超音波連続板厚測定による設備管理
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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
国内の産業設備の多くは建設後 40 年以上を経過 し、設備の老朽化対策が課題となっている。経年設 備の最近の漏洩事故 「の主なものは、腐食等による 構成材料の劣化である。中でも、炭素鋼設備の腐食 咸肉は、平均的な腐食速度は低くとも、局部的に数 音大きな速度で進行する場合がある。また、炭素鋼 が使用される設備は膨大である。特に、目視検査が 不可能な部位で発生した腐食部位の特定と残存厚さ (腐食深さ)を管理下におくことは極めて難しい。このような背景から、著者らは、タンクや反応器 等の静止機器や配管に発生する腐食部を超音波によ り高速に全面検査する装置を開発、実用化し設備管Fig. 1 High Speed Inspection System for Tank Bottom 理に有効に活用している。本報では、全面検査技術Plate (B-Map) の概要と活用事例について簡単に紹介する。Fig.2 は測定部に搭載する超音波探触子の配置模 2. 高速タンク底板全面検査技術式図を示す。ニ振動子垂直探触子と渦流センサー( 屋外貯蔵タンクでは、底板の裏面腐食が目視困難図示しない。)を千鳥状2列に搭載し、前列の探触子 である。タンクの底板は、従来から消防法に規定さ間の不感帯を後列の探触子が追って測定することで れる内部点検において 100~1000mm間隔等の離散コーティング上から 300mm の幅を洩れなく連続的に 的な超音波肉厚測定を行い、腐食速度と残存厚さの。板厚測定する。(この測定法を連続測定と呼ぶ。) 管理をおこなってきた。しかし、離散測定の間隔は、 漏洩の原因となる局部腐食の大きさより遥かに大き く、経年的に腐食が顕在化するタンクについては危 険部位を見逃す可能性が極めて高いという問題があ(25mm × 12pieces) った。これを解消するため、筆者らは 1999 年からタ ンク底板の裏面腐食検出を目的とした高速全面検査 技術として超音波連続板厚測定装置を実用化した。
MovementDirection300mmSensor25mm 32mmEffective sensor width (25mm)2.1. タンク底部全面検査装置の概要 ・ 全面検査装置の外観を Fig.1 に示す。装置は測定 部、PC、探傷器、アンプで構成される。 車絡先:田村孝市〒108-0075 主所:東京都港区港南 4-1-8 リバージュ品川ビル 13 電話:03-5462-4607- 212 -Fig.2 whole surface method (Arrangement of ultrasonic sensors). 2. タンク底部検査事例Fig.3 は、連続測定で得られたタンク底部の腐食 或肉分布の代表例であり、腐食減肉量は青、緑、黄、 赤の順に大きい。本タンクの例では、従来腐食が激 しいと言われていた側板近傍のアニュラ板よりも中 方側の底板で局所的に腐食が進行している。筆者ら は約 10 年間で多数のタンク底部の連続測定を実施 した結果、裏面腐食の進展特性は広範囲に及ぶ鋼材 面積の中で様々であり、基礎仕様や構造面から最大 腐食部位を推定し寿命評価や補修等の保全対応をと る事は極めて難しいことを実感した。Corrosion areaFig.3 Thickness distribution of tank bottom plate更に、筆者らは、従来の離散的な測定方法で管理 をしてきたタンク底部の残寿命を再評価することを 目的として、連続測定データの最大腐食量と従来の 定点管理法による最大腐食量について統計的な分析 をおこなった。連続測定のデータ群から、タンク中 央を始点に 50mm、100mm、1,000mm 間隔で格子状に抽 出したいわゆる離散板厚データ群から掌握される見 かけ上の最大腐食深さ(離散的板厚データの最小値 に対応する値) と全面検査により得られる実最大腐 食深さを比較した。Fig.4 は、常温近傍で使用され た 25 基のタンク底部の最大腐食量について整理し た結果を示す。仮想的に測定間隔を大きくすると、 連続測定(全面検査)で得られる実最大腐食深さと の相関が悪くなる。Fig. 4 において最小自乗法で求 めた各測定間隔の傾きは、連続測定で得られる実最 深さを1としたときの、各測定間隔で計測される平 均的な最大深さの比率を表す。Fig.5 は、この比率 を実最大深さの推定確度と称して測定間隔毎にプロ ットしたものである。測定間隔が大きくなるに従い、 実最大深さの推定確度は低下する。これはタンク底 部の裏面腐食が局所的であればある程低下する。推 定確度は、測定間隔 300mm以上では大きく変化し ておらず、1000mm間隔では推定確度が 1/3 程度に なることが分かった。