可搬型X バンドライナックX 線源によるベアリングマクロ損傷観察試験
公開日:
カテゴリ: 第6回
1. 緒言
原子力発電所などにおける状態監視保全の重要性が 高まっている昨今の事情を鑑みて、我々は X-band の可 般型 Linac を用いたX線源の開発を行っている。我々 は、昨年レーザーを用いた同期回路と送風機を用いて 回転機を静止させることなくX線撮像を行い、静止画 象を取得することができた。 さらなる性能評価のため、 X線による識別能・解像度評価試験、玉軸受けと電磁 センサーを使用した転動体に同期した画像取得を行っ た。また、実際に発電所で使用され損傷があるベアリ ングのX線撮像試験も行った。本発表では、各種試験結果と今後の課題について報 告する。
2. X-band Linac 概略 2.1 システム概略
装置は茨城県東海村にある東京大学大学院工学系研 究科原子力専攻内のブランケット棟医療用小型来ナッ ク室に設置されている。最大電子ビームエネルギー950 sey 、加速周波数 9.4 GHz の X-band 帯を用いた小型 Linac によるX線源である[1][2]。Fig.1 に試験体系の加 東管側写真を示す。
X-band Linace-beamSX-ray ConverterFigl Experimental Setup (Linac side) 2.2 高周波源の開発 * 本装置は高周波源として汎用性の高いレーダー用の マグネトロンを採用している。出力は 250 kW 程度と 比較的低出力のため、電源などが小型化でき我々の装 置のコンセプトである「可搬型」に適しているもので あると言える。しかし、一般的にマグネトロンは自励 発振器であるため、周波数が不安定になりやすい。通 常の Linac であればクライストロンと呼ばれる速度変 調管を使用し、高出力・高効率・高安定度を実現して いる。しかし、通常のクライストロンは高出力のため、 高価・大型である。よって、このような可搬型加速器には不向きである。そこで、小型かつ安定な高周波源として低電圧の熱 陰極を複数使用することで電源などを小型にできるマ ルチビームクライストロン(Multi-Beam Klystron, MBK) の設計を開始した。マルチビームクライストロンはそ の名のとおり、複数のビームにより高周波を誘起させ るクライストロンである[3]。複数のビームは複数の電 子銃と空洞により速度変調され高周波を誘起できる。 これにより通常のクライストロンに比べて初期電圧が 低く安定な高周波源とすることができる。Table.1 にマ グネトロン・クライストロン・マルチビームクライス トロンの比較表を示す。Table.1 Comparison of 3 RF SourcesMagnetron Klystron MBK | Type | Self-excited Velocity VelocityModulated Modulated Cathode 1 |Multi Voltage Low HighLow Stability UnstableStableStable Power LowHigh Low-High Size SmallBigSmall 現在、高エネルギー加速器研究機構の RF グループ の協力を得て、出力2MW 程度のマルチビームクライ ストロンの設計を開始した。出力2 MW 程度であれば 最大電子エネルギー4 MeV 程度の Linac に適用できる ため、将来的に高エネルギーX 線非破壊検査装置への 適用が期待できる。ビーム計算は MAGIC と呼ばれる2 次元 PIC コードを使用している。今現在は空洞の最適 化ならびに 3 次元構造の設計を行っている。Fig.2 に MAGIC による空洞計算の1例を示す。Output Cavity Energy DecreaseRF Power IncreaseBeam Direction Beam Bunch Fig.2 Klystron Beam Simulation by MAGIC3.X線撮像実験」3.1 識別能評価試験 X 線透過装置の性能として識別能は重要である。識別能はある厚さ 1の試験体に JIS Z2306規格で定められ た Hole 透過度計の厚さとの比として評価した。このと き識別能DはD-1で表される。測定は鉄製の試験体の厚さtを変化させ、 透過度計のホールが視認できる最薄の透過度計厚さ t。 を測定するという方法で行った。試験体系を Fig.3 に示 す。試験体厚さは同じ厚さの鉄板を重ね合わせること で変化させた。また1枚目には JIS Z2306 規格の Hole 透過度計を貼り付け、フラットパネルディテクターで 取得した画像上で Hole が視認できるもっとも薄い透 過度計厚さを測定した。SampleX-rayWEBType PenetranteFig.3 Experimental Setup of Discrimination Ability 試験結果を Fig.4 に示す。この結果の通り、試験体厚 さが 17 mm 程度のとき3%程度の識別能をもつことが 分かる。