光ファイバを用いた高空間分解能分布センシングに関する研究
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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
光ファイバによる通信技術の発達は目覚ましく、現 1980年代末に現在の光ファイバセンサの主流となっ 在では通信システムの基幹を担い、またFTTH(Fiber To ている分布計測技術に関する重要な発明[2] ・発見[3]が The Home)に代表されるように各家庭までのアクセスなされ、ほぼ同時に構造物のセンサによる常時監視技 回線にもその技術が活用されている。術の必要性が認識され始めた[4]。構造物のセンサによ ・ 一方で、光ファイバはセンサとしても利用可能であ る常時監視技術は、現在構造ヘルスモニタリングと呼 り、従来の電気センサにはない様々な優位性、特徴を ばれ、当初は航空機の信頼性向上を実現する技術とし 持っている[1]。特に、細径・軽量、耐久性・耐食性、 て注目されたが、まもなく船舶や土木・建築構造など 耐電磁ノイズ・耐電圧性、遠隔・分布計測と言った特 構造物全般にその概念が普及した。1990年代初頭から 徴が航空機や船舶、橋梁、プラントを代表とする大型 本格的に開始された光ファイバセンサに関する多くの 構造物のモニタリングや地盤・都市・鉄道路線などの 研究が、構造ヘルスモニタリングへの適用を主要な目 広域モニタリングを可能とする技術として注目される的としていたと言ってよいだろう。 理由である。ここで、分布計測とは1本の光ファイバ 構造ヘルスモニタリングが航空機の分野から発達し に沿って任意位置に多数の計測点を持たせる技術であ た背景・契機として、1988 年に起きたアロハ航空 243 り、遠隔計測技術と合わせて広範囲で効率的な計測が便の事故がしばしば取り上げられる。機体前方から主 可能となる。翼近くまでの天井が吹き飛ぶという致命的な破壊を受 - 本論文では、状態基準保全(CBM)と同様の目的をけ、死者1名・重軽傷者多数を出しながらも無事帰還 持っ構造ヘルスモニタリング(Structural Health_したことでも有名である。この事故は、飛行回数、す Monitoring) およびその分野における光ファイバセンサ なわち離着陸が極端に多い経年機体において、疲労に の開発状況を述べたのち、著者らが開発を進めているより複数のき裂損傷が同時進行的に進展し、それが一 高空間分解能分布計測技術の原理と応用について述べ 気に結合して破壊に至ったとされている[5]。また、整 る。本技術により、空間分解能は約 0.6 mm に達し、ま 備士は見つけることができなかったが、事故飛行の直 た溶接継手のひずみ分布モニタリングへの適用では、 前にき裂に気付いていた乗客もいた。航空機の分野で 局所的なひずみ分布の変動を捉えることに成功した。 は信頼性設計技術として損傷許容設計が発展してきた 連絡先:村山英晶、〒113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1、が、このように設計時に考慮されていない厳しい運用 東京大学工学系研究科システム創成学専攻、条件、経年劣化、マルチサイト損傷,整備・点検作業
の不備といったことを原因とする事故の経験によって、 従来の設計・保守管理技術の限界が認識され、新しい 技術の概念を発達させる契機となった。 1構造ヘルスモニタリングでは、人間の神経網のよう に構造物に一体化・ネットワーク化されたセンサによ って常時監視することで、初期の損傷や経年劣化をい ち早く検知し、適切な保守管理を促すことで構造健全 性を確保する。このような、生物が持つ、いわゆる自 己診断性を持たせることは、構造物を知能化(スマー ト化)することであるので、知的構造 (Smart Structures) とも呼ばれる[6]。構造ヘルスモニタリングは構造物の 状態基準保全の一手法と考えてもよいが、生物や人間 を手本として、状態監視のための自動化されたシステ ム(センサとプロセッサ)を構造物自身に装備させて 自己診断性機能により適切な運用と保守管理を促すも のであり、常時またはオンデマンド監視を基本として いる。そのため、一般的な状態基準保全の効能に加え て、異常事態、例えば地震直後の健全性の把握など緊 急時への迅速な対応も可能であり、またモニタリング 結果を利用して構造物に大きなストレスを生じさせな い運用支援もできる。さらに、製造中からヘルスモニ タリングシステムを実装することで、工程管理・品質 保証も実施すれば、“ゆりかごから墓場まで”構造物の 面倒を見ることができる。生物のような自己診断性を構造物に持たせ真の知的 構造を実現することは、相当に賢いロボットを作るの に等しく難しい問題で、そのためには大きく分けて次 の2つの課題がある。(1) 高精度・高密度なセンサネットワークの開発 (2) センサ情報のリスクへの翻訳・可視化自己診断性を構造物に付与するには、生物の神経網 に匹敵する高精度かつ高密度なセンシングシステムが 必要となることは容易に想像できる。細径・軽量であ り、可とう性もある光ファイバは、構造物中に生物の 神経網のように張り巡らせることができ、分布計測技 術により痛みを感知する、すなわち損傷を検知するセ ンサネットワークを効率的に実現させることが可能と なる。特に分布計測技術の発展は著しく、アメリカズ カップ艇に利用していたブリルアン散乱光を利用した 光ファイバによる分布計測技術である Brillouin Optical Time Domain Reflectometry (BOTDR)では1mだった空間分解能は Optical Frequency Domain Reflectometry (OFDR)手法により1 mm 以下となり [7][8]、数分かかっ た計測時間も大幅に短縮されている[9]。温度やひずみ センサとしての精度に関しても、従来の高精度な電気 センサと同等のレベルに達している。ここで空間分解 能とは、ひずみや温度など計測量を識別可能な 2 点間 の最小距離であり、例えば1 mm の空間分解能の分布 型光ファイバひずみセンサが 10 m の計測範囲を持っ ているとすれば、10,000 個のゲージ長 1 mm の抵抗線 ひずみゲージを並べたのと同等以上の情報が得られる ことになる。き裂・損傷による局所的な応力集中[10] やガス・液体の漏洩によるわずかな温度変化などを検 知することが可能となっている。全長約 25 m の先進複合材料で製造されたアメリカ ズカップ艇のハルに設置した BOTDR を用いた光ファ イバセンサによって実測された船体長手方向のひずみ 分布を解析結果、計測条件とともに Fig. 2 に示す[7]。 