浜岡原子力発電所3号機運転期間延長に向けた取り組み

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カテゴリ: 第7回
1. はじめに
平成21年1月から導入された原子力発電所の新検 査制度は,発電所で行う保全活動を充実させ,その 「継続的な改善を図る「保全プログラム」の構築によ って安全確保の実効性を高める制度であり,結果と して原子炉の運転期間を従来の 13 ヶ月から最長 24 一ヶ月まで延長することが可能になるものである。保全活動の充実と保全プログラム:プラント毎の特: 性を踏まえた科学的根拠に基づくきめ細かい点検・ 補修の実施や、運転中機器に対する状態監視技術の 導入(回転機器の振動診断など)により得られる保 全データから保全の最適化を進めていくもの 浜岡原子力発電所では,長期サイクル運転(運転 期間延長)を3号機から導入できるよう取り組みを 進めており,その保全活動の実施状況について紹介する。2. 新検査制度の下での保全活動の充実 2.1状態監視データの採取 - 運転中の機器に対して劣化の傾向を把握し,評 価・分析するため, 状態監視データを採取している。平成 18年度から,振動診断(回転機器),潤滑油 診断(回転機器他)赤外線サーモ診断(回転機器, 電気設備)による診断対象範囲を拡大し,運転中機 器の状態監視の充実を図っている。Tablel 状態監視データ採取の実施状況 状態監視技術実施状況 振動診断 回転機器の軸受の振動状態を監視(診断適用数:約 1,200台) 潤滑油診断 重要度の高い機器および保油量の多い機器の潤滑油の劣化,軸受の摩耗等を監視(診断適用数:約 250 箇所) 「サーモ診断 特殊環境下の電源設備および回転機器等について過去と有意な温度差が無い ことを監視(診断適用数:約 1,100台)2.2 点検手入れ前データの採取点検手入れを実施する前の機器の劣化状態(部品 の摩耗量など)に関するデータを採取・評価し、保 全計画の妥当性の検証および保全の最適化に用いている。平成 18 年度にはデータ採取について標準化され た手順を定めて、従来の劣化状態の管理を採取~評価まで体系的に行える採取方法としており,現在は 一定検毎に約 3,000~4,000 機器に対してデータを採取 している。133点検手入れ前データの採取 ・分解機器の点検手入れ前 に各部位の劣化状態を確認 することFig.2 点検手入れ前データの採取状況劣化状態はその程度に応じて C1~C4 に分類され, 劣化状態に応じて点検の実施方法を見直す評価に利 用している。劣化状態評価方針 ||C4:劣化なし一 C3:基準内の劣化 - C2:基準を超える劣化+ C1:機能喪失点検周期延長現状維持 点検見直し検討 - 点検見直しFig.3 点検手入れ前データの採取・評価方針2.3 保全活動管理指標の設定保全活動管理指標は,発電所(号機毎)の計画外 停止回数や機器の故障回数などを定量化して,現状 の保全活動が機能しているかを評価する“ものさし” であり,現状の保全活動に問題がないか評価を行い 改善につなげていくものである。Table2 保全活動管理指標の設定例管理指標と目標値 系統」 要求される機能 予防可能非待機時間故障回数、 RHR |炉心冷却機能(MS-1) | <1回/サイクル | <240 時間 / サイクル 燃料プール水補給機能<2 回 / サイクル | <720 時間/2 サイクル (MS-2)FPC浜岡では新検査制度導入前の平成 19 年度より指 標の設定および監視の運用を行っており,3号機お よび5号機については保安規程に添付する保全計画 に保全活動管理指標およびその目標値を定めて国へ 届出し,監視を行っている。2.4 保全プログラムの構築 1 新検査制度の下に行う保全活動は,あらかじめ点 検や補修の実施計画を保全計画として定める(P1 an)。保全計画に基づき点検,補修を実施し,保全 活動の充実として行う状態監視データの採取,点検 手入れ前データの採取,保全活動管理指標の監視を 行う (Do)。