高レイノルズ数実流校正設備による給水流量計の校正

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
原子力発電所における増出力方法のうち、MURI (Measurement uncertainty recapture)は、給水流量計の精 度を向上させることにより、熱出力を 1~1.4%程度増加 することが可能であり、特に大規模な設備の変更を伴 わない。したがって、低コストにて増出力を行うこと が可能とされるために、注目度は高く、原子力学会に おける検討等がこれまでにも行われてきている。給 水流量計測は現行、フローノズルまたはベンチュリの ような差圧式の流量計により行われており、その不確 かさは GETAB をベースに一律 1.76%とされている。 MUR は、このような現行の流量計よりも不確かさが小 さく見積もられている超音波流量計を用いて、実施す ることが想定されている。給水配管は高温高圧であることから、流量計測にお いても非常に厳しい条件であり、設置する流量計は汎 用のそれに対して特殊性が求められる。一般的な校正 設備において校正された流量計がこの給水配管の条件 においても同等の性能を示すことを期待することは難 しい。温度や圧力のパラメータに関する流量計の内径 等の幾何学的な補正や、超音波の音速に対する補正は 比較的容易である。しかしながら、流量計においては このような条件だけではなく、流動場による影響を考 慮に入れなくてはならない。これは、一般的にはレイ ノルズ数と呼ばれる無次元数によって整理される。こ のレイノルズ数が給水配管においては非常に高く、これは一般的な流量計の校正設備において校正可能なレ イノルズ数の範囲を大きく超えている。差圧式の流量 計で流量算出に使用される流出係数は、レイノルズ数 において整理されるのが一般的であるが、このレイノ ルズ数の範囲においては、実流校正が不可能であるこ とから、流出係数を外挿で求めているのが実情であっ た。このことは、MUR のために導入が検討されている 超音波流量計についても同様で、この流量計は強いレ イノルズ数特性を有することが一般的である。校正を 外挿において行う場合には、この外挿に対する不確か さを流量計の不確かさに上乗せする必要があり、MUR のような小さい不確かさを要求される場合には問題と なることが想定される。そこで、産業技術総合研究所・計量標準総合センタ - (NMIJ : National Metrology Institute of Japan) tid, Fig.1 に示されるような、高レイノルズ数実流校正設備 を構築してきた。本設備は 10'オーダーのレイノルズ 数における流量計校正を可能にしており、このような 設備は世界的に例を見ない。また、国家標準として運 営をしていることから、この設備において校正された 流量計は、国家標準にトレーサブルであるといえる。 原子力発電のように安全性に関する機器の校正におい ては、公的な機関においての流量計の校正が望ましい が、これを実現することができる設備である。 - 本報告においては、設備の概要を述べた後、実際の 超音波流量計の校正結果を紹介する。またこれらの校 正を通じた給水流量計の校正方法についての提案や問 題点を述べるものとする。2. 高レイノルズ数実流校正設備2.1 設備概要 - Fig.1 に設備の全体像を示す。本校正設備は、従来か ら存在していた液体流量(水)に関する国家標準設備 に新規の循環設備を拡張することにより構築されてい る。循環設備はヘッダー、循環ポンプ 4 台およびそれ に付随したライン、各ライン(A~D)に設置された参 照標準流量計(以下 WS : Working Standard)、試験部、 戻り管およびプルーバー等によって構成されている。試験時の運転では、並列に配置された4台の循環ポ ンプにより流れを発生させる。ポンプ1台あたりの最 大流量は 3000 m2/h であり、各ラインの合流後の最大流 量は 12000 m’h となる。また、水温は、常温から 70 °C における試験を可能としている。水温の制御は地下貯 水槽の水を低熱源とした熱交換によって行われる。高 温時の試験温度は 70+2 °C の範囲で制御が可能である が、1試験サイクルを1時間程度とした場合、+0.2 °C 程度で運転が可能となっている。なお、水温が 70 °C、 流量 12000 m2/h の条件のもと、600A 配管では最大レイ ノルズ数 1.8× 107 における運転が可能な設備となって いる。2.2 校正方法 1. 本設備における校正方法の概要を Fig.2 に示す。本設 備における流量計の校正は比較法と呼ばれる手法によ って行われる。比較法とは、参照となる流量計(ここ では WS)を使用して、下記の式により被試験流量計 の校正係数(K:Kファクタ)を算出する方法である。At0ここで、Iは流量計から出力されるパルスの数である。 流量計は一般的に流量に比例した周波数のパルス列を 発信するため、単位体積あたりに発信されるパルス数 を、上述の K ファクタと呼び、校正係数としている。 tは計測時間(s)、Qは被校正流量計設置場所における 流量値(m/s)である。流量値 Q は、下記の式により 算出される。
添え字の A~D は、各ラインを意味する。したがって、 各ラインの WS の Kファクタを使用して、流量を算出-2Overflow Head TankWsWSOverflow Head Tank Presure TankHeader CirculationPumps