よって、17 mm の鉄板に対して 500 um 程度が 識別できることになる。これより薄い場合X線透過力 が大きく、識別能が下がると考えられる。しかし、厚 くなった場合でも識別能が下がっている。通常であれ ば、高エネルギー側のX線のみが検出器に検出される ため、識別能が上がってもいいはずである。しかし、 検出器の感度が高エネルギー側にないので識別能が下 がったと考えられる。0.080.0717mm 13%Discrimination Abilityy = 0,0002x - 0.0081x + 0.099|R2 = 0,98470.01015253010 15 20 Fe Plate Thickness [mm]Fig.4 Discrimination Ability 3.2 分解能試験 *ベアリングの損傷を評価するためには、損傷の厚さ方691向情報だけでなく、1つ1つを明確に区別できるとい う情報も必要である。そのため、分解能の評価を Fig.5 に示すX線チャートを用いて行った。X線チャートは 鉛製で JIS Z4917 規格のものであり、スリットの大きさ とスリット間隔が等しく作られており、その大きさが 変化しているものである。Fig.5 X-ray Chart 分解能 R [LP/mm]はスリット間隔 d[mm]を用いるとR=1R%3D12d-2で表される。分解能の評価は Fig.6 のような試験体系で 行い、チャートと検出器の距離を変化させることで分 解能変化を測定した。Change DistanceX-rayFig. 6 Experimental Setup of Resolution 試験結果の一例としてチャートと検出器の距離を 100 mm としたものを Fig.7 に示す。Fig.7 はX線透過 画像から画像コントラストのデータをスリットの変化 に合わせて取得し、そのコントラスト強度変化をグラ フにしたものである。Line Pair の数字が大きくなるほ どつまりスリット間隔が小さくなるほど、コントラ トの差がなくなり、スリットの区別が難しくなってい ることが分かる。25&ontrast230alRI21019017015011b(0)130(R)102, 032.50104.05.03 Pixel10.5110OLP/mm) 1102004 00800800MTF - a(R)-b(R).(3) a(0)-B(0)Fig.7 Result of 100 mm Data さらに、分解能を評価する指標としてレスポンス関 数である MTF (Modulation Transfer Function)を導入する。 これはX線チャートを用いて Line Pair (LP)が視認する 方法により求めることができる。MTFはMTE - a(R)-b(R).-3a(0)-B(0)で表される。これは、0 [LP/mm]のコントラスト差を基 準に R[LP/mm]のコントラスト差の比を取ったもので ある。Fig,7 の結果を用いて各 Line Pair に対して MTF を計算し、グラフ化したものが Fig,8 である。この結果 から試験対象物と検出器が 100 mm 離れている際での 分解能 R は 2.5~3.0 [LP/mm]程度であるとわかる。これ を(2)からスリット幅を求めると 166~200 um 程度の分 解能を有することになる。分解能を上げるため、現在 X線コリメータを挿入して試験を行っている。TEResolution Limit23Line Pair (LP/mm]Fig.8MTF of 100 mm Data3.3 X線リアルタイム撮影試験 * 昨年度の日本保全学会の研究において、我々は可搬 型 Linac と同期回路による回転機のリアルタイム撮影 で静止画像が取得できるという原理実証を行った[4]。 これまでの実証試験においては試験体として PC ファ ン・送風機を採用したが、今回の実験においては実際 に使われている玉軸受けを使用する。玉軸受けは内輪701と転動体の回転数が違うため、どちらに同期させたい かによって方法が異なる。内輪に同期させる場合であ れば従来の方式であるレーザー光を用いた手法で十分 である。しかし、転動体に同期させる場合は転動体の 公転周期に合わせる必要がある。そのために IIU で開 発された「電磁郎」で採用されている電磁センサーを 使用して同期信号を取得し、X 線同期画像撮影を行っ た。試験体系をFig.9 に結果を Fig.10 に示す。 転動体を 区別できるが、若干のジッターが存在し、転動体輪郭 部がぼやけている。このジッターを軽減するための同 期信号取得法を検討する必要がある。Flat Panel DetectorControllerEl SensorMotorX-rayFig.9 Real-Time Imaging Setup using EM SensorStopNot Sync.Sync.Fig. 10 Results of Real-Time Imaging3.4 損傷ベアリング撮像試験中部電力株式会社からお借りした損傷ベアリングを X線により撮像した。ベアリング厚さは 120 mm 程度 であり、損傷部分深さはおよそ 500 um であった。 