カルマンフィルタを用いた流れ加速型腐食による減肉進展予測モデルの構築
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カテゴリ: 第7回
1.緒言
原子力プラントの高経年化に伴い、配管減肉管理の 高度化が求められている。平成21年から施行されて いる新検査制度においては定期検査間隔が最大24 カ月ごとまで延長されたため、プラント運転中におけ る状態監視、傾向管理技術に対する要求がより高まっ ている。そのため、配管減肉進展を高精度に予測し、 危険個所を早期に発見する技術の開発が望まれてい る。電磁超音波探触子(Electomagnetic Acoustic Transducer:EMAT)を用いた運転中モニタリング技 術に関する研究が現在進行中であり、EMAT から逐 次得られる測定データを用いることで予測精度の向 上を図る。本研究では、流れ加速型腐食の減肉進展予 測モデルの一つであるKWU-KR 法にカルマンフィル タを適用したモデルの構築を行い、予測精度の向上を 目指す。
2. FAC 減肉進展予測モデル
2.1 KWU-KR ETIL配管減肉として流れ加速型腐食(Flow Accelerated Corrosion:FAC)を考える。FAC は化学的な腐食反応と 物理的な流れの力の重ね合わせにより発生すると考 えられており、発生に寄与するパラメータとして溶存 酸素濃度、母材の Cr,Mo の含有量、平均流速、温度、 pH、配管形状などが挙げられる[1]。これらのパラメ ータを入力として使用する FAC 減肉進展予測モデル連絡先:小島 史男、〒651-1301 兵庫県神戸市灘区 六甲台町 1-1、神戸大学大学院システム情報学研究科 システム科学専攻、電話:078-803-6493、 E-mail:kojima@koala.kobe-u.ac.jpとして、ドイツのシーメンス社が開発した KWU-KR モデル[2]を本研究では使用した。このモデルでは FAC によって減肉が進行する配管の肉厚 Wo(t) を次のよ うに表している。__ wc() = APR()-1Pstここで、Apr : the # (ug/cm2hr) t:露出時間(hr)Ps : FED (ug/cm') である。上記式を用いれば、減肉を考慮した配管の肉 厚は時間の関数となり、次のように計算される。W pipe(t)=Woriginal - Wc,calculated(t) ただし、Wpipe() : 時刻(t)における配管肉厚(cm) Woriginal:初期の肉厚Wocalentatedt) : 時刻 t における減肉量計算値(cm) である。減肉率は次のように計算される。 Apr = 6.25ke(BeM [1 - 0.175(pH -7)-]1 .8e-0.118g + 10 SCO ここで、 B = -10.5/h - (9.375×10-473)+ (0.79T)-132.5 N = -0.0875h-(1.275×10-5T)+ (1.078 ×10T)-2.15 (0% 9.6×10^ 時間 (約 11 年)の範囲 では、f() = 0.79 で一定とする。幾何学形状ファクタ ーには管の形状に応じて一定値が与えられる。2.2 幾何学形状ファクターのモデリング本研究では、同じ管中でも幾何学形状ファクターに。の 値は位置により変化するものと捉え、測定データを下 にトをオリフィスからの軸方向距離に関する関数と してモデリングを行った。今回は測定データとして関 西電力(株)火力センターのオリフィス直下部位の測定 データ(軸方向7点、周方向8点、合計 56 点)を用 いた(Fig.1)。軸方向の測定点間隔 d = 16.52(cm) であ る。ABCDEFG それぞれについて周方向8点の平均を とり、その値を KWU-KR モデルの肉厚Wc0 とする ことでその地点における に を求める。それぞれの軸方 向距離において、求めたん。の値に近くなるような関数 をモデリングし、幾何学形状ファクター関数に。(x) と した(Fig.2)。ABCDEFGooooooo ooooooo oooooooundero measurement points Fig. 1 Measurement points.ABCDEFGo o 。 。 。 。 。 o o o o ooo oooooooamount of wearo measurement points1899/12/31Measurement points.Fig.k (x) = 1-- 12 | 1+ EXA - 0.3×1-30 + 5×10])求めたk (x) を用い、KWU-KR モデルから軸方向距離 が ABCDEFG におけるそれぞれの減肉進展予測を行 ったグラフを Fig.3 に示す。KWU-KR モデルのパラメ ータ入力は実際の原子力発電所内のデータに基づき 以下のように設定した。h=0.08(%) T = 463(K) pH = 6.5 w=5.186(m/sec) g=1.2(ppb) Ps = 7.86×10^(ng/cm2)3.カルマンフィルタによる減肉率推定問題KWU-KR モデルにカルマンフィルタを適用するこ とで EMAT から逐次的に取得されるデータを用いて モデルを順次更新し、予測精度の向上を図る。減肉進 展をトレンドとして考え、KWU-KR モデルを状態空 間表現すると次のようになる。