ポンプ軸受及びインペラの不具合の大きさと電磁診断技術の信号との相関関係
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カテゴリ: 第6回
1. 緒言
電力自由化を迎え、発電設備の保守業務は、設備の 言頼性維持と経済性の同時追求が求められており、保 全方式も TBM(Time Based Maintenance:時間基準保全) こ CBM(Condition Based Maintenance: 状態監視保全) を複合させるなど、最適な保全方式が検討されている。 最適な保全方式を実施するためには、設備の劣化状態 を的確に把握できる設備診断技術が必要である。現在、 原子力発電所を含む原子力施設の保守現場では、振動 則定による機器の異常診断法が導入されつつある。振 動測定による機器監視は長い歴史を持っており、その データベースは膨大な量が蓄積され、カテゴリ化され ており、言わば、成熟した技術である。しかしながら、回転機器を対象とした振動測定では、 夏数の回転体・欠陥が存在した場合の診断が困難であ ること、また、部位によっては振動測定データに異常 犬態が反映されない場合もあること、等の課題に対し て解決に限界があると認識されている。そのため、こ てらの課題を解決できる回転機器に対する新たな状態 監視技術の開発が望まれている。新たな状態監視技術である電磁診断技術を原子力発電所の回転機器に適用 することによって、早期に対策が可能となり、安全性 の確保のみならず、大きな経済的効果が期待されている。 [1-5]
電磁診断技術によって、ポンプ等の回転機の状態を 診断するためには、実際の不具合や欠陥と電磁診断技 皆で得られる信号との相関関係のデータベースが不可 つである。本研究では、実機ポンプを使用し、電磁診 断及び振動診断により模擬不具合や欠陥を付与した軸 受を装着したポンプからの取得したデータを比較検討 することによって、欠陥の種類と発生位置に関して、 得られる信号との相関関係を把握し、今後実機の診断 こ適用する為の知見及びデータベースを構築すること を目的とする。2. 装置概要2.1 測定の原理」 電磁診断技術は、磁場中を導体が運動するとその導 本を含む閉回路に起電力が発生するという原理を応用 したものである。発生した起電力によって生ずる渦電 市が作る磁場をピックアップコイルで起電力として検 出する。その導体に不具合があると、この渦電流の流てが正常の場合と異なるので、回転体等の異常を定量 的に検出することができる。図1に示すように導電体が静磁場を横切ることによ って導電体表面に渦電流が発生する。回転機器に外部 より静磁場が加えられている場合、ベアリングやイン ペラなどの回転体においても材質が導電体であれば回 転体の表層に渦電流が発生する。この渦電流は回転体 の振動や回転体のブレによって変化するので、この渦 電流の変化を磁場センサで捉えることで回転機の回転 犬態のわずかな変動をも診断することができる。電磁診断技術の測定原理原理 : -U×B=起電力ピックアップコイル石B:磁石による磁束密度電磁郎U:回転体の回転速度J:BとUによる電流回転・磁場中を押体が回転、一導体内に誘導起電力を生じ渦電流が誘導 ・振動や欠陥による渦電流の変化につ磁場センサで計測)図1 原理2.2 電磁設備診断装置の概要 電磁設備診断装置は、写真1 に示すセンサと、写真 : に示す信号処理回路及び A/D 変換カードを内蔵し た PC から構成されている。電磁センサは、静磁場を 与えるための永久磁石と回転体表面に発生した渦電流 を捉えるためのコイルからなる。一般的な回転機にお ける導電体の回転は低周期なので表皮効果が小さい場 合が多く、導電体ケーシングの外側から磁場信号を通 して回転体の回転状態を検出することができる。軸受 部の磨耗・フレーキング・粉末固着といった異常を軸 受部の公転周期の変化や回転体の回転周期の変化とし て測定することができる。回転異常を電磁信号として 取り出すことによって高精度で高度な設備診断が可能 となる。測定方法は、測定者が電磁センサを対象物である回 転体の回転部付近に配置し、アンプとフィルタを用い て検出コイルに誘導される電圧を加工し、その電圧を AD 変換器によって PC に取り込む。PCに取り込んだ データを精密診断(時間波形分析、周波数分析等)す ることで異常の有無、異常個所の特定が可能となる。