海塩粒子腐食に及ぼす環境因子の影響(3)

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カテゴリ: 第6回
1.緒言
我が国の原子力施設を含む多くの施設は、沿岸に立 地し、経年劣化の観点からは海塩粒子腐食解決が課題 の一つである。海塩粒子などの環境汚染因子による構 造物腐食は、供試体の性状、環境汚染因子、気象因子、 暴露時間および暴露環境などによって大きく異なり、 この事象の解明のため多数の暴露試験が実施され、局 地的な腐食状況の把握に努めている。言い換えると海 塩粒子などの環境汚染因子による腐食は、特定の地域、 特定の時期・期間に限定されたものであり、普遍化が 困難であると考えられている。日本海沿岸地域におけ る施設で用いられる主要構造部材を対象に、あわら市 海浜地区(海岸線より 300m 以内)と福井市(準沿岸 地域、海岸線より 2km 以上、20km 以内)における海 塩粒子飛来量と気象因子との関係評価を実施している。 風速、降雨量、日照時間などと海塩粒子飛来量との相 関を把握するため、多変量解析を行ったが、明確な関 係が見出された。
2. 試験方法大気暴露試験装置をあわら海岸(海浜地区)及び福 井市街地に設置した。海浜地区では、開放暴露試験の 他に、4 種の遮へい暴露試験装置を設置している。一 つ目は、開口部にフィルターを有しない暴露装置、2 つ目は、開口部にガラリを有する装置、3 つ目は開口 部にフィルターを有し、そのフィルターを1カ月毎に 取替えている暴露装置(以下「フィルター取替有”と いう)、最後が、開口部にフィルターを有しているが、 その取替が 1年毎である暴露装置(以下「フィルター 取替無”という)である。開口部は海岸線と平行に 2 箇所(前面と後面)に設けている。フィルターは新菱 冷熱「平型フィルター」を用いた。また、福井市街 (準 沿岸地区)には、開放暴露試験装置を設置した。3.試験結果及び結果の評価- Fig.1 に、2007年 12 月から 2008年 12 月までの海塩 粒子飛来量の季節変動を示す。同図には、海浜地区 4 種、準市街地1種、計5種の試験結果を記している。 No.1 は、フィルター無し遮へい暴露条件を、No.2 は、 フィルター取替無し暴露条件を、No.3 は、フィルター 取替有り暴露条件を、No.4 は、ガラリ有り暴露条件を、587Sea Salt Aerosol amountsNaCl(mg/m2/day)...No.2NO.3 No.5 12~5 5~7 ~8 ~9 ~10 ~11 ~12Month (Dec.2007 --Dec.2008) Fig. 1 Sea Salt Aerosol Amount at Various Cond.No.5 は、準沿岸地区、開放暴露条件を示す。同図から 明らかなように、海浜地区における海塩粒子飛来量は 冬季に多く、夏季に少ないという傾向を示す。また、 選定したフィルターの海塩粒子除去効果は大きい事及 びガラリにも、海塩粒子除去効果が期待できるという 事が判明した。Sheltered Exposure TestResults with Filter (Periodical Replace)Sea Salt Aerosol Amounts NaCl(lep: ztu du)Sheltered Exposuke Test Results with Filter (manPeriodical Replace)Filter Replacement11231011 124 5 6 7 8 9 Month (Jan. --Dec.2008)Fig.2 Comparison between Periodical Filter Replace andNon-ReplacementFig.2 にフィルター取替を1年間行わなかったものと、 1か月毎にフィルターを取り換えたものの比較を示す。 同図に見られるように、2008年6月に双方の装置のフ ィルターを取替、その後、1 か月毎にフィルターを取 り換えた暴露装置(フィルター取替有り)の海塩粒子 飛来量を破線で、1 年間フィルターを取り換えなかっ たもの(フィルター取替無し)の海塩粒子飛来量を実 線で示している。取替後4か月程度は、フィルター取 替有りの海塩粒子飛来量は、フィルター取替無しの海 塩粒子飛来量を下まわり、フィルター取替を行わない とフィルターの海塩粒子除去性能が劣化することを示している。ところが、フィルターを取替ないまま、5 か月が経過すると、フィルター取替無しの海塩粒子飛 来量が、フィルター取替有りのそれを下まわる。これ は、フィルター取替なしのフィルターが物理的に目詰 まりしたものと考えられる。2008年 12 月時点でのフ ィルター通過風量は、フィルター取替有りが、フィル ター取替無しの 10倍程度を示している。■CalculatedMeasuredAmounts day)CalculatedMeasuredSea Salt Aerosol Amounts(Nacl:mg/m2/day)20 8 6 4 2 0246Sample No. Fig.3 Comparison between Calculation andMeasurementFig.3 に、説明変数を風速、降雨量、気温、日照時間 とし、目的変数を海塩粒子量飛来量とした時の多変量 解析結果と実際の測定結果の比較を示すが、両者は良 く一致している。この事は、説明変数である諸量を測 定すると、海塩粒子飛来量が推定し得ることを示して いる。 4.結言1) 海塩粒子飛来量は、冬季に多く、夏期に少ない傾 向を示す。 2)選定したフィルターの海塩粒子除去性能を維持す るためには、定期的取替 (4 か月もしくは、集積海塩 粒子飛来量 520mg/m2程度)が必要である。 3) ガラリの使用も、海塩粒子除去には、それなりの 効果がある。 4)多変量解析によって、降雨量、気温、日照時間及 び風速との間に明確な相違があることが判り、これら を測定すると、海塩粒子飛来量が推定できる可能性が あることが判明した。参考文献1) 中安文男他 日本保全学会第5回学術講演会要旨集' 2008,307588“ “海塩粒子腐食に及ぼす環境因子の影響(3)“ “中安 文男,Fumio NAKAYASU,梅原 敏宏,Toshihiro UMEHARA,加藤 晃敏,Akitoshi KATO,谷口 彰英,Akihide TANIGUCHI
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