循環水配管の健全性評価
公開日:
カテゴリ: 第7回
1. 緒言
新潟県中越沖地震の影響により、柏崎刈羽原子力 発電所1号機から5号機の循環水配管土中埋設部に 変形が確認された。当社は変形した循環水配管の継 続使用を志向し、その妥当性を判断するため、配管 変形部の健全性評価を実施した。本稿では、柏崎刈 羽原子力発電所3号機循環水配管放水ライン下部マ イタ管を例に取り、変形した管の評価項目および評 価結果を示す。柏崎刈羽原子力発電所3号機の概略図を Fig.1に 示す。循環水配管は復水器に流入する主タービンを 回転させた後の排気蒸気やドレンの冷却を行うため の海水(低熱源)を供給するための配管であり直径 3300mm の大径管である。(Table 1参照)今回確認された変形は放水ライン下部マイタ管の 地中約 30m の部位にあり、変形量は最大 32mm であ った。配管変形部の様子を Fig. 2 に示す。
原子炉建屋3号機 概略図タービン建屋原子炉圧力容器原子炉格納容器循環水配管ーピン発想水ポンプ放水圧へ2水一海水再循環ポンプ変形箇所Fig. 1 Schematic diagram of NPP
Fig. 2 Deformation of circulating water pipe (Unit 3)- 341 - ・配管板厚 | 16mm配管材質 | 炭素鋼(SS400) 外面塗装 コールタールエナメル 内面塗装 ポリエステル系ガラスフレークライニング 内包流体 「海水 | 耐震クラス | Cクラス備考 「土中埋設(深さ約 30m)変形前?形後| B系 原水配管変形部最大32mm| B系 原水配管形部人32mm3.配管変形部の健全性評価循環水配管の変形は今回初めて確認された事象で あり、新潟県中越沖地震発生以前に同様の事象は確 認されていない。また配管の変形(加工)について 使用の可否の判断に資する規格や基準は存在しなか った。そのため、当社は循環水配管の健全性評価を行う ため配管に求められる機能を明確にした上で、これ らの機能へ影響を及ぼすと考えられる以下の9項目 の健全性評価基準を作成した。(Table 2 参照) また作成した基準について、日本原子力技術協会 「中越沖地震後の原子炉機器の健全性評価委員会」 ( JANTI SANE: Structural Integrity Assessment Committee for Nuclear Components damaged by Earthquake)評価基準ワーキンググループにて技術 的妥当性を確認していただいた。Table 2 List of evaluation of soundness forcirculating water pipes-|0要求機能 評項目 詳細評個項目 送水|バウンダリ評価基準 a.変形に伴う有効径の減少定格流量を確保できる最小内径を満足すること b.変形部位の欠陥の有無各試験結果に有意な異常が (浸透探傷、超音波探傷)無いこと (1)変形状態の| c.変形に伴う板厚の減少 確認及び評価」火技解釈第23条による最小板厚を満足すること d.変形に伴う機械特性の低下変形に対して機械的特性の低下が無いこと e.外面塗装のはく離の有無外面塗装のはく離が測定部の面積の5%以上無いこと a形状に起因する応力集中発生応力が火技解沢別表一 (2)通常運転状態1にある許容引張応力未満 の影響 における変形であること 部位の評価 5.形状に起因する座屈強度水門鉄管技術基準にある座 の低下屈安全率以上であること (3)Cクラス地震a.地震による変形助長の有無。|o| Cクラス地震による変形屋の有意な増加の無いこと における変形新潟県中越沖地震とCクラ 部位の評価 b.地震による疲労評価ス地震による疲労累積係数が1以下であること ※火技解釈:「発電用火力設備に関する技術基準の解釈について」|o_o_o_o_oolo-上記基準を用いて配管変形部の健全性評価を行っ た結果、循環水配管の継続使用について技術上問題 がないことを確認した。4. 健全性評価項目 * 3.項にて抽出した9つの健全性評価項目のうち 以下の4つの評価項目について紹介をする。4.1 変形に伴う機械特性の低下 4.1.1 配管変形部の機械特性配管変形部の機械特性に著しい変化がないことを 確認するため、繰り返し予ひずみを与えた材料の引 張試験を行い「耐力・降伏点」・「引張強さ」及び「伸 び」が一般構造用圧延鋼材(JIS G3101) [1]の規定を 満足することの確認を行った。