東海第二発電所シュラウドサポート溶接部のひび割れへの維持規格及び炉内構造物等点検評価ガイドラインの適用について
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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
て残留応力の状態から周方向のひび割れが発生する - 東海第二発電所は、第 24回定期事業者検査期間中可能性を否定できないことから、周方向のひび割れを の炉内構造物検査において、第 21 回定期事業者検査 仮定して維持規格に基づき進展評価及び破壊評価を で確認されていたシュラウドサポートシリンダ軸方実施した。この結果、技術基準に適合しなくなると見 向溶接継手(以下「V8」という)のひび割れ(3箇所) 込まれる時期は、評価時から 45 年経過時点であると の継続検査を実施した(1)ところ、V8 内面及び炉心シ評価された。 ュラウドとシュラウドサポートシリンダの水平方向 以上の評価結果から、補修等の措置は実施せず継続 溶接継手(以下「H7」という)内面に新たなひび状使用することとした。今後、き裂の解釈に従い、き裂 の指示模様(以下「欠陥指示」という)を確認した。等が存在する状態で使用する場合の点検を行うこと このため、範囲を拡大して検査を行い、その結果、合 としている。 計 40 箇所の欠陥指示を確認した。これらをひび割れ と判断し、法令に基づき、評価を実施した。
2.ひび割れの状況と進展評価 確認されたひび割れについて原因究明を行った結2.1 検査結果 果、応力腐食割れ(SCC)によるものと推定した。 * 検査対象のシュラウドサポートシリンダの構造と
SCC 進展評価及び破壊評価を、経済産業省原子力欠陥指示を確認した軸方向溶接継手 V8 及び水平方向 安全・保安院文書「発電用原子力設備における破壊を溶接継手 H7 を Fig.1 に示す。 引き起こすき裂その他の欠陥の解釈について」(平成 21年2月27日付け平成 21・02・18 原院第2号) [2]| H7継手(インコネル182) | (以下「き裂の解釈」という)、「日本機械学会 発電下部シュラウド 用原子力設備規格 維持規格(2008 年版)JSME SH8継手 NA1-2008」(以下「維持規格」という)及び日本原 子力技術協会 BWR 炉内構造物等点検評価ガイドラシュラウド イン(以下「ガイドライン」という) 14を用いて実施(SB-168) した。なお、H7 の超音波探傷検査を全周について実V8継手 施していないこと、及び H7 上側溶接熱影響部におい(1) 目視検査(第一段階検査) - 炉内構造物の VT を行った結果、V8 及び H7 につ いて 17 箇所に欠陥指示を確認した。欠陥指示は、ほ とんどが各溶接継手の溶接金属部に、H7 については 一部溶接金属部から溶接熱影響部にかけて観察され た。欠陥指示の形状は、16箇所が軸方向、1箇所(ほ う酸水注入配管サポート上部)が軸及び周方向であ った。 (2) 体積検査(第二段階検査)今回ひび割れを確認したシュラウドサポートシリ ンダの溶接部近傍について、UT により欠陥指示の深さ測定を実施した。検査実施結果を Table 1 及び Fig.2 に示す。検査 部位Table 1 Inspection Results 深さ
2.2 進展評価
V8 及び H7 のひび割れは軸方向のひび割れに限定 されており、溶接残留応力の分布を考慮すると、ひび 割れの進展は V8 の溶接金属部及び熱影響部、並びに H7 の溶接金属部及び熱影響部の範囲内に留まり、か つH7 の溶接金属部においては周方向への進展は考え にくいと予測された。 また、ほう酸注入配管サポートすみ肉溶接継手上側 に確認された周方向のひび割れについては、すみ肉溶 接による残留応力が、溶接継手に直交する軸方向引張 応力が支配的であるため溶接継手に沿って周方向に 進展すると考えられるが、溶接残留応力の影響がない 母材に進展することは考えられないため限定された 範囲に留まると予測された。