(3)プロアクティブ経年変化対応と階層化保全
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カテゴリ: 第6回
1.はじめに
高経年化プラント及び長期運用プラントの安定運用 においては、材料の経年的劣化事象への予知・予測が 不可欠である。最近の60年運転あるいは80年運転 においては想定される多様な経年劣化への対応に加え て、未経験事象等への対応を目指したプロアクティブ 劣化対応の必要性が求められている。またリアクティ ブ対応(従来型)との比較において、その利点が整理 されている。例えば原子力発電設備の初期想定供用期 間を超えた長期運用(LTO)に伴う想定外事象あるいは 未経験事象の予知・予測の重要性が認識されてきてお り、世界的な共通課題との認識より国際協力が進めら れてきている。International PMMD Forum の設置 (準備 会合 10月 12 - 13 日)について検討開始。 例えば、米国における60年を超えて80年の長期運 用を認可するためのクライテリアの事前把握において はプロアクティブ劣化対応に基づく R&Dの必要性と ともに、認可要件のギャプ解析が不可欠であるといわ れている。そのためには広範囲な対応が不可欠であり、 そのための人的、経済的資源の有効活用と国際協調の 必要性を強調している。
2.活動の意味付け一規制にとって一 ◆ 科学的合理性をもった合理的規制と時宜を得た規制文書の発出等の対応 ◆ リアクティブ対応によって失われる国民の信頼の 維持・向上(納税者の信頼の向上) 一事業者にとって一 ◆ 事前想定により、取り換え、修理、対策等の対応 の時宜を得た対応と、それによる長期プラント停止の回避◆ トラブルの事前回避による国民(地元住民)や地 方自治体からの信頼の向上 一納税者にとって(長期的な原子力発電により) - → 安全・安心への信頼感の向上 ◆ 経済的なエネルギー源の入手 ◆ 地球温暖化対応エネルギー源の入手 ◆ 供給安定性の高いエネルギー源の入手 一産業界にとって一 ~ (一般)コスト競争の国際市場への参画の基盤確 保(特に半導体産業等の電力消費型産業等) ~ (原子力)技術継承の機会提供並びに次世代軽水 炉設計への反映3.そのための条件(例示)一電力事業として(LTO対応のコストを踏まえ) - → プロアクティブ劣化対応によって得られる利益と 必要コストの比が大きいこと → 高経年プラントのプロアクティブ劣化対応による リスクと必要コストの比が小さいことィブ劣化対応による ことて得られる基上に技術の構確かさを補完」◆ LTO を支える研究開発とそれによって得られる基 盤技術が十分精度の高いこと ◆ 基礎科学に基礎をおいた確たる基盤上に技術の構 築が成されていること ◆ プロアクティブ劣化対応における不確かさを補完 する状態監視技術が充実のこと -状態監視技術の充実のために一 ・センサーネットワークの構築 ・I&C先端技術の活用 ? Life Cycle NDE Monitoring ? Real-Time NDE ・Sensor Network ・低消費電力センサー ・遠隔モニタリング などの一層の充実が必要である。4. プロアクティブ材料劣化対応における共 通基礎課題プロアクティブ材料劣化対応における共通基礎課題 として下記の項目への関心を高める事が必要である。 > 重要度ランクに挙げられる多様な劣化メカニズムの根源解明 > 特に環境誘起劣化の予知・予測(過去の事例からの教訓) - SCC、FAC、LDI、BAC etc > 高温水の物理化学 - いまだにその本性は未解明◆ 水の構造(亜臨界から超臨界) ◆ 多様なラディカルの存在 > 材料面からの不確かさ ◆材料側(仕上げに依存する組織・組成、残留歪、残留応力およびそれらの製造過程からの履歴) ◆ 実機長期供用材の諸特性(温度場、環境場、力学場) > 環境と材料の界面の理解不足(刻々と変化する界面) ◆水側(酸化物界面近傍の水の挙動) ◆界面に形成される酸化物の物理化学と酸化動力学 ◆界面動力学に及ぼす各種要因の抽出と解明In-situ計測(国際共同研究 PEACE-E に て実施中) 放射線等の影響(NISA 高経年化対応高 度化事業で実施中) 変形・破壊に伴う電子放出(特に酸化物 で顕著) モデル化と定量予測5. 階層化保全保全活動は、地道な日常的積み重ねが基本であり、現 場へのモティベーションの付与が重要である。最近、 多くの海外企業を含めて大きな関心が払われてきてい る活動の一つとして TPM 賞審査を上げる事が出来よ う。詳細な説明は別に譲るとして、ここでは基本の柱 に関わる活動の一環を紹介する。 → 現場に直結した保全 ◆保全現場における活動と会社経営の直結感の醸成(トップダウンとボトムアップの Best Mix) ◆ 経営者による定期的現場訪問 ◆ 重複階層化保全、重複階層化小グループによる現 場での活動個別改善 ◆ 自主保全 ◆ 計画保全 ◆ 教育と訓練 ◆ ロスとコストの根本原因究明と重要度ランク5.おわりにプロアクティブ経年劣化対応は、プラントの LTO に とって不可欠である。そのための保全の在るべき姿と しての有機的な階層化保全についての一考察を紹介した。連絡先: 庄子哲雄、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒 巻字青葉 6-6-1、東北大学工学研究科エネルギー安全科 学国際研究センター、未来科学技術共同研究センター 電話: 022-795-7517、e-mail: tshoji@rif.mech.tohoku.ac.jp6“ “プロアクティブ経年劣化対応と階層化保全“ “庄子 哲雄,Tetsuo SHOJI