なお、材料には外面塗装の健全性を確認するため に掘削した3号機B系の循環水配管から試験体を作 成し、5%、10%、15%の予ひずみをそれぞれ3回ずつ与えたものを用いて評価を行った。4.1.2 配管変形部の降伏・引張強さ繰り返し予ひずみを与えた材料の「耐力・降伏点」 及び「引張強さ」の傾向を Fig. 3に示すが、いずれ もひずみの増加に伴い、上昇傾向が見られている。このことから、配管変位部の耐力は同様に上昇し ていると考えられる。550500 5450日耐力、引張強さ MPa◆耐力・降伏点 ■引張強さ - JIS規格値 245MPa(耐力・降伏強さ) |- JIS規格値 400MPa(引張強さ)250200110 繰り返し予ひずみ%Fig. 3 Relation between tensile strength and strain4.1.3 配管変形部の伸び繰り返しひずみを与えた材料の「伸び」の傾向を Fig.4に示すが、ほぼ15%程度の予歪みであれば、 一般構造用圧延鋼材(JIS G3101)の規定を満足する ことを確認した。変形部の曲率から算定した残ひずみは最大で6% 程度であることから配管変形部の延性は充分にある と判断した。◆伸び - JIS規格値 17%(伸び)伸び%◆伸び |- JIS規格値 17%(伸び)OL10_ 5_ 10 1520繰り返し予ひずみ% Fig. 4 Relation between tensile elongation and strain4.2 形状に起因する応力集中の影響 4.2.1 設計内圧作用時の評価 - 継続使用するにあたり、通常運転時において配管 変形部にどのような応力が発生するかを確認するた342めにFEM解析を行った。初期形状は Fig. 2 で示し た変形部を含むマイタ管 30 度部分を取り出し、変形 部の計測結果を用いて形状をモデル化した。また解 析条件は以下の値を使用した。(Table 3参照)Table 3 Specification of FEM analysis model | ヤング率E | 200GPaポアソン比 V | 0.3 | 作用内圧P 0 .58MPa(設計内圧)4.2.2 解析結果Fig.5に配管内外面での Mises 応力を示すが、最大 値は内面で 80MPa、外面で 63MPa であった。また、 一次一般膜応力は 74.8 MPa であった。この値は、「原 子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601)」 [2]で定 められている一次一般膜応力の許容値(許容引張応 力) 100MPa以下であり、1次応力制限を満足してい る。内面:80MPa外面:63MPaFig. 5 FEM analysis under design internal pressure4.3 形状に起因する座屈強度の低下 4.3.1 設計外圧作用時の評価 * 配管変形部が外圧(側面土圧、浸透水圧、管内真 空圧)に対する強度に影響を及ぼしていないことを 確認するために 4.2 項の耐圧強度評価モデルに外圧 を負荷し、崩壊解析を行った。解析に用いた諸条件 を以下に示す。(Table 4 参照)また変形量の影響を 確認するため、変形量を2倍にした場合についても 併せて解析を行った。Table 4 Specification of FEM analysis model | ヤング率E | 200GPa ポアソン比 v0.3 降伏応力 oy | 245MPa 「引っ張り強さ ou | 400MPa 一様伸びEu | 17% 設計外圧P 0 .61MPa 硬化則等方硬化則4.3.2 解析結果Fig. 6 に後座屈モードを示す。座屈は地震によっ て変形した部位とは異なる箇所に現れており、この 変形が座屈モードへ及ぼす影響が小さいことを確認 した。あわせて Fig. 7 に崩壊時の座屈発生点の変位履歴 を示すが、分岐座屈発生状況についても変形の大小 による差は認められず、分岐座屈圧は降伏応力に達 する時点の圧力 1.81MPa(塑性座屈圧力)より大き いことを確認した。また変形量 32mm の時の座屈圧 力は 1.91MPa、座屈安全率(座屈圧力設計圧力)は 3.11 である。この値は設計基準である「水門鉄管技 術基準」 [3]で要求されている安全率 1.5 を大きく上 回っている。なお変形量を2倍にした場合について も、座屈荷重がほとんど低下しないことを確認した。変形部座屈発生部変形部座屈発生部Fig. 