X線 透過画像の目印として鉛製のX線フィルムマーカーを 傷の存在部分の近傍に貼り付けた。Fig.11 に試験結果 を示す。損傷の形状までは明確に確認できないが、損 傷位置などは把握することができる。X-ray Film MarkerFig. 11 X-ray Image of Bearing Damage14. 結言1) 小型加速器を用いた X 線非破壊検査装置の開発を行っている。 2) Linac の安定性向上のために、マルチビームクライストロンの設計を行っている。 3) 装置性能評価として識別能・分解能評価を行い、鉄板 17 mm に対し識別能3%、検査体と検出器間距離 100 mmで分解能166~200 umであることがわかった。 さらなる性能向上のために X 線コリメータやビー ム起動の最適化を行っている。 4) ベアリングの転動体に同期させた画像取得に成功したジッターの軽減が課題となる。 5) 実際に発電所で使用され、損傷したベアリングの内輪傷の撮影に成功した。 6) 将来的には AE や振動法などとともに相互補完しな がら状態監視保全へ役立てていきたい。謝辞本研究を進めるにあたり、高周波源開発は高エネル ギー加速器研究機構の福田茂樹教授、松本修二助教、 吉田光宏助教のご協力を得て行っている。また、ベア リング試験においてトライボテックス株式会社・中部 電力株式会社から試験体の貸与を受け多大なご協力を 頂いた。リアルタイム撮影用同期信号取得機器として 株式会社 IIU で開発されている「電磁郎」に使用され ている電磁センサーを利用させていただいた。この場 を借りて厚く御礼申し上げる。参考文献[1] 山本智彦、夏井拓也他、“オンサイト非破壊評価用可搬型 950 keVX バンドライナックの開発““、 日本 保全学会第4回学術講演会 産学協同セッション、福井、2007、産学 06 [2] 夏井拓也、山本智彦他、“オンサイト非破壊検査用可搬型 950keVX バンドライナックX線源”、 日本 保全学会第5回学術講演会 産学協同セッション、茨城、2008 [3] A. Larionov, V. Teryaev et al., “Design of Multi-Beam“ “可搬型 X バンドライナック X 線源によるベアリングマクロ損傷観察試験“ “山本 智彦,Tomohiko YAMAMOTO,夏井 拓也,Takuya NATSUI,李 基羽,Kiwoo LEE,森 梓,Azusa MORI,平井 俊輔,Shunsuke HIRAI,橋本 英子,Eiko HASHIMOTO,上坂 充,Mitsuru UESAKA
原子力発電所などにおける状態監視保全の重要性が 高まっている昨今の事情を鑑みて、我々は X-band の可 般型 Linac を用いたX線源の開発を行っている。我々 は、昨年レーザーを用いた同期回路と送風機を用いて 回転機を静止させることなくX線撮像を行い、静止画 象を取得することができた。 さらなる性能評価のため、 X線による識別能・解像度評価試験、玉軸受けと電磁 センサーを使用した転動体に同期した画像取得を行っ た。また、実際に発電所で使用され損傷があるベアリ ングのX線撮像試験も行った。本発表では、各種試験結果と今後の課題について報 告する。
2. X-band Linac 概略 2.1 システム概略
装置は茨城県東海村にある東京大学大学院工学系研 究科原子力専攻内のブランケット棟医療用小型来ナッ ク室に設置されている。最大電子ビームエネルギー950 sey 、加速周波数 9.4 GHz の X-band 帯を用いた小型 Linac によるX線源である[1][2]。Fig.1 に試験体系の加 東管側写真を示す。
X-band Linace-beamSX-ray ConverterFigl Experimental Setup (Linac side) 2.2 高周波源の開発 * 本装置は高周波源として汎用性の高いレーダー用の マグネトロンを採用している。出力は 250 kW 程度と 比較的低出力のため、電源などが小型化でき我々の装 置のコンセプトである「可搬型」に適しているもので あると言える。しかし、一般的にマグネトロンは自励 発振器であるため、周波数が不安定になりやすい。通 常の Linac であればクライストロンと呼ばれる速度変 調管を使用し、高出力・高効率・高安定度を実現して いる。しかし、通常のクライストロンは高出力のため、 高価・大型である。よって、このような可搬型加速器には不向きである。そこで、小型かつ安定な高周波源として低電圧の熱 陰極を複数使用することで電源などを小型にできるマ ルチビームクライストロン(Multi-Beam Klystron, MBK) の設計を開始した。マルチビームクライストロンはそ の名のとおり、複数のビームにより高周波を誘起させ るクライストロンである[3]。複数のビームは複数の電 子銃と空洞により速度変調され高周波を誘起できる。 これにより通常のクライストロンに比べて初期電圧が 低く安定な高周波源とすることができる。Table.1 にマ グネトロン・クライストロン・マルチビームクライス トロンの比較表を示す。