すなわち、1m 程度の間隔で板厚を計測したタンクの場合、平均して3倍程度の腐 食が存在する可能性があることを意味し、従来の定 点測定法で評価したタンクについては、最大腐食量 (または腐食率)や保全計画を見直すことが可能で ある。また、経年化とともに腐食が局部的に進行す るタンクでは、腐食部位と腐食量が明確に表される 連続測定による全面検査は漏洩防止とコストミニマ ムの保全対応を実現する有効な手段と考える。10Sampling interval Ho 50mm pitchA 100mm pitch ◆1000mm pitchy = 0.mx R2=0.92Maximum depth of metal loss obtained at eachsampling interval / mmy = 0.63x R2=0.6610.... 4.y=0.34x R2=0.2102 168 10 Maximum depth of metal loss contiuous measurement/mmFig. 4 Maximum depth of metal loss and measurement samplinginterval1.2Normalized maxium depth of metal loss10_10001200200400 600 800Sampling interval /mmFig.5Variation of normalized maximum depth of metal loss at each sampling interval3. 容器の高速全面検査技術圧力容器や塔などは、外部の断熱材や外套、内部 のライニングなどで、本体の腐食が目視不可能な場 合が多い他、高圧容器など耐圧性能が要求される設 備は、経年劣化による局部的な腐食の見逃しが起き ると重大事故に発展する可能性がある。これに対応 して2.1 項の連続測定技術を応用し、圧力容器他、 一般静止機器の全面検査装置を開発し実用化した。10_1000200400 600 800Sampling interval /mmFig.5Variation of normalized maximum depth loss at each sampling interval2133.1 装置の概要検査装置の外観を Fig. 6 に示す。本装置は、自走 式測定ユニット、探傷器および PC とコントローラ、 制御機で構成される。全面検査の測定原理は概ねタ ンク底板の装置と同様で、自走式の測定ユニット内 に有効幅 10mmの超音波探触子 12 個を千鳥状に配 置し、1回の走査で、幅 120mmの面を洩れなく全面 検査できるように設計した。Fig.6 High Speed Inspection System for vessel (S-Map)Fig. 7は外套付圧力容器の外部腐食検査の模式図 を示す。本体の内面側から胴部と下鏡部を自走させ 本体外面側の腐食検出を目的とした検査を行う。測 定ユニットには、DC モータによる駆動装置、測定ユ ニットの裏面には永久磁石を備え、容器の壁面(曲 率面)に吸着し、手元コントローラで遠隔から自走 による連続測定が可能である。装置は最大 15mの範 囲を移動可能で、高所における検査でも検査足場を 必要としない。本体本体クラッド又は0ジャケット外面食検査装置 (S-MAP)Fig. 7 Measurement method of external corrosionjacketed pressure vesselcorrosionin3.2. 圧力容器の検査事例温度制御等のために容器本体に外套を備え、通水し ているような圧力容器では、本体外部の局部腐食の顕 在化が懸念される。 Fig.8 及び Fig. 9は圧力容器の胴 および下鏡部の測定結果の一例である。腐食は、胴板 の上部や鏡板の非常に限定された部分で、局部的に発 生している。腐食の深さや速度に基づいて、圧力容器 における必要肉厚を下回る部位や時期を高い信頼性 で予想できる。すなわち、既に必要肉厚を割り込んで いる部位の要因分析、また、期開放予定前に割り込む と予想される部位を特定し、部分的な補修や予防的な 補強をおこなうことで、高い信頼性で合理的に設備の 延命対応が図れる。