高経年化プラント及び長期運用プラントの安定運用 においては、材料の経年的劣化事象への予知・予測が 不可欠である。最近の60年運転あるいは80年運転 においては想定される多様な経年劣化への対応に加え て、未経験事象等への対応を目指したプロアクティブ 劣化対応の必要性が求められている。またリアクティ ブ対応(従来型)との比較において、その利点が整理 されている。例えば原子力発電設備の初期想定供用期 間を超えた長期運用(LTO)に伴う想定外事象あるいは 未経験事象の予知・予測の重要性が認識されてきてお り、世界的な共通課題との認識より国際協力が進めら れてきている。International PMMD Forum の設置 (準備 会合 10月 12 - 13 日)について検討開始。 例えば、米国における60年を超えて80年の長期運 用を認可するためのクライテリアの事前把握において はプロアクティブ劣化対応に基づく R&Dの必要性と ともに、認可要件のギャプ解析が不可欠であるといわ れている。そのためには広範囲な対応が不可欠であり、 そのための人的、経済的資源の有効活用と国際協調の 必要性を強調している。
2.活動の意味付け一規制にとって一 ◆ 科学的合理性をもった合理的規制と時宜を得た規制文書の発出等の対応 ◆ リアクティブ対応によって失われる国民の信頼の 維持・向上(納税者の信頼の向上) 一事業者にとって一 ◆ 事前想定により、取り換え、修理、対策等の対応 の時宜を得た対応と、それによる長期プラント停止の回避◆ トラブルの事前回避による国民(地元住民)や地 方自治体からの信頼の向上 一納税者にとって(長期的な原子力発電により) - → 安全・安心への信頼感の向上 ◆ 経済的なエネルギー源の入手 ◆ 地球温暖化対応エネルギー源の入手 ◆ 供給安定性の高いエネルギー源の入手 一産業界にとって一 ~ (一般)コスト競争の国際市場への参画の基盤確 保(特に半導体産業等の電力消費型産業等) ~ (原子力)技術継承の機会提供並びに次世代軽水 炉設計への反映3.そのための条件(例示)一電力事業として(LTO対応のコストを踏まえ) - → プロアクティブ劣化対応によって得られる利益と 必要コストの比が大きいこと → 高経年プラントのプロアクティブ劣化対応による リスクと必要コストの比が小さいことィブ劣化対応による ことて得られる基上に技術の構確かさを補完」◆ LTO を支える研究開発とそれによって得られる基 盤技術が十分精度の高いこと ◆ 基礎科学に基礎をおいた確たる基盤上に技術の構 築が成されていること ◆ プロアクティブ劣化対応における不確かさを補完 する状態監視技術が充実のこと -状態監視技術の充実のために一 ・センサーネットワークの構築 ・I&C先端技術の活用 ? Life Cycle NDE Monitoring ? Real-Time NDE ・Sensor Network ・低消費電力センサー ・遠隔モニタリング などの一層の充実が必要である。4. プロアクティブ材料劣化対応における共 通基礎課題プロアクティブ材料劣化対応における共通基礎課題 として下記の項目への関心を高める事が必要である。 > 重要度ランクに挙げられる多様な劣化メカニズムの根源解明 > 特に環境誘起劣化の予知・予測(過去の事例からの教訓) - SCC、FAC、LDI、BAC etc > 高温水の物理化学 - いまだにその本性は未解明◆ 水の構造(亜臨界から超臨界) ◆ 多様なラディカルの存在 > 材料面からの不確かさ ◆材料側(仕上げに依存する組織・組成、残留歪、残留応力およびそれらの製造過程からの履歴) ◆ 実機長期供用材の諸特性(温度場、環境場、力学場) > 環境と材料の界面の理解不足(刻々と変化する界面) ◆水側(酸化物界面近傍の水の挙動) ◆界面に形成される酸化物の物理化学と酸化動力学 ◆界面動力学に及ぼす各種要因の抽出と解明In-situ計測(国際共同研究 PEACE-E に て実施中) 放射線等の影響(NISA 高経年化対応高 度化事業で実施中) 変形・破壊に伴う電子放出(特に酸化物 で顕著) モデル化と定量予測5. 階層化保全保全活動は、地道な日常的積み重ねが基本であり、現 場へのモティベーションの付与が重要である。最近、 多くの海外企業を含めて大きな関心が払われてきてい る活動の一つとして TPM 賞審査を上げる事が出来よ う。詳細な説明は別に譲るとして、ここでは基本の柱 に関わる活動の一環を紹介する。 → 現場に直結した保全 ◆保全現場における活動と会社経営の直結感の醸成(トップダウンとボトムアップの Best Mix) ◆ 経営者による定期的現場訪問 ◆ 重複階層化保全、重複階層化小グループによる現 場での活動個別改善 ◆ 自主保全 ◆ 計画保全 ◆ 教育と訓練 ◆ ロスとコストの根本原因究明と重要度ランク5.おわりにプロアクティブ経年劣化対応は、プラントの LTO に とって不可欠である。そのための保全の在るべき姿と しての有機的な階層化保全についての一考察を紹介した。連絡先: 庄子哲雄、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒 巻字青葉 6-6-1、東北大学工学研究科エネルギー安全科 学国際研究センター、未来科学技術共同研究センター 電話: 022-795-7517、e-mail: tshoji@rif.mech.tohoku.ac.jp6“ “プロアクティブ経年劣化対応と階層化保全“ “庄子 哲雄,Tetsuo SHOJI