炉内目視点検向け3次元計測システム

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
原子炉内の目視検査は、モニタに表示したカメラの 映像を観察する間接目視が一般的であり、検査員は被 検査体の奥行き感を得づらい。このため、対象の深さ や高さの識別が重要なケースでは、カメラの位置を試 行錯誤で調整して被検査体の奥行き感を判断している。 また、撮影された物体の任意の長さを測定するには、 カメラの映像だけでは定量的な測定が難しいため、映 像に映っている既知寸法の機器や被検査体と一緒に撮 影したスケールなどと比較して測定している。このよ うに従来の検査方法では、作業効率や計測精度の面で 課題がある。そこで我々は、2 台のカメラを用いて 3 次元位置を 計測し、欠陥の長さから構造物間の寸法計測までを行 える 3 次元計測システムを開発している。今回、3 次 元計測システムの技術を利用して炉内機器である CRD スタブチューブの形状を計測する計測ヘッドを 開発した。本報告では、3次元計測システムの概要と、 炉内機器の CRD スタブチューブの形状計測を目的と して開発した計測ヘッドと、その試験結果について報 告する。
2.3次元計測システムの概要開発している3次元計測システムは、図1に示すよ うに2台のカメラを用いたステレオ視法を計測原理と したものである。本システムでは、距離の異なる計測に対応するため に、図中カメラ2をカメラ1に対して回転駆動させ、 カメラの光軸が計測対象で交差するようにカメラの回 転角を制御する構成とした。また、カメラの回転制御 に画像処理を適用することで、撮影距離に応じて最適 な回転角にカメラを自動制御している。具体的には、2 台のカメラの画像中心に写像された箇所を一致させる ことで回転角を制御している。これにより、カメラと 計測対象間の撮影距離を可変に使用でき、計測対象と カメラ間の撮影距離を短く配置することで撮影範囲が 狭角な欠陥の長さ計測等のマクロな計測、逆に撮影距 離を長く配置することで撮影範囲が広角な構造物間の 寸法計測等のマクロな計測が可能となる。 - なお、ステレオ視法とは、実空間における計測点 P(X,Y,Z)と、計測用のカメラの位置OR(X, Y,Z)、および、 計測点Pが写像されたカメラの画像上の位置ph(x,y)の 3 点が一直線上に並ぶとした共線条件を利用する方法で ある。ここで、カメラの位置OR(X,Y,Z)と回転角(a, , )が既知の場合、2台以上のk台のカメラ間で計測点P554、が写像された画像上の位置p((x,y)を画像処理により同 定し、この共線条件を解くことにより、計測点P(X,Y,Z) の位置が計測できる[1]。Camera 2Camera 1RotateエンWork distance- Optical axisWork positionStereo disparity- Work position Cross point of Field of viewoptical axis Fig. 1 Rotation control of cameranyO,(X1, Y,OG(xo, Yo,SMITE)VPX, Y, Z)Fig. 2Principle of stereo method適用先の一例として、原子炉内のジェットポンプ周 り(水面下 20~25m)を計測対象とし、Table 1 の仕様 の3次元計測システムを試作した。本システムは約145 ×210×145mm の計測ヘッド(Fig.3)と、計測ヘッドを制 御する制御ボックス、手動走査用の操作パネル、計測 ヘッドの外部制御や3次元位置を計測する PC で構成 される。Table 1 Specification of Measurement System Measurement | 0.5mm less or equal accuracy(W.D.=150mm) Work distance | 150~600mm (variability) Head size | 150×150×500mm less or equal本システムについては、原子炉を実形状・実寸法で 模擬した試験タンクにて性能確認試験を実施し、寸法 計測精度が仕様精度である 0.5mm以下であることを確 認している。Camera 1Camera 2with rotatingtableFig. 3Prototype of Measurement head for Jet-pump-Camera 1- Camera 2 with rotatingtableFig. 33. CRD スタブチューブ形状計測用ヘッド*炉内機器である CRD スタブチューブの溶接接合部 の形状を計測するため、3 次元計測システムの技術を ベースに Table 2 の仕様の計測ヘッドを試作した。 - 計測該当部は、Fig.4 に示した CRD スタブチューブ と CRD ハウジングを接合した上部溶接部 (J weld part)、 CRD スタブチューブと原子力圧力容器を接合した下 部溶接部(3D weld part)である。Table 2 Specification of Measurement headfor CRD stub tube Measurement 0.5mm less or equalaccuracyWork distance Head size| 200mm | 100(W) X 50(D)mm less or equal |試作した計測ヘッドは、Fig.5 に示すように2台のカ メラとカメラ間に配置した照明で構成される。