計測システムは信号を取り込むセンサであるプローブ、 DC アンプ及びアナログ信号をデジタル信号に変換す る AID 変換機、データ処理及びデータ蓄積用のパソコ ンから成り、そのブロック図を図2 に示す。写真1 電磁センサの写真センサアンプフィルタ内職PC写真2 電磁設備診断装置写真2AnalogDigitalProbeDC AmplifierPCDataRaw DataLow PassFilterGainAD ConverterFile図2 計測システムブロック図2.3 診断可能項目 * 一般的な横型のポンプの場合、電磁設備診断装置の 診断可能項目を説明する。典型的な横型ポンプにおい て図3 に示すように転がり軸受の近傍やインペラ(羽 根)の近傍に電磁センサを設置し測定を行う。転がり 軸受の測定結果からは転がり軸受の内輪、外輪、転動 体等のキズの有無の診断が可能であり、インペラ(羽 根)の測定結果からは軸の回転状態(軸ブレ、アンバ ランス)等の診断が可能である。- 89 -「センサー電磁センサ図3 センサ設置位置3. 実験結果3.1 試験条件 * 実機ポンプに人工的なきずを付与した軸受を設置し、 その時の転がり軸受とインペラからの電磁信号を取得 するため、深溝玉軸受の内輪及び外輪に傷を模擬した スリット状の傷を設けた試験体を用意した。試験軸受 は深溝玉軸受 6306 で実機ポンプの軸回転周波数は 29.4Hz である。軸受の転動面に傷を付与するために、 ダイヤモンドビットを用いた。大きさの違う(幅、深 さ)傷を付与する為、ダイヤモンドビットの先端のボ ールの径の大きさを 1.0mm、1.5mm、2.0mm とし、内 輪に傷を付与した。表1に軸受試験体と実際に付与さ れたきず部の開口幅を纏めたものを示す。 ・ 軸受に施した内輪傷の実際の形状を確認するために、 軸受を切断し、3 次元輪郭測定器で測定を行った。一 例として切断した軸受の内輪傷の様子を写真3 に、図 4 に試験体の測定結果を示す。図の縦横比は 1:10 で、 内輪の転動面の中心付近のキズの様子を表している。1280 2503003032033写真3 内輪傷の写真表1 軸受試験体ときず部の開口幅 番号 仕様等きず部の開口幅 (ダイヤモンドビット径)正常な軸受・1内輪キズ 1.0mm-12.08mm内輪キズ 1.5mm-12.18mm内輪キズ2.0mm-12.43mm正常な軸受・2内輪キズ 1.0mm-22.4mm内輪キズ 1.5mm-22.18mm内輪キズ 2.0mm-22.09mm正常な軸受・3内輪キズ 1.0mm-31.14mm11内輪キズ 1.5mm-31.815mm12内輪キズ 2.0mm-32.34mm0.215010F....0.05トー0Depth (mm)-0.15.0.20~025・0.30.....-0.351....。-40-2-1.5-120-0.510. 51.01.5 Width (mm)図4 きず部の3次元測定結果3.2 軸受の不具合の大きさと信号の相関関係 12 各測定結果においてフィルタリングした信号の包絡 線の自己相関係数を比較した。時間差 0 の時に 1 とな るように正規化されている。内輪キズに対応する周波 数成分は約 144Hz で軸回転周波数は 29.4Hz であるの で、時間差 0.034 秒前後のキズ信号のピークに対して 分析した。図5 に電磁診断(内輪キズ 1.0mm-3、1.5mm-3、 2.0mm-3) の結果を示す。きずの開口幅によって相関値 の高さはあまり変化しないが、自己相関係数のピーク 付近の広がりに相違がみられた。図6に自己相関係数 の半値幅と実際のきず部の開口幅との関係を示す。90Linner 2.0mm-3 Linner 1.5mm-3 Inner 1.0mm-3autocorrelation coefficients-0.030.0380.040non T oka Tods ' Delay time(sec) 図5 包絡線処理した結果の自己相関係数0.0030.00250.002自己相関係数の半値幅(sec)200150.0010,00052152001100511 1傷開口幅(mm)図6 自己相関係数の半値幅と実際のきず部の開口幅との関係・3種類の軸受の中で、傷開口幅の最も小さい 1.14mm では、転動体の傷通過時間に対応する自己相関係数の 半値幅が小さく、傷開口幅 2.34mm では最も大きな拡 がりを示す。 ・傷開口幅と自己相関係数の半値幅とは強い相関関係 を示すので、傷幅の大きさを推定することができる見 通しが得られた。