Table.1 Comparison of 3 RF SourcesMagnetron Klystron MBK | Type | Self-excited Velocity VelocityModulated Modulated Cathode 1 |Multi Voltage Low HighLow Stability UnstableStableStable Power LowHigh Low-High Size SmallBigSmall 現在、高エネルギー加速器研究機構の RF グループ の協力を得て、出力2MW 程度のマルチビームクライ ストロンの設計を開始した。出力2 MW 程度であれば 最大電子エネルギー4 MeV 程度の Linac に適用できる ため、将来的に高エネルギーX 線非破壊検査装置への 適用が期待できる。ビーム計算は MAGIC と呼ばれる2 次元 PIC コードを使用している。今現在は空洞の最適 化ならびに 3 次元構造の設計を行っている。Fig.2 に MAGIC による空洞計算の1例を示す。Output Cavity Energy DecreaseRF Power IncreaseBeam Direction Beam Bunch Fig.2 Klystron Beam Simulation by MAGIC3.X線撮像実験」3.1 識別能評価試験 X 線透過装置の性能として識別能は重要である。識別能はある厚さ 1の試験体に JIS Z2306規格で定められ た Hole 透過度計の厚さとの比として評価した。このと き識別能DはD-1で表される。測定は鉄製の試験体の厚さtを変化させ、 透過度計のホールが視認できる最薄の透過度計厚さ t。 を測定するという方法で行った。試験体系を Fig.3 に示 す。試験体厚さは同じ厚さの鉄板を重ね合わせること で変化させた。また1枚目には JIS Z2306 規格の Hole 透過度計を貼り付け、フラットパネルディテクターで 取得した画像上で Hole が視認できるもっとも薄い透 過度計厚さを測定した。SampleX-rayWEBType PenetranteFig.3 Experimental Setup of Discrimination Ability 試験結果を Fig.4 に示す。この結果の通り、試験体厚 さが 17 mm 程度のとき3%程度の識別能をもつことが 分かる。よって、17 mm の鉄板に対して 500 um 程度が 識別できることになる。これより薄い場合X線透過力 が大きく、識別能が下がると考えられる。しかし、厚 くなった場合でも識別能が下がっている。通常であれ ば、高エネルギー側のX線のみが検出器に検出される ため、識別能が上がってもいいはずである。しかし、 検出器の感度が高エネルギー側にないので識別能が下 がったと考えられる。0.080.0717mm 13%Discrimination Abilityy = 0,0002x - 0.0081x + 0.099|R2 = 0,98470.01015253010 15 20 Fe Plate Thickness [mm]Fig.4 Discrimination Ability 3.2 分解能試験 *ベアリングの損傷を評価するためには、損傷の厚さ方691向情報だけでなく、1つ1つを明確に区別できるとい う情報も必要である。そのため、分解能の評価を Fig.5 に示すX線チャートを用いて行った。X線チャートは 鉛製で JIS Z4917 規格のものであり、スリットの大きさ とスリット間隔が等しく作られており、その大きさが 変化しているものである。Fig.5 X-ray Chart 分解能 R [LP/mm]はスリット間隔 d[mm]を用いるとR=1R%3D12d-2で表される。分解能の評価は Fig.6 のような試験体系で 行い、チャートと検出器の距離を変化させることで分 解能変化を測定した。Change DistanceX-rayFig. 6 Experimental Setup of Resolution 試験結果の一例としてチャートと検出器の距離を 100 mm としたものを Fig.7 に示す。Fig.7 はX線透過 画像から画像コントラストのデータをスリットの変化 に合わせて取得し、そのコントラスト強度変化をグラ フにしたものである。Line Pair の数字が大きくなるほ どつまりスリット間隔が小さくなるほど、コントラ トの差がなくなり、スリットの区別が難しくなってい ることが分かる。25&ontrast230alRI21019017015011b(0)130(R)102, 032.50104.05.03 Pixel10.5110OLP/mm) 1102004 00800800MTF - a(R)-b(R).(3) a(0)-B(0)Fig.7 Result of 100 mm Data さらに、分解能を評価する指標としてレスポンス関 数である MTF (Modulation Transfer Function)を導入する。 