3 次元 計測システムでは、カメラを回転駆動させることでカ メラと計測対象間の撮影距離を可変としていたが、本 計測ではアクセス装置を用いるために撮影距離が固定 である。そこで、カメラを固定式とし、カメラを最適 配置することにより計測ヘッドを約 50×85×35mm ま555で小型化を図った。CRD Housing- J weld part/CRD stub tube| 3D weld partNuclear Reactor Pressure Vessel(RPV) Fig. 4 Measurement partLightAccess DeviceCamera 2Camera 1Fig. 5Measurement head for CRD Stub Tube4. 計測性能確認試験- 試作した計測ヘッドの性能を評価するために、 に示す平板試験片を用いて性能確認試験を実施しFig. 6Flat test piece本試験では、実計測と同様に計測ヘッドをアクセス 装置に取り付けた状態で、試験片と計測ヘッド間の距 離をアクセス装置により変化させ、試験片までの距離 を計測した結果を基に性能を評価した。各位置で試験 片までの距離を計測した結果を Table 3 に示す。Table 3 には、各位置で計測した2回の計測結果について、計 測距離の平均値と誤差標準偏差を示している。この結 果から、各位置における計測距離の平均誤差は最大 0.1mm であり、誤差標準偏差は 0.2mm であることが確 認できる。また、計測した平板試験片の形状について、 試験片の設計形状を真値とした場合の RMS 誤差は 0.3mm であることを確認した。 -- 以上の試験結果から、本計測ヘッドが目標計測性能 ±0.5mm 以下であることを確認した。Table 3 Measurement Result 1st trial2nd trial StandardStandard MeanMean deviationdeviationTrue value152.1mm| 152.1mm0.2mm152.1mm0.2mm152.6mm | 152.6mm0.2mm | 152.5mm0.2mm14 153.1mm | 153.1mm | 0.2mm | 153.0mm | 0.2mm5. モックアップ試験開発した計測ヘッドの実機形状に対する適用性を確 認するために、実機形状を模擬した試験体を用いて計 測の可否について試験を実施した。本試験における3次元形状計測結果を Fig.7 と Fig.8 に示した。この結果から見て取れるように、CRD スタ ブチューブと CRD ハウジングとを接合した上部溶接 部(J weld part)、CRD スタブチューブと原子炉圧力容 器 (RPV)を接合した下部溶接部(3D weld part)の双 方とも溶接部の形状が計測できていることが確認できる。Fig.6 た。556もに、3 次元計測システムに関するカメラ可動式計測 ヘッドの小型化、寸法計測の高精度化を目指す。参考文献 [1] 村井俊治、“ 解析写真測量 改訂版”、(社)日本 * 写真測量学会、 1997、 pp.46-56. . [2] 佐藤美徳、“炉内目視検査における3次元計測システム”、日本非破壊検査協会、平成 21 年度春季大会 講演概要集、2009、p.109-110.Fig. 7Measurement result of I weld part10Fig. 8Measurement result of 3D weld part7.結言* 3 次元計測システムの技術をベースに、炉内機器で ある CRD スタブチューブの形状を計測する計測ヘッ」 * 3 次元計測システムの技術をベースに、炉内機器で ある CRD スタブチューブの形状を計測する計測ヘッ ドを試作した。また、開発した計測ヘッドの有効性を 確認するために、性能確認試験と実機を模擬した試験 体を用いてモックアップ試験を実施した。その結果、CRD スタブチューブと CRD ハウジング を接合した上部溶接部(Jweld part)、CRD スタブチュ ーブと原子炉圧力容器(RPV)を接合した下部溶接部 (3D weld part)の計測該当部の形状を計測可能である ことを確認した。 - 今後、原子力プラントへの実機適用を推進するととその結果、CRD スタブチューブと CRD ハウジング を接合した上部溶接部(J weld part)、CRD スタブチュ ーブと原子炉圧力容器(RPV)を接合した下部溶接部 (3D weld part)の計測該当部の形状を計測可能である ことを確認した。 今後、原子力プラントへの実機適用を推進するとと3 次元計測システムに関するカメラ可動式計測- 557 -“ “炉内目視点検向け3次元計測システム“ “相川 徹郎,Tetsuro AIKAWA,佐藤 美徳,Yoshinori SATOH,大嶽 達哉,Tatsuya OODAKE,落合 誠,Makoto OCHIAI,湯口 康弘,Yasuhiro YUGUCHI
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