3.3 インペラの回転状態の不具合検出 実機ポンプの測定結果にローパスフィルタ 1kHz を かけた場合にインペラの羽根一枚一枚の信号の極大値 の時間変化と標準偏差の変化を観察することによりポ ンプの回転状態を評価する。図7にインペラの径方向 から測定した場合の概略図を示し、図8 にインペラ信 号とその極大値を示す。インペラの羽根が 4 枚の場合には軸1回転毎に4つの極大値が観測されるので、 図の様に各羽根信号の極大値を取り出す。インペラ の各羽根は加工する際に磁性が変化する為、インペ ラ信号は各羽根の磁性の違いにより各羽根の区別が 付く。軸及びインペラが正常にブレもなく回転して いれば、電磁センサとインペラとの距離は変化しな いので、各羽根毎の極大値は変化しない。図9に正常ポンプの各羽根信号の極大値の変化を 示し、表2に各羽根信号の極大値の平均と標準偏差 を示す。正常ポンプの場合、各羽根信号の極大値の 標準偏差は 0.0023V 程度である。また、今回の実験 において特徴的な変化を示した例として内輪キズ 1.0mm-3 のキズを付与した軸受を組み込んだポン プ(異常ポンプ)の分析結果を示す。図 10 に異常ポ ンプの各羽根信号の極大値の変化を示し、表3に各 羽根信号の極大値の平均と標準偏差を示す。異常ポ ンプの場合、各羽根信号の極大値の標準偏差は 0.03 ~0.04V 程度となり、正常ポンプの結果と比較して 10倍~20倍変化を示している。CasingImpellersensor図7 測定方法(インペラ径方向)Iturn10011turnSignal(V)-0.3 -0.44 -0.5 0.00 001 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10Time(sec) 図8 インペラ信号の極大値(羽根4枚)1.00 forimojawapompomporrumpanturrijmwonjumanjena50.90 - --- --- -- ---- - 0.85 mmmerontronterrotorcervemberransfereMaximum fin values(V)0.75 Preprojr-onferrenforer-freemiprprofereprovirorointnenkwMWエントリオレインハイルー timentrinterminnin 0.60+ 1 0 100200300400 500 600700800 9001000Turns図9 正常ポンプの各羽根信号の極大値(径方向)1.051すでに1100.9550.90MMMaximum fin values(V)50.75-0.65...Tし てHAPTATimonitedT0.50-0100 200300400500 600700 8009001000Turns図 10 異常ポンプの各羽根信号の極大値(径方向)以上のインペラ測定結果をまとめると、以下のよう。 な結論が得られる。* 1. 異常ポンプの場合には、インペラの径方向からの測 1. 異常ポンプの場合には、インペラの径方向からの測 定結果において変動が非常に大きく、軸が偏芯し大 きく振れ回っている可能性がある。 2. 異常ポンプの各羽根信号の標準偏差は 0.03~0.04V 程度で、正常な状態のポンプの測定結果と比較すると 10~20 倍の変化を示している。 3. 以上のインペラ挙動分析の結果から、ベアリングの キズ、シールの劣化、シールのゆるみ、軸の偏芯等 が生じた場合には、観測できることが示唆される。4. まとめ実験および解析の検討結果をまとめると、以下のよ うになる。表2 正常ポンプの各羽根信号の極大値の平均と標準偏差|羽根番号 | 平均(V) | 標準偏差 (V)0.9894189 | 00023073 0.6112491 | 0.0022848 0.7476523 0.0024145 0.8391209 0.0023382表3 異常ポンプの各羽根信号の極大値の平均と標準偏差羽根番号 | 平均(V) | 標準偏差 (V)0.9495311 | 0.0424585 0.5892548 0.0281236 0.7190749 0.0331003 0.8089200 0.0379405軸受の測定結果から、きず信号の自己相関係数の 半値幅を計算することにより、軸受のきず幅を推 定することができる見通しが得られた。 