マイクロカプセル作製技術の磁粉探傷試験への応用

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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
ノール/ホルマリン(RF)フォームなどの透明性・低密 - 地球上では地球温暖化・大気汚染・放射能汚染・化度・多孔質構造が十分に小さい材料が選択される。こ 石燃料の枯渇などの問題が生じている。究極的なエネれらの材料を用いた球殻燃料カプセルは、油相と水相 ルギーの安定供給と環境問題の両立が可能な方法との密度を一致させ重力の影響を軽減する密度整合エ して核融合反応が期待されている。マルション法によって作製した。 エマルションの油相 - 燃料となる重水素(D)と三重水素(T)などの軽い原には重合性の単量体ではなく、高分子を有機溶媒に溶 子を電離させ電気的に中性なプラズマ状態にし、1億解した溶液を用い、溶媒蒸発後に残留する高分子によ 度以上の高温プラズマ状態でDとTの2つの原子核りカプセル形状を得た。密度整合エマルション法は重 同士を 1000km/s 以上のスピードで衝突させる事で、合法により作製されるカプセル法に比べて、重合反応 核融合反応を起こす。この核融合反応を維持するため 中の密度増加の影響や単量体の水和の影響が回避さ には D と T の原子核を高い密度で長時間・一定の空れるため、歪みや気泡などによるカプセルの変形を防 間に閉じ込めておく必要があり、これはプラズマ状態ぐことが出来る優れた手法である3。 で可能である。このように超高温のプラズマを閉じ込 * 中でも、密度を調整する事が可能、さらに透明であ める方法として、日本では超高密度プラズマを瞬時にる事からRFフォームによる高精度な球殻燃料カプセ 作り慣性の力で閉じ込める慣性核融合方式と強力な ルの開発を行なった。RF フォームはレゾルシノール 磁力で比較的低い密度のプラズマを長時間閉じ込めとホルマリン水溶液に炭酸ナトリウム(塩基性触媒)を る磁場閉じ込め方式の2種類がある。加え、重合反応を行ない、得られた直鎖状高分子溶液 - 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターではを用いて油相/水相のエマルションを作製した。その 慣性核融合方式を採用しており研究が進められてい後、酸触媒を加えた油相に注入し加熱攪拌する事でゲ る。燃料である D と T を圧縮・加熱する方法としてル化し、超臨界状態で乾燥させる事により、十分に小 レーザー光を用いるためレーザー核融合とも呼ばれさい多孔質の構造を持つカプセルを得る事が出来た。 る。レーザー核融合は強力なレーザー光を mm サイこのように壁面材料や異なる溶媒を用いても真球 ズの球殻燃料カプセルに均一に照射する事により高性および壁厚の均一性の極めて良いμm~mm サイ 温のプラズマを発生させるため、球殻燃料カプセルのズの球殻燃料カプセルを作製する事が可能である。現 精度およびレーザビーム数とレイアウトなどの開発在、この高精度な球殻カプセルの作製技術はレーザー が課題である[1][21。核融合用球殻燃料カプセルのみに利用されている。この技術を基礎に改良を加えることで、溶接や機械製作 2. 核融合用マイクロカプセルの検査や大型施設の保全に有効な技術として活用で * 本報告者は 2003 年~2006 年まで真球性および壁きる。 厚の均一性の極めて良いw m~mm サイズの球殻燃 料カプセルの開発に従事した。球殻燃料カプセル壁面3. 核融合用マイクロカプセルの応用 材料はポリスチレン・アクリル系フォーム・レゾルシ非破壊検査の一つである磁粉探傷試験(MT)は、鉄鋼材料などの強磁性体を磁化させ、欠陥部に生じる漏 連絡先:伊東富由美洩磁束を磁粉により検出する方法である。この方法は、 日本原子力研究開発機構 光量子融合研究グループ 複雑な形状および深さが数μm 程度の微小欠陥の検」 〒619-0215 京都府木津川市梅美台8丁目1番地7 出が可能であり、また磁粉の表面を蛍光色素で覆った E-mail:ito.fuyumi@jaea.go.jp
蛍光磁粉を用いる事で暗室での観察が容易になる。鉄 鋼材料に均一塗布するため、磁粉(粒径サイズ 0.2~60 Jum)を溶液に分散させた分散液を散布するが、磁粉粒 径サイズが微細であるため、観察後の欠陥内部に付着 した磁粉を完全に除去する事は困難である。また蛍光 磁粉分散液の場合、長期間放置すると磁粉と蛍光色素 の分離の可能性が危惧される。この高精度カプセル製造技術を利用し、磁粉を内包 したマイクロカプセル(MC)の作製を試みた。この磁粉 を内包した MC と磁粉探傷試験(MT)を組み合わせる ことで、極めて効果的に MT を行うことができる。3-1. 磁粉探傷用マイクロカプセル密度整合エマルション法を用いて市販の磁粉を内 包した MC の作製を行なった。MC は油相(0相)/水相 1(W1 相)エマルションを水相 2(W2 相)に注入し、70°C で 2 時間加熱攪拌する事により高分子を溶解させた 溶媒が蒸発し、残留した高分子がカプセル化する手法 により得られた(Fig.1)。本実験では、0相として密度 調整したベンゼンと 1.2-ジクロロエタンの混合溶媒 で溶解したポリスチレン、W1 相として磁粉・界面活 性剤・純水、W2 相として 5wt%ポリビニルアルコー ル水溶液を用いた。加熱攪拌後、W2 相を除去するた め洗浄し、磁粉を内包した MC を乾燥させた(Fig.2)。500rpm/10s 0相にW1ビーカ 相を注入。に注入振る乾燥洗浄150rpm/2h/70°C Fig.1 Produce of the micro capsule containing the fine magnetic particles.1mmFig.2 Micrograph of the micro capsule containing the fine magnetic particles (6.7wt%).その結果、MC に内包した磁粉量が多すぎると MC の形状が楕円状に変形した。この原因として、磁粉の 密度は W1・O・W2 の溶液密度よりはるかに高いため、時に沈殿する。このためエマルションの加熱攪拌 中に磁粉が下部に溜まり、形状が変形したと推察した。3-2. 磁粉探傷用マイクロカプセルを用い た磁粉探傷試験 * 磁化器に対して垂直方向(Fig.3 a)と平行方向(Fig.3 b)に深さ 50 μm・幅 0.6mm の欠陥をつけた鉄板を用 いて、Fig.2 に示す磁粉を内包した MC を散布し、起 磁力 1099AT の磁化器を用いて鉄板を磁化させた。そ の結果、磁化器に対して垂直方向の欠陥部にのみ磁粉 を内包した MC が集合した(Fig.3)。欠陥部の透磁率は - 小さいため磁束は欠陥部を迂回して分布し、その一部 は空間に漏洩する。ここに MC を塗布すると、磁粉が 磁化され欠陥の形状に沿って磁粉が付着し磁粉模様 が形成される。磁束は磁化器に対して平行方向に流れ るため、磁化器と平行方向の欠陥部(Fig.3 b)には磁粉 を内包した MC は集合せず、一方磁化器に対して垂直 方向の欠陥部(Fig.3 a)には漏洩磁束が発生したため、 欠陥部に磁粉を内包した MC が集合したと推察した。拡大図Fig.3 Photo of the micro capsule containing the fine magnetic particles, when electric current flows through an electromagnet..4.結言レーザー核融合反応には、球殻燃料カプセルの作製 技術の向上はレーザー技術と並ぶ必須課題である。一 一方、安心・安全が技術開発として注目される今日、原 子炉・化学プラント等の保全技術にはより高精度な検 査が要求されるであろう。現在、原子力機構では伝熱 配管内部の検査装置の開発を進めている。今後、ここ でのマイクロカプセル技術を中核に、各分野の技術を 結集する事で、保全分野において新たな活用を目指す。参考文献 [1] 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターHPhttp://www.ile.osaka-u.ac.jp/ [2] 乗松孝好, 「レーザー核融合炉設計委員会 活動報告」, IFE フォーラム, レーザー核融合技術振興 - 会, No47, (2006). [3] 長井圭治,他2名, 「レーザープラズマ実験用ターゲットの作製術と新材料の利用」, J. Plasma.Fusion Res., 80, pp626-639, (2004). [4] ““Optimization of Gelation to Prepare HollowFoam Shell of Resorcinol-Formalin Using a Phase-Transfer Catalyst““, F. Ito et.al., Fusion Science and Technology, 49, pp.663-668, (2006).108“ “マイクロカプセル作製技術の磁粉探傷試験への応用“ “伊東 富由美,Fuymi ITO,乗松 孝好,Takayoshi NORIMATSU,長井 圭治,Keiji NAGAI
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