6 FEM analysis under design external pressure曲管の座屈後挙動一弾性座屈荷重2.90MPa ー・塑性座屈荷重 1.81MPa初期不整32mm ・・・初期不整64mmJ VIVIF al0.00000010002 0.0030004 0.0050,0060007 0.008 0.009 0010最大点の変位(m)Fig. 7 Pressure - Displacement curve-.4 地震による疲労評価-.4.1 耐震Cクラス設備の疲労評価 循環水配管は「原子力発電所耐震設計技術指針 (JEAG4601)」 [2]では耐震 C クラスの設備に分類さ しており、当該指針上における疲労損傷評価の要求 は無い。しかし当社が今後継続して配管を継続して 軍用して行く上で健全性を確認する観点から、配管43三形部の疲労評価を実施した。5.結言 (1) 新潟県中越沖地震により変形した循環水配管の継続使用を志向し、9項目の健全性評価基準を作成した。 (2) 配管変形部について各種点検を行った結果、変形以外に有意な損傷は確認されなかった 循環水配管の変形形状を反映した解析を行 い、配管変形部が設計時の基準を満足する ことを確認した。 新潟県中越沖地震によって配管変形部が受 けた疲労損傷は 7.5%であり、予寿命が充分-4-4.2 評価条件 Fig. 8 に疲労評価解析モデルの概念図を示す。新潟 中越沖地震時の地盤変位を時刻歴解析で求め、各 設深さ毎に設定した地盤バネを介して本解析モデ へ入力し、配管変形部の疲労累積係数を求めた。 Fig.9に低サイクル疲労寿命曲線を示す。日本機械 =会誌[4]に掲載されている曲線と3号機B系配管 を用いた試験より求めた曲線を比較し、低サイク -側で厳しい評価となる3号機B系配管材から求め -4.2 評価条件 Fig. 8 に疲労評価解析モデルの概念図を示す。新潟 中越沖地震時の地盤変位を時刻歴解析で求め、各| ■設深さ毎に設定した地盤バネを介して本解析モデ ・へ入力し、配管変形部の疲労累積係数を求めた。 Fig.9に低サイクル疲労寿命曲線を示す。日本機械 会誌[4]に掲載されている曲線と3号機B系配管 を用いた試験より求めた曲線を比較し、低サイク -側で厳しい評価となる3号機B系配管材から求め 曲線を今回の評価に使用した。ただし、疲労試験 果のばらつきを考慮し評価が安全側になるよう下 値をとる疲労寿命曲線を本評価に使用した。地盤変位| 地盤パネ梁要素シェル要素noneN (地盤変位方向)→ N (地盤変位方向)Fig. 8 Schematic diagram of FEM analysis model術指針 重要度分類・許容応力編(JEAG4601・補 1984)」 [3](社)水門鉄管協会,「水門鉄管技術基準」 [4] (社)日本機械学会, 「金属材料 疲労強度の設計資料 IV 低サイクル疲労強度」100ο Δει・近似曲線 JSME文献 -下限線Ο Δε? 近似曲線 JSME文献 -下限線1101 1001000 Number of Failure NfFig. 9 Low cycle fatigue curve 4.3 解析結果 FEM 解析の結果、新潟県中越沖地震によって配管 形部が受けた疲労損傷は 7.5%であり、予寿命が充 あることを確認した。- 344 -潟県中越沖地震により変形した循環水配 の継続使用を志向し、9項目の健全性評 基準を作成した。 管変形部について各種点検を行った結果、 形以外に有意な損傷は確認されなかった。 環水配管の変形形状を反映した解析を行配管変形部が設計時の基準を満足する とを確認した。 潟県中越沖地震によって配管変形部が受 た疲労損傷は 7.5%であり、予寿命が充分 ることを確認した。循環水配管の健全性評価基準の作成にあたって、 本原子力技術協会「中越沖地震後の原子炉機器の 全性評価委員会」(JANTI SANE: Structural Integrity sessment Committee for Nuclear Components naged by Earthquake)委員各位のご指導、ご助言 得た。ここに厚く謝意を表する。 考文献 日本工業規格,「一般構造用圧延鋼材」(JIS G3101) (社)日本電気協会,「原子力発電所耐震設計技| 術指針 重要度分類・許容応力編 (JEAG4601・ 補 1984)」 (社)水門鉄管協会,「水門鉄管技術基準」 (社)日本機械学会,「金属材料 疲労強度の設 計資料 IV 低サイクル疲労強度」“ “循環水配管の健全性評価“ “國友 良浩,Yoshihiro KUNITOMO,平田 剛,Tsuyoshi HIRATA,寺前 哲夫,Tetsuo TERAMAE
新潟県中越沖地震の影響により、柏崎刈羽原子力 発電所1号機から5号機の循環水配管土中埋設部に 変形が確認された。当社は変形した循環水配管の継 続使用を志向し、その妥当性を判断するため、配管 変形部の健全性評価を実施した。本稿では、柏崎刈 羽原子力発電所3号機循環水配管放水ライン下部マ イタ管を例に取り、変形した管の評価項目および評 価結果を示す。柏崎刈羽原子力発電所3号機の概略図を Fig.1に 示す。循環水配管は復水器に流入する主タービンを 回転させた後の排気蒸気やドレンの冷却を行うため の海水(低熱源)を供給するための配管であり直径 3300mm の大径管である。(Table 1参照)今回確認された変形は放水ライン下部マイタ管の 地中約 30m の部位にあり、変形量は最大 32mm であ った。配管変形部の様子を Fig. 2 に示す。
原子炉建屋3号機 概略図タービン建屋原子炉圧力容器原子炉格納容器循環水配管ーピン発想水ポンプ放水圧へ2水一海水再循環ポンプ変形箇所Fig. 1 Schematic diagram of NPP
Fig. 2 Deformation of circulating water pipe (Unit 3)- 341 - ・配管板厚 | 16mm配管材質 | 炭素鋼(SS400) 外面塗装 コールタールエナメル 内面塗装 ポリエステル系ガラスフレークライニング 内包流体 「海水 | 耐震クラス | Cクラス備考 「土中埋設(深さ約 30m)変形前?形後| B系 原水配管変形部最大32mm| B系 原水配管形部人32mm3.配管変形部の健全性評価循環水配管の変形は今回初めて確認された事象で あり、新潟県中越沖地震発生以前に同様の事象は確 認されていない。また配管の変形(加工)について 使用の可否の判断に資する規格や基準は存在しなか った。そのため、当社は循環水配管の健全性評価を行う ため配管に求められる機能を明確にした上で、これ らの機能へ影響を及ぼすと考えられる以下の9項目 の健全性評価基準を作成した。(Table 2 参照) また作成した基準について、日本原子力技術協会 「中越沖地震後の原子炉機器の健全性評価委員会」 ( JANTI SANE: Structural Integrity Assessment Committee for Nuclear Components damaged by Earthquake)評価基準ワーキンググループにて技術 的妥当性を確認していただいた。Table 2 List of evaluation of soundness forcirculating water pipes-|0要求機能 評項目 詳細評個項目 送水|バウンダリ評価基準 a.変形に伴う有効径の減少定格流量を確保できる最小内径を満足すること b.変形部位の欠陥の有無各試験結果に有意な異常が (浸透探傷、超音波探傷)無いこと (1)変形状態の| c.変形に伴う板厚の減少 確認及び評価」火技解釈第23条による最小板厚を満足すること d.変形に伴う機械特性の低下変形に対して機械的特性の低下が無いこと e.外面塗装のはく離の有無外面塗装のはく離が測定部の面積の5%以上無いこと a形状に起因する応力集中発生応力が火技解沢別表一 (2)通常運転状態1にある許容引張応力未満 の影響 における変形であること 部位の評価 5.形状に起因する座屈強度水門鉄管技術基準にある座 の低下屈安全率以上であること (3)Cクラス地震a.地震による変形助長の有無。|o| Cクラス地震による変形屋の有意な増加の無いこと における変形新潟県中越沖地震とCクラ 部位の評価 b.地震による疲労評価ス地震による疲労累積係数が1以下であること ※火技解釈:「発電用火力設備に関する技術基準の解釈について」|o_o_o_o_oolo-上記基準を用いて配管変形部の健全性評価を行っ た結果、循環水配管の継続使用について技術上問題 がないことを確認した。4. 健全性評価項目 * 3.項にて抽出した9つの健全性評価項目のうち 以下の4つの評価項目について紹介をする。4.1 変形に伴う機械特性の低下 4.1.1 配管変形部の機械特性配管変形部の機械特性に著しい変化がないことを 確認するため、繰り返し予ひずみを与えた材料の引 張試験を行い「耐力・降伏点」・「引張強さ」及び「伸 び」が一般構造用圧延鋼材(JIS G3101) [1]の規定を 満足することの確認を行った。なお、材料には外面塗装の健全性を確認するため に掘削した3号機B系の循環水配管から試験体を作 成し、5%、10%、15%の予ひずみをそれぞれ3回ずつ与えたものを用いて評価を行った。