東海再処理施設における高性能フィルタ交換周期の適正化

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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
2. 東海再処理施設における換気設備の概要東海再処理施設では、管理区域を有する施設からの2.1 換気設備の構成 気は、排気系統に設けられた排気フィルタでろ過さ 換気設備の概要を図1に示す。換気設備はブロア、 して、排気筒から環境に放出している。このため、排 フィルタ、ダクト等で構成され、施設外から施設内に、 気フィルタとして、JIS Z 4812(1995)に基づく性能を有空気を取り込む給気系統、この取り込んだ空気を主排 ~る HEPA フィルタ(High Efficiency Particulate Air 気筒より放出する排気系統とに区分している。 ilter)を使用している。[1]施設内は、線量率の程度に応じて、低いほうからグ 東海再処理施設におけるフィルタの交換基準は、フリーン区域、アンバー区域、レッド区域に区分してい ルタ差圧及び表面線量率を基に定められている。まる。また、区域毎に設けられたブロアにより施設内の こ、この交換基準に達しない場合でも、経年劣化対策負圧を維持し、閉じ込め機能を確保している。 [2]して、使用開始から5年を目安に定期的な交換を行 ってきた。しかし、使用済みのフィルタは、低放射性アンバー系ブロア 室棄物等として貯蔵管理が必要であり、低減化が求め れる。 そこで、交換実績の調査及び実際に設置されている フィルタの健全性を確認することにより、交換周期の給気系統 目直しを行い、適正化を進めたのでその結果についてリーン系ンはア 告する。 こで、交換実績の調査及び実際に設置されてい ータの健全性を確認することにより、交換周期
東海再処理施設における換気設備の概要アンバー系フロアダンパー・ 給気プロア 気フィルタ 洗浄塔12-逆に排気フィルター| レッド1系ブロア人気・シッド2系フロア給気系統ター・グリーン系ノア※1グリーン区域--- 負圧値(-10P1~350PA)※2アンバー・区域 色日:値(-70Pa~100P)排気系統 ・・予備系統 ※3シッド区域 負圧値(-1.50Pa~-300PA)1 換気設備概要 178 -2.2 フィルタの仕様と役割換気設備の給気系統及び排気系統に用いているフィ レタの種類、仕様等を表1に示す。なお、捕集効率が 違う2種類の HEPA フィルタを使用しており、0.15um プ) DOP (DiOctyl Phthalate)を用いた粒子捕集効率試験に おいて、フィルタ単体の捕集効率が 99.97%以上(JIS Z 4812(1995)に基づく性能)の HEPA フィルタを排気系統 で、0.3gum の DOP を用いた捕集効率が 97%以上(東海 再処理施設における特殊仕様)のHEPAフィルタを給気 系統で使用している。このうち、排気系統の HEPA フ ィルタは、取り扱う放射能量等に応じて1段、又は直 列2段に設置され、環境中へ放出される排気をろ過す る最終段階のフィルタとして重要な役割を果たしてい る。 * 排気系統で使用する HEPA フィルタの構造を図2に 示す。本フィルタの重要性から、耐熱性、耐食性、耐 候性等を考慮した作りとなっており、外枠、セパレー ターに SUS304、ガスケット、密封材としてシリコンが 使用されている。[3]表1 換気系に使用しているフィルタの仕様仕様ろ材セパレータ捕集効率フレフィルタグラスウール亜鉛鋼板85% (重計法:15,89908200;))給氣系統HEPAフィルタグラスファイバ特殊加工紙難燃性合板フレフィルタグラスウール亜鉛板 SUS304非知系統2979%(DOP03日) 海再処理における特片仕事85% ・重量法、JIS-690002003) 29997%(DOP015日).4SZ40 :995HEPAフィルタクラスファイバSUS304SUS304| ガスケット密封材SAZEZWA マンロンパンマン!「マスクスwwwwwwセパレーターろ材ガスケットコフィルタ仕様 外 枠 :SUS304 ろ材 :グラスファイバ セパレーター:SUS304 密封材 1 :シリコン系 ガスケット:シリコン系 1 :610(H)×610(W)×292(D)mm又は610(H)×305(W)×292(D)mm(ガスケットを除く) 捕集効率 11 :99.97%以上(DOP:0.15 D)エアブロー図2 排気系統に使用するHEPAフィルタの構造SUS304 グラスファイバ SUS304 シリコン系 シリコン系 610(H)×610(W)×292(D)mm 又は610(H)×305(W)×292(D)mm(ガスケットを除く) 99.97%以上(DOP:0.15up)フィルタの構造3. フィルタの保守管理3.1 従来のフィルタ交換基準 東海再処理施設の換気設備で使用しているフィルタ の交換は、(1)~(3)に示す基準に達した時、又は達す る恐れがある場合に交換を行う。