グラフの横軸は距離を示し、光ファイバセンサで連続 一的なひずみ分布を計測し、その結果が解析とよく一致 していることが分かる。しかし、空間分解能が1mで あるという制限から、基本的にはそれ以上の範囲のひ ずみ分布に影響を与える損傷の検知しかできない。4tons330 tous3000200、-BOTDR FEA4 tonsStrain,lons-100% -2004-300L 10_10203040500toneDistance, m 4 tons - 0 tonsFig. 1 Strain distributions of an IACC yacht measured bya fiber-optic sensor and calculated by FEM.著者らが開発した空間分解能が 1 mm 以下の分布型 センサを用いれば、破壊に至る前の構造物中に生じる 小さな欠陥・損傷を検知することができる。ここでは、 複合材料構造などでよく用いられるシングルラップ継 手を対象にし,接着層の中に光ファイバを埋め込み, 内部の長手方向ひずみ分布を計測した例を Fig. 2 に示 す[11]。グラフの結果は試験片に引張荷重を付加した際 の損傷あり、なしでのひずみ分布である。1,000 倍以上 に向上した空間分解能により、また埋め込み可能とい う光ファイバの特徴を活かして、接着層内部の損傷も73Unit: mm検知できるようになった。また、このような計測結果 は損傷検知のみならず、設計や製造にフィードバック することが可能である。3/60 → 」FBG sensor200200Unit: mmle→ xaxis(a) single-lap joint with an embedded fiber-optic sensor.3000Bonding regionDamagedStrain (us)Undamaged・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・..ハ・・-10005152535SS 65758545 Position (mm)(b) Strain distributions in undamaged and damaged bondedjoints. Fig. 2 Application of distributed sensing with the high spatial resolution to strain measurements of a bonded joint.また、2 つ目の課題として挙げたセンサ情報のリス クへの翻訳・可視化は、言わば医者の診断、見立てで あり、上述したようにセンシング技術が発達した現在、 構造ヘルスモニタリングの分野では多くの努力が診断 技術に注がれている[12]。高速化・省エネ化や快適性と いった利用者にとって分かりやすい指標に対する投資 に対して、安全性への合理的な投資が難しいのは、「安 全」が利用者にとっては、あって当然のものであり、 かつ「安全性」を定量的に感じることが難しいことが 原因であろう[13]。したがって、定量化されたリスクを 分かりやすく示すことが、リスク低減に寄与する技術 の開発と普及に求められている。リスクを求めるため に必要な外的環境要因であるハザードと、抵抗側であ るシステムの脆弱性は、構造信頼性の観点から言えば、 それらは荷重と強度である。設計段階で共に不確かさ をもつ荷重と強度を確率変数として信頼度が求められ るが、センサにより構造健全性を評価することは、確 率変数としての強度や剛性の変動を常時把握することであり、外力を計測・推定することは荷重の変動を把 握することとなり、それらを考慮することで運用時の リスクを定量化することが可能となる。ただし、基本 的には強度や荷重は直接計測できるものではなく、ひ ずみ、応力、振動といった構造応答から間接的に求め られるものであるため、リスクの定量化には材料・構 造に対するより深い理解が求められている。 - 例えば、Fig.2 に示したひずみ分布から接着層のはく 離長さを同定し[11]、残存強度を推定するには、破壊力 学的な解析から可能になる。また、光ファイバセンサ によって計測されるひずみ分布情報から航空機の翼構 造に作用する分布荷重を逆解析により推定し、損傷許 容に基づいた保守管理に利用しようとする試みがある [141。最新の高性能センシング技術とこれまで培われた 力学解析技術とを融合することで、より高度なリスク の定量化が可能になると考える。3. 高空間分解能分布センシング3.1 Fiber Bragg Grating (FBG)FBG は、紫外線により光ファイバのコア中に回折格 子を形成し、通信分野では光フィルタとしての機能を 持たせた光ファイバ型デバイスとして用いられている。 回折格子を光ファイバ中に非破壊的に直接形成できる ため、低損失・小型・高信頼性・伝送用光ファイバと の整合性など、多くの利点を有している. Fig.3 に示す ように、グレーティングの周期をA、光ファイバの屈 折率を n とすると、次の式を満たす波長(ブラッグ波 長) 1日で強い反射が生じ、その他の波長では透過する。2. = 2nA-1一般的に長距離通信あるいはセンサ用途では 1.55 pum 波長帯域の光源を用いることが多いが、屈折率 n=1.45 程度であるから、-1.55 um とするためには、 A=0.53um 程度になる。 - 式(1)のブラッグ波長込みは、屈折率 n あるいはグレー ティングの周期への変化によってシフトする。つまり、 グレーティングの存在する部分にひずみあるいは温度 変化が与えられると、nおよびAが変化し、ブラッグ波 長1がシフトすることになる。この仕組みによって、 FBG をひずみと温度のセンサとして利用することがで きる。一般的には光源には広帯域の波長を出力できる 光源を用い、FBG からの反射光波長のシフト量を計測74する。これをひずみや温度に換算することが可能であ るが、センサ内の平均的な値となる。 一般的には FBG のゲージ長は 10 mm 程度である。温度補償ができれば 絶対的なひずみ計測が可能となり、クリープ変形など 経時的な変化も定量評価できる。3.2 OFDR による FBG 反射光計測 - FBG 上に発生するひずみ・温度分布を計測するため、 OFDR によってFBG から反射される光を計測する。ま ず、OFDR を用いたひずみ分布計測法に用いられる光 学系の概念図を Fig. 3 に示す。光学系は、波長可変型 光源(Tunable Laser)、受光器(Detector)、全反射終端(R)、 FBGセンサ (FBG)からなる。全反射終端と FBG センサ は干渉計を構成している。