それらの実施結果から得られたデータ を基に保全の有効性評価を行い(Check), 保全 計画の見直しを行う(Act)。このように保全活動 を継続的に改善していく仕組みを,新検査制度の導 入に合わせて原子炉施設保安規定に定めている。「P」 保全計画の策定「D」「A」保全計画の見直し、点検・補修の実施 1・点検,補修の結果、 ・状態監視データ ・点検手入れ前データ: ・保全活動管理指標 等「C」保全の有効性評価」Fig.4 保全のPDCA(保全プログラム)2.5 その他新検査制度の導入に合わせて、発電所の所員や協 力会社に対して,新しい保全の仕組みの浸透および 定着を図るために,当所の保全に関する取り組みや 最新情報等を月刊誌(はまおか保全情報)に纏めて 紹介している。平成22年5月12 浜岡原子力発電はまおか保全情報 IMah Vol.10務部はまおか全情報誌は、設備保全の管理監が番状態基準への移行を完了しています。 で作成しています、接制度に基づき保全のこのように大きな司を性がある禁断技です 化を感り、発電所の品質をより一向上させていくた決して万能の技ではありません。現場で甘さます。 め、皆さまと有益な保全情報を共有していきたいと考 感で感じるナマの情報は状態の大事なインプ! えておりますので、ご一読下さい。帽です。現場の状態で「間」を感じたら、極的な情報共有をお願いします。 ■って強する) 診断技師の適用について艦って場する(2) Mah.Vol5 (平成21年9月4日)で、 全部が| サウステキサスプロジェクト発電所額査科 実施している設技術に振動診断・ 診断・平成22年3月1日から4日間、米国テキサス州 赤外線サーモ診断があることをご紹介しましたが、今あるサウステキサスプロジェクト発電所を調査! 回は動画技術についてもう少し詳しく語介します。ました。米国発電所によく見られる特徴ですが、 設備保全録では、基本的に下記の考え方で、動でも部大な量の予品がストックされているのをす 断を実施しています。しました。資産価値約100億円!? (測定部位)回転体の軸受部 (調定度)10月(必要に応じて頻度を短編〉 (対象換器)連続運転している回転や転時間が予めできる回転機(約1200台) お断の目的は大まかに分けて2つあり、1年 劣化状況の把握と発故導のを早期発見およびを 設備診断技術を前提とした保全方式の最適化の推 (伏際基準保全拡大など)があります。巨大な子倉庫内部 身体的な活用軟況について、まず、 準の(大型モータ、変圧器 これは、 体力の保全」Fig.5「はまおか保全情報」誌3.3号機技術評価書の国による確認平成 21年3月,3号機第 16 保全サイクルの保全 計画を策定するにあたり,定期検査毎に点検を実施 している機器について,点検の実施頻度を評価し, 原子炉を停止して実施する必要がある点検の最短の 間隔は、24ヶ月以上と評価した。第 16 保全サイク ルの原子炉の運転期間は従来通り 13 ヶ月としたも のの, 点検の最短の間隔を 24ヶ月とする技術評価書 を,保全計画に添付して国へ届出た。国(NISA 原子力安全・保安院)および原子力安 全基盤機構(JNES)は,4月 23 日~24日と,3号機 第16回定期検査期間中の6月 22 日~24日の2度に わたり,浜岡原子力発電所に立入検査を行い,当社 が浜岡3号機の技術評価に使用した過去の点検記録 の確認や,機器の点検間隔の設定についての適切性 の確認,ならびに機器の分解点検時における,点検 手入れ前の状態およびその記録の採取状況の確認を 行った。134Fig.6 立入検査状況 (非常用ディーゼル発電機の点検手入れ前の状態)これらの立入検査の結果,9月3日に開催された 原子力安全委員会で,国より当社の技術評価は適切 であることが報告された。