Corrosion area180°270““360°1000検査開日:2009/01/05 検証終了日: 2009/0000 15時 平均時:201210mm 10月-12:150mm 22:15:230mm 第15:100mm(m) (5) 2303 100 191-230197831 166-190014 101~105025 1100 075色分設定2310001901810020001916/06/04Fig. 8 Results of shell plate thickness measurement店名: 圧力容器 | 検査 日 :2000/00/05Corrosion area1000RE15厚 : 21.0mm100mm90板厚(m)分本給(5) 21.05 9632 19.1~21.0 29547 106~1900673 10.1~1050134 11000014自分設定(mm)180021.0 19.0 18.5 18.010006““Fig.9 Results of bottom formed head plate thicknessmeasurement4. 配管の全面検査技術 * 最近の設備事故の多くは配管からの漏洩事故であ り、その原因の殆どが腐食である。1) 配管設備は、 多数の流体が様々な運転条件下(圧力、温度)で扱 われている。更に、減肉が発生する部位は構造的に も様々である。配管の内面側減肉の管理の基本は、 配管系と言われる同一の劣化現象が発生しうる環境 と材料の組合せ毎に配管ラインを区分し、各ライン の最大腐食量と腐食速度から寿命を予測し、適切な 周期で保全アクション(検査や補修)をとることで ある。内面腐食は、外から目視が困難であることか ら、非破壊的な手法で劣化状態を効率的よく定量的214に把握したい。従来は、腐食の発生し易いと想定し た代表部を定点とする肉厚測定にて管理されている。 しかし、配管は、対象範囲が膨大であり、腐食の激 しい部分を確実に代表部としているかを検証するこ とは難しい場合が多い。一方、内面側からの腐食は、 内面流体の性状に依存し、高流速部や滞留部、凝縮 部等の特異箇所で激しくなる場合があることもよく 知られている)。そこで、筆者らは、こうした特異 箇所の中で最も対象数の多い直管とエルボの全面検 査を目的とした連続測定装置を開発した。4.1. 装置の概要検査装置の外観を Fig.10 に示す。装置は超音波探 傷器,ノートPC、超音波探触子及びそれを走査する ガイドリング等の測定機構から構成される。厚さ測 定は、超音波探触子を 180 度の角度で設置したガイ ドリングを回転させながら、ガイドリングをガイド レールに沿わせて軸方向に移動する動作の中で配管 全面の肉厚を測定する。対象とする配管は、現状は 管の呼び径で 4B~12B である。更に大きいサイズに ついても対応を検討中である。Fig. 10 High Speed Inspection System for piping (L-Map)4.2. 配管の検査事例従来から定点肉厚測定で管理し若干の内面腐食減 肉が想定された配管系の水平エルボ部で、開発した 検査装置により連続測定を実施した。 Fig. 11 は測定 状況、Fig. 12 はその測定結果を示す。減肉範囲は鉛 直下側よりエルボの背側に外れた部分であり、残肉 厚は 5.5mm であった。一方、当該部位の従来の定点 測定は、配管周囲4方向の4点で管理しており、検 査直近の定点測定では、下側が最も薄く 8.3mmで あった。従来からこの系では、残渣が溜まる部分で の腐食が経験されており、下側に注目した測定を実 施していた。しかし、残渣が流れによりエルボの背 側寄ったためと推定するが、最大腐食部は下側では なかった。また、腐食の激しい部分は、面的な腐食 の中に局部的な減肉として進行しており、この部分 を確実に定点管理することは難しいことが想定され る。こうした事例からも、材料と環境及び運転条件 などから腐食が想定できる配管系は、特に連続測定 の適用効果が高いと言える。Fig.11Measurement of the 10 inch elbow pipe156516200Fig. 12 Results of thickness measurement in piping5. 結言 1) 開発した超音波連続測定装置で、タンク底部や容器の外面、配管内面などの目視困難な部位の肉厚定量的に面測定できることを示した。 2)超音波連続測定により、炭素鋼設備の腐食減肉は、経年化とともに局部的に劣化が進行する場 合がある事を示した。謝辞本装置は、旭化成ケミカルズ(株)と新日本非破 壊検査(株)との共同開発の成果をまとめたもので ある。旭化成ケミカルズ(株)と新日本非破 との共同開発の成果をまとめたもので参考文献 1)高圧ガス保安協会、最新の高圧ガス事故集計表(平成10年 又は平成17年~平成21年6月) 2) 消防庁 平成18年版消防白書等 3) 田村、芳賀、辻他:石油タンク底板裏面腐食の確 率統計的性質(第一報),圧力技術, Vol.46, No1.pp18-25(2008) 4) (社)石油学会:石油学会規格 配管維持規格,石油学会, JPI-88-1-2004、附属書 A, (2004) 5) 芳賀、松尾、中川、冨高、西村、田村、 花口: 配管の超音波連続肉厚測定装置の開発,非破壊検査, Vol.59, No.4,pp189-193(2010)215“ “?超音波連続板厚測定による設備管理“ “田村 孝市,Koichi TAMURA,芳賀 啓之,Hiroyuki HAGA,松尾 祐次,Yuji MATSUO