波長可変光源で可干渉性の 高い光の波長を連続的に変化させ、各波長における反 射光強度を受光器で計測する。Tunable LaserDetectorFBGDDTCDITFRFBGFig. 3 Measurement system with OFDR.FBG 上の微小区間からの反射光は、ある波長の光 のみを強く反射するため、波長可変光源の光波数 k と その反射光強度の関係は、Fig.3 の下段右のような形 となる。また、ピークを示す光波数k は、FBG 部での ひずみの大きさに依存して変化する。ここで、光波数 kと波長2は以下の関係を有する。 1 --2なお、本論文の定式化においては主に光波数を、計測・ 解析結果の表示には主に光波長を用いて記述している。 一方、FBG 微小区間からの反射光と全反射終端Rから の反射光は光路差 2nL; を有し、これら2つの反射光は 干渉を起こす。この干渉光強度の直流成分を除いた変 動成分は、光波数 k に依存して余弦関数的に変化し、 以下のように表される。Dorr = A cos(2nL,k)-3ここで、n は光ファイバの屈折率を表す。前述した二 つの作用により、受光器で検出される光強度は、Fig.3 の下段左に示すように、光波数 k に対してある周期と ピークを持った形で変化する。つまり、次式のような 形で表される。Doct = RFBG (k)cos(2nL;k) ここで、Rroc()は FBG 内微小区間の反射特性を表す光 波数(波長)の関数である。この受光器で検出される信号 の周期から行路差 L, つまり FBG 内微小区間の位置を、 ピークを示す光波数 k からひずみの値を計測すること が可能となる。ここまで全反射終端Rからの光路距離 が L の FBG 内微小区間の反射光について述べてきた。 FBG 全体としては、光路差し つまり周期が異なる式(4) で表される波形の和として光強度が観測される。3.3 データ解析手法上で述べたように、光源の波長(光波数)を掃引し たとき受光器で観測される信号は、光路差つまり FBG の位置によって決定される周波数が異なる信号の重ね 合わせである。この信号に対して、STFT(Short Time Fourier Transform)を応用したデータ解析を行い、簡便 に FBG 内の各位置でのスペクトルを求めることがで きる。まず、ある光波長に着目して、それを中心とし て適切なウィンドウを施して信号データを抜き出す。 抜き出した信号に対してFFT 解析すると、信号内に含 まれる各周波数成分の強度が得られる。これは、着目 した光波長における FBG 内各位置での反射強度に対 応する。着目した光波長を横軸の一点にとり、FFT 解 析の周波数、すなわち光路距離を縦軸にとり、さらに FFT 解析で得られる各周波数の強度を色調で表現する。 全ての波長帯域に対してウィンドウを移動させつつ同 様の FFT 解析を行うと、横軸が光波長、縦軸が光路距 離を表し、さらに色調が強度を表すスペクトログラム が得られる。このスペクトログラムは、各光波長に対 する、FBG 内任意位置での反射強度を示すこととなる。 - Fig. 4 に OFDR によって計測された FBG の反射光に 対する信号とデータ解析後に得られたスペクトログラ ムを示す。 横軸は波長(nm)である。ここでは、4.95 m から 5.05 m に位置するゲージ長が 100 mm の FBG を用 いている。スペクトログラムから FBG 内の各位置に対 応する波長スペクトルを抜き出し、その中心波長、す なわちブラッグ波長を半値幅の中心として求めること75ができる。このブラッグ波長の分布がすなわちひずみ 分布、または温度分布を表すことになる。ExperimentPower (a.u.)イムキーパーコンクーラー1547. 61547815481548215484154861548.8Experiment35051 2Position [m]4,85 154761547.81548154821 548.4154861 5488Fig. 4 Signal obtained from a detector (upper) and spectrogram by using FFT with sliding windows (lower).3.4 応力集中部のひずみ分布計測 - FBG を用いた分布型光ファイバセンサによって、有 孔引張試験片の円孔周りに発生する応力集中部位のひ ずみ分布を計測した例を示す。 1 試験片は直径2mm の円孔を2つ、直径4mm の円孔 を1つ持ち、それらは一方の端を揃えて直線状に並ん でいる(Fig. 5)。ゲージ長 100 mm の FBG を円孔の端 から 0.5 mm 離した位置に直線状に接着した。ただし、 FBGの一方の端20 mm分だけは温度補償のため接着せ ずに、応力フリーの状態にある。 - Fig.6には、試験片に引張荷重 3 KN を付加したとき に受光器で観測された信号とスペクトログラムを示す。 信号からは、いくつかの波長にピークを持つスペクト ルが重なり合っている様子が分かる。またスペクトロ グラムからは、ブラッグ波長が、手前にある応力フリ 一部の波長から、接着部では高波長側に移動しており、 3 つの位置、すなわち円孔付近でさらに高波長側にシ フトしている様子が分かる。100 mm ゲージ長の FBG の円孔付近を含む 50 mm のスペクトルから求めたブラ ッグ波長から算出したひずみ分布と有限要素解析によ って求めたひずみ分布を Fig. 7に示す。実測値が解析 値よりも多少小さな値を示しているが良い一致を示し ていると言える。なお、実測値は FBG に沿って約1mm 毎に得られ、約 0.6 mm の空間分解能で計測されたひず み分布と一致している。すなわち1 mm 以下のひずみ ゲージを 100 点程度隙間なく並べて計測したことと等しく、既存の単点計測センサでは実現が困難な計測を 可能にする分布計測技術であると言える。t%3D2 Aluminum100 mm FBG 201802unit:mm0.26511515110Bonded regionStress free region250Fig. 5 Specimen with holes and FBG sensor.**。 。Power, a.u.fordenime。。。Wavelength, nmVivaternm)Fig. 6 Detector's signal and spectrogram.1200Strain , HE110_20_130405010_10_20304050Position,mmFig. 7 Strain distribution adjacent to the holes.4. 溶接継手のひずみモニタリングOFDR を用いた高空間分解能ひずみセンシング技術 を溶接継手部のひずみモニタリングに適用した。