1) フィルタ前後の差圧上昇 - 初期圧力損失の2倍程度から急速に上昇する傾向 確認されている。このため、交換基準は、「フィルタ 差圧が初期圧力損失の2倍以上に上昇した場合」に 設定している。 (2) フィルタケーシング表面の線量率上昇フィルタが設置されている区域の放射線管理を考 慮し、交換基準を「フィルタケーシング表面の線量 率が 200uSv/h以上に上昇した場合」としている。 (3) 定期的な交換(1)、(2)の交換基準に該当しない場合でも、使用 期間中において、ろ材、セパレーター、密封材、ガ スケットなど構成部材の経年劣化により、フィルタ ユニット全体の捕集性能(総合捕集効率)が低下す る可能性がある。このため、使用開始から5年を目 安として定期的にフィルタ交換を実施してきた。3.2 フィルタの交換実績 * 使用開始から5年を目安として定期的に交換を行っ ていた 1997 年以前の給気系統のフィルタ交換実績を 図3に、排気系統のフィルタ交換実績を図4に示す。 1. 年度毎の交換枚数に若干のバラツキは見られるもの の、累積交換個数はほぼ一定の傾斜を示しており、給 気系統では毎年 900~1200 個程度、排気系統では毎年 100~300 個程度のフィルタが交換されている。給気系統及び排気系統のフィルタ差圧の経時変化 (代表例)を図5に示す。給気系統の差圧上昇は急激 であり、1年程度でフィルタ差圧が、初期圧力損失の2 倍以上に上昇している。一方、排気系統のフィルタ差 圧は極めて緩やかな上昇を示し、使用開始から5年を 経過しても、フィルタ差圧の変動はわずかである。14008000一つ年間交換回数 一累積交換回数700060005000 数4000円年問交?数累積交?個数3000200010001990199119921993 1994199519961997年度図3 給気系統のフィルタ交換実績3年間交換個数 --第交?数年間交?個数果横交?個数1990199119921993 1994年度199519961997図4 排気系統のフィルタ交換実績当該排気フィルタの交換は、2002年11月に実施フィルタ差圧(Pa)1辞気のフィルタ差圧 一気統のフィルタ圧0:フィルタの交換。Montainmeinonenomicminninitiantinunomini21日200220092003 2004 2005 2006 2007 2008年度 図5 フィルタ差圧の経時変化(ウラン脱硝施設)4. フィルタの交換周期4.1 フィルタの傾向管理給気系統のフィルタは、定期的にフィルタ差圧を点 検し、その傾向から交換時期が予測可能である。この ため、従来どおり傾向管理による交換を行うことが最 も適正である。排気系統のフィルタは、フィルタ表面線量率及びフ ィルタ前後の差圧を監視すると共に、交換基準に達し ていない場合は、経年劣化状況に合わせた交換周期が | 求められる。このため、使用開始から5年を目安とす る従来の交換基準については、実際に使用している排 気フィルタの経年劣化状況を確認することで、見直し が図れると考えた。4.2 排気系統のフィルタ健全性確認 - 使用開始から5年及び10年以上経過したフ 対象として、現場での粒子捕集効率試験を行い 捕集効率※1 を確認すると共に、交換したフィル ろ材を採取し、引張強度試験を行った。また、タ交換の際には、外観目視点検によりフィルタ据付状 態の確認を行った。※1 総合捕集効率とは、フィルタケーシングにフィ ルタを取り付けた状態における、ケーシングの密 閉性、フィルタの据え付け状態を含めた、フィル タユニット全体の性能を表す。4.2.15年を経過した排気系統のフィルタ健全性確認 5 年以上使用した排気系統のフィルタを対象として 以下の確認試験を実施した。 (1)粒子捕集効率試験結果5年以上使用した排気フィルタが収められた154 基のフィルタケーシングについてJIS Z 4812(1995) に基づく DOP を用いた粒子捕集効率試験を行っ た。その結果、全て総合捕集効率は 99.99%以上で あり、排気フィルタの性能及び据付状態が維持さ れていることを確認した。 (2)引張強度試験結果5年以上使用した一部の HEPA フィルタを交換 し、ろ材を採取して引張強度試験を行った。試験 方法は、JIS P 8113(2006)[4]に基づき実施、縦方向 及び横方向に対して各 3枚を用いて試験した。