敦賀発電所1号機の40年目の高経年化技術評価の概要

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カテゴリ: 第7回
1. はじめに
日本原子力発電株式会社(以下,「弊社」という。) は,わが国の軽水炉初号機であり, 1970 年3月14日 に営業運転を開始し,2010 年3月に運転開始後 40 年 を迎えた敦賀発電所1号機において,国内初の40年目 の高経年化技術評価を実施し,評価に基づく長期保守管理方針を策定し,保安規定の変更認可申請を行い, 原子力・安全保安院(以下,「保安院」という。)の審査 を経て,2009年9月3日に保安院より保安規定の変更 認可を受けることができた。今回, 敦賀発電所1号機の 40 年目の高経年化技術評 価の状況について解説する。
技術評価2.1 評価手順評価は,保安院「実用発電用原子炉施設における高経 年化対策実施ガイドライン」及び「実用発電用原子炉施 設における高経年化対策標準審査要領(内規)」等(以下, 「高経年化対策実施ガイドライン等」という),(独) 原 子力安全基盤機構「高経年化技術評価審査マニュアル」 社団法人日本原子力学会標準「原子力発電所の高経年化 対策実施基準:2008」(以下,「原子力学会標準」という。) に基づいており, 対象機器の部位ごとに着目すべき経年 劣化事象を抽出し、60年の供用を想定した評価を実施, 現状保全の妥当性を検討し,現状保全に追加すべき項目 を長期保守管理方針として策定した。130今回実施した高経年化技術評価の手順のうち, 特記す べき事項としては,1評価対象機器・構造物の抽出に当 たっては、安全重要度クラス1,2及び3の機器・構造 物について, 保全プログラム策定に伴い機器の保全重要 度を決定するために作成した各資料を元にして実施し た,2経年劣化事象(経年劣化メカニズム)の抽出につ いて, 40 年目の高経年化技術評価開始当初、先行プラ ントの抽出状況等を参考に、 劣化メカニズムの整理を行 っていたが,原子力学会標準の発行にともない,原子力 学会標準との整合性を確認している, 3高経年化技術評 価の対象とする経年事象はガイドライン等に記載の6 事象に限定せずに網羅的に実施した、等が挙げられる。2.2 敦賀1号機の技術評価結果概要敦賀発電所1号機の 40年目高経年化技術評価 (耐震 安全性評価含む)内容のうち,代表的な評価内容の概 要として評価部位と評価結果,評価結果より策定した 長期保守管理方針を図1に示す。5コンクリート構造物の強度低下 【技術評価】 熱等の影響による強度低下が考えられるが、通常運転時の温 度、放射線量では強度低下は小さく、これまでの測定結果から 定期的な強度試験等の継続で健全性は確保可能7炭素配管の腐食、減肉 【技術評価】 肉厚測定等による管理の適切な実施で、健全性確保が可能 【長期保守管理方針】 計画的な肉厚測定の継続、データの蓄積・知見の拡充を行い、 適切な時期に配管取替を実施 (取替実施時期:中長期)1原子炉圧力容器の中性子照射脆化 【技術評価】 脆化を考慮した温度管理と、非破壊検査の継続実 施で健全性確保は可能 【長期保守管理方針】 ・次回監視試験計画の策定 (実施時期: 短期) ・劣化傾向(中性子照射脆化)把握のため 使用済み監視試験片の再装荷を検討(実施時期:中長期) 2原子炉圧力容器の疲労割れ 【技術評価】 過去10年間の運転実績を反映した過渡回数(起動 停止回数等)で評価した結果、60年時点での健全 性を確認、今後も運転実績に基づき評価・原子炉格納容器 原子炉圧力容器蒸気変圧器LEONI袋高圧注水系タービン海水→コタロー1海水配管の腐食 【技術評価】 海水が滞留する部位等について、計画的な熱交換器 点検を行うことで健全性確保が可能 【長期保守管理方針】 海水が滞留する部位の点検を実施(評価実施時期:中長期)| 主給水系配管など三月復水器制御棒→放水路へ 4原子炉格納容器電線管貫通部の気密性低下 【技術評価】第5給水加熱器の耐震安全性ニー冷却水」 電線管貫通部の一部で60年時点での健全性評【技術評価】(海水) 価ができていないが、気密性低下は漏えい事試実機の肉厚測定データにより評価した結果 