試験 片とセンサ位置を Fig. 8 に示す。試験片は厚さ 1.6 mm の炭素鋼のパイプで、中央部で突き合わせ溶接されて いる。ゲージ長 100 mm の FBG を溶接線に下側に沿っ て接着した。また、AE 計測用にレーザック社製の FOD センサを試験片上部と下部に接着した。試験片に引張 荷重を0.5tまでと 3.0tまで負荷したときのひずみ分布 をそれぞれ Fig. 9 と Fig. 10 に示す。Fig. 9では、点線 で囲った位置以外では荷重に比例してひずみが増減し ているが、点線の位置でひずみが局所的に変動し、ま た除荷後もひずみが残留しているのが分かる。これら の位置では、3tまで荷重を上げる間に AE を伴って、 Fig. 10 に示すようにさらにひずみが変動し、残留ひず76みも大きくなった。 X 線撮影により、これらの異常が 見られた位置の一部に、欠陥があることが確認された。p31.8Biaxial strain gaugeAE Sensor[ 195.0mm 275.0mmStrain gaugeWelded Joint560.0mm 360.0mm10.0mmFBGIncident LightIndex of Position along the circumference90°1802701195.0mm,275.0mmSpecimenFig. 8 Dimension of the speciment and sensor locations.Ot(initial)Ot(unload)10.5t0.25tStrainlue)-Ot.0.25t |--0.5t--150_____,cLIA-1804.0164.0364.0564.0964.1164,076 Position(m)Fig. 9 Strain distributions under the load case of 0.5 t.Ot(unload) Ot(initial)、Strainle)...2tooooB~600 LA4 54.0364.0561 4.076 Position(m)4.0964.116Fig. 10 Strain distributions under the load case of 3.0 t.5.結言 1) 1 mm 以下の高い空間分解能でひずみ分布を計測する光ファイバセンサを開発した。 2) 有孔引張試験片の応力集中部のひずみ分布を正確に計測できることを確認した。 3) 欠陥に関わると思われる溶接継手部のひずみ分布 の変動を捉えることができた。参考文献 [1] E. Udd, “Fiber Optic Smart Structures““,Wiley-Interscience, 1995. [2] G. Meltz et al., “Formation of Gragg grating in opticalfibers by a transverse holographic method,” Opt. Lett.,Vol. 14, No. 15, 1989, pp. 823-825. 1 [3] T. Horiguchi et al., “Tensile strain dependence ofBrillouin frequency shift in silica optical fiber,” IEEEPhoton. Tech. Lett., Vol. 1., No. 5, 1989, pp. 107-108. [4] M. V. Gandhi and B. S. Thompson, “Smart Materialsand Structures,” CHAPMAN & HALL, 1992,pp.122-129. [5] 寺田博之, 小林英男, アロハ航空機の胴体天井吹き飛び,失敗データベースー失敗百選 [6] A. V. Srinivason and D. M. McFarland, “Smart Structures,““ Cambridge University Press, 2001, p2. [7] H. Murayama et al., “Application of fiber-optic distributed sensors to health monitoring for full-scale composite structures,”, Journal of Intelligent Material Systems and Structures, Vol. 14, No. 1, 2003, pp. 3-13. [8] H. Murayama et al., “Distributed strain measurement of welded tubular joint with long gauge FBG,” Proc. of SPIE, Vol. 7004, 2008,700452-1-700452-4. [9] K. Hotate and Z. He, “Fiber optic nerve systems for smart materials and smart structures -Recent progress in Brillouin Optical Correlation Domain Analysis System-,““ Proc. of International Symposium on Secure-Life Electronics, 2008, pp. 47-58. [10] H. Murayama et al., “Strain measurements in bonding layer by an embedded fiber optic distributed sensor with the high spatial resolution,““ 13th US-Japan Conference on Composite Materials, 2008. [11] 小原康平、分布型光ファイバセンサを用いた接着 継手のひずみモニタリング”、東京大学大学院工学系研 究科環境海洋工学専攻 修士論文、2009. [12] 村山英晶、鵜沢潔、”ヘルスモニタリング”、強化 プラスチック、Vol.55、No.4、2009、pp. 136-141. [13] 藤野陽三、社会基盤の災害事故防止に向けたメン テナンスとセンシング技術の活用”、第 20 回鉄道総研 講演会、2007. [14] 秋山学朗、”ひずみ・変位センサ情報を用いた分布 荷重推定手法に関する研究”、東京大学大学院工学系研 究科環境海洋工学専攻 修士論文、2009.“ “?光ファイバを用いた高空間分解能分布センシングに関する研究“ “村山 英晶,Hideaki MURAYAMA,町島 祐一,Yuichi MACHIJIMA,井川 寛隆,Hirotaka IGAWA,大道 浩児,Koji OMICHI
