減肉モニタリング用EMAT の高温耐久試験結果

公開日:
カテゴリ: 第6回
. はじめに
2009年1月より新検査制度が施行された。新検査 制度のもとでは従来と異なり状態監視技術を適用し、 そのデータを活用することが可能となり、事業者に は科学的・合理性を有する保全計画を立案すること が義務付けられた。これにより、発電所は最長 24 ヶ月までの連続運転が可能となった。本制度に伴い、 静的機器の状態監視技術として、電磁超音波探触子(EMAT)を用いた配管減肉モニタリングの研究開 発が行われている。従来の研究成果では、配管の減 肉測定は可能であるが、その耐久性については磁石 の初期減磁特性が把握できる約 200 時間までの耐久 性[1]は確認されているものの、プラント運転期間利 用できる耐久性は確認されていない。そこで、本研究では、EMAT を約2年間 200°Cの 高温環境下で測定し、その高温耐久性を確認するも のである。
2. 試験内容
2.1試験体系試験体系を Fig.1 に示す。EMAT は、恒温槽内に 試験片と共に挿入し、ケーブルのみ恒温槽外に出す。 巨絡先:田川 明広、〒919-1279 福井県敦賀市白木丁目、独立行政法人日本原子力研究開発機構 FBR プラント工学研究センターナトリウム技術グループ EL. 0770-39-1031、tagawa.akihiro@jaea.go.jp受信データは、ダイプレクサ、プリアンプ、オシロ| スコープで AD 変換して PC に取り込む。恒温槽は PID 制御により 200°C/hr で昇温できる。Signal InPriamp.Burst wave generatorHigh Power OutOvenignalTrigger OutDiplexerEMATFilterOscilloscopeSpecimen|PCFig.1 試験体系」2.2センサ仕様Fig.2 にセンサ仕様を記す。磁石は、高温で使用実 績[2]のあるサマリウムコバルト(W10×L2.4×T7mm) 4個配列を2組作成した。これをS極 N 極が対向す る向きに配置する。コイルは、インピーダンスマッ チングを考慮した (00.2mm×60 巻きを採用し、超音波 発振部として 30×40mm 以内の小型センサを試作した。Smartmcartmagnet (mA)(602mのターン」Fig.2 試作センサ外形図2.3試験条件試験は、常温試験と高温試験に分けて実施する。 常温試験、高温試験に共通の条件を Table 1 に示す。 式験片板厚は、公称 10mm であるが、マイクロメー タを用いて実測したところ 9.99mm であった。Table1 共通試験条件 周波数(MHz)2.0 バースト波数12 バンドパスフィルタ(MHz) 0.25~5. 装置 Gain(dB)134 プリアンプ Gain(dB)40 試驗片材質SUS304 試験片寸法(mm)70×100 試驗片板厚 (公称値)10.0 (mm) (実測値)9.99温度:常温(20°C)、200°C 則定目標:約2年(17520 時間(経過時間)) 則定期間:2007年7月 12 日~2009年7月 12 日※ ※本報告は、2009年6月1日現在(16512 時間)2.4試験方法 (1)板厚測定方法 1パルスエコー法(以下、PE 法: Pulse echo method)超音波が鋼材中を伝播し、多重反射する時 間差を利用する。板厚は、(1) 式の通り計算で きる。 T - VP-1 -,)_vAt-1T: Thickness (mm)、t: Time (us)v: Velocity (mm/s) 2パルスエコー共振法(以下、PER 法: Pulse echo resonance method)受信した超音波を周波数解析し、共振周波 数を求めることで板厚に変換する。このとき、 板厚は、(2)式[3]の通り計算できる。電磁超音 波共鳴法[3]の原理は、送信周波数を掃引し、 共鳴スペクトルを変化させ個々の周波数の振 幅を検出することに対し、本研究では特定の 周波数を送信し、周波数解析により受信波形 の共振周波数を検出するため、「パルスエコー共振法」と言う。共振法」と言う。n: Number of resonance, f: Frequency (Hz) 2)高温試験時の熱膨張200°Cでは熱膨張することから、試験片の熱膨 張を考慮した測定が必要となる。ここで、a は 線膨張係数、Lは常温(RT)での試験片板厚、AT は常温と高温(HT)の温度差とすると。熱膨張後 の板厚は、(3)式の通りとなる。Lur = Lxr + a LxrAT (3) ここで、a=17.3× 10 [1/°C] [4]、L=9.99 [mm]、 AT-180 [°C](常温 20°C)より、AL を求める とAL=0.031 [mm] となり、200°Cでの板厚は、 10.02mm となる。3.試験結果3.1常温試験常温試験結果をFig.3、Fig.4 に記す。矢印部が底面からの反射に相当する信号と共振 周波数である。1000101)10Fig.3 エコー波形(矢印は、底面反射代表部)Frequency bt!Fig.4 受信波の周波数解析結果(矢印は、共振周波数代表部) Fig.3、Fig.4 には、磁石からの反射波も含まれ る。磁石の板厚、音速は試験片とは異なるため571試験片信号と重ならないが、温度変化による音 速変化や減肉の進展により波が打ち消しあう場 合も考えられる。磁石成分をカットするフィル タ処理を行った。フィルタは、磁石の音速を(4) 式で、反射波の共振ピークを高速フーリエ変換 (FFT)で求め、磁石に該当する周波数成分を除去 したあとで、逆 FFT 変換するものである。