0.030.0250.022 0.015kc using observation data0.01---kc(x)0.00505196/08/07distance of axial direction from Y(cm)Fig. 2approximate function of kc.amount of wear(cm)一番-after 4 yearsafter 8 yearsafter 12 years x-after 16 years -- - after 20 years04....A B C D E F Gprediction of wear at axial direction point.Fig. 3kc1900/07/13xy = Fx,-+Gv,(9) _ n = Hurn + WS(10) ここで、 はシステムノイズ、W, は観測ノイズであ る。ただし、|TTn-1Tn-3]「C、C2C, c4] F = 1TTn-3」[CC, C, C,H, =[rate0 0 0] である。ここでrate - AprtPst Apr = 6.25k (r)(BeMw [1-0.175(pH -7) - ]1.8e-0.1188 + 1) C : 9.999934×10- C2 : -3.356901×10-7 CG : -5.624812 ×10-11CA : 3.849972 ×10-16 各種パラメータは KWU-KR モデルのものを用いる。 トレンドの次数k = 4 は KWU-KR モデルにより決定 した。このモデルは状態ベクトルxにより KWU-KR モデルにおける修正ファクター(0) を更新していく ことを示している。減肉量の観測データ Y = {y1,y2,, ; } を入力し、一期先予測とフィルタ リングを繰り返すことで時刻 n (n< i) における状態 x, の推定を行う[3]。 一期先予測 -1 = Fxn-lr-1(11) Vy[n1 = FV_|1FT +GQ &(12) フィルタリング」 _K= Vanes at (IV ≫ ≫ , H““ + r);(13) _ n = Xmin-+ K., On - Haswin-1)Vin = (1 - K,H) Apr-1 ただし、 * Smura = Er,y)) : 状態 x, の条件付き平均
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原子力プラントの高経年化に伴い、配管減肉管理の 高度化が求められている。平成21年から施行されて いる新検査制度においては定期検査間隔が最大24 カ月ごとまで延長されたため、プラント運転中におけ る状態監視、傾向管理技術に対する要求がより高まっ ている。そのため、配管減肉進展を高精度に予測し、 危険個所を早期に発見する技術の開発が望まれてい る。電磁超音波探触子(Electomagnetic Acoustic Transducer:EMAT)を用いた運転中モニタリング技 術に関する研究が現在進行中であり、EMAT から逐 次得られる測定データを用いることで予測精度の向 上を図る。本研究では、流れ加速型腐食の減肉進展予 測モデルの一つであるKWU-KR 法にカルマンフィル タを適用したモデルの構築を行い、予測精度の向上を 目指す。
2. FAC 減肉進展予測モデル
2.1 KWU-KR ETIL配管減肉として流れ加速型腐食(Flow Accelerated Corrosion:FAC)を考える。FAC は化学的な腐食反応と 物理的な流れの力の重ね合わせにより発生すると考 えられており、発生に寄与するパラメータとして溶存 酸素濃度、母材の Cr,Mo の含有量、平均流速、温度、 pH、配管形状などが挙げられる[1]。これらのパラメ ータを入力として使用する FAC 減肉進展予測モデル連絡先:小島 史男、〒651-1301 兵庫県神戸市灘区 六甲台町 1-1、神戸大学大学院システム情報学研究科 システム科学専攻、電話:078-803-6493、 E-mail:kojima@koala.kobe-u.ac.jpとして、ドイツのシーメンス社が開発した KWU-KR モデル[2]を本研究では使用した。このモデルでは FAC によって減肉が進行する配管の肉厚 Wo(t) を次のよ うに表している。__ wc() = APR()-1Pstここで、Apr : the # (ug/cm2hr) t:露出時間(hr)Ps : FED (ug/cm') である。上記式を用いれば、減肉を考慮した配管の肉 厚は時間の関数となり、次のように計算される。W pipe(t)=Woriginal - Wc,calculated(t) ただし、Wpipe() : 時刻(t)における配管肉厚(cm) Woriginal:初期の肉厚Wocalentatedt) : 時刻 t における減肉量計算値(cm) である。減肉率は次のように計算される。 Apr = 6.25ke(BeM [1 - 0.175(pH -7)-]1 .8e-0.118g + 10 SCO ここで、 B = -10.5/h - (9.375×10-473)+ (0.79T)-132.5 N = -0.0875h-(1.275×10-5T)+ (1.078 ×10T)-2.15 (0%
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