インペラの測定結果から、インペラの羽根信号の 極大値の標準偏差を計算することにより、回転軸 のブレが評価でき、それに伴うポンプの不具合と してベアリングのキズ、シールの劣化、シールの ゆるみ、軸の偏芯等が生じた場合には、観測でき ることが示唆される。以上より、実機ポンプの診断に電磁診断技術を適用 できる見通しを得た。謝辞本文中の試験結果に関して、電磁設備診断によるデー タ取得実験に全面的なご協力を頂きました四国電力株 式会社殿に感謝いたします。929参考文献[1]黄皓宇, 宮健三, 遊佐訓孝, 小阪大吾. 回転体異常の電磁検出, 日本非破壊検査協会第 10 回表面探傷シンポジウ ム, 東京都城南地域中小企業振興センター,2007/01/25-26. [2]小坂大吾、黄皓宇、遊佐訓孝、回転機器の電磁非破壊評価手法の検討 、日本保全学会第4回学術講演会、福井大学、2007/07/02-03. [3] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa andKenzo Miya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. The 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, Michigan State University, USA,2007/09/09-12. [4] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa andKenzo Miya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. Science and Technologyof Maintenance (Under review). [5] 萱田良、黄皓宇、遊佐訓孝、電磁診断技術による異物混入ベアリングの挙動測定、日本保全学会 第5回学術 講演会 水戸市民会館 2008/7/10-12、産学-7.- 93 -“ “?ポンプ軸受及びインペラの不具合の大きさと電磁診断技術の信号との相関関係“ “萱田 良,Ryo KAYATA,石川 達也,Tatsuya ISHIKAWA,堀内 隆夫,Takao HORIUCHI,真木 紘一,Koichi MAKI,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA
電力自由化を迎え、発電設備の保守業務は、設備の 言頼性維持と経済性の同時追求が求められており、保 全方式も TBM(Time Based Maintenance:時間基準保全) こ CBM(Condition Based Maintenance: 状態監視保全) を複合させるなど、最適な保全方式が検討されている。 最適な保全方式を実施するためには、設備の劣化状態 を的確に把握できる設備診断技術が必要である。現在、 原子力発電所を含む原子力施設の保守現場では、振動 則定による機器の異常診断法が導入されつつある。振 動測定による機器監視は長い歴史を持っており、その データベースは膨大な量が蓄積され、カテゴリ化され ており、言わば、成熟した技術である。しかしながら、回転機器を対象とした振動測定では、 夏数の回転体・欠陥が存在した場合の診断が困難であ ること、また、部位によっては振動測定データに異常 犬態が反映されない場合もあること、等の課題に対し て解決に限界があると認識されている。そのため、こ てらの課題を解決できる回転機器に対する新たな状態 監視技術の開発が望まれている。新たな状態監視技術である電磁診断技術を原子力発電所の回転機器に適用 することによって、早期に対策が可能となり、安全性 の確保のみならず、大きな経済的効果が期待されている。 [1-5]
電磁診断技術によって、ポンプ等の回転機の状態を 診断するためには、実際の不具合や欠陥と電磁診断技 皆で得られる信号との相関関係のデータベースが不可 つである。本研究では、実機ポンプを使用し、電磁診 断及び振動診断により模擬不具合や欠陥を付与した軸 受を装着したポンプからの取得したデータを比較検討 することによって、欠陥の種類と発生位置に関して、 得られる信号との相関関係を把握し、今後実機の診断 こ適用する為の知見及びデータベースを構築すること を目的とする。2. 装置概要2.1 測定の原理」 電磁診断技術は、磁場中を導体が運動するとその導 本を含む閉回路に起電力が発生するという原理を応用 したものである。発生した起電力によって生ずる渦電 市が作る磁場をピックアップコイルで起電力として検 出する。