磁石 信号カット前後の比較を Fig.5、Fig6 で行う。MagnetAmplitude(V)-4910.4time u sec)Fig.5 磁石信号カット前のエコー波形(45usec 5 = 5 55usec)Amplitude(V)timel u sec)Fig.6 磁石信号カット後のエコー波形(45usec から 55usec) 46usec 近辺と 52.5usec 近辺に試験片からの反射 波が確認でき、フィルタ処理前には 50~51usec(丸 部)に磁石からの反射波が確認できる。磁石から の反射で得られる共振周波数を除去するため、フ ィルタ後の試験片からの反射波の信号レベルは約 50%程度に低下する。しかし、信号ノイズ比(SN 比)を比較すると、フィルタ処理前は、SN 比が 1.47~1.62 であるが、フィルタ後は、2.3~2.65 と 1.5倍以上改善された。なお、磁石の音速は文献等に記載がないことか ら、別試験で確認し、(4)式の関係にあることを確 認している。本研究での磁石音速は(4)式を利用し て求めることとした。v = -0.173Te + 2578.96 (4) v: Velocity (m/sec) Te : Temperature (°C) (常温 (20°C): 2575.5m/sec 高温 (200°C): 2544.4m/sec を利用)また、試験片(SUS304)音速も正確に把握するに は試験片毎の音速測定が必要であるため、事前に 音速を測定した。常温(20°C)で 3126m/sec、高温 (200°C)で 3015m/sec であったので、本研究では、 この音速を利用する。Table2 は、PE 法による板厚測定結果である。 9.99mm の実測値に対し測定値の平均値は 10.00mmH0.04mm であった。Table3 は、PER 法に よる板厚測定結果である。測定値の平均値は 9.99mm±0.01mm と PER 法の測定精度は PE 法に 比べ高いことが確認できた。 1. 磁石ノイズを除去することで、ピーク判別も容 易になった。Table 2 PE 法による板厚測定結果(常温 20°C)56Pulse number Peak time AT Tickness [time] [usec] | [usec] | [mm]33.12 39.52 6.40 10.00 45.96 6.4410.07 18 52.32 16.369.94 958.72 6.40 10.00 1065.12 6.40 | 10.00 1171.52 6.40 | 10.00 1277.92 6.40 10.00 13 84.28 6.369.94 90.68 | 6.40 10.00 1597.08 6.40 10.00 Average6.40 10.00 Standard deviation0.02 0.04114Table 3 PER法による板厚測定結果(常温 20°C)9111Resonance Freq. Resonance number [kHz][time] 1409.7 1564.710 1719.7 1879.612 2029.6 2194.614 2349.515 Average Standard deviationThick ness[mm] 9.98 9.99 10.00 9.98 10.01 9.97 9.98 9.99 0.01133.2高温試験 1熱履歴原子炉の連続運転を模擬するために 200°Cの高1901/07/25温環境を保つため、試験施設のメンテナンス等で 電源を落とさなければならない場合以外は、常に 高温を維持した。ただし、測定は1日に1回程度 とし、センサへの通電は測定時のみとした。これ は、配管減肉は時間オーダーで進展するものでは ないため、1日に1回の測定で十分であると考え る。Fig7 に高温試験の熱履歴を示す。使用時間は、 試験開始からの経過時間で評価し、高温耐久性は、 センサが高温である時間を高温時間とし評価する。 熱履歴のみ経過時間で表記し、Fig.8~Fig.14 の時 間は高温時間で表記する。センサにかかる、熱応 力制御は行っていないが、昇温は 200°C/hr で上昇 させており、7 回/2 年の昇温、降温を行っている ことから、繰り返し熱疲労の影響も観察できる。30016564 (14896)Temperature (°C)10_30001916/06/049000 Time (hour)120001500018000Fig.7 高温試験熱履歴(経過時間 16564 時間、高温時間14896時間 2009/6/1 現在) 2試験結果Fig.8~Fig.11 に高温試験結果を示す。受信波形は、 常温同様、磁石信号除去のフィルタ処理を行った。 高温時間 14896 時間経過後も底面からの多重反射が はっきりと確認できる。Fig.12 は、高温時間 14896 時間後の周波数解析結 果であるが一部磁石ではないノイズが確認されるが、 共振周波数ははっきりと区別可能である。次に、Tablel に PE 法による板厚測定結果を Table2 に PER 法による板厚測定結果を示す。PE 法は、熱 膨張を考慮した板厚 10.02mm に対し、10.0440.05mm、 PER 法は、10.020.01mm と常温同様に PER 法の測 定精度が PE 法より高いことがわかった。また、こ のことから、高温状態で約 15000 時間経過後も高精 度で測定可能であることがわかった。Fig.13 は、磁石信号除去のフィルタ処理を実施し ていない周波数解析結果であるが、高温では、磁石 信号が大きくなり試験片の多重反射信号と干渉することが確認されたことから、フィルタ処理や磁石高 さを被検体に合わせた最適化する設計は必要である。antonおっasuraisuawesometherはがすのはまさmmeTraiwa) Fig.8 200°C,0 時間の受信波形rese-decoreadedArtetitude.10““HermouldFig.9 200°C, 1032 時間後の受信波形白部門Marmorememommeral.compermati onlarsemoresurl.commermanumblromismalemored109120240Time UTESFig.10 200°C, 10048 時間後の受信波形TinatusFig.11 200°C, 14896 時間後の受信波形thermedernalhoumericturbesome-leuropend190000025000 0Frequency theFig.12 200°C, 14896時間後の周波数解析結果(矢印は、共振周波数代表部)573Table 4 PE 法による板厚測定結果(高温 200°C)4810019Pulse number Peak time | AT | Tickness [time] | [usec] | [usec] | [mm]34.67 41.36 6.6910.09 6.64 10.01 54.64 6.64 10.01 61.28 6.6410.01 67.96 6.68 10.07 1174.63 6.67 10.06 12 81.28 6.6510.02 1387.92 6.64 10.01 94.52 6.609.95 15101.24 6.72 10.13 Average6.66 10.04 Standard deviation0.030.0510Table 5 PER 法による板厚測定結果(高温 200°C) Resonance Freq. Resonance number Thick ness [kHz][time][mm] 1354.71910.02 1504.71010.02 1654.6610.02 1804.641210.02 1954.61310.03 2104.581410.03 2254.54910.03 Average10.02 Standard deviation0.0115MagnetPerverFrepsy It HeiFig.13 200°C, 14896 時間後の周波数解析結果(磁石フィルタなし) Fig.14 は、受信感度と時間の関係である。高温で は、常温に比べばらつきは大きいものの、平均約 20% の感度低下が見られた。 * しかし、時間経過とともに受信感度が減少する傾 向もないことから、経過時間で 16564 時間、高温時 間で 14896 時間の耐久性を有することを確認した。 外挿すると、目標とする経過時間 17520 時間(2年) を達成できる見通しがあると判断する。Amplitude (V)0.6? High Temp. - Room Temp0.42000400010000112000140006000 8000Time (hour)Fig.14 受信感度と時間の関係 (経過時間 16564 時間、高温時間 14896 時間2009/6/1 現在)4. まとめ試作した EMAT に対し、200°Cの高温環境下で約2 年間の耐熱・耐久試験を実施し、その性能を確認し た。試験の結果、約15000 時間後も著しい感度低下 は確認されず、必要な板厚測定精度を維持できた。 測定精度は、PE 法に比べ PER 法の方がよいことが 確認できた。しかし、磁石ノイズは高温では高くな ることからフィルタが必要であることがわかった。EMAT は、コイルと磁石の組み合わせというシン プルな構造であることから、耐久性という観点での 個体差は発生しにくい。このことから、EMAT は、 プラント配管の減肉モニタリングに適用できる耐久 性を有しているといえる。参考文献[1] A. TAGAWA, et al., “ Investigation of the On-line Monitoring Sensor for a Pipe Wall Thinning with High Accuracy““, E-Journal of Advance Maintenance Vol.1 (2009) p.52 - p.62 [2] Y. XU, et al., “Characterization of SH Wave Electromagnetic Acoustic Transducer (EMAT) at Elevated Temperature, in Recent Advances in Nondestructive Evaluation Techniques for Material Science and Industries”, ASME/JSME Pressure Vessels and Piping Conference, PVP-Vol.484, pp.177-184(2004) [3]M. HIRAO, et al., “Electromagnetic acoustic resonance and materials characterization”, Ultrasonics, Vol. 35, No.6, pp. 413-421(1997) [4]ステンレス協会, ステンレス鋼便覧, pp.430-431574“ “?減肉モニタリング用 EMAT の高温耐久試験結果“ “田川 明広,Akihiro TAGAWA,藤木 一成,Kazunari FUJIKI
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)