ElectromagneticFlowmetersUltrasonic FlowmetersD lineU-clineBlineA lineReservoir Tank Feed Pumps Feedback LineTest SectionProver50t Weighing Tank - Circulation line50+ weighing tank feed line- Fig. 1 Overview of high Reynolds number calibration facilityReference FlowmeterD Line| K-factor:KoC LineTest Meter| K-factor : KcK-factor : KcB LineA LineA Line| K-factor:Key!! K-factor : KAHExternal TriggerJUMN PulseJUL PulseCounterlaniGateTimerCounter TOUT-.j...i.iFig.2 Schematic diagram of calibration methodすることなる。この Kファクタ値は、事前に 50t秤量 タンクおよびプルーバーシステム等を使用して、校正 された値となる。なお、WS は Fig.1 に示されるように、 上流側に電磁流量計(Krohne 社 OPTIFLUX)、下流側 に超音波流量計(同 ALTOSONI-V)を設置しているが、 基本的に超音波流量計を正の WS として使用している。校正は 10分間の計測を5回繰り返し、K ファクタの 平均値を算出する。また、この平均値の不確かさは以 下の式により算出される。U = k lance +5-3ここで、Uは包含係数 における拡張不確かさ(通 常、k-2)、UcMcは高レイノルズ数校正設備の標準不 確かさ(最大流量に対して0.038%)、dは Kファク タの標準偏差である。3.試験結果3.1 給水流量計の不確かさ要因給水流量計の不確かさについては、高レイノルズ数 校正設備において個別に校正することを前提とすると、522大きく、(i) 補正係数の決定時の要因、(ii) 校正環境と 実際の流量計の設置環境における差異による要因、(iii) 経年変化による要因に分けられると考えられる。(i) に含まれる要因は、たとえば流量計の内径計測や 電気回路等に依存する流量計自体の不確かさ要因と、 後の詳述する流動場に起因する要因になる。レイノル ズ数の外挿や上流側配管レイアウトの影響に関する不 確かさもこの中に含まれる。通常、以上の要因は個体 差が大きいと考えられる。これらの影響は、個別の校 正を行い、それぞれに校正係数を求めることにより、 この校正係数の中に含めることができる。これにより、 以上を要因とする不確かさは、校正の不確かさそのも のとなる。測定のばらつきについても、(3)式に示さ れるように、校正の不確かさに含まれることになる。 (ii) については校正時と現場設置時の差異であり、モ デルとした配管形状と実配管との異なり、配管内面粗 さによる影響、また、設置再現性や、温度による影響 (校正時は 70 °C、実プラントは 200 °C 以上)等が、 この不確かさ要因に相当する。その他、校正時と実機 で異なる条件を持つもの(例えばケーブルの長さ)は、 この中に含まれる。これらの不確かさ要因は、注意深 く抽出し、ある程度の事前試験や調査を通して把握し ておく必要がある。(iii) 経時変化については、定期点 検間に流量計を再校正することができないことを前提 に考えると、この期間に発生する可能性があるドリフ トについて、不確かさとして見込む必要がある。超音 波センサーの特性変化や内径の変化、配管内面粗さの 変化等が要因となる。この経時変化による不確かさは、 実使用後の再校正が望ましい。3.2 校正結果例ここでは、給水流量計測に使用される可能性の高い と考えられる超音波流量計(Cameron 社、Chordal 型) の高レイノルズ数校正設備を使用した校正結果例を示 す。この流量計はすでに米において多数使用されてお り、MUR が実施されている。また、原子力学会におけ る検討においても、MUR 実施に最も近い流量計である と評価されている)。 * 本節において実施される校正は、3.1 における(i) に相当する。給水流量計の校正においては、次の二点 において特に注意して校正されなくてはならない。一 点目がレイノルズ数である。レイノルズ数に関しては、 緒言において示した通りであり、本校正設備におけるTest MeterFlowA.Fig.3 Example of 3D pipe layout校正試験から、外挿に関する問題は解決される。 1 二点目は上流側条件である。一般的に流量計は上流 側の条件によって、その特性が著しく影響を受ける。 例えば上流側に曲がり管やバルブがある場合などは、 その結果として流量計設置部における流速分布が異な る。流量計は流速分布に影響を受けるものが多く、特 に超音波流量計においてはそれが顕著に発現する。し たがって、通常の流量計の使用では流量計の上流に充 分に長い直管を設置することが、一般的である。しか しながら、給水流量配管は既設であり、後から設置さ れる流量計に対して上流側の直管長さを十分に取るこ とは難しいとされる。したがって校正時に、設置され る配管レイアウトを模擬することにより、この影響を 取り去ることができる。模擬配管レイアウトの例を Fig.3 に示す。このような配管下流において試験を行う ことにより、この配管レイアウトに特化した校正係数 を得ることができる。この校正係数は、これ以外の配 管レイアウトに使用する場合には、余分な不確かさを 見積もらなくてはならないが、このレイアウトにのみ 使用するのであれば、上流側影響による不確かさは考 一慮しなくてもよい、すなわち校正係数の不確かさに含 まれることになる。前述の超音波流量計に対する校正結果例を、Fig.4, Fig.5 に示す。