その導体に不具合があると、この渦電流の流てが正常の場合と異なるので、回転体等の異常を定量 的に検出することができる。図1に示すように導電体が静磁場を横切ることによ って導電体表面に渦電流が発生する。回転機器に外部 より静磁場が加えられている場合、ベアリングやイン ペラなどの回転体においても材質が導電体であれば回 転体の表層に渦電流が発生する。この渦電流は回転体 の振動や回転体のブレによって変化するので、この渦 電流の変化を磁場センサで捉えることで回転機の回転 犬態のわずかな変動をも診断することができる。電磁診断技術の測定原理原理 : -U×B=起電力ピックアップコイル石B:磁石による磁束密度電磁郎U:回転体の回転速度J:BとUによる電流回転・磁場中を押体が回転、一導体内に誘導起電力を生じ渦電流が誘導 ・振動や欠陥による渦電流の変化につ磁場センサで計測)図1 原理2.2 電磁設備診断装置の概要 電磁設備診断装置は、写真1 に示すセンサと、写真 : に示す信号処理回路及び A/D 変換カードを内蔵し た PC から構成されている。電磁センサは、静磁場を 与えるための永久磁石と回転体表面に発生した渦電流 を捉えるためのコイルからなる。一般的な回転機にお ける導電体の回転は低周期なので表皮効果が小さい場 合が多く、導電体ケーシングの外側から磁場信号を通 して回転体の回転状態を検出することができる。軸受 部の磨耗・フレーキング・粉末固着といった異常を軸 受部の公転周期の変化や回転体の回転周期の変化とし て測定することができる。回転異常を電磁信号として 取り出すことによって高精度で高度な設備診断が可能 となる。測定方法は、測定者が電磁センサを対象物である回 転体の回転部付近に配置し、アンプとフィルタを用い て検出コイルに誘導される電圧を加工し、その電圧を AD 変換器によって PC に取り込む。PCに取り込んだ データを精密診断(時間波形分析、周波数分析等)す ることで異常の有無、異常個所の特定が可能となる。計測システムは信号を取り込むセンサであるプローブ、 DC アンプ及びアナログ信号をデジタル信号に変換す る AID 変換機、データ処理及びデータ蓄積用のパソコ ンから成り、そのブロック図を図2 に示す。写真1 電磁センサの写真センサアンプフィルタ内職PC写真2 電磁設備診断装置写真2AnalogDigitalProbeDC AmplifierPCDataRaw DataLow PassFilterGainAD ConverterFile図2 計測システムブロック図2.3 診断可能項目 * 一般的な横型のポンプの場合、電磁設備診断装置の 診断可能項目を説明する。典型的な横型ポンプにおい て図3 に示すように転がり軸受の近傍やインペラ(羽 根)の近傍に電磁センサを設置し測定を行う。転がり 軸受の測定結果からは転がり軸受の内輪、外輪、転動 体等のキズの有無の診断が可能であり、インペラ(羽 根)の測定結果からは軸の回転状態(軸ブレ、アンバ ランス)等の診断が可能である。- 89 -「センサー電磁センサ図3 センサ設置位置3. 実験結果3.1 試験条件 * 実機ポンプに人工的なきずを付与した軸受を設置し、 その時の転がり軸受とインペラからの電磁信号を取得 するため、深溝玉軸受の内輪及び外輪に傷を模擬した スリット状の傷を設けた試験体を用意した。試験軸受 は深溝玉軸受 6306 で実機ポンプの軸回転周波数は 29.4Hz である。軸受の転動面に傷を付与するために、 ダイヤモンドビットを用いた。大きさの違う(幅、深 さ)傷を付与する為、ダイヤモンドビットの先端のボ ールの径の大きさを 1.0mm、1.5mm、2.0mm とし、内 輪に傷を付与した。表1に軸受試験体と実際に付与さ れたきず部の開口幅を纏めたものを示す。 ・ 軸受に施した内輪傷の実際の形状を確認するために、 軸受を切断し、3 次元輪郭測定器で測定を行った。一 例として切断した軸受の内輪傷の様子を写真3 に、図 4 に試験体の測定結果を示す。図の縦横比は 1:10 で、 内輪の転動面の中心付近のキズの様子を表している。