光ファイバによる通信技術の発達は目覚ましく、現 1980年代末に現在の光ファイバセンサの主流となっ 在では通信システムの基幹を担い、またFTTH(Fiber To ている分布計測技術に関する重要な発明[2] ・発見[3]が The Home)に代表されるように各家庭までのアクセスなされ、ほぼ同時に構造物のセンサによる常時監視技 回線にもその技術が活用されている。術の必要性が認識され始めた[4]。構造物のセンサによ ・ 一方で、光ファイバはセンサとしても利用可能であ る常時監視技術は、現在構造ヘルスモニタリングと呼 り、従来の電気センサにはない様々な優位性、特徴を ばれ、当初は航空機の信頼性向上を実現する技術とし 持っている[1]。特に、細径・軽量、耐久性・耐食性、 て注目されたが、まもなく船舶や土木・建築構造など 耐電磁ノイズ・耐電圧性、遠隔・分布計測と言った特 構造物全般にその概念が普及した。1990年代初頭から 徴が航空機や船舶、橋梁、プラントを代表とする大型 本格的に開始された光ファイバセンサに関する多くの 構造物のモニタリングや地盤・都市・鉄道路線などの 研究が、構造ヘルスモニタリングへの適用を主要な目 広域モニタリングを可能とする技術として注目される的としていたと言ってよいだろう。 理由である。ここで、分布計測とは1本の光ファイバ 構造ヘルスモニタリングが航空機の分野から発達し に沿って任意位置に多数の計測点を持たせる技術であ た背景・契機として、1988 年に起きたアロハ航空 243 り、遠隔計測技術と合わせて広範囲で効率的な計測が便の事故がしばしば取り上げられる。機体前方から主 可能となる。翼近くまでの天井が吹き飛ぶという致命的な破壊を受 - 本論文では、状態基準保全(CBM)と同様の目的をけ、死者1名・重軽傷者多数を出しながらも無事帰還 持っ構造ヘルスモニタリング(Structural Health_したことでも有名である。この事故は、飛行回数、す Monitoring) およびその分野における光ファイバセンサ なわち離着陸が極端に多い経年機体において、疲労に の開発状況を述べたのち、著者らが開発を進めているより複数のき裂損傷が同時進行的に進展し、それが一 高空間分解能分布計測技術の原理と応用について述べ 気に結合して破壊に至ったとされている[5]。また、整 る。本技術により、空間分解能は約 0.6 mm に達し、ま 備士は見つけることができなかったが、事故飛行の直 た溶接継手のひずみ分布モニタリングへの適用では、 前にき裂に気付いていた乗客もいた。航空機の分野で 局所的なひずみ分布の変動を捉えることに成功した。 は信頼性設計技術として損傷許容設計が発展してきた 連絡先:村山英晶、〒113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1、が、このように設計時に考慮されていない厳しい運用 東京大学工学系研究科システム創成学専攻、条件、経年劣化、マルチサイト損傷,整備・点検作業
の不備といったことを原因とする事故の経験によって、 従来の設計・保守管理技術の限界が認識され、新しい 技術の概念を発達させる契機となった。 1構造ヘルスモニタリングでは、人間の神経網のよう に構造物に一体化・ネットワーク化されたセンサによ って常時監視することで、初期の損傷や経年劣化をい ち早く検知し、適切な保守管理を促すことで構造健全 性を確保する。このような、生物が持つ、いわゆる自 己診断性を持たせることは、構造物を知能化(スマー ト化)することであるので、知的構造 (Smart Structures) とも呼ばれる[6]。構造ヘルスモニタリングは構造物の 状態基準保全の一手法と考えてもよいが、生物や人間 を手本として、状態監視のための自動化されたシステ ム(センサとプロセッサ)を構造物自身に装備させて 自己診断性機能により適切な運用と保守管理を促すも のであり、常時またはオンデマンド監視を基本として いる。そのため、一般的な状態基準保全の効能に加え て、異常事態、例えば地震直後の健全性の把握など緊 急時への迅速な対応も可能であり、またモニタリング 結果を利用して構造物に大きなストレスを生じさせな い運用支援もできる。さらに、製造中からヘルスモニ タリングシステムを実装することで、工程管理・品質 保証も実施すれば、“ゆりかごから墓場まで”構造物の 面倒を見ることができる。生物のような自己診断性を構造物に持たせ真の知的 構造を実現することは、相当に賢いロボットを作るの に等しく難しい問題で、そのためには大きく分けて次 の2つの課題がある。(1) 高精度・高密度なセンサネットワークの開発 (2) センサ情報のリスクへの翻訳・可視化自己診断性を構造物に付与するには、生物の神経網 に匹敵する高精度かつ高密度なセンシングシステムが 必要となることは容易に想像できる。細径・軽量であ り、可とう性もある光ファイバは、構造物中に生物の 神経網のように張り巡らせることができ、分布計測技 術により痛みを感知する、すなわち損傷を検知するセ ンサネットワークを効率的に実現させることが可能と なる。特に分布計測技術の発展は著しく、アメリカズ カップ艇に利用していたブリルアン散乱光を利用した 光ファイバによる分布計測技術である Brillouin Optical Time Domain Reflectometry (BOTDR)では1mだった空間分解能は Optical Frequency Domain Reflectometry (OFDR)手法により1 mm 以下となり [7][8]、数分かかっ た計測時間も大幅に短縮されている[9]。温度やひずみ センサとしての精度に関しても、従来の高精度な電気 センサと同等のレベルに達している。ここで空間分解 能とは、ひずみや温度など計測量を識別可能な 2 点間 の最小距離であり、例えば1 mm の空間分解能の分布 型光ファイバひずみセンサが 10 m の計測範囲を持っ ているとすれば、10,000 個のゲージ長 1 mm の抵抗線 ひずみゲージを並べたのと同等以上の情報が得られる ことになる。き裂・損傷による局所的な応力集中[10] やガス・液体の漏洩によるわずかな温度変化などを検 知することが可能となっている。全長約 25 m の先進複合材料で製造されたアメリカ ズカップ艇のハルに設置した BOTDR を用いた光ファ イバセンサによって実測された船体長手方向のひずみ 分布を解析結果、計測条件とともに Fig. 2 に示す[7]。 グラフの横軸は距離を示し、光ファイバセンサで連続 一的なひずみ分布を計測し、その結果が解析とよく一致 していることが分かる。