一方、Fig.3 に軸方向応力分布を示すように、H7 上 側溶接止端部から上方に 20mm離れた位置より上側 においては、相対的に軸方向引張応力が支配的となる ことから、H7 上側溶接止端部から上方に 20mm離れ た位置の応力分布(Fig.4)を用いて、H7 上側溶接熱 影響部における周方向ひび割れであると仮定して進 展を予測した。初期欠陥の形状は、維持規格に基づき、 深さ1mm、長さ 10mm の半楕円形状とした。 * Fig.4 の応力分布に基づき算出された応力拡大係数 の分布を Fig.5 に示す。これと維持規格の低炭素ステ ンレス鋼に対する SCC 進展速度線図を用いて進展解 析を行った結果を Fig.6 に示す。これによれば、例え ば今後 30 年間程度では進展は著しくなく、30 年後に 深さ 6mm、長さ 17mm に進展する程度であると評価された。進展評価心力位置 軸方向応力が周方向応力 よりも大きくなる部位炉心シュラウド
3-1Step: Step-194 Increment 36: Step Primary Var: S, S22シュラウドサポート Fig.3 Axial Stress Distribution around H7残留応力(MPa)201020 30 40 50 60板厚方向位置(mm) Fig.4 Calculated Axial Stress of Cross Section応力拡大係数(MPa/5m)10_ 10 20 30 40 50 60き裂深さ(mm) | Fig. 5 Calculated Stress Intensity Factor of Cross Sectionき裂深さ (mm)1 0 10 20 30 40 50 60年数 EFPY (年) Fig.6 Calculated Crack Depth3.破壊評価」 3.1 ひび割れのモデル化V8 には、全4本の継手に軸方向貫通のひび割れを 想定した。上端は H7 開先上端に溶接熱影響部(10mm) を加えた位置とし、下端は H10 開先下端に溶接熱影響 部(10mm)を加えた位置とし、ひび割れの幅は V8 内面における開先幅とした。H7 には、確認されたひび割れの数から、全周に想 定されるひび割れの数(126個)を包絡するように全 周1°ピッチで軸方向板厚貫通のスリット状にひび割 れを想定した。 - 想定の貫通ひび割れ上端は H7 開先上端に溶接熱影 響部(10mm)を加えた位置、下端はシュラウドサポ ートシリンダ内面(インコネル 82)肉盛下端に溶接 熱影響部分(10mm)を加えた位置とした。ほう酸注入配管サポートすみ肉溶接継手上側には、 周方向すみ肉溶接長に溶接熱影響部(10mm)を加え た長さの周方向貫通のひび割れを想定した。また、H7 上側溶接熱影響部の周方向に仮定したひ び割れについては、深さは 2.2.1 の進展評価結果に基 づき想定年数によりパラメトリックに変化させるこ36、ととし、周方向には保守的に全周としたリン 陥としてモデル化した。 - 以上の考え方に従いひび割れをモデル化 モデルを Fig.7 に示す。3たリング状の欠3解析結果 弾性勾配の2倍の直線S2裕度=2.252/1.5=1.50倍 31裕底%3D2.326/1.5=1.55倍!_デル化した解析2_2.3262.252荷重/評価荷重2_1H7継手V8継手Fig. 7 Fracture Analysis Model with Cracks3.2 破壊評価 - 破壊評価法については、維持規格に従い、(1)で述べ た構造解析モデルを用いてシュラウドサポートの荷 重-変位特性を有限要素法により解析し、得られた荷 重変位曲線と弾性勾配の 2 倍の傾きの直線との交点 を崩壊荷重とみなすいわゆる二倍勾配法を用いた。構 造健全性の判断は、二倍勾配法によって得られた崩壊 荷重が S2 地震荷重の 1.5 倍以上(ただし、S2 地震荷 重が S1 地震荷重以下となる場合は、S1 地震荷重に基 づき評価する)であれば健全性は確保されるとの判断 基準による。 - 荷重条件を Table 2 に示す。解析は、S1 地震荷重、 S2 地震荷重の両方について実施し、より厳しい結果 となる S2 地震荷重に基づき評価を行った。Table 2 Load Condition for Fracture Evaluation鉛直力VT 水平力H モーメントM 圧力P 荷重(kN)(kN) (kN・m) | (MPa) 供用状態 死荷重」 +1814 A及びB | の荷重 | 差圧 | - | -0.23地震荷重S,*5908920442950地震時の 荷重地震荷重5259013440±64430評価時から 30 年後の条件における二倍勾配法によ る評価結果を Fig.8 に示す。十分な裕度を有している ことから、確認されたひび割れ及び仮定した周方向の ひび割れが 30 年後の時点でも構造健全性に影響を及 ぼすものではないことを確認した。また、H7 熱影響部に仮定した周方向リング状の欠 陥の深さをパラメータとする解析結果を Fig.9 に示す。 これから、評価時から 45 年後に許容限界に達すると 評価された。3.5-解析結果 ・弾性勾配の2倍の直線」3S2裕度%3D2.252/1.5=1.50倍 S1裕度%3D2,326/1.5%3D1.55倍! ,2,32612.252荷重/評価荷重判定基準10.500lmsteami1102030変位(mm) Fig. 8 Evaluation Result for 30 years after(板厚:50.8mm)30年後44年後、45年後(線形補完)許容限界崩壊荷重/設計上の地震荷重S21 48年後]55年後5 10 15 20 25 300 35 40 45 50き裂深さ (mm) 限界き裂深さ=31.2mm Fig. 9 Allowable Limit Crack Depth and Related Time4.今後の点検について - き裂の解釈の「き裂等が存在する状態で使用する場 合」には、維持規格 IA-2340(継続検査のプログラム) によらず、「原則として毎回の定期事業者検査時にき 裂等が検出された箇所の点検を行うこと。ただし、3 回の点検の結果、進展が観察されなかったき裂等につ いては、隔回毎の定期事業者検査時の点検に移行して 差し支えない。また、健全性評価の結果将来は進展が 止まると予想されたき裂等については、至近の定期事 業者検査において点検した後は、隔回毎の定期事業者 検査時の点検に移行して差し支えない。」とある。一方、今回 V8 及び H7 で確認されたひび割れのほ とんどは、軸方向のひび割れであり、構造強度上問題 はなく、H7 上側溶接熱影響部に仮定した周方向のひ び割れが進展しても、今後 45 年間に亘り技術基準に 適合しないものでないことが確認できたことから、定 期事業者検査毎の監視が必要なひび割れでないと判 断できる。従って、き裂の解釈の点検に関する規定の 後段に該当すると考え、これに基づき継続点検を設定 した。すなわち、V8 及び H7 について至近の定期事業者検 査において点検した後は、隔回毎の定期事業者検査時 の点検を行うこととした。5. 規格基準上の課題 * 今回のき裂解釈、維持規格及びガイドラインの適用 を踏まえ、次のような課題を提言したい。インの適用37(1) 周方向溶接継手に41) 周方向溶接継手に生じた軸方向き裂の扱い明確化 - 維持規格、ガイドラインにおいては、軸方向溶接 継手にき裂が生じても強度に及ぼす影響がごく小さ いことから検査対象外としており扱いが明確である が、今回のように周方向溶接継手に軸方向き裂が生 じ、将来も周方向への進展が考えにくい場合の扱い については特に定められていない。特に次のような 点において明確化できれば評価法の高度化の観点で 利点があると考えられる。 1. き裂のモデル化における「軸方向」の判断基準 1. 周方向き裂進展への発展可能性の判断基準 2) き裂解釈における継続点検規定の見直しき裂解釈における継続点検規定は、き裂を残して 継続使用する場合の知見が我が国であまり多くない」 ことを踏まえ知見を拡充する意味で維持規格とは別 に定められたと解される。