体が7.069mm 進 む時間は約0.007 秒となる。内輪傷3 の場合、実際の 傷の幅は約3.8mm であり、転動体が外輪の転動面の 3.8mm の距離を通過する時間は約0.00376 秒となる。 この場合の分析結果では極大値と極大値との時間差は 約0.00349 秒で、この時に推測される傷の幅は3.5mm ~3. 6mm となり実際の傷の幅と比較してよく一致する。 内輪傷2 の場合、実際の傷の幅は約2.1mmであり、転動 体が外輪の転動面の2.1mm の距離を通過する時間は約 0.00208 秒となる。この場合の分析結果では極大値と 極大値との時間差は約0.0019 秒で、この時に推測され る傷の幅は1.9mm~2.0mm となり実際の傷の幅と比較 してよく一致する。Table 2 傷部の開口幅傷部の開口幅 | 分析結果 外輪傷10.4mm 外輪傷2 2.1mm1.9mm 外輪傷33.7mm3.7~3.8mm 内輪傷10.4mm 内輪傷22.1mm1.9~2.0mm 内輪傷3 | 3.8mm3.53mm4. まとめ(1) 電磁診断、振動加速度共に内輪傷、外輪傷に関 わらず1 回転毎の傷による信号の振幅の変化が大きい。 時系列信号の最大値やFFT 結果の高周波の振幅等のパ ラメータは、正常な軸受の測定結果と比較すると、軸 受の不具合が確認できるが、傷の幅と信号との相関に ついては、今回の傷幅の大きさの範囲では明確には確分析結果11.9mm3.7~3.8mm1.9~2.0mm3.53mm認できなかった。 (2) フィルタリングした信号の包絡線の自己相関係 数の変化を詳細分析することによって、転動体が通過 する転動面の傷の幅を確認できる見通しが得られた。 (2) フィルタリングした信号の包絡線の自己相関係 数の変化を詳細分析することによって、転動体が通過 する転動面の傷の幅を確認できる見通しが得られた。謝辞本研究の共同研究者である故 真木紘一氏のご冥福 を謹んでお祈り致します。本文中の軸受の欠陥検出試験に関して、電磁設備診 断によるデータ取得実験に全面的なご協力を頂きまし た日本原燃株式会社殿に感謝いたします。参考文献 [1]黄皓宇,宮健三,遊佐訓孝,小阪大吾,回転体異常の電磁検出,日本非破壊検査協会第 10 回表面探傷シンポジ ウム,東京都城南地域中小企業振興センター,2007/01/25-26. [2]小坂大吾、黄皓宇、遊佐訓孝、回転機器の電磁非破壊評価手法の検討 、日本保全学会第4回学術講演会、福井大学、2007/07/02-03. [3] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa and KenzoMiya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. The 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, MichiganState University, USA, 2007/09/09-12. [4] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa and KenzoMiya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. Science and Technology ofMaintenance (Under review). [5] 萱田良、黄皓宇、遊佐訓孝、電磁診断技術による異物混入軸受の挙動測定、日本保全学会 第5回学術講演会 水戸市民会館 2008/7/10-12、産学-7.- 451 -“ “?電磁診断技術による傷付与転がり軸受の測定及び信号処理による傷大きさの推定法“ “菅田 良,Ryo KAYATA,馬渡 慎吾,Shingo MAWATARI,黄 皓宇,Haoyu HUANG,ペラン ステファン,Stephane PERRIN,真木 紘一,Koichi MAKI