しかし、空間分解能が1mで あるという制限から、基本的にはそれ以上の範囲のひ ずみ分布に影響を与える損傷の検知しかできない。4tons330 tous3000200、-BOTDR FEA4 tonsStrain,lons-100% -2004-300L 10_10203040500toneDistance, m 4 tons - 0 tonsFig. 1 Strain distributions of an IACC yacht measured bya fiber-optic sensor and calculated by FEM.著者らが開発した空間分解能が 1 mm 以下の分布型 センサを用いれば、破壊に至る前の構造物中に生じる 小さな欠陥・損傷を検知することができる。ここでは、 複合材料構造などでよく用いられるシングルラップ継 手を対象にし,接着層の中に光ファイバを埋め込み, 内部の長手方向ひずみ分布を計測した例を Fig. 2 に示 す[11]。グラフの結果は試験片に引張荷重を付加した際 の損傷あり、なしでのひずみ分布である。1,000 倍以上 に向上した空間分解能により、また埋め込み可能とい う光ファイバの特徴を活かして、接着層内部の損傷も73Unit: mm検知できるようになった。また、このような計測結果 は損傷検知のみならず、設計や製造にフィードバック することが可能である。3/60 → 」FBG sensor200200Unit: mmle→ xaxis(a) single-lap joint with an embedded fiber-optic sensor.3000Bonding regionDamagedStrain (us)Undamaged・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・..ハ・・-10005152535SS 65758545 Position (mm)(b) Strain distributions in undamaged and damaged bondedjoints. Fig. 2 Application of distributed sensing with the high spatial resolution to strain measurements of a bonded joint.また、2 つ目の課題として挙げたセンサ情報のリス クへの翻訳・可視化は、言わば医者の診断、見立てで あり、上述したようにセンシング技術が発達した現在、 構造ヘルスモニタリングの分野では多くの努力が診断 技術に注がれている[12]。高速化・省エネ化や快適性と いった利用者にとって分かりやすい指標に対する投資 に対して、安全性への合理的な投資が難しいのは、「安 全」が利用者にとっては、あって当然のものであり、 かつ「安全性」を定量的に感じることが難しいことが 原因であろう[13]。したがって、定量化されたリスクを 分かりやすく示すことが、リスク低減に寄与する技術 の開発と普及に求められている。リスクを求めるため に必要な外的環境要因であるハザードと、抵抗側であ るシステムの脆弱性は、構造信頼性の観点から言えば、 それらは荷重と強度である。設計段階で共に不確かさ をもつ荷重と強度を確率変数として信頼度が求められ るが、センサにより構造健全性を評価することは、確 率変数としての強度や剛性の変動を常時把握することであり、外力を計測・推定することは荷重の変動を把 握することとなり、それらを考慮することで運用時の リスクを定量化することが可能となる。ただし、基本 的には強度や荷重は直接計測できるものではなく、ひ ずみ、応力、振動といった構造応答から間接的に求め られるものであるため、リスクの定量化には材料・構 造に対するより深い理解が求められている。 - 例えば、Fig.2 に示したひずみ分布から接着層のはく 離長さを同定し[11]、残存強度を推定するには、破壊力 学的な解析から可能になる。また、光ファイバセンサ によって計測されるひずみ分布情報から航空機の翼構 造に作用する分布荷重を逆解析により推定し、損傷許 容に基づいた保守管理に利用しようとする試みがある [141。最新の高性能センシング技術とこれまで培われた 力学解析技術とを融合することで、より高度なリスク の定量化が可能になると考える。3. 高空間分解能分布センシング3.1 Fiber Bragg Grating (FBG)FBG は、紫外線により光ファイバのコア中に回折格 子を形成し、通信分野では光フィルタとしての機能を 持たせた光ファイバ型デバイスとして用いられている。 回折格子を光ファイバ中に非破壊的に直接形成できる ため、低損失・小型・高信頼性・伝送用光ファイバと の整合性など、多くの利点を有している. Fig.3 に示す ように、グレーティングの周期をA、光ファイバの屈 折率を n とすると、次の式を満たす波長(ブラッグ波 長) 1日で強い反射が生じ、その他の波長では透過する。2. = 2nA-1一般的に長距離通信あるいはセンサ用途では 1.55 pum 波長帯域の光源を用いることが多いが、屈折率 n=1.45 程度であるから、-1.55 um とするためには、 A=0.53um 程度になる。 - 式(1)のブラッグ波長込みは、屈折率 n あるいはグレー ティングの周期への変化によってシフトする。つまり、 グレーティングの存在する部分にひずみあるいは温度 変化が与えられると、nおよびAが変化し、ブラッグ波 長1がシフトすることになる。この仕組みによって、 FBG をひずみと温度のセンサとして利用することがで きる。一般的には光源には広帯域の波長を出力できる 光源を用い、FBG からの反射光波長のシフト量を計測74する。これをひずみや温度に換算することが可能であ るが、センサ内の平均的な値となる。 一般的には FBG のゲージ長は 10 mm 程度である。温度補償ができれば 絶対的なひずみ計測が可能となり、クリープ変形など 経時的な変化も定量評価できる。3.2 OFDR による FBG 反射光計測 - FBG 上に発生するひずみ・温度分布を計測するため、 OFDR によってFBG から反射される光を計測する。ま ず、OFDR を用いたひずみ分布計測法に用いられる光 学系の概念図を Fig. 3 に示す。光学系は、波長可変型 光源(Tunable Laser)、受光器(Detector)、全反射終端(R)、 FBGセンサ (FBG)からなる。全反射終端と FBG センサ は干渉計を構成している。波長可変光源で可干渉性の 高い光の波長を連続的に変化させ、各波長における反 射光強度を受光器で計測する。Tunable LaserDetectorFBGDDTCDITFRFBGFig. 