今後、この事例を含め継 続使用の知見を反映するとともに、上記(1)で述べた 検討の成果も反映して十分な根拠を示し、き裂解釈 における継続点検規定の見直しを国に働きかけてい くことも重要な課題である。-2. 結言 東海第二発電所の第24回定期事業者検査において V8 及び H7 に確認されたひび割れについて、き裂 解釈、維持規格及びガイドラインを用いて欠陥評 価を行った結果、このまま継続使用しても許容限 界に達するのは 45 年後と評価された。 欠陥評価におけるき裂解釈、維持規格及びガイド ラインの適用を踏まえ、今後検討が望まれる規格 基準上の課題について整理した。[1] 日本原子力発電株式会社ホームページhttp://www.japc.co.jp/news/bn/h17/170713.pdf [2] 発電用原子力設備における破壊を引き起こすき裂その他の欠陥の解釈について, 原子力安全・保安院,平成 21・02・18 原院第2号 [3] (社)日本機械学会 発電用原子力設備規格 維持規格2008年版, JSME S NA1-2008 [4] 一般社団法人日本原子力技術協会 BWR 炉内構 参考文献 [1] 日本原子力発電株式会社ホームページhttp://www.japc.co.jp/news/bn/h17/170713.pdf [2] 発電用原子力設備における破壊を引き起こすき裂その他の欠陥の解釈について, 原子力安全・保安院,平成 21・02・18 原院第2号 [3] (社)日本機械学会 発電用原子力設備規格 維持規 - 格 2008 年版, JSME S NA1-2008 [4] 一般社団法人日本原子力技術協会 BWR 炉内構 造物等点検評価ガイドライン[シュラウドサポー ト](第3版), 平成 20年6月, JANTI-VIP-04維持規 - 38 -
“ “?東海第二発電所シュラウドサポート溶接部のひび割れへの維持規格及び炉内構造物等点検評価ガイドラインの適用について“ “堂崎 浩二,Koji DOZAKI,山本 幸司,Koji YAMAMOTO,山本 祥司,Shoji YAMAMOTO,片岡 武司,Takeshi KATAOKA,伊東 敬,Takashi ITO
て残留応力の状態から周方向のひび割れが発生する - 東海第二発電所は、第 24回定期事業者検査期間中可能性を否定できないことから、周方向のひび割れを の炉内構造物検査において、第 21 回定期事業者検査 仮定して維持規格に基づき進展評価及び破壊評価を で確認されていたシュラウドサポートシリンダ軸方実施した。この結果、技術基準に適合しなくなると見 向溶接継手(以下「V8」という)のひび割れ(3箇所) 込まれる時期は、評価時から 45 年経過時点であると の継続検査を実施した(1)ところ、V8 内面及び炉心シ評価された。 ュラウドとシュラウドサポートシリンダの水平方向 以上の評価結果から、補修等の措置は実施せず継続 溶接継手(以下「H7」という)内面に新たなひび状使用することとした。今後、き裂の解釈に従い、き裂 の指示模様(以下「欠陥指示」という)を確認した。等が存在する状態で使用する場合の点検を行うこと このため、範囲を拡大して検査を行い、その結果、合 としている。 計 40 箇所の欠陥指示を確認した。これらをひび割れ と判断し、法令に基づき、評価を実施した。
2.ひび割れの状況と進展評価 確認されたひび割れについて原因究明を行った結2.1 検査結果 果、応力腐食割れ(SCC)によるものと推定した。 * 検査対象のシュラウドサポートシリンダの構造と
