東北電力の原子力発電所における配管肉厚管理の概要

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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
配管減肉は、プラントの安全・安定運転に大きな影 響を与える経年劣化事象であり、その適切な管理は各 事業者共通の課題となっている。東北電力においては、平成 18年に女川原子力発電所 2 号機高圧第 2 給水加熱器ベント配管で、液滴衝撃エ ロージョンが原因と推定される貫通穴が発生したこと を契機に、配管肉厚管理の大幅な見直しを実施すると ともに、管理の効率化に向けた取り組みを行っている。本報告は、東北電力の配管肉厚管理におけるこうし た取組みを紹介するものである。2.女川2号機における配管貫通穴の発生
2.1 高圧第2給水加熱器ベント配管の減肉 * 定格熱出力一定運転中の女川 2 号機において、平成 18年5月、高圧第2給水加熱器から復水器につながる 配管の曲管部に貫通穴があることが確認された。さら に、その際に取替えた新品の当該配管に再びほぼ同じ 形状の貫通穴が確認された。 * 調査の結果、貫通穴発生の原因は液滴衝撃エロージ ョンによる減肉と推定されるとともに、急激に減肉が 進んだ原因は、女川 2 号機の高圧給水加熱器に特有な 内部形状に起因することが判明した。 1 高圧給水加熱器は、熱交換効率を維持するために非
図2 配管内面の状況凝縮性ガスを復水器に常時排出する必要があるため、 加熱器内部には、主に上部に多数の穴(ベント穴)を 持つ器内ベント管が加熱器中心付近に伝熱管群に並行ベントホール様図3 器内ベント管先端中心のベント穴(ベントホール)おいおいおい、マドン図5貫通穴が発生 図4 器内ベント管への凝縮水の流入配管であり、エ に設置されており、器内ベント管は器外に出て復水器 と接続されている。しかしながら、 女川2号機の高圧 給水加熱器特有の構造として、器内ベント管の先端中 心にもベント穴(ベントホール)が設けられており、 モックアップ試験等の詳細調査によって、こうした構 造の場合、スケール等の堆積により高圧給水加熱器内 部の水捌けが悪化すると、ベントホール周辺の水位が 上昇し、器内ベント管に凝縮水が流入しやすくなるこ とが明らかとなった。 * 一方、器内ベント管に持ち込まれた凝縮水は、器外 配管へと導かれ、オリフィスを通過する際に高速の蒸 気の流れに乗るため、持ち込み凝縮水量の増大に伴い、 大量の液滴がエルボ部に衝突することとなり、液滴衝 撃エロージョンが急激に進行して貫通穴が発生したも のと推定された。 - この対策として、ベントホールを閉止して器内ベン ト管への凝縮水の流入を防止するとともに、オリフィ スを復水器内に移設し、ベント配管の流速を低減させ ることとした。スる2.2 配管貫通穴の発生に対する社会的影響 * 本事象を受け、原子力安全・保安院より配管肉厚管 理の再徹底および改善を行う旨の指示を受けるともに、 地元自治体からも同様の要請を受けた。: エルボ部への液滴の衝突貫通穴が発生した当該箇所は、復水器に繋がる負圧 配管であり、エロージョンによる穴あきが発生しても 内部流体が配管外へ流出することはなかったが、原子 力発電所の配管に穴あきが発生したという事実に対す る社会的反応は非常に大きいものであった。3. 配管肉厚管理の見直し3.1 配管肉厚管理の見直し 当社は本事象の発生を重く受け止め、配管肉厚管理3. 配管肉厚管理の見直し3.1 配管肉厚管理の見直し - 当社は本事象の発生を重く受け止め、配管肉厚管理 の大幅な見直しを行った。 - まず、環境条件等により減肉が顕著に発生すると予 想される箇所については、計画を前倒しして未点検箇 所の点検を実施したほか、それまで最大 10年としてい た点検周期を最大5年とし、データの蓄積を図ってい くこととした。また、その他の減肉の発生する可能性が低い箇所に ついても、これまで許容していたサンプリング点検を 廃止し、プラントの運転開始後約 15 年を経過するまで に全数点検を行うこととした。3.2 管理見直しの影響 ・ こうした管理の見直しに伴い、最近の定検において は 1 定検あたり約 2,000 箇所以上の配管肉厚測定を行 わなければならず、関係者の負荷の大きな状況が続く と同時に、定検工程に大きな影響を与えている。-576表1 最近の定検における配管肉厚測定箇所数り当社女川 2 号機のタービン系配管において1サイク ルのデータ採取を実施した。今後そのデータを詳細に 分析することとしている。定検測定箇所数女川118回 (2008)約2,700女川210回(2009)約3,2005.結言女川35回 (2008-2009)2回 (2008)約1,800 約1,700東通1東北電力の原子力発電所における配管肉厚管理の見 直しおよび効率化に向けた取組みについて紹介した。測定箇所数、 約2,700定検 女川1 | 18回 (2008) 女川2 10回 (2009) 女川3 | 5回 (2008-2009) 東通1 | 2回 (2008)約3,200約1,800 約1,700配管肉厚管理の効率化に向けた取組み44.1 -.1 関係会社との連携強化および配管肉厚管理システムの導入 膨大な数の配管肉厚測定およびその管理の確実な実 に向け、人的資源のさらなる投入による負荷の分散、 関係会社との連携強化 当社関係会社である東北発電工業(株)女川支社内に 4.1 関然気化とリモ防返しのGUCEAF管理システムの導入 膨大な数の配管肉厚測定およびその管理の確実な実 施に向け、人的資源のさらなる投入による負荷の分散、 およびデータ取り扱い時のヒューマンエラーの防止を 目的として次の取組みを行った。 1関係会社との連携強化当社関係会社である東北発電工業(株)女川支社内に プラント保全に関わる専門の課を設置して当社社 員を出向させるなどしてその連携を深めるととも に、企業グループ一体となった技術力向上を目指し て、これまでプラントメーカーへ発注してきた配管 肉厚管理に係る業務を一部移行した。 2配管肉厚管理システムの導入現場測定データを測定機器からサーバーへ直接取 り込むことが可能な、データベース機能を持っ配管 肉厚管理システムを導入した。センサー電極4.2 オンライン配管減肉監視装置の実機適用性検証 - 現在の配管肉厚測定は超音波による厚さ測定(UT) を基本としている。しかしながら、UT 作業に当たって は、その準備作業として足場および保温材の設置やそ の撤去が必要であり、こうした作業が一連の配管肉厚 測定作業中での大きな負荷となっている。加えて現在 の UT では、測定者が測定対象配管に接近する必要が あり、運転時における配管肉厚測定が実施できない。 * 電位差法を用いた配管減肉監視装置(FSM: Field東北電力の原子力発電所における配管肉厚管理の見 こしおよび効率化に向けた取組みについて紹介した。データ収集装置端子箱- 577 -“ “東北電力の原子力発電所における配管肉厚管理の概要“ “秋葉 真司,Shinji AKIBA,丹治 和宏,Kazuhiro TANJI,河上 晃,Akira KAWAKAMI
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