3 Measurement system with OFDR.FBG 上の微小区間からの反射光は、ある波長の光 のみを強く反射するため、波長可変光源の光波数 k と その反射光強度の関係は、Fig.3 の下段右のような形 となる。また、ピークを示す光波数k は、FBG 部での ひずみの大きさに依存して変化する。ここで、光波数 kと波長2は以下の関係を有する。 1 --2なお、本論文の定式化においては主に光波数を、計測・ 解析結果の表示には主に光波長を用いて記述している。 一方、FBG 微小区間からの反射光と全反射終端Rから の反射光は光路差 2nL; を有し、これら2つの反射光は 干渉を起こす。この干渉光強度の直流成分を除いた変 動成分は、光波数 k に依存して余弦関数的に変化し、 以下のように表される。Dorr = A cos(2nL,k)-3ここで、n は光ファイバの屈折率を表す。前述した二 つの作用により、受光器で検出される光強度は、Fig.3 の下段左に示すように、光波数 k に対してある周期と ピークを持った形で変化する。つまり、次式のような 形で表される。Doct = RFBG (k)cos(2nL;k) ここで、Rroc()は FBG 内微小区間の反射特性を表す光 波数(波長)の関数である。この受光器で検出される信号 の周期から行路差 L, つまり FBG 内微小区間の位置を、 ピークを示す光波数 k からひずみの値を計測すること が可能となる。ここまで全反射終端Rからの光路距離 が L の FBG 内微小区間の反射光について述べてきた。 FBG 全体としては、光路差し つまり周期が異なる式(4) で表される波形の和として光強度が観測される。3.3 データ解析手法上で述べたように、光源の波長(光波数)を掃引し たとき受光器で観測される信号は、光路差つまり FBG の位置によって決定される周波数が異なる信号の重ね 合わせである。この信号に対して、STFT(Short Time Fourier Transform)を応用したデータ解析を行い、簡便 に FBG 内の各位置でのスペクトルを求めることがで きる。まず、ある光波長に着目して、それを中心とし て適切なウィンドウを施して信号データを抜き出す。 抜き出した信号に対してFFT 解析すると、信号内に含 まれる各周波数成分の強度が得られる。これは、着目 した光波長における FBG 内各位置での反射強度に対 応する。着目した光波長を横軸の一点にとり、FFT 解 析の周波数、すなわち光路距離を縦軸にとり、さらに FFT 解析で得られる各周波数の強度を色調で表現する。 全ての波長帯域に対してウィンドウを移動させつつ同 様の FFT 解析を行うと、横軸が光波長、縦軸が光路距 離を表し、さらに色調が強度を表すスペクトログラム が得られる。このスペクトログラムは、各光波長に対 する、FBG 内任意位置での反射強度を示すこととなる。 - Fig. 4 に OFDR によって計測された FBG の反射光に 対する信号とデータ解析後に得られたスペクトログラ ムを示す。 横軸は波長(nm)である。ここでは、4.95 m から 5.05 m に位置するゲージ長が 100 mm の FBG を用 いている。スペクトログラムから FBG 内の各位置に対 応する波長スペクトルを抜き出し、その中心波長、す なわちブラッグ波長を半値幅の中心として求めること75ができる。このブラッグ波長の分布がすなわちひずみ 分布、または温度分布を表すことになる。ExperimentPower (a.u.)イムキーパーコンクーラー1547. 61547815481548215484154861548.8Experiment35051 2Position [m]4,85 154761547.81548154821 548.4154861 5488Fig. 4 Signal obtained from a detector (upper) and spectrogram by using FFT with sliding windows (lower).3.4 応力集中部のひずみ分布計測 - FBG を用いた分布型光ファイバセンサによって、有 孔引張試験片の円孔周りに発生する応力集中部位のひ ずみ分布を計測した例を示す。 1 試験片は直径2mm の円孔を2つ、直径4mm の円孔 を1つ持ち、それらは一方の端を揃えて直線状に並ん でいる(Fig. 5)。ゲージ長 100 mm の FBG を円孔の端 から 0.5 mm 離した位置に直線状に接着した。ただし、 FBGの一方の端20 mm分だけは温度補償のため接着せ ずに、応力フリーの状態にある。 - Fig.6には、試験片に引張荷重 3 KN を付加したとき に受光器で観測された信号とスペクトログラムを示す。 信号からは、いくつかの波長にピークを持つスペクト ルが重なり合っている様子が分かる。またスペクトロ グラムからは、ブラッグ波長が、手前にある応力フリ 一部の波長から、接着部では高波長側に移動しており、 3 つの位置、すなわち円孔付近でさらに高波長側にシ フトしている様子が分かる。100 mm ゲージ長の FBG の円孔付近を含む 50 mm のスペクトルから求めたブラ ッグ波長から算出したひずみ分布と有限要素解析によ って求めたひずみ分布を Fig. 7に示す。実測値が解析 値よりも多少小さな値を示しているが良い一致を示し ていると言える。なお、実測値は FBG に沿って約1mm 毎に得られ、約 0.6 mm の空間分解能で計測されたひず み分布と一致している。すなわち1 mm 以下のひずみ ゲージを 100 点程度隙間なく並べて計測したことと等しく、既存の単点計測センサでは実現が困難な計測を 可能にする分布計測技術であると言える。t%3D2 Aluminum100 mm FBG 201802unit:mm0.26511515110Bonded regionStress free region250Fig. 5 Specimen with holes and FBG sensor.**。 。Power, a.u.fordenime。。。Wavelength, nmVivaternm)Fig. 6 Detector's signal and spectrogram.1200Strain , HE110_20_130405010_10_20304050Position,mmFig. 7 Strain distribution adjacent to the holes.4. 溶接継手のひずみモニタリングOFDR を用いた高空間分解能ひずみセンシング技術 を溶接継手部のひずみモニタリングに適用した。試験 片とセンサ位置を Fig. 8 に示す。