国内の産業設備の多くは建設後 40 年以上を経過 し、設備の老朽化対策が課題となっている。経年設 備の最近の漏洩事故 「の主なものは、腐食等による 構成材料の劣化である。中でも、炭素鋼設備の腐食 咸肉は、平均的な腐食速度は低くとも、局部的に数 音大きな速度で進行する場合がある。また、炭素鋼 が使用される設備は膨大である。特に、目視検査が 不可能な部位で発生した腐食部位の特定と残存厚さ (腐食深さ)を管理下におくことは極めて難しい。このような背景から、著者らは、タンクや反応器 等の静止機器や配管に発生する腐食部を超音波によ り高速に全面検査する装置を開発、実用化し設備管Fig. 1 High Speed Inspection System for Tank Bottom 理に有効に活用している。本報では、全面検査技術Plate (B-Map) の概要と活用事例について簡単に紹介する。Fig.2 は測定部に搭載する超音波探触子の配置模 2. 高速タンク底板全面検査技術式図を示す。ニ振動子垂直探触子と渦流センサー( 屋外貯蔵タンクでは、底板の裏面腐食が目視困難図示しない。)を千鳥状2列に搭載し、前列の探触子 である。タンクの底板は、従来から消防法に規定さ間の不感帯を後列の探触子が追って測定することで れる内部点検において 100~1000mm間隔等の離散コーティング上から 300mm の幅を洩れなく連続的に 的な超音波肉厚測定を行い、腐食速度と残存厚さの。板厚測定する。(この測定法を連続測定と呼ぶ。) 管理をおこなってきた。しかし、離散測定の間隔は、 漏洩の原因となる局部腐食の大きさより遥かに大き く、経年的に腐食が顕在化するタンクについては危 険部位を見逃す可能性が極めて高いという問題があ(25mm × 12pieces) った。これを解消するため、筆者らは 1999 年からタ ンク底板の裏面腐食検出を目的とした高速全面検査 技術として超音波連続板厚測定装置を実用化した。
MovementDirection300mmSensor25mm 32mmEffective sensor width (25mm)2.1. タンク底部全面検査装置の概要 ・ 全面検査装置の外観を Fig.1 に示す。装置は測定 部、PC、探傷器、アンプで構成される。 車絡先:田村孝市〒108-0075 主所:東京都港区港南 4-1-8 リバージュ品川ビル 13 電話:03-5462-4607- 212 -Fig.2 whole surface method (Arrangement of ultrasonic sensors). 2. タンク底部検査事例Fig.3 は、連続測定で得られたタンク底部の腐食 或肉分布の代表例であり、腐食減肉量は青、緑、黄、 赤の順に大きい。本タンクの例では、従来腐食が激 しいと言われていた側板近傍のアニュラ板よりも中 方側の底板で局所的に腐食が進行している。筆者ら は約 10 年間で多数のタンク底部の連続測定を実施 した結果、裏面腐食の進展特性は広範囲に及ぶ鋼材 面積の中で様々であり、基礎仕様や構造面から最大 腐食部位を推定し寿命評価や補修等の保全対応をと る事は極めて難しいことを実感した。Corrosion areaFig.3 Thickness distribution of tank bottom plate更に、筆者らは、従来の離散的な測定方法で管理 をしてきたタンク底部の残寿命を再評価することを 目的として、連続測定データの最大腐食量と従来の 定点管理法による最大腐食量について統計的な分析 をおこなった。連続測定のデータ群から、タンク中 央を始点に 50mm、100mm、1,000mm 間隔で格子状に抽 出したいわゆる離散板厚データ群から掌握される見 かけ上の最大腐食深さ(離散的板厚データの最小値 に対応する値) と全面検査により得られる実最大腐 食深さを比較した。Fig.4 は、常温近傍で使用され た 25 基のタンク底部の最大腐食量について整理し た結果を示す。仮想的に測定間隔を大きくすると、 連続測定(全面検査)で得られる実最大腐食深さと の相関が悪くなる。Fig. 4 において最小自乗法で求 めた各測定間隔の傾きは、連続測定で得られる実最 深さを1としたときの、各測定間隔で計測される平 均的な最大深さの比率を表す。Fig.5 は、この比率 を実最大深さの推定確度と称して測定間隔毎にプロ ットしたものである。測定間隔が大きくなるに従い、 実最大深さの推定確度は低下する。これはタンク底 部の裏面腐食が局所的であればある程低下する。推 定確度は、測定間隔 300mm以上では大きく変化し ておらず、1000mm間隔では推定確度が 1/3 程度に なることが分かった。