1280 2503003032033写真3 内輪傷の写真表1 軸受試験体ときず部の開口幅 番号 仕様等きず部の開口幅 (ダイヤモンドビット径)正常な軸受・1内輪キズ 1.0mm-12.08mm内輪キズ 1.5mm-12.18mm内輪キズ2.0mm-12.43mm正常な軸受・2内輪キズ 1.0mm-22.4mm内輪キズ 1.5mm-22.18mm内輪キズ 2.0mm-22.09mm正常な軸受・3内輪キズ 1.0mm-31.14mm11内輪キズ 1.5mm-31.815mm12内輪キズ 2.0mm-32.34mm0.215010F....0.05トー0Depth (mm)-0.15.0.20~025・0.30.....-0.351....。-40-2-1.5-120-0.510. 51.01.5 Width (mm)図4 きず部の3次元測定結果3.2 軸受の不具合の大きさと信号の相関関係 12 各測定結果においてフィルタリングした信号の包絡 線の自己相関係数を比較した。時間差 0 の時に 1 とな るように正規化されている。内輪キズに対応する周波 数成分は約 144Hz で軸回転周波数は 29.4Hz であるの で、時間差 0.034 秒前後のキズ信号のピークに対して 分析した。図5 に電磁診断(内輪キズ 1.0mm-3、1.5mm-3、 2.0mm-3) の結果を示す。きずの開口幅によって相関値 の高さはあまり変化しないが、自己相関係数のピーク 付近の広がりに相違がみられた。図6に自己相関係数 の半値幅と実際のきず部の開口幅との関係を示す。90Linner 2.0mm-3 Linner 1.5mm-3 Inner 1.0mm-3autocorrelation coefficients-0.030.0380.040non T oka Tods ' Delay time(sec) 図5 包絡線処理した結果の自己相関係数0.0030.00250.002自己相関係数の半値幅(sec)200150.0010,00052152001100511 1傷開口幅(mm)図6 自己相関係数の半値幅と実際のきず部の開口幅との関係・3種類の軸受の中で、傷開口幅の最も小さい 1.14mm では、転動体の傷通過時間に対応する自己相関係数の 半値幅が小さく、傷開口幅 2.34mm では最も大きな拡 がりを示す。 ・傷開口幅と自己相関係数の半値幅とは強い相関関係 を示すので、傷幅の大きさを推定することができる見 通しが得られた。3.3 インペラの回転状態の不具合検出 実機ポンプの測定結果にローパスフィルタ 1kHz を かけた場合にインペラの羽根一枚一枚の信号の極大値 の時間変化と標準偏差の変化を観察することによりポ ンプの回転状態を評価する。図7にインペラの径方向 から測定した場合の概略図を示し、図8 にインペラ信 号とその極大値を示す。インペラの羽根が 4 枚の場合には軸1回転毎に4つの極大値が観測されるので、 図の様に各羽根信号の極大値を取り出す。インペラ の各羽根は加工する際に磁性が変化する為、インペ ラ信号は各羽根の磁性の違いにより各羽根の区別が 付く。軸及びインペラが正常にブレもなく回転して いれば、電磁センサとインペラとの距離は変化しな いので、各羽根毎の極大値は変化しない。図9に正常ポンプの各羽根信号の極大値の変化を 示し、表2に各羽根信号の極大値の平均と標準偏差 を示す。正常ポンプの場合、各羽根信号の極大値の 標準偏差は 0.0023V 程度である。また、今回の実験 において特徴的な変化を示した例として内輪キズ 1.0mm-3 のキズを付与した軸受を組み込んだポン プ(異常ポンプ)の分析結果を示す。図 10 に異常ポ ンプの各羽根信号の極大値の変化を示し、表3に各 羽根信号の極大値の平均と標準偏差を示す。異常ポ ンプの場合、各羽根信号の極大値の標準偏差は 0.03 ~0.04V 程度となり、正常ポンプの結果と比較して 10倍~20倍変化を示している。CasingImpellersensor図7 測定方法(インペラ径方向)Iturn10011turnSignal(V)-0.3 -0.44 -0.5 0.00 001 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10Time(sec) 図8 インペラ信号の極大値(羽根4枚)1.00 forimojawapompomporrumpanturrijmwonjumanjena50.90 - --- --- -- ---- - 0.85 mmmerontronterrotorcervemberransfereMaximum fin values(V)0.75 Preprojr-onferrenforer-freemiprprofereprovirorointnenkwMWエントリオレインハイルー timentrinterminnin 0.60+ 1 0 100200300400 500 600700800 9001000Turns図9 正常ポンプの各羽根信号の極大値(径方向)1.051すでに1100.9550.90MMMaximum fin values(V)50.75-0.65...Tし てHAPTATimonitedT0.50-0100 200300400500 600700 8009001000Turns図 10 異常ポンプの各羽根信号の極大値(径方向)以上のインペラ測定結果をまとめると、以下のよう。 