炉内目視点検向け3次元計測システム

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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
原子炉内の目視検査は、モニタに表示したカメラの 映像を観察する間接目視が一般的であり、検査員は被 検査体の奥行き感を得づらい。このため、対象の深さ や高さの識別が重要なケースでは、カメラの位置を試 行錯誤で調整して被検査体の奥行き感を判断している。 また、撮影された物体の任意の長さを測定するには、 カメラの映像だけでは定量的な測定が難しいため、映 像に映っている既知寸法の機器や被検査体と一緒に撮 影したスケールなどと比較して測定している。このよ うに従来の検査方法では、奥行き情報を直接得ること ができないため、作業効率の面で課題がある。そこで我々は、狭あい部の多い原子炉内において、 対象の3次元位置を計測し欠陥の長さから構造物の寸 法計測までを行える3次元計測システムを開発した。 1. 本稿では、3 次元計測システムの概要と、試作機の 性能に関する試験結果について報告する。
2. 計測方法、
代表的な3次元位置の計測方法としては、三角測量法を用いた方法と、レーザなどを照射し、その飛翔時 間を計測する方法がある。前者の方法は面もしくはラ インを一度に計測でき、後者の方法は点計測となる。開発した 3次元計測システムは、欠陥の長さや構造 物の寸法計測を目的としているため、2 台のカメラを 用いたステレオ視法を計測原理とする面計測が可能な 三角測量法を用いている。 ・ステレオ視法とは、Fig.1 に示すように実空間におけ る計測点P(X,Y,Z)と、計測用のカメラの位置 OR(X,Y,Z)、 および、計測点Pが写像されたカメラの画像上の位置 pk(,y)の 3 点が一直線上に並ぶとした共線条件を利用 する方法である。ここで、カメラの位置 OK(X, Y,Z)と回 転角(w, , )が既知の場合、2 台以上の k 台のカメラ 間で計測点Pが写像された画像上の位置 pk(x,y)を画像 処理により同定し、この共線条件を解くことにより、 計測点P(X,Y,Z)の位置が計測できる[1]。 - よって一般的なステレオ視法では、カメラの位置を 固定にする必要があり、このため対象までの計測距離 が固定されるが、狭あい部の多い原子炉内では計測器 の設置空間の問題から計測距離を固定にすると適用範 囲が限定される。そこで本システムでは、Fig.2 に示すように計測距離 を可変に使用できるようにした。本システムでは、異 なる計測距離に対応するために、図中カメラ 2 をカメ ラ1に対して回転させ、カメラの光軸が計測対象で交 差するようにカメラの回転角を制御している。なお、396、カメラの回転は、画像処理の結果を用いて最適な回転 角に自動制御している。具体的には、2 台のカメラの 画像中心に写像された箇所を一致させる手法を採用し ている。O,(X, Y,23Oo(X, Y., TAXフル(LIPO)シーンをVP(X, Y, Z)Fig. 1Principle of stereo methodCamera 2Camera 1Rotate directionWork distanceOptical axis Work position(short) Stereo disparityCross point of optical axisWork position(long)Field of viewFig. 2Rotation control of camera3.3次元計測システムの概要3次元計測システムは、2台のカメラを搭載した計測 ヘッドと、計測ヘッドを制御する制御ボックス、計測 ヘッドの外部制御や2台のカメラの画像から3次元位 置を計測する PC で構成される。今回、Table 1 の仕様の計測ヘッドを試作した。Table 1 の仕様は、従来欠陥の長さを mm 単位で記録してい ることから最小計測精度を 0.1mm とした。また、機器 寸法については目的によって要求される精度が異なる が、狭あい部での炉内保全・補修を考慮して計測精度 を 1.0mm とした。計測距離については、目視検査の際 に用いる ASME の VT-1 グレードの定義に基づいた。試作した計測ヘッドを Fig.3 に示す。2台のカメラの 前面に配置したミラーで、光軸を 90°屈折させて計測 対象を撮影する。本計測ヘッドでは、固定したミラー1 に対してミラー2 を回転させることにより、カメラと 計測対象間の計測距離を可変に使用できる構成とした。 これにより機構を簡略化することで、約 70×90× 150mm(W×H×D)までの小型化を実現した。Table 1 Specification of Measurement System Measurement | 0.1mm(W.D.=50mm)~1.0mm accuracy (W.D.