すなわち、1m 程度の間隔で板厚を計測したタンクの場合、平均して3倍程度の腐 食が存在する可能性があることを意味し、従来の定 点測定法で評価したタンクについては、最大腐食量 (または腐食率)や保全計画を見直すことが可能で ある。また、経年化とともに腐食が局部的に進行す るタンクでは、腐食部位と腐食量が明確に表される 連続測定による全面検査は漏洩防止とコストミニマ ムの保全対応を実現する有効な手段と考える。10Sampling interval Ho 50mm pitchA 100mm pitch ◆1000mm pitchy = 0.mx R2=0.92Maximum depth of metal loss obtained at eachsampling interval / mmy = 0.63x R2=0.6610.... 4.y=0.34x R2=0.2102 168 10 Maximum depth of metal loss contiuous measurement/mmFig. 4 Maximum depth of metal loss and measurement samplinginterval1.2Normalized maxium depth of metal loss10_10001200200400 600 800Sampling interval /mmFig.5Variation of normalized maximum depth of metal loss at each sampling interval3. 容器の高速全面検査技術圧力容器や塔などは、外部の断熱材や外套、内部 のライニングなどで、本体の腐食が目視不可能な場 合が多い他、高圧容器など耐圧性能が要求される設 備は、経年劣化による局部的な腐食の見逃しが起き ると重大事故に発展する可能性がある。これに対応 して2.1 項の連続測定技術を応用し、圧力容器他、 一般静止機器の全面検査装置を開発し実用化した。10_1000200400 600 800Sampling interval /mmFig.5Variation of normalized maximum depth loss at each sampling interval2133.1 装置の概要検査装置の外観を Fig. 6 に示す。本装置は、自走 式測定ユニット、探傷器および PC とコントローラ、 制御機で構成される。全面検査の測定原理は概ねタ ンク底板の装置と同様で、自走式の測定ユニット内 に有効幅 10mmの超音波探触子 12 個を千鳥状に配 置し、1回の走査で、幅 120mmの面を洩れなく全面 検査できるように設計した。Fig.6 High Speed Inspection System for vessel (S-Map)Fig. 7は外套付圧力容器の外部腐食検査の模式図 を示す。本体の内面側から胴部と下鏡部を自走させ 本体外面側の腐食検出を目的とした検査を行う。測 定ユニットには、DC モータによる駆動装置、測定ユ ニットの裏面には永久磁石を備え、容器の壁面(曲 率面)に吸着し、手元コントローラで遠隔から自走 による連続測定が可能である。装置は最大 15mの範 囲を移動可能で、高所における検査でも検査足場を 必要としない。本体本体クラッド又は0ジャケット外面食検査装置 (S-MAP)Fig. 7 Measurement method of external corrosionjacketed pressure vesselcorrosionin3.2. 圧力容器の検査事例温度制御等のために容器本体に外套を備え、通水し ているような圧力容器では、本体外部の局部腐食の顕 在化が懸念される。 Fig.8 及び Fig. 9は圧力容器の胴 および下鏡部の測定結果の一例である。腐食は、胴板 の上部や鏡板の非常に限定された部分で、局部的に発 生している。腐食の深さや速度に基づいて、圧力容器 における必要肉厚を下回る部位や時期を高い信頼性 で予想できる。すなわち、既に必要肉厚を割り込んで いる部位の要因分析、また、期開放予定前に割り込む と予想される部位を特定し、部分的な補修や予防的な 補強をおこなうことで、高い信頼性で合理的に設備の 延命対応が図れる。Corrosion area180°270““360°1000検査開日:2009/01/05 検証終了日: 2009/0000 15時 平均時:201210mm 10月-12:150mm 22:15:230mm 第15:100mm(m) (5) 2303 100 191-230197831 166-190014 101~105025 1100 075色分設定2310001901810020001916/06/04Fig. 8 Results of shell plate thickness measurement店名: 圧力容器 | 検査 日 :2000/00/05Corrosion area1000RE15厚 : 21.0mm100mm90板厚(m)分本給(5) 21.05 9632 19.1~21.0 29547 106~1900673 10.1~1050134 11000014自分設定(mm)180021.0 19.0 18.5 18.010006““Fig.9 Results of bottom formed head plate thicknessmeasurement4. 