な お、試験結果は、米国 MIL 規格(MILitary standard) で定められた値を参考値とした。試験の結果は、MIL 規格の基準を上回っており、 ろ材の強度が維持されていることを確認した。 | MIL規格(参考値) 試験結果470.4 縱方向引張強度 2351.1470.4 441.0960.4 横方向引張強度 >436.01029.0 921.2(N/m) (3)外観目視点検結果HEPA フィルタについて、外観目視点検により、 経年劣化状況を確認した。その結果、ろ材やセバ レーターの潰れ、腐食等の劣化は確認されなかっ た。なお、ビニールバック ※2 の一部に、わずかな 変色が見られたが、これは排気フィルタの総合捕 集効率に影響を与えるものではない。ルタを、総合夕から180、捕集効率を低下させる恐れのある経年劣化は確これらの調査結果から、5 年以上使用したフィルタ以上のフィルタ交換周期の適正化に向けた取り組み では、捕集効率を低下させる恐れのある経年劣化は確により、低放射性廃棄物発生量の低減化、フィルタ交 認されなかった。換作業頻度の減少及びフィルタ購入コストの削減が図られた。 ※2 気密性を保持したままフィルタ交換を行うため JIS P 8113(2006)に準拠して行った引張強度試験 の結果、MIL 規格に定める値を上回っていた。| MIL規格(参考値) 試験結果646.8縦方向引張強度>351.1597.8597.81107.4横方向引張強度>436.010781195.6(N/m) 応しくないのに。TRIPドリルスマンションスイッチ、られた。 ※2 気密性を保持したままフィルタ交換を行うため に、フィルタと共にケーシング内に収められてい5. まとめ る塩化ビニル製の袋給気系統のフィルタは1年程度でフィルタ差圧が初 * 4.2.2 10年を経過した排気系統のフィルター 期圧力損失の2倍以上に上昇してしまうため、交換時 健全性確認期を延長することはできなかった。 10年以上使用した排気系統のフィルタを対象として * 排気系統のフィルタは、その重要性から、経年劣化 以下の確認試験を実施した。の有無に係わらず、5 年を目安として定期的に交換を (1)粒子捕集効率試験結果行ってきたが、経年劣化状況を確認することにより、 89 基のフィルタ ケーシングについて行った粒子交換時期の適正化を図ることができた。なお、フィル 捕集効率試験の結果、総合捕集効率は全て 99.99%夕差圧、または表面線量率の上昇の際には、その都度 以上であった。交換を行うことに変更はない。 (2) 引張強度試験結果JIS P 8113(2006)に準拠して行った引張強度試験 参考文献 の結果、MIL 規格に定める値を上回っていた。 [1] JIS Z 4812(1995) : 放射性エアロゾル用高性能フィ MIL規格(参考値)試験結果ルタ 646.8[2] 堂村和幸 他「東海再処理施設における換気設備の 縦方向引張強度 >351.1597.8負圧監視と保全管理」日本保全学会(2009年) 597.8[3] 社団法人 日本空気清浄協会 1981 編集「空気清浄ハ 1107.4ンドブック」オーム社 横方向引張強度 2436.01078.0 [4] JIS P 8113(2006): 紙及び板紙-引張特性の試験方法1195.6第2部:低速伸張法(N/m) (3) 外観目視点検結果外観目視点検により、経年劣化状況を確認した 結果、ろ材やセパレーターの潰れ、腐食等の劣化 は確認されなかった。また、総合捕集効率は 99.99%以上であった。しかし、一部の HEPA フィ ルタに、ガスケット部の固着、劣化が見られた。4.3 フィルタ交換周期の適正化健全性確認結果により、排気フィルタの総合捕集効 率は、10年使用しても性能が低下することはなかった が、交換時期は、構成部材の経年劣化も考慮する必要 がある。このため、フィルタ差圧、表面線量率の上昇が交換基準に達しない場合でも、使用開始から10年程 一度で交換時期にあると考える。これらの結果を基に、排気フィルタの交換基準を見直し、1998 年から 10 年 を交換目安として定期的に交換を実施している。 負圧監視と保全管理」日本保全学会(2009年) 社団法人 日本空気清浄協会 1981 編集「空気清浄ハ - 181 -“ “?東海再処理施設における高性能フィルタ交換周期の適正化“ “川澄 裕之,Hiroyuki KAWASUMI,算用子 裕孝,Hirotaka SANYOSHI,八戸木 日出夫,Hideo YATOGI,福有 義裕,Yoshihiro FUKUARI,伊波 慎一,Shinichi INAMI
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