試験片は厚さ 1.6 mm の炭素鋼のパイプで、中央部で突き合わせ溶接されて いる。ゲージ長 100 mm の FBG を溶接線に下側に沿っ て接着した。また、AE 計測用にレーザック社製の FOD センサを試験片上部と下部に接着した。試験片に引張 荷重を0.5tまでと 3.0tまで負荷したときのひずみ分布 をそれぞれ Fig. 9 と Fig. 10 に示す。Fig. 9では、点線 で囲った位置以外では荷重に比例してひずみが増減し ているが、点線の位置でひずみが局所的に変動し、ま た除荷後もひずみが残留しているのが分かる。これら の位置では、3tまで荷重を上げる間に AE を伴って、 Fig. 10 に示すようにさらにひずみが変動し、残留ひず76みも大きくなった。 X 線撮影により、これらの異常が 見られた位置の一部に、欠陥があることが確認された。p31.8Biaxial strain gaugeAE Sensor[ 195.0mm 275.0mmStrain gaugeWelded Joint560.0mm 360.0mm10.0mmFBGIncident LightIndex of Position along the circumference90°1802701195.0mm,275.0mmSpecimenFig. 8 Dimension of the speciment and sensor locations.Ot(initial)Ot(unload)10.5t0.25tStrainlue)-Ot.0.25t |--0.5t--150_____,cLIA-1804.0164.0364.0564.0964.1164,076 Position(m)Fig. 9 Strain distributions under the load case of 0.5 t.Ot(unload) Ot(initial)、Strainle)...2tooooB~600 LA4 54.0364.0561 4.076 Position(m)4.0964.116Fig. 10 Strain distributions under the load case of 3.0 t.5.結言 1) 1 mm 以下の高い空間分解能でひずみ分布を計測する光ファイバセンサを開発した。 2) 有孔引張試験片の応力集中部のひずみ分布を正確に計測できることを確認した。 3) 欠陥に関わると思われる溶接継手部のひずみ分布 の変動を捉えることができた。参考文献 [1] E. Udd, “Fiber Optic Smart Structures““,Wiley-Interscience, 1995. [2] G. Meltz et al., “Formation of Gragg grating in opticalfibers by a transverse holographic method,” Opt. Lett.,Vol. 14, No. 15, 1989, pp. 823-825. 1 [3] T. Horiguchi et al., “Tensile strain dependence ofBrillouin frequency shift in silica optical fiber,” IEEEPhoton. Tech. Lett., Vol. 1., No. 5, 1989, pp. 107-108. [4] M. V. Gandhi and B. S. Thompson, “Smart Materialsand Structures,” CHAPMAN & HALL, 1992,pp.122-129. [5] 寺田博之, 小林英男, アロハ航空機の胴体天井吹き飛び,失敗データベースー失敗百選 [6] A. V. Srinivason and D. M. McFarland, “Smart Structures,““ Cambridge University Press, 2001, p2. [7] H. Murayama et al., “Application of fiber-optic distributed sensors to health monitoring for full-scale composite structures,”, Journal of Intelligent Material Systems and Structures, Vol. 14, No. 1, 2003, pp. 3-13. [8] H. Murayama et al., “Distributed strain measurement of welded tubular joint with long gauge FBG,” Proc. of SPIE, Vol. 7004, 2008,700452-1-700452-4. [9] K. Hotate and Z. He, “Fiber optic nerve systems for smart materials and smart structures -Recent progress in Brillouin Optical Correlation Domain Analysis System-,““ Proc. of International Symposium on Secure-Life Electronics, 2008, pp. 47-58. [10] H. Murayama et al., “Strain measurements in bonding layer by an embedded fiber optic distributed sensor with the high spatial resolution,““ 13th US-Japan Conference on Composite Materials, 2008. [11] 小原康平、分布型光ファイバセンサを用いた接着 継手のひずみモニタリング”、東京大学大学院工学系研 究科環境海洋工学専攻 修士論文、2009. [12] 村山英晶、鵜沢潔、”ヘルスモニタリング”、強化 プラスチック、Vol.55、No.4、2009、pp. 136-141. [13] 藤野陽三、社会基盤の災害事故防止に向けたメン テナンスとセンシング技術の活用”、第 20 回鉄道総研 講演会、2007. [14] 秋山学朗、”ひずみ・変位センサ情報を用いた分布 荷重推定手法に関する研究”、東京大学大学院工学系研 究科環境海洋工学専攻 修士論文、2009.“ “?光ファイバを用いた高空間分解能分布センシングに関する研究“ “村山 英晶,Hideaki MURAYAMA,町島 祐一,Yuichi MACHIJIMA,井川 寛隆,Hirotaka IGAWA,大道 浩児,Koji OMICHI