LDIによる局部減肉を考慮した配管系の耐震安全性評価(その1)-浜岡原子力発電所の減肉管理-

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カテゴリ: 第7回
1.背景
浜岡原子力発電所の配管減肉管理は、必要最小厚 さによる配管減肉管理に加え、耐震性を考慮した配 管減肉管理を実施している。液滴衝撃エロージョン(LDI)の減肉形状は一 般に局部減肉であるが、耐震性の確認においては減 肉測定を行っている範囲を一様減肉させた解析モデ ルを用いているため、非常に保守的な評価となって いる。必要とした範囲としており、LDIによる減肉事例 もこの区分に入る。また、「顕著ではないが減肉の発 生する可能性がある範囲」は、使用材料及び減肉環 境条件によりFACの発生の可能性が低い範囲とし ている。平成19年3月に改正した社内手引に基づき、従来 の必要最小厚さによる配管減肉管理に加え、耐震性 を考慮した配管減肉管理を実施している。具体的に は、耐震性の考慮として、耐震上の裕度を有した管 理値(公称厚さの75%の厚さ)による評価とその 評価結果に応じて詳細な耐震解析あるいは対策工事 を実施するプロセスを加えている。 管理対象は、FAC及びLDIが懸念される箇所 (「減肉が顕著に発生すると予想される範囲」)とし ており、耐震性の確認方法は、減肉測定を行ってい る範囲を一様減肉させた3次元梁モデルを用い地震 による発生応力を算出している。2. 浜岡原子力発電所の配管減肉管理
浜岡原子力発電所の配管減肉管理は、減肉に係る 工学的知見や運転経験等に基づき、減肉環境条件や 使用材料により「減肉が顕著に発生すると予想され る範囲」と「顕著ではないが減肉の発生する可能性 がある範囲」の2つの区分に分類して、厚さ測定を 行い、減肉傾向を把握し、余寿命評価を行っている。 「減肉が顕著に発生すると予想される範囲」は、使 用材料及び減肉環境条件(蒸気系配管の湿り度 1.5%以上、水系配管の溶存酸素濃度 15ppb 以下)に より流れ加速型腐食(FAC)の発生の可能性が高い 範囲及び自他プラントで発生した減肉事例で反映が
- 357 - 3. LDIによる局部減肉配管に対する耐 震性への影響の試算 - LDIは一般に局部減肉であるが、減肉管理で採 用している耐震解析モデルは、減肉測定を行ってい る範囲を一様減肉させた保守的なモデルとなってい る。そこで、評価に用いている耐震解析モデルの保 守性を確認するために、実機のLDIによる減肉事 例をもとに試算した。3.1 評価方法実機減肉事例の肉厚測定結果に基づき、3次元F EMによりモデル化し、梁モデルにより算出された 評価対象エルボ部の発生荷重及びモーメントを3次 元FEMモデルに静的に負荷することにより発生応 力を算出する。なお、減肉配管の荷重変位特性が、健全管と比較 し有意な変化がある場合は、剛性変化に見合う当該 部の肉厚を設定し梁モデルに反映する。 評価フローを図1に示す。3次元 FEM モデルによ る減肉事例のモデル化減肉配管の荷重変位特 性の確認当該部の剛性低下に見 合う肉厚の設定梁モデルによる評価エルボ部 の発生荷重・モーメントの算出3次元 FEM モデルによ る発生応力の算出図1 3次元 FEM モデルによる局部減肉の詳細評価フロー3.2 減肉事例のモデル化 - 実機減肉事例に基づき、製造最小肉厚を下回った 減肉箇所を覆う領域に減肉を想定してモデル化した。 なお、減肉管理における耐震評価の保守性を確認す るために、減肉部の板厚は、全周一律に公称厚さの 75%、減肉部以外の板厚は公称厚さとした。 減肉を想定した FEM モデルを図2に示す。減肉想定部位図2 減肉を想定した FEM モデル3.3 荷重変位関係の確認減肉による剛性低下を確認するために、エルボ面 内曲げ、面外曲げの荷重変位関係を確認した。