4.1.2 配管変形部の降伏・引張強さ繰り返し予ひずみを与えた材料の「耐力・降伏点」 及び「引張強さ」の傾向を Fig. 3に示すが、いずれ もひずみの増加に伴い、上昇傾向が見られている。このことから、配管変位部の耐力は同様に上昇し ていると考えられる。550500 5450日耐力、引張強さ MPa◆耐力・降伏点 ■引張強さ - JIS規格値 245MPa(耐力・降伏強さ) |- JIS規格値 400MPa(引張強さ)250200110 繰り返し予ひずみ%Fig. 3 Relation between tensile strength and strain4.1.3 配管変形部の伸び繰り返しひずみを与えた材料の「伸び」の傾向を Fig.4に示すが、ほぼ15%程度の予歪みであれば、 一般構造用圧延鋼材(JIS G3101)の規定を満足する ことを確認した。変形部の曲率から算定した残ひずみは最大で6% 程度であることから配管変形部の延性は充分にある と判断した。◆伸び - JIS規格値 17%(伸び)伸び%◆伸び |- JIS規格値 17%(伸び)OL10_ 5_ 10 1520繰り返し予ひずみ% Fig. 4 Relation between tensile elongation and strain4.2 形状に起因する応力集中の影響 4.2.1 設計内圧作用時の評価 - 継続使用するにあたり、通常運転時において配管 変形部にどのような応力が発生するかを確認するた342めにFEM解析を行った。初期形状は Fig. 2 で示し た変形部を含むマイタ管 30 度部分を取り出し、変形 部の計測結果を用いて形状をモデル化した。また解 析条件は以下の値を使用した。(Table 3参照)Table 3 Specification of FEM analysis model | ヤング率E | 200GPaポアソン比 V | 0.3 | 作用内圧P 0 .58MPa(設計内圧)4.2.2 解析結果Fig.5に配管内外面での Mises 応力を示すが、最大 値は内面で 80MPa、外面で 63MPa であった。また、 一次一般膜応力は 74.8 MPa であった。この値は、「原 子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601)」 [2]で定 められている一次一般膜応力の許容値(許容引張応 力) 100MPa以下であり、1次応力制限を満足してい る。内面:80MPa外面:63MPaFig. 5 FEM analysis under design internal pressure4.3 形状に起因する座屈強度の低下 4.3.1 設計外圧作用時の評価 * 配管変形部が外圧(側面土圧、浸透水圧、管内真 空圧)に対する強度に影響を及ぼしていないことを 確認するために 4.2 項の耐圧強度評価モデルに外圧 を負荷し、崩壊解析を行った。解析に用いた諸条件 を以下に示す。(Table 4 参照)また変形量の影響を 確認するため、変形量を2倍にした場合についても 併せて解析を行った。Table 4 Specification of FEM analysis model | ヤング率E | 200GPa ポアソン比 v0.3 降伏応力 oy | 245MPa 「引っ張り強さ ou | 400MPa 一様伸びEu | 17% 設計外圧P 0 .61MPa 硬化則等方硬化則4.3.2 解析結果Fig. 6 に後座屈モードを示す。座屈は地震によっ て変形した部位とは異なる箇所に現れており、この 変形が座屈モードへ及ぼす影響が小さいことを確認 した。あわせて Fig. 7 に崩壊時の座屈発生点の変位履歴 を示すが、分岐座屈発生状況についても変形の大小 による差は認められず、分岐座屈圧は降伏応力に達 する時点の圧力 1.81MPa(塑性座屈圧力)より大き いことを確認した。また変形量 32mm の時の座屈圧 力は 1.91MPa、座屈安全率(座屈圧力設計圧力)は 3.11 である。この値は設計基準である「水門鉄管技 術基準」 [3]で要求されている安全率 1.5 を大きく上 回っている。なお変形量を2倍にした場合について も、座屈荷重がほとんど低下しないことを確認した。変形部座屈発生部変形部座屈発生部Fig. 