SCC 進展評価及び破壊評価を、経済産業省原子力欠陥指示を確認した軸方向溶接継手 V8 及び水平方向 安全・保安院文書「発電用原子力設備における破壊を溶接継手 H7 を Fig.1 に示す。 引き起こすき裂その他の欠陥の解釈について」(平成 21年2月27日付け平成 21・02・18 原院第2号) [2]| H7継手(インコネル182) | (以下「き裂の解釈」という)、「日本機械学会 発電下部シュラウド 用原子力設備規格 維持規格(2008 年版)JSME SH8継手 NA1-2008」(以下「維持規格」という)及び日本原 子力技術協会 BWR 炉内構造物等点検評価ガイドラシュラウド イン(以下「ガイドライン」という) 14を用いて実施(SB-168) した。なお、H7 の超音波探傷検査を全周について実V8継手 施していないこと、及び H7 上側溶接熱影響部におい(1) 目視検査(第一段階検査) - 炉内構造物の VT を行った結果、V8 及び H7 につ いて 17 箇所に欠陥指示を確認した。欠陥指示は、ほ とんどが各溶接継手の溶接金属部に、H7 については 一部溶接金属部から溶接熱影響部にかけて観察され た。欠陥指示の形状は、16箇所が軸方向、1箇所(ほ う酸水注入配管サポート上部)が軸及び周方向であ った。 (2) 体積検査(第二段階検査)今回ひび割れを確認したシュラウドサポートシリ ンダの溶接部近傍について、UT により欠陥指示の深さ測定を実施した。検査実施結果を Table 1 及び Fig.2 に示す。検査 部位Table 1 Inspection Results 深さ
2.2 進展評価
V8 及び H7 のひび割れは軸方向のひび割れに限定 されており、溶接残留応力の分布を考慮すると、ひび 割れの進展は V8 の溶接金属部及び熱影響部、並びに H7 の溶接金属部及び熱影響部の範囲内に留まり、か つH7 の溶接金属部においては周方向への進展は考え にくいと予測された。 また、ほう酸注入配管サポートすみ肉溶接継手上側 に確認された周方向のひび割れについては、すみ肉溶 接による残留応力が、溶接継手に直交する軸方向引張 応力が支配的であるため溶接継手に沿って周方向に 進展すると考えられるが、溶接残留応力の影響がない 母材に進展することは考えられないため限定された 範囲に留まると予測された。一方、Fig.3 に軸方向応力分布を示すように、H7 上 側溶接止端部から上方に 20mm離れた位置より上側 においては、相対的に軸方向引張応力が支配的となる ことから、H7 上側溶接止端部から上方に 20mm離れ た位置の応力分布(Fig.4)を用いて、H7 上側溶接熱 影響部における周方向ひび割れであると仮定して進 展を予測した。初期欠陥の形状は、維持規格に基づき、 深さ1mm、長さ 10mm の半楕円形状とした。 * Fig.4 の応力分布に基づき算出された応力拡大係数 の分布を Fig.5 に示す。これと維持規格の低炭素ステ ンレス鋼に対する SCC 進展速度線図を用いて進展解 析を行った結果を Fig.6 に示す。これによれば、例え ば今後 30 年間程度では進展は著しくなく、30 年後に 深さ 6mm、長さ 17mm に進展する程度であると評価された。進展評価心力位置 軸方向応力が周方向応力 よりも大きくなる部位炉心シュラウド
3-1Step: Step-194 Increment 36: Step Primary Var: S, S22シュラウドサポート Fig.3 Axial Stress Distribution around H7残留応力(MPa)201020 30 40 50 60板厚方向位置(mm) Fig.4 Calculated Axial Stress of Cross Section応力拡大係数(MPa/5m)10_ 10 20 30 40 50 60き裂深さ(mm) | Fig. 5 Calculated Stress Intensity Factor of Cross Sectionき裂深さ (mm)1 0 10 20 30 40 50 60年数 EFPY (年) Fig.6 Calculated Crack Depth3.破壊評価」 3.1 ひび割れのモデル化V8 には、全4本の継手に軸方向貫通のひび割れを 想定した。上端は H7 開先上端に溶接熱影響部(10mm) を加えた位置とし、下端は H10 開先下端に溶接熱影響 部(10mm)を加えた位置とし、ひび割れの幅は V8 内面における開先幅とした。