験で把握可能-Cポンプモータの絶縁特性低下60年時点では耐震安全性の許容値を下回る 【長期保守管理方針】【技術評価】【長期保守管理方針】 一部の電線管貫通部の計画的な取替を実施60年の通常運転及び事故時雰囲気において、 今後の肉厚測定データを反映し再評価を実施 (取替実施時期:短期) 絶縁性能を維持可能(評価実施時期:中長期) 【長期保守管理方針】 今後、事故時雰囲気による劣化を考慮し再評3原子炉再循環系配管等の応力腐食割れ 価を実施 (評価実施時期:中長期)【技術評価】 4ケーブルの絶縁特性低下残留応力低減措置や水素注入により応力腐食割れの感受性は 【技術評価】低下、計画的な点検で健全性確保が可能 長期健全性試験の結果、急激な絶縁特性低下の可能性は小さく、絶縁測定等の【長期保守管理方針】 継続で健全性確保が可能今後、応力腐食割れの研究成果が得られた場合は、必要に応じ 【長期保守管理方針】て点検計画に反映」 (点検計画反映実施時期 : 中長期) 今後、劣化の研究成果を踏まえて再評価を計画 (評価実施時期:中長期)(短期:平成22年3月14日から5年間中長期:平成22年3月14日から10年間)図1 敦賀発電所1号機 40 年目の高経年化技術評価の概要2.3 40年目の評価で追加する評価 - 敦賀発電所1号機は、40年目の評価として以下の事 項を追加して実施した。 1 30年目の評価実施以降の経年劣化の傾向評価 - 中性子照射脆化のように,経年劣化傾向の予測を実 施している経年劣化事象について、30年目の高経年化 技術評価における予測との比較検証を実施し,30年目 評価時の予測と異なっている場合は,その原因を評価 し,40年目の評価への反映及び追加保全策の抽出を実 施した。2 保全実績/30 年目の技術評価の検証 - 30年目の高経年化技術評価以降に実施した予防保全 策や新たに実施している現状保全について検証し,追 加保全策の抽出を行った。また, 敦賀発電所1号機で過去 10年間に発生したト ラブル等について原子力施設情報公開ライブラリー 「ニューシア」から経年劣化が原因と考えられる 16 件 を抽出し 30 年目の技術評価を検証した。131各トラブル発生の背景として, 30 年目の高経年化 技術評価において, 「的確な評価対象機器の抽出」, 「評価対象部位の使用材料や環境条件の同定並びに それらを踏まえた代表部位での評価内容」, 「点検不 可部位に対する健全性評価の考え方」, 「高経年化評 価と実際の現状保全の乖離」等の観点から,評価上 の不整合や検討不足がなかったかを検証した結果, 40 年目の評価で追加すべきと考えられた項目につ いて,評価結果や長期保守管理方針に反映している。3 30 年目の技術評価に基づく長期保守管理方針(旧長期保全計画)の有効性評価 - 30 年目の高経年化技術評価において策定した追 加保全策(長期保守管理方針)の有効性に関する評 価については,点検手法,点検結果に関する評価等 を実施し, 30 年目の長期保守管理方針に基づいた保 全活動が有効であったことを確認した。2.4 長期保守管理方針今回の 40 年目の高経年化技術評価の結果,合計 17 項目の長期保守管理方針を策定した。内容及び実 施時期の抜粋を表1に示す。 * 策定した長期保守管理方針は,保安規定に記載さ れ,今後は長期保守管理方針に基づく保全を実施し ていくこととなる。 実施時期については, 40 年目の 高経年化技術評価の結果,早期に対応することが必 要なものを短期(40年目を経過以降5年以内に実施 するもの)とし,中長期的な傾向監視が必要なもの などを中長期(10年以内に実施するもの)とした。3.まとめ今回、敦賀発電所1号機の 40 年目の高経年化技術 評価を実施し, 60 年間の運転期間を想定しても、大部 分の機器・構造物は、現在行っている保全活動を継続 していくことにより、今後も健全に維持できるものと 評価できた。一部の機器については、現在行っている保全活動 (第 32 回定期検査で実施した改造工事を含む)に加 えて、長期保守管理方針として取りまとめた新たに追加して実施すべき項目(機器の取替、知見の拡充、 監視試験の計画など)を、今後保全計画に反映し、 着実に実施していくことで、発電所設備を今後も健 全に維持していくこととした。