6 FEM analysis under design external pressure曲管の座屈後挙動一弾性座屈荷重2.90MPa ー・塑性座屈荷重 1.81MPa初期不整32mm ・・・初期不整64mmJ VIVIF al0.00000010002 0.0030004 0.0050,0060007 0.008 0.009 0010最大点の変位(m)Fig. 7 Pressure - Displacement curve-.4 地震による疲労評価-.4.1 耐震Cクラス設備の疲労評価 循環水配管は「原子力発電所耐震設計技術指針 (JEAG4601)」 [2]では耐震 C クラスの設備に分類さ しており、当該指針上における疲労損傷評価の要求 は無い。しかし当社が今後継続して配管を継続して 軍用して行く上で健全性を確認する観点から、配管43三形部の疲労評価を実施した。5.結言 (1) 新潟県中越沖地震により変形した循環水配管の継続使用を志向し、9項目の健全性評価基準を作成した。 (2) 配管変形部について各種点検を行った結果、変形以外に有意な損傷は確認されなかった 循環水配管の変形形状を反映した解析を行 い、配管変形部が設計時の基準を満足する ことを確認した。 新潟県中越沖地震によって配管変形部が受 けた疲労損傷は 7.5%であり、予寿命が充分-4-4.2 評価条件 Fig. 8 に疲労評価解析モデルの概念図を示す。新潟 中越沖地震時の地盤変位を時刻歴解析で求め、各 設深さ毎に設定した地盤バネを介して本解析モデ へ入力し、配管変形部の疲労累積係数を求めた。 Fig.9に低サイクル疲労寿命曲線を示す。日本機械 =会誌[4]に掲載されている曲線と3号機B系配管 を用いた試験より求めた曲線を比較し、低サイク -側で厳しい評価となる3号機B系配管材から求め -4.2 評価条件 Fig. 8 に疲労評価解析モデルの概念図を示す。新潟 中越沖地震時の地盤変位を時刻歴解析で求め、各| ■設深さ毎に設定した地盤バネを介して本解析モデ ・へ入力し、配管変形部の疲労累積係数を求めた。 Fig.9に低サイクル疲労寿命曲線を示す。日本機械 会誌[4]に掲載されている曲線と3号機B系配管 を用いた試験より求めた曲線を比較し、低サイク -側で厳しい評価となる3号機B系配管材から求め 曲線を今回の評価に使用した。ただし、疲労試験 果のばらつきを考慮し評価が安全側になるよう下 値をとる疲労寿命曲線を本評価に使用した。地盤変位| 地盤パネ梁要素シェル要素noneN (地盤変位方向)→ N (地盤変位方向)Fig. 8 Schematic diagram of FEM analysis model術指針 重要度分類・許容応力編(JEAG4601・補 1984)」 [3](社)水門鉄管協会,「水門鉄管技術基準」 [4] (社)日本機械学会, 「金属材料 疲労強度の設計資料 IV 低サイクル疲労強度」100ο Δει・近似曲線 JSME文献 -下限線Ο Δε? 近似曲線 JSME文献 -下限線1101 1001000 Number of Failure NfFig. 9 Low cycle fatigue curve 4.3 解析結果 FEM 解析の結果、新潟県中越沖地震によって配管 形部が受けた疲労損傷は 7.5%であり、予寿命が充 あることを確認した。- 344 -潟県中越沖地震により変形した循環水配 の継続使用を志向し、9項目の健全性評 基準を作成した。 管変形部について各種点検を行った結果、 形以外に有意な損傷は確認されなかった。 環水配管の変形形状を反映した解析を行配管変形部が設計時の基準を満足する とを確認した。 潟県中越沖地震によって配管変形部が受 た疲労損傷は 7.5%であり、予寿命が充分 ることを確認した。循環水配管の健全性評価基準の作成にあたって、 本原子力技術協会「中越沖地震後の原子炉機器の 全性評価委員会」(JANTI SANE: Structural Integrity sessment Committee for Nuclear Components naged by Earthquake)委員各位のご指導、ご助言 得た。ここに厚く謝意を表する。 考文献 日本工業規格,「一般構造用圧延鋼材」(JIS G3101) (社)日本電気協会,「原子力発電所耐震設計技| 術指針 重要度分類・許容応力編 (JEAG4601・ 補 1984)」 (社)水門鉄管協会,「水門鉄管技術基準」 (社)日本機械学会,「金属材料 疲労強度の設 計資料 IV 低サイクル疲労強度」“ “循環水配管の健全性評価“ “國友 良浩,Yoshihiro KUNITOMO,平田 剛,Tsuyoshi HIRATA,寺前 哲夫,Tetsuo TERAMAE