これはX線チャートを用いて Line Pair (LP)が視認する 方法により求めることができる。MTFはMTE - a(R)-b(R).-3a(0)-B(0)で表される。これは、0 [LP/mm]のコントラスト差を基 準に R[LP/mm]のコントラスト差の比を取ったもので ある。Fig,7 の結果を用いて各 Line Pair に対して MTF を計算し、グラフ化したものが Fig,8 である。この結果 から試験対象物と検出器が 100 mm 離れている際での 分解能 R は 2.5~3.0 [LP/mm]程度であるとわかる。これ を(2)からスリット幅を求めると 166~200 um 程度の分 解能を有することになる。分解能を上げるため、現在 X線コリメータを挿入して試験を行っている。TEResolution Limit23Line Pair (LP/mm]Fig.8MTF of 100 mm Data3.3 X線リアルタイム撮影試験 * 昨年度の日本保全学会の研究において、我々は可搬 型 Linac と同期回路による回転機のリアルタイム撮影 で静止画像が取得できるという原理実証を行った[4]。 これまでの実証試験においては試験体として PC ファ ン・送風機を採用したが、今回の実験においては実際 に使われている玉軸受けを使用する。玉軸受けは内輪701と転動体の回転数が違うため、どちらに同期させたい かによって方法が異なる。内輪に同期させる場合であ れば従来の方式であるレーザー光を用いた手法で十分 である。しかし、転動体に同期させる場合は転動体の 公転周期に合わせる必要がある。そのために IIU で開 発された「電磁郎」で採用されている電磁センサーを 使用して同期信号を取得し、X 線同期画像撮影を行っ た。試験体系をFig.9 に結果を Fig.10 に示す。 転動体を 区別できるが、若干のジッターが存在し、転動体輪郭 部がぼやけている。このジッターを軽減するための同 期信号取得法を検討する必要がある。Flat Panel DetectorControllerEl SensorMotorX-rayFig.9 Real-Time Imaging Setup using EM SensorStopNot Sync.Sync.Fig. 10 Results of Real-Time Imaging3.4 損傷ベアリング撮像試験中部電力株式会社からお借りした損傷ベアリングを X線により撮像した。ベアリング厚さは 120 mm 程度 であり、損傷部分深さはおよそ 500 um であった。 X線 透過画像の目印として鉛製のX線フィルムマーカーを 傷の存在部分の近傍に貼り付けた。Fig.11 に試験結果 を示す。損傷の形状までは明確に確認できないが、損 傷位置などは把握することができる。X-ray Film MarkerFig. 11 X-ray Image of Bearing Damage14. 結言1) 小型加速器を用いた X 線非破壊検査装置の開発を行っている。 2) Linac の安定性向上のために、マルチビームクライストロンの設計を行っている。 3) 装置性能評価として識別能・分解能評価を行い、鉄板 17 mm に対し識別能3%、検査体と検出器間距離 100 mmで分解能166~200 umであることがわかった。 さらなる性能向上のために X 線コリメータやビー ム起動の最適化を行っている。 4) ベアリングの転動体に同期させた画像取得に成功したジッターの軽減が課題となる。 5) 実際に発電所で使用され、損傷したベアリングの内輪傷の撮影に成功した。 6) 将来的には AE や振動法などとともに相互補完しな がら状態監視保全へ役立てていきたい。謝辞本研究を進めるにあたり、高周波源開発は高エネル ギー加速器研究機構の福田茂樹教授、松本修二助教、 吉田光宏助教のご協力を得て行っている。また、ベア リング試験においてトライボテックス株式会社・中部 電力株式会社から試験体の貸与を受け多大なご協力を 頂いた。リアルタイム撮影用同期信号取得機器として 株式会社 IIU で開発されている「電磁郎」に使用され ている電磁センサーを利用させていただいた。この場 を借りて厚く御礼申し上げる。参考文献[1] 山本智彦、夏井拓也他、“オンサイト非破壊評価用可搬型 950 keVX バンドライナックの開発““、 日本 保全学会第4回学術講演会 産学協同セッション、福井、2007、産学 06 [2] 夏井拓也、山本智彦他、“オンサイト非破壊検査用可搬型 950keVX バンドライナックX線源”、 日本 保全学会第5回学術講演会 産学協同セッション、茨城、2008 [3] A. Larionov, V. Teryaev et al., “Design of Multi-Beam“ “可搬型 X バンドライナック X 線源によるベアリングマクロ損傷観察試験“ “山本 智彦,Tomohiko YAMAMOTO,夏井 拓也,Takuya NATSUI,李 基羽,Kiwoo LEE,森 梓,Azusa MORI,平井 俊輔,Shunsuke HIRAI,橋本 英子,Eiko HASHIMOTO,上坂 充,Mitsuru UESAKA