-----【原子力安全・保安院による立入検査の所見】 立入検査の結果, 科学的根拠の収集が漏れなく行 われており,評価対象部位についての設備状況を確 認のうえ, 中部電力の評価内容が適切であることを 確認した。よって,浜岡原子力発電所3号機の保全 計画において設定されている、定期検査ごとに実施 している点検等の実施頻度は適切なものと評価で きる。今後は定期検査, 定期安全管理審査等で保全の実 施状況を確認するとともに,次回以降の保全計画の 届出の際に継続的な改善の状況を確認していく。【原子力安全・保安院による確認の経過】 H21.1.1 新検査制度に関する省令施行 H21.3.19 新検査制度を踏まえた保安規程の変更届出(浜岡3号機第 16保全サイクルの 保全計画...原子炉の運転期間は従来通 り 13 ヶ月としたものの,点検の最短の 間隔を科学的根拠に基づき現行の13 ヶ 月から24ヶ月まで延長可能であることを確認した技術評価書を添付) H21.4.23-24 NISA および JNES による浜岡原子力発電所3号機 技術評価書に係わる立入検査 H21.5.22 NISA の保守管理検討会(浜岡3号保全計画に添付の運転期間延長に向けた技術評価はおおむね妥当) H21.6.22-24 立入検査(2回目) H21.9.3 NISA より立入検査結果の通知(浜岡3号の技術評価内容は適切)4. 運転期間延長に向けた課題 運転期間延長を行った場合,点検頻度が 2 サイク ル以上の機器は,前倒しして点検を行う必要が生じ る。(例:運転期間 13 ヶ月の条件で,点検頻度が 2 サイクル毎(26ヵ月毎)になっている機器は,運転 期間を16ヶ月に延長した場合, 2 サイクル (32 ヶ月) 運転できることが評価されていないため, 1 サイクって点検の 点検間隔ル毎に点検を行う必要が生じる)このため、定期検査中の作業量増大による定期検 査期間の延長が見込まれることから,以下の取り組 みを行っている。4.1 機器の点検間隔延長の評価 - 点検周期が 2 サイクル以上の機器について点検の 実施頻度の設定に関する技術評価を行い,点検間隔 の延長を図る。4.2 年間を通じた作業量の平準化これまで定期検査中に実施していた点検について, 適切なリスク評価に基づき,機器の劣化傾向を把握 できる状態監視も組み合わせながら原子炉運転中の 保全へ移行を図る。また、現場での機器分解点検を 行わず、予め点検を終えた機器との交換(予備品入 れ替え方式)による保全の拡充も作業量の平準化に 有効である。5.まとめ - 浜岡では,新検査制度が導入される前から設備診 断による状態監視や点検手入れ前データの採取など 保全データの充実に取り組み,新検査制度に対応し た新しい保全の仕組みを構築して保全の最適化を進 めてきた。さらに, 3号機第 16保全サイクルの保全計画では 定期検査毎に行う重要な機器の点検の最短の実施頻 度に対する技術評価もそれらのデータに基づき行い, 原子炉を停止して実施する必要がある点検の最短の 間隔は 24 ヶ月以上とした評価は国より適切である とされ,技術的には長期サイクル運転に移行する基 盤は整っていると考えられる。 * 今後は,運転期間延長に向けた諸課題を踏まえつ つ保全の最適化を更に進めるとともに,これらの取 り組みについて地域の方々にも理解いただく活動を 行っていく。参考文献 [1] 原子力安全・保安院,保全プログラムを基礎とす る検査の導入について”, パブリックコメント「実 用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則」, 「研究開発段階にある発電の用に供する原子炉 の設置,運転等に関する規則」及び「電気事業法 施行規則」の一部を改正する省令案等に対する意見募集資料, (2008) [2]成瀬昌樹, 松崎章弘,小高敏浩,水野道太,佐野忠之,進藤俊哉、“浜岡3号機設備の点検間隔の延長に 係る技術評価の概要について”, 日本保全学会第 6回学術講演会要旨集,A-4,97-101,(2009)135)“ “浜岡原子力発電所3号機運転期間延長に向けた取り組み“ “石上 陽造,Youzou ISHIGAMI,小高 敏浩,Toshihiro KODAKA,水野 道太,Michita MIZUNO,佐野 忠之,Tadayuki SANO
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