なお、弊社は敦賀発電所1号機を 2016年で営業運 転終了することを表明しており、営業運転終了まで 適切に高経年化対策を実施していく。また、今回の高経年化技術評価で実施した耐震評 価については、新耐震指針に基づく評価の見直しを, 耐震バックチェック終了後に実施予定である。表1 長期保守管理方針の内容及び実施時期(抜粋)保守管理の項目実施時期 1原子炉圧力容器の中性子照射能化については、監視試験片の取出し時期を明確にした次」にして、短期 回監視試験計画を策定する。 2原子炉圧力容器の中性子照射脆化については、次回監視試験結果に基づき評価を行い、 能化予測に活用する。 なお、次回監視試験片の取り出し後の運転に際しては監視試験片の再生技術を活用して@中長期 いく。 1原子炉圧力容器等の粒界型応力腐食割れについては,点検結果及び粒界型応力腐食割れ に関する安全基盤研究の成果が得られた1中長期 場合には、保全への反映の要否を判断し,要の場合は点検計画に反映する。 12時ガス系配管の粒界型応力腐食割れについては、計画的な超音波探傷検査を実施する。 2短期 配管の腐食(流れ加速型腐食,液滴衝撃エロージョン)については、安全基盤研究の成果 が得られた場合には,保全への反映の要否を判断し、要の場合は社内規程の「配管肉厚管 理手引書」を改訂する。短期」 肉厚測定による実機測定データに基づき耐震安全性評価を実施した炭素鎖配管(蒸気ター (終了 ) ビン系給水加熱器ドレン系,復水系,原子炉系)については、今後の減肉進展の実測デ ータを反映した耐震安全性の再評価を実施する。 格納容器冷却海水系配管,非常用ディーゼル機関冷却水系配管及び高圧注水系ディーゼル 用冷却海水配管の腐食については、現状保全に追加し、海水が滞留する部位等に対し計画」 中長期 的に目視点検を実施する。 用の肉厚測定による実機測定データに基づき耐震安全性評価を実施した第5給水加熱器に中長期 | ついては、今後の周滅肉進展の実機測定データを反映した耐震安全性の再評価を実施する。 11電気ペネトレーションの気密性低下及び絶縁特性低下については、60年間の通常運転及 び事故時雰囲気による劣化を考慮した事故時耐環境性能に関する再評価を行うとともに、 計画的な取替を実施する。1中長期 また、電気・計装設備の徹全性に関する安全基盤研究の成果が得られた場合には、保全への 反映の要否を判断し、要の場合は点検計画に反映する。 の電気ペネトレーション(高圧動力用キャニスタ型)については、計画的な取替を実施する。 2短期 1低圧ケーブルの絶縁体の絶縁特性低下については、原子力安全基盤機構による安全研究 「原子力プラントのケーブル経年変化評価技術調査研究」の成果を反映し、長期健全性の 1中長期 再評価を実施する。 2低圧ケーブルの絶縁体の絶縁特性低下については、60年間の通常運転及び事故時雰囲気 による劣化を考慮した長期健全性試験を実施し、健全性の再評価を実施する。なお、再評 価にあたっては、原子力安全基盤機構による安全研究「原子カプラントのケーブル経年変2中長期 化評価技術調査研究」の成果を反映する。 3同軸ケーブルの絶縁体の絶縁特性低下については、原子力安全基盤機構による安全研究「原子カブラントのケーブル経年変化評価技術調査研究」の成果を反映し,長期健全性の 3中長期 |再評価を実施する。 低圧ポンプモータの絶縁物の絶縁特性低下については、事故時環境内で機能要求がある低 圧ポンプモータについて、60年間の通常運転及び事故時雰囲気による劣化を考慮した事故 時耐環境性能に関する再評価を行う。中長期 また、電気・計装設備の健全性に関する安全基盤研究の成果が得られた場合には、保全への 反映の要否を判断し,要の場合は点検計画に反映する。参考文献 [1] 「原子力発電所の高経年化対策実施基準2008」2009年2月 (社)日本原子力学会132“ “敦賀発電所1号機の 40 年目の高経年化技術評価の概要“ “津田 保,Tamotsu TSUDA,楠 丈弘,Takehiro KUSUNOKI,岡田 寛,Hiroshi OKADA,山田 多士,Takeshi YAMADA
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