面内曲げの荷重変位関係の解析結果を図3、面外 曲げの荷重変位関係の解析結果を図4に示す。 1 評価の結果、面内曲げに対する健全管と減肉配管 の荷重変位関係は、概ね一致する結果となった。ま た、面外曲げに対する減肉配管の剛性は、健全管の 剛性に比べ 10%低下しているものの固有周期への 影響は軽微であると考えられ、梁モデルへの反映は 実施していない。-一健全配管--減肉配管-(NM)TTTTT--|-|-|-|--IN-LIN-12変位(mm) 図3 荷重-変位関係の解析結果(面内曲げ)ー健全配管・減肉配管荷重(kN)MIII12変位(mm)荷重-変位関係の解析結果(面外曲げ)図43.4 3次元 FEM モデルによる発生応力の算出 - 3次元 FEM モデルによる解析結果の例を図5に示 す。減肉はエルボ背側に位置しているが、エルボ側 面において最大応力が発生しており、健全配管と同 様な応力分布となった。減肉模擬配管健全配管図5減肉/健全配管の応力分布図5 減肉/健全配管の応力分布558 -.5 発生応力の比較 減肉管理で採用している保守的な配管解析モデル と実機減肉事例に基づく FEM モデルによる地震荷 重に対する発生応力の算出結果を表1に示す。減肉管理で採用している評価法は、実機減肉事例 二基づく評価法に比べ3割程度保守性を有していた。 三た、減肉配管と健全配管の発生応力は同程度であ った。 *:減肉測定を行っている範囲を一様減肉させた或肉測定を行っている範囲を一様減肉させた 3次元梁モデルによる耐震評価 表1 地震荷重に対する応力算出結果解析結果 評価モデル 減肉形状 (内圧+地震荷重) 減肉管理評価モデ」 全周一様20MPa ル(梁モデル)減肉」部分減肉14.5MPa実機減肉事例に基 づく3次元 FEM モ デル健全14.2MPa-. LDIによる減肉配高度化の給計方針 .LDIによる減肉配管耐震評価手法の - 高度化の検討方針 実機減肉事例に基づく減肉形状を模擬した耐震 三価により、減肉配管と健全配管の発生応力は同程 ミであることを踏まえると、LDIによる局部的な 肉は耐震性へ影響を及ぼさないと判断される。 今回の評価は、特定の減肉事例による評価結果で ることより、より一般的な評価とするために、液 方径、蒸気速度等をパラメータとした流動評価に基 づくLDIによる減肉形状の予測手法について検討また、上記で予測した減肉形状に基づき減肉エル 三の試験体を製作し、減肉配管と健全配管の耐震試 を行い地震時の挙動を把握することにより、合理 なLDIによる減肉配管耐震評価手法を検討するこれらの一連の検討により、現行の保守的な評価 →法の合理化・高度化を進めている。考文献 ]森田良, 酒井理哉,尾西重信,釘本三男,稲田 文夫,松浦真一, LDIによる局部減肉を考慮し た配管系の耐震安全性評価(その2)LDIに よる局部減肉形状の検討一,日本保全学会第7回 学術講演会,投稿中,(2010) ]酒井理哉,松浦真一,森田良,稲田文夫,尾西 重信,釘本三男,LDIによる局部減肉を考慮し た配管系の耐震安全性評価(その3)-配管試験 による耐震性への影響の把握一, 日本保全学会第 7回学術講演会,投稿中,(2010) 559 -“ “LDIによる局部減肉を考慮した配管系の耐震安全性評価(その1)---浜岡原子力発電所の減肉管理一“ “尾西 重信,Shigenobu ONISHI,釘本 三男,Mitsuo KUGIMOTO,酒井 理哉,Michiya SAKAI,森田 良,Ryo MORITA,松浦 真一,Shin-ichi MATSUURA,稲田 文夫,Fumio INADA
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