な結論が得られる。* 1. 異常ポンプの場合には、インペラの径方向からの測 1. 異常ポンプの場合には、インペラの径方向からの測 定結果において変動が非常に大きく、軸が偏芯し大 きく振れ回っている可能性がある。 2. 異常ポンプの各羽根信号の標準偏差は 0.03~0.04V 程度で、正常な状態のポンプの測定結果と比較すると 10~20 倍の変化を示している。 3. 以上のインペラ挙動分析の結果から、ベアリングの キズ、シールの劣化、シールのゆるみ、軸の偏芯等 が生じた場合には、観測できることが示唆される。4. まとめ実験および解析の検討結果をまとめると、以下のよ うになる。表2 正常ポンプの各羽根信号の極大値の平均と標準偏差|羽根番号 | 平均(V) | 標準偏差 (V)0.9894189 | 00023073 0.6112491 | 0.0022848 0.7476523 0.0024145 0.8391209 0.0023382表3 異常ポンプの各羽根信号の極大値の平均と標準偏差羽根番号 | 平均(V) | 標準偏差 (V)0.9495311 | 0.0424585 0.5892548 0.0281236 0.7190749 0.0331003 0.8089200 0.0379405軸受の測定結果から、きず信号の自己相関係数の 半値幅を計算することにより、軸受のきず幅を推 定することができる見通しが得られた。 インペラの測定結果から、インペラの羽根信号の 極大値の標準偏差を計算することにより、回転軸 のブレが評価でき、それに伴うポンプの不具合と してベアリングのキズ、シールの劣化、シールの ゆるみ、軸の偏芯等が生じた場合には、観測でき ることが示唆される。以上より、実機ポンプの診断に電磁診断技術を適用 できる見通しを得た。謝辞本文中の試験結果に関して、電磁設備診断によるデー タ取得実験に全面的なご協力を頂きました四国電力株 式会社殿に感謝いたします。929参考文献[1]黄皓宇, 宮健三, 遊佐訓孝, 小阪大吾. 回転体異常の電磁検出, 日本非破壊検査協会第 10 回表面探傷シンポジウ ム, 東京都城南地域中小企業振興センター,2007/01/25-26. [2]小坂大吾、黄皓宇、遊佐訓孝、回転機器の電磁非破壊評価手法の検討 、日本保全学会第4回学術講演会、福井大学、2007/07/02-03. [3] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa andKenzo Miya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. The 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, Michigan State University, USA,2007/09/09-12. [4] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa andKenzo Miya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. Science and Technologyof Maintenance (Under review). [5] 萱田良、黄皓宇、遊佐訓孝、電磁診断技術による異物混入ベアリングの挙動測定、日本保全学会 第5回学術 講演会 水戸市民会館 2008/7/10-12、産学-7.- 93 -“ “?ポンプ軸受及びインペラの不具合の大きさと電磁診断技術の信号との相関関係“ “萱田 良,Ryo KAYATA,石川 達也,Tatsuya ISHIKAWA,堀内 隆夫,Takao HORIUCHI,真木 紘一,Koichi MAKI,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA