(4)泊発電所3号機の建設・試運転状況について

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カテゴリ: 第6回
1. はじめに
北海道電力株泊発電所3号機(PWR 定格電気出 力91万2千キロワット)は、平成15年11月に着 工し、平成21年1月から試運転を行っている。 建設工事の最終段階を迎え、本年12月には国の最終 検査を受けて営業運転を開始する予定となっている泊 発電所3号機の特徴および建設・試運転状況について 紹介する。
2. 泊発電所の概要と3号機のあゆみ
(1)泊発電所の概要 泊発電所は、札幌から西へ約70kmの距離にあり、 積丹半島の西側の付け根にある泊村に位置している。 北海道初の原子力発電所である泊発電所は、1号機(P WR 定格電気出力57万9千キロワット)が平成元 年6月に営業運転を開始し、今年で運開後20年を迎 えた。 また、2号機(同)は、1号機の2年後、平成3年に 営業運転を開始している。 泊発電所3号機は、1,2号機と同じPWRであるが、 1,2号機が2ループであるのに対し3号機は3ルー プ、定格電気出力は91万2千キロワットである。 3号機が完成すると、泊発電所の定格電気出力の合計 は207万キロワットで、北海道の電力の約4割を原 子力が担うことになる。連絡先:大内 全、〒060-8677 札幌市中央区大通東 1 丁目、北海道電力(株)、電話:011-251-1111、e-mail: t-ouchi@epmail.hepco.co.jp泊発電所と消費地をつなぐ送電線は、従来27万5千 ボルトの泊幹線2回線であったが、3号機の増設に伴 い、27万5千ボルトの後志幹線2回線を増設し、信 頼性の向上を図っている。 (2) 泊発電所3号機のあゆみ 泊発電所3号機の増設に当たっては、平成10年に北 海道及び地元四か町村への増設の申入れを行い、平成 15年7月には原子炉設置変更許可、平成15年11 月には工事計画の認可を受けて着工し、平成21年1 月には試運転を開始した。さらに、平成21年3月に は初臨界に到達、同じく3月に試運転段階における発 電を開始している。3. 泊発電所の概要と3号機のあゆみ 3.1 設備の特徴 (1) 総合ディジタル化計測制御システムの採用 泊発電所3号機では、計測制御システムの信頼性、保 守性の向上などを目的に、国内PWRで初めて、新型 中央制御盤を含めた総合ディジタル化計測制御システ ムを採用した。総合ディジタル化計測制御システムで は、安全保護系計測制御設備、常用系計測制御設備お よび中央制御設備に全面的にディジタル制御設備を適 用するとともに、ネットワークシステムにより各計測 制御設備をリンクさせている。 中央制御盤には、より一層の監視性、操作性を高める とともに、運転員の負担軽減を図った新型中央制御盤 を採用した。新型中央制御盤は、大型表示盤、運転コンソールおよび指令コンソールで構成されている。 大型表示盤は、100インチの画面4面で構成され、 プラント全体の運転状況が把握でき、運転員の情報共 有化に役立つ。 運転コンソールは、監視と操作が同一画面上でできる ようにタッチパネルを採用してコンパクト化した。ま た、ワンタッチで関連する画面に到達できるようにリ クエストボタンを配置し、運転員が座ったままで監 視・操作を行えるよう考慮した。さらに、警報は、プ ラントの状態に応じた処置の優先度を考慮した色別に 発信し、警報に応じた操作手順の表示機能も有してい るなど、運転員への支援機能も充実している。 (2) 高効率蒸気タービンの採用 蒸気タービンは、高効率化を求めてタービン翼の長大 化が進められており、泊3号機では、低圧タービンの 最終段動翼に国内最大の54インチ翼を採用した。ま た、完全3次元流れ設計翼の採用による高性能化、イ ンテグラルシュラウド翼の採用による振動の低減を図 っている。 なお、高効率蒸気タービンの採用に加え、1次冷却材 温度の高温化、復水器の高真空度化を含めて、至近の 先行3ループプラントに比べ2万2千キロワットの出 力増加、約2.5%の効率向上が図られている。 (3) 蒸気発生器に関する改善策 PWRプラントの長期健全性、信頼性の観点で最も重 要なポイントの一つが、蒸気発生器伝熱管の長期健全 性の確保である。 泊発電所3号機では、蒸気発生器伝熱管1次側の応力 腐食割れ(SCC)を防止するため、伝熱管材料とし て耐SCC性の優れたインコネル690を採用した。 また、蒸気発生器伝熱管 2次側のスケール付着による 伝熱性能の低下を抑制するために、2次系配管の主要 材料として、鉄が溶出しにくい低合金鋼を採用すると ともに、給水中の鉄濃度低減のため復水フィルターを 設置した。 3.2 建屋の特徴 (1) I型建屋配置 泊発電所3号機の建屋配置は、泊1,2号機と同様に 「I型建屋配置」を採用した。「I型建屋配置」は、タ ービン建屋が原子炉建屋と直角となる配置で、建屋間 の干渉が少ない。 具体的メリットとしては、主蒸気管が短くできる、循 環水管ルートが取りやすい、機器等の搬入ルートが得やすい、掘削土量が少なくてすむなどがあり、コスト や工期の面で有利である。 (2) 環境調和型の建屋景観デザイン 建屋の外観は、周辺の景観との調和を図る観点から、 学識経験者のご指導、地元の方々へのアンケート結果 を踏まえて、柔らかい薄緑を基調に、青や赤を配色した。3.3 その他の特徴 (1)3次元-CAD設計 配置設計においては、ほぼ全面的に3次元一CADを 活用した設計を行った。 3次元-CADを用いた総合的な設計確認を行うこと により、各種技術基準への適合性確認のほか、建屋設 計との調整、運転性・保守性の確認、労働安全対策や 被ばく低減対策の確認など、総合的な確認を実施した。 (2) フルスケール運転シミュレータの導入 泊発電所3号機の試運転開始に先立ち、フルスケール 運転シミュレータを導入した。これにより、運転員の 教育訓練に万全を期すとともに、3号機用として新た に作成した運転要領の確認にも活用した。4. 泊発電所3号機の建設・試運転状況(1)建設状況 泊発電所3号機は、2号機の南側に、丘陵の切り崩し および海面の埋め立てにより約12万平方メートルの 敷地を造成して建設した。うち、約7万平方メートル が海面の埋め立てによるものである。 原子炉格納容器の建設は、建設工事およびその後の耐 圧試験に対する積雪等の影響を避けるため、および工 程短縮のために、下部および胴部の組み立てと並行し て、別の場所で上部半球部を組み立て、最後に、超大 型クレーンを用いて上部半球部を一体で吊り上げて胴 部と結合した。この工法を採用することにより、冬を 挟まない春から秋までの期間での原子炉格納容器の組 立が可能になり、11月には耐圧試験を実施すること ができた。なお、吊り上げた上部半球部の重量は、約 490トン(吊上総重量は約570トン)である。 重量機器は、泊発電所専用港湾で水切り後、構内を輸 送し、原子炉格納容器へは、耐圧試験後に設けた仮開 口から搬入した。 泊発電所で発生した電気を消費地へ送るための送電線8は、27万5千ボルトの泊幹線1ルート2回線であっ たが、泊3号機の増設に伴い、27万5千ボルトの後 志幹線1ルート2回線を増設し、信頼性向上を図った。 また、従来の開閉所は専用港湾の近くに設置していた が、特に冬季における塩害を考慮し、海から離れた位 置に、1,2,3号機共用の開閉所を建設した。新し い開閉所では、27万5千ボルトのブッシングを「遮 風建屋」に収納し、山側に設けた開口部から送電線を 引き込んでいる。(2)試運転状況 各建屋の建設工事の後半は機械・電気設備の据付工事 が行われ、機械・電気設備の据付工事の後半には、機 能試験を開始した。 機能試験は、常温の状態で各系統を構成する機器等が 目的どおりに機能していることを確認する「冷態機能 試験(CFT)」と、1次冷却材ポンプの入熱を使って 1次冷却系統を高温停止状態の圧力、温度に保ち、各 系統が目的どおりに機能していることを確認する「温 態機能試験(HFT)」があり、温態機能試験の前には、 原子炉容器等、1次冷却材バウンダリを構成する系統 に規定の圧力を加える「原子炉冷却系統耐圧試験(C HT)」を行った。 これらの試験により、全ての系統・設備が目的どおり 機能することを確認したうえで、原子炉に燃料を装荷 しての起動試験を開始した。起動試験では、まず、制 御棒駆動装置関連の試験、臨界前試験を実施後、本年3月に初臨界に到達した。初臨界到達以降は、炉物理 試験により、炉心が設計どおりの安全性を有している ことを確認し、3月下旬に系統へ並列し発電を開始し た。 発電開始後は、電気出力を段階的に上昇して、各出力 段階での各種性能試験を実施している。また、各出力 段階での試験終了後は、原子炉を停止して機器を点検 する休転工事期間を設け、次の出力段階へ入念な準備 を行っている。 現在は、100%出力での各種試験を行っている段階 であり、100%出力での各種試験終了後は、休転工 事により機器の点検を行った後、再び100%出力で の連続運転試験などを行い、国の最終の使用前検査を 受検し、12月に営業運転を開始する予定となってい る。5.おわりに北海道電力が21世紀の基幹電源として建設を進めて きた泊発電所3号機は、本年12月に営業運転を開始 する予定です。 関係する皆様には、多大な御指導、御協力をいただき 誠にありがとうございました。 これからも、安全な運転と適切な保全に努力していく 所存ですので、皆様におかれましては、今後とも御指 導、御協力のほどお願いいたします。91“ “泊発電所3号機の建設・試運転状況について“ “大内 全,Tamotsu OHUCHI
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