=600mm) less or equal Workunderwater:50~600mm (variability] distance (in the air:40mm~450mm)Zoom Camera 1 Zoom Camera 2Mirror 1Rotate direction190mm170mmMirror 2 150mm Prototype of Measurement headFig. 34. 計測性能確認試験試作した計測ヘッドの性能を評価するために、Fig.4 に示す。115mmの円筒試験片を用いて性能確認試験を 実施した。気中における 40mm と 450mm の計測距離で、円筒試 験片の表面形状を復元した結果をFig.5 と Fig.6に示す。の115mmFig. 4Cylinder test piece397円筒試験片の周方向に対する計測結果の断面プ ロファイルを Fig.7 と Fig.8 に示す。Fig.7 と Fig.8 は、 横軸に周方向位置、縦軸に計測深さを示しており、グ ラフの太線が計測結果、破線が試験片の加工精度を± 0mm とした設計値である。本計測結果から分かるよう に、円筒試験片表面の形状が計測できていることが確 認できる。Depth (mm]また、円筒試験片の周方向に対する計測結果の断面プ ロファイルを Fig.7 と Fig.8 に示す。Fig.7 と Fig.8 は、 横軸に周方向位置、縦軸に計測深さを示しており、グ ラフの太線が計測結果、破線が試験片の加工精度を± 0mm とした設計値である。本計測結果から分かるよう に、円筒試験片表面の形状が計測できていることが確 認できる。Depth (mm]-20-10_0_10_20_30De30i_20 -20 -10_ 0_ 10_ 20_ 30Position of circumferential direction [mm] Fig. 7 Measurement profile of W.D.40mm500Fig. 5 Measurement result of W.D.40mmDepth [mm]Fig. 5Measurement result of W.D.40mmDepth [mm]-30 -10 10 30 50Position of circumferential direction [mm] Fig.8 Measurement profile of W.D.450mmTable 2Measurement ResultsFig. 6 Measurement result of W.D.450mm次に、Fig.7 と Fig.8 の計測結果について、円筒試験 片の設計値を真値とした誤差標準偏差を Table 2 に示 す。誤差標準偏差は、計測距離 40mm で0.1mm であり、 計測距離 450mm で 0.7mm である。以上の試験結果から、本計測ヘッドが仕様の+ 0.1mm(計測距離 40mm) と、±1.0mm(計測距離 450mm) を満たすことを確認した。Table 2 Measurement ResultsFocal length Standard Work distanceof lensdeviation40mm5.1mm0.1mm450mm17.3mm0.7mm- 398 -5.結言参考文献 * ステレオ視法を計測原理とする 3 次元計測システム [1] 村井俊治、“解析写真測量 改訂版”、(社)日本中古A1000 テレオ視法を計測原理とする 3次元計測システム いて、カメラの前面に配置したミラーを回転させ とにより計測距離を可変に使用できる小型な計測 ドを開発した。また、性能確認試験を実施し、開 た計測ヘッドが仕様を満足することを確認した。 3.回日クロス ステレオ視法を計測原理とする 3 次元計測システム [1] 村井俊治、“ 解析写真測量 改訂版”、(社)日本* 写真測量学会、 1997、 pp.46-56. について、カメラの前面に配置したミラーを回転させ[2] 佐藤美徳、“炉内目視検査における3次元計測シス ることにより計測距離を可変に使用できる小型な計測テム”、日本非破壊検査協会、平成 21 年度春季大会 ヘッドを開発した。また、性能確認試験を実施し、開講演概要集、2009、p.109-110. 発した計測ヘッドが仕様を満足することを確認した。[3] 相川徹郎、炉内目視点検向け3次元計測システム”、 * 本開発により 3 次元計測システムは技術的には確立。日本保全学会、第6回学術講演会概要集、2009. したと考えており、今後はシステムとしての操作性な どの改善を実施し、原子力プラントへの実機適用を目 指す。- 399 -“ “炉内目視点検向け3次元計測システム“ “相川 徹郎,Tetsuro AIKAWA,佐藤 美徳,Yoshinori SATOH,大嶽 達哉,Tatsuya OODAKE,落合 誠,Makoto OCHIAI,湯口 康弘,Yasuhiro YUGUCHI
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