H7 には、確認されたひび割れの数から、全周に想 定されるひび割れの数(126個)を包絡するように全 周1°ピッチで軸方向板厚貫通のスリット状にひび割 れを想定した。 - 想定の貫通ひび割れ上端は H7 開先上端に溶接熱影 響部(10mm)を加えた位置、下端はシュラウドサポ ートシリンダ内面(インコネル 82)肉盛下端に溶接 熱影響部分(10mm)を加えた位置とした。ほう酸注入配管サポートすみ肉溶接継手上側には、 周方向すみ肉溶接長に溶接熱影響部(10mm)を加え た長さの周方向貫通のひび割れを想定した。また、H7 上側溶接熱影響部の周方向に仮定したひ び割れについては、深さは 2.2.1 の進展評価結果に基 づき想定年数によりパラメトリックに変化させるこ36、ととし、周方向には保守的に全周としたリン 陥としてモデル化した。 - 以上の考え方に従いひび割れをモデル化 モデルを Fig.7 に示す。3たリング状の欠3解析結果 弾性勾配の2倍の直線S2裕度=2.252/1.5=1.50倍 31裕底%3D2.326/1.5=1.55倍!_デル化した解析2_2.3262.252荷重/評価荷重2_1H7継手V8継手Fig. 7 Fracture Analysis Model with Cracks3.2 破壊評価 - 破壊評価法については、維持規格に従い、(1)で述べ た構造解析モデルを用いてシュラウドサポートの荷 重-変位特性を有限要素法により解析し、得られた荷 重変位曲線と弾性勾配の 2 倍の傾きの直線との交点 を崩壊荷重とみなすいわゆる二倍勾配法を用いた。構 造健全性の判断は、二倍勾配法によって得られた崩壊 荷重が S2 地震荷重の 1.5 倍以上(ただし、S2 地震荷 重が S1 地震荷重以下となる場合は、S1 地震荷重に基 づき評価する)であれば健全性は確保されるとの判断 基準による。 - 荷重条件を Table 2 に示す。解析は、S1 地震荷重、 S2 地震荷重の両方について実施し、より厳しい結果 となる S2 地震荷重に基づき評価を行った。Table 2 Load Condition for Fracture Evaluation鉛直力VT 水平力H モーメントM 圧力P 荷重(kN)(kN) (kN・m) | (MPa) 供用状態 死荷重」 +1814 A及びB | の荷重 | 差圧 | - | -0.23地震荷重S,*5908920442950地震時の 荷重地震荷重5259013440±64430評価時から 30 年後の条件における二倍勾配法によ る評価結果を Fig.8 に示す。十分な裕度を有している ことから、確認されたひび割れ及び仮定した周方向の ひび割れが 30 年後の時点でも構造健全性に影響を及 ぼすものではないことを確認した。また、H7 熱影響部に仮定した周方向リング状の欠 陥の深さをパラメータとする解析結果を Fig.9 に示す。 これから、評価時から 45 年後に許容限界に達すると 評価された。3.5-解析結果 ・弾性勾配の2倍の直線」3S2裕度%3D2.252/1.5=1.50倍 S1裕度%3D2,326/1.5%3D1.55倍! ,2,32612.252荷重/評価荷重判定基準10.500lmsteami1102030変位(mm) Fig. 8 Evaluation Result for 30 years after(板厚:50.8mm)30年後44年後、45年後(線形補完)許容限界崩壊荷重/設計上の地震荷重S21 48年後]55年後5 10 15 20 25 300 35 40 45 50き裂深さ (mm) 限界き裂深さ=31.2mm Fig. 9 Allowable Limit Crack Depth and Related Time4.今後の点検について - き裂の解釈の「き裂等が存在する状態で使用する場 合」には、維持規格 IA-2340(継続検査のプログラム) によらず、「原則として毎回の定期事業者検査時にき 裂等が検出された箇所の点検を行うこと。ただし、3 回の点検の結果、進展が観察されなかったき裂等につ いては、隔回毎の定期事業者検査時の点検に移行して 差し支えない。