Fig.4 が上流に充分な直管を設置して実施 された校正結果であり、Fig.5 には、上流に実配管を模 擬した複雑な三次元形状の配管を設置した校正結果で ある(以下 3D と呼ぶ)。流量計の上流側には、整流器 (Tube bundle 型、三菱型)を取り付けた場合と、取り5230.020.015OF1 Tube bundle - 500F1 Tube bundleF1 Mitsubishi HAF1 Without flow conditioner0.010.005““xx'H)0-0.005-0.01-0.015100000100000010000000100000000Re0.0121.0% 0.8%OF2 Tube bundle - 50F3 Tube bundle - 500 HF2 Tube bundleF3 Tube bundle OF2 MitsubishiF3 Mitsubishi JA F2 without flow conditioner AF3 without flow conditioner0.006““xxx-x)0.0040.0020-0.002-0.004100000100000010000000100000000ReFig.4 Calibration result for straight pipe layout付けない場合に対して試験を行っている(結果は代表 的な例のみ掲載)。流量計は上流側から Cameron 社 External 型(F1)、Chordal 型が二台(F2,F3)の順にて 設置した。結果については Chordal 型についてのみ検証する。 直線、3D の試験ともに F2 と F3 の校正係数(Kファク タ)のレイノルズ数に対するトレンドが大きく異なる ことが分かる。明らかな個体差を示しており、個別の 校正が重要であることが分かる。レイノルズ数に対す る感度については、比較的直線的な特性曲線を示して いるため分かりにくいが、低レイノルズ数での校正値 から外挿した場合には、本試験における最大のケース で0.1%ほどの偏差が生じる可能性がある。 - 3D の校正結果においては、上流側の整流器による効 果から配管 レイアウトを変えた場合の変化は大きくは 観測されていない。しかしながら、特に F3 では、最大 レイノルズ数においては最大最少の差が 0.1%程度生 じていることからも、上流側配管を模擬した試験は必 須である。特に、上流側に整流器を設置できない場合 などは、曲がり管の影響を受けやすいので注意が必要 である。以上の校正における不確かさは、繰り返し性を考慮 して 0.081%であり、この不確かさにはレイノルズ数の0.01Flow conditioner: Mitsubish0.005@F1 Straight O F1 Pattern (a) ■F1 Pattern (b) AF1 Pattern (c) OF1 Pattern (d) O F1 Patterm (e) |(K-K2)/K-0.01-0.015-0.021.0.E+051.0.E+061.0.E+071.0.E+08Re0.01Flow conditioner : Mitsubishi3F2 Straight OF2 Pattern (a) #F2 Pattern (b) AF2 Pattern (c) OF2 Pattern (d) OF2 Pattern (e)F3 Straight F3 Pattern (a)F3 Pattern (b) AF3 Pattern (c) DF3 Pattern (d)F3 Pattern (e)0.0080.006(K-KVK0.0040.0020100-0.0021.0.E+051.0.E+061.0.E+071.0.E+08ReFig.5 Calibration result for 3D pipe payout外挿、立体配管等の上流側配管の影響、また流量計の 幾何形状や電気回路に対する不確かさも含まれること になる。4.結言- 産業技術総合研究所における高レイノルズ数校正設 備を解説し、MUR を想定した超音波流量計の不確かさ の考え方および校正結果を示した。今後の課題としては、経時変化の見積もり方の検討 があげられる。理想としては定期的な再校正により計 時変化を抑制することが望ましいが、実プラントへ設 置後に再び高レイノルズ数校正設備において校正を実 施することは実質的に難しいことから、その方法を検 討することが求められる。 参考文献 [1] 岡本, 木倉,山口,三島, 関村, 原子炉出力向上に関する技術検討評価の結果について,日本原子力学会誌, 50(12), 2009, pp.16-28 [2] General Electric BWR Thermal Analysis Basis(GETAB) : Data, Correlation and Design Application,General Electric, NEDO-10958-A, 1977 [3] Furuichi N., Terao Y., Takamoto M., A New CalibrationFacility for Water Flowrate at High Reynolds Number, Flow Measurement and Instrumentation, Vol.20, No.1, pp.38-47, 2009524“ “?高レイノルズ数実流校正設備による給水流量計の校正“ “古市 紀之,Noriyuki FURUICHI,寺尾 吉哉,Yoshiya TERAO,高本 正樹,Masaki TAKAMOTO
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