配管の全面検査技術 * 最近の設備事故の多くは配管からの漏洩事故であ り、その原因の殆どが腐食である。1) 配管設備は、 多数の流体が様々な運転条件下(圧力、温度)で扱 われている。更に、減肉が発生する部位は構造的に も様々である。配管の内面側減肉の管理の基本は、 配管系と言われる同一の劣化現象が発生しうる環境 と材料の組合せ毎に配管ラインを区分し、各ライン の最大腐食量と腐食速度から寿命を予測し、適切な 周期で保全アクション(検査や補修)をとることで ある。内面腐食は、外から目視が困難であることか ら、非破壊的な手法で劣化状態を効率的よく定量的214に把握したい。従来は、腐食の発生し易いと想定し た代表部を定点とする肉厚測定にて管理されている。 しかし、配管は、対象範囲が膨大であり、腐食の激 しい部分を確実に代表部としているかを検証するこ とは難しい場合が多い。一方、内面側からの腐食は、 内面流体の性状に依存し、高流速部や滞留部、凝縮 部等の特異箇所で激しくなる場合があることもよく 知られている)。そこで、筆者らは、こうした特異 箇所の中で最も対象数の多い直管とエルボの全面検 査を目的とした連続測定装置を開発した。4.1. 装置の概要検査装置の外観を Fig.10 に示す。装置は超音波探 傷器,ノートPC、超音波探触子及びそれを走査する ガイドリング等の測定機構から構成される。厚さ測 定は、超音波探触子を 180 度の角度で設置したガイ ドリングを回転させながら、ガイドリングをガイド レールに沿わせて軸方向に移動する動作の中で配管 全面の肉厚を測定する。対象とする配管は、現状は 管の呼び径で 4B~12B である。更に大きいサイズに ついても対応を検討中である。Fig. 10 High Speed Inspection System for piping (L-Map)4.2. 配管の検査事例従来から定点肉厚測定で管理し若干の内面腐食減 肉が想定された配管系の水平エルボ部で、開発した 検査装置により連続測定を実施した。 Fig. 11 は測定 状況、Fig. 12 はその測定結果を示す。減肉範囲は鉛 直下側よりエルボの背側に外れた部分であり、残肉 厚は 5.5mm であった。一方、当該部位の従来の定点 測定は、配管周囲4方向の4点で管理しており、検 査直近の定点測定では、下側が最も薄く 8.3mmで あった。従来からこの系では、残渣が溜まる部分で の腐食が経験されており、下側に注目した測定を実 施していた。しかし、残渣が流れによりエルボの背 側寄ったためと推定するが、最大腐食部は下側では なかった。また、腐食の激しい部分は、面的な腐食 の中に局部的な減肉として進行しており、この部分 を確実に定点管理することは難しいことが想定され る。こうした事例からも、材料と環境及び運転条件 などから腐食が想定できる配管系は、特に連続測定 の適用効果が高いと言える。Fig.11Measurement of the 10 inch elbow pipe156516200Fig. 12 Results of thickness measurement in piping5. 結言 1) 開発した超音波連続測定装置で、タンク底部や容器の外面、配管内面などの目視困難な部位の肉厚定量的に面測定できることを示した。 2)超音波連続測定により、炭素鋼設備の腐食減肉は、経年化とともに局部的に劣化が進行する場 合がある事を示した。謝辞本装置は、旭化成ケミカルズ(株)と新日本非破 壊検査(株)との共同開発の成果をまとめたもので ある。旭化成ケミカルズ(株)と新日本非破 との共同開発の成果をまとめたもので参考文献 1)高圧ガス保安協会、最新の高圧ガス事故集計表(平成10年 又は平成17年~平成21年6月) 2) 消防庁 平成18年版消防白書等 3) 田村、芳賀、辻他:石油タンク底板裏面腐食の確 率統計的性質(第一報),圧力技術, Vol.46, No1.pp18-25(2008) 4) (社)石油学会:石油学会規格 配管維持規格,石油学会, JPI-88-1-2004、附属書 A, (2004) 5) 芳賀、松尾、中川、冨高、西村、田村、 花口: 配管の超音波連続肉厚測定装置の開発,非破壊検査, Vol.59, No.4,pp189-193(2010)215“ “?超音波連続板厚測定による設備管理“ “田村 孝市,Koichi TAMURA,芳賀 啓之,Hiroyuki HAGA,松尾 祐次,Yuji MATSUO