また、健全性評価の結果将来は進展が 止まると予想されたき裂等については、至近の定期事 業者検査において点検した後は、隔回毎の定期事業者 検査時の点検に移行して差し支えない。」とある。一方、今回 V8 及び H7 で確認されたひび割れのほ とんどは、軸方向のひび割れであり、構造強度上問題 はなく、H7 上側溶接熱影響部に仮定した周方向のひ び割れが進展しても、今後 45 年間に亘り技術基準に 適合しないものでないことが確認できたことから、定 期事業者検査毎の監視が必要なひび割れでないと判 断できる。従って、き裂の解釈の点検に関する規定の 後段に該当すると考え、これに基づき継続点検を設定 した。すなわち、V8 及び H7 について至近の定期事業者検 査において点検した後は、隔回毎の定期事業者検査時 の点検を行うこととした。5. 規格基準上の課題 * 今回のき裂解釈、維持規格及びガイドラインの適用 を踏まえ、次のような課題を提言したい。インの適用37(1) 周方向溶接継手に41) 周方向溶接継手に生じた軸方向き裂の扱い明確化 - 維持規格、ガイドラインにおいては、軸方向溶接 継手にき裂が生じても強度に及ぼす影響がごく小さ いことから検査対象外としており扱いが明確である が、今回のように周方向溶接継手に軸方向き裂が生 じ、将来も周方向への進展が考えにくい場合の扱い については特に定められていない。特に次のような 点において明確化できれば評価法の高度化の観点で 利点があると考えられる。 1. き裂のモデル化における「軸方向」の判断基準 1. 周方向き裂進展への発展可能性の判断基準 2) き裂解釈における継続点検規定の見直しき裂解釈における継続点検規定は、き裂を残して 継続使用する場合の知見が我が国であまり多くない」 ことを踏まえ知見を拡充する意味で維持規格とは別 に定められたと解される。今後、この事例を含め継 続使用の知見を反映するとともに、上記(1)で述べた 検討の成果も反映して十分な根拠を示し、き裂解釈 における継続点検規定の見直しを国に働きかけてい くことも重要な課題である。-2. 結言 東海第二発電所の第24回定期事業者検査において V8 及び H7 に確認されたひび割れについて、き裂 解釈、維持規格及びガイドラインを用いて欠陥評 価を行った結果、このまま継続使用しても許容限 界に達するのは 45 年後と評価された。 欠陥評価におけるき裂解釈、維持規格及びガイド ラインの適用を踏まえ、今後検討が望まれる規格 基準上の課題について整理した。[1] 日本原子力発電株式会社ホームページhttp://www.japc.co.jp/news/bn/h17/170713.pdf [2] 発電用原子力設備における破壊を引き起こすき裂その他の欠陥の解釈について, 原子力安全・保安院,平成 21・02・18 原院第2号 [3] (社)日本機械学会 発電用原子力設備規格 維持規格2008年版, JSME S NA1-2008 [4] 一般社団法人日本原子力技術協会 BWR 炉内構 参考文献 [1] 日本原子力発電株式会社ホームページhttp://www.japc.co.jp/news/bn/h17/170713.pdf [2] 発電用原子力設備における破壊を引き起こすき裂その他の欠陥の解釈について, 原子力安全・保安院,平成 21・02・18 原院第2号 [3] (社)日本機械学会 発電用原子力設備規格 維持規 - 格 2008 年版, JSME S NA1-2008 [4] 一般社団法人日本原子力技術協会 BWR 炉内構 造物等点検評価ガイドライン[シュラウドサポー ト](第3版), 平成 20年6月, JANTI-VIP-04維持規 - 38 -
“ “?東海第二発電所シュラウドサポート溶接部のひび割れへの維持規格及び炉内構造物等点検評価ガイドラインの適用について“ “堂崎 浩二,Koji DOZAKI,山本 幸司,Koji YAMAMOTO,山本 祥司,Shoji YAMAMOTO,片岡 武司,Takeshi KATAOKA,伊東 敬,Takashi ITO