US-APWR保安規定におけるリスク情報の活用

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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
我が国原子力発電所の「保安規定」に相当するも のとして、米国では Technical Specifications (以後、 TS と記す)がある。近年、米国の既存原子力発電所の TS においては、リスク情報を活用した完了時間* この延長やサーベイランス頻度*の低減が盛んに行われている。中でも、プラントコンフィギュレーシ ●ョンに応じた PSA 結果を利用し、臨機応変に完了時 間を延 長 で き る Risk-Managed Technical Specifications (RMTS)、また運転実績や PSA 結果に 応じてサーベイランス頻度を低減できる Surveillance Frequency Control Program (SFCP)は、い ずれも TS の administrative control program として一 旦 NRC の認可を受けると、あとは発電所の判断で 実施できるという点で、画期的なリスク情報活用方 法といえる。本稿では、三菱重工が米国市場向けに 開発した US-APWR (2007 年末に型式認証申請を NRC 宛提出し、現在、審査中。図1参照)の TS に この RMTS 及び SFCP を適用した概要について紹介 する。新設炉においては適用の前例がなく、この試 みに NRC も注目している。| * 運転制限逸脱時に要求される措置の完了のための許容時間 * 運転制限を満足していることの確認行為の実施頻度要求
2. 適用方法RMTS では、運転制限逸脱後のプラントコンフィ グレーションに応じたリスクを PSA により算出し、 積算リスクを制限値(後述のガイドラインで規定) と比較することで完了時間を設定する(上限 30 日)。 SFCP では、対象設備のパフォーマンスとリスクへ のインパクトに基づき、サーベイランス頻度を見直 す。両プログラム共、実施のためのガイドラインが 米国原子力産業界において整備されており、NRC の 認可を取得済みである(RMTS については“NEI 06-09““ , SFCP については“NEI 04-10““)。実際に発 電所で RMTS や SFCP を適用するには、これらガイ ドラインの要求を満たすプラント固有の PSA モデ ルや実施手順書の整備が必要であり、対象とする完 了時間やサーベイランス頻度を明らかにした TS と 共に NRC の審査を受けて認可を得る必要がある。 - ガイドラインに規定されている PSA の技術的要 件によれば、プラント固有情報を反映し、設備構成 の変化によるプラントリスクの変化を適切に捉え ることが可能なPlant Specific PSAの整備が要求され る。しかし、設計審査段階の新設炉では、Plant Specific PSA に必要とされるプラント固有情報(運 転手順書、詳細な設備情報など)が完備していない ため、いかに設計・建設進捗に合わせて Plant Specific PSA を整備するかが課題となる。US- APWR では、 現時点の標準設計 PSA モデル (外部事象を含みピア レビュー結果を反映済み)を基に、これを設計審査 段階、建設段階、プラント運転段階のフェーズごと で入手可能な情報を用いて段階的にアップデート する計画である。運転手順書や詳細設計情報の入手 時期に合わせ PSA をアップデートすることで、実機 の燃料装荷までに RMTS 及び SFCP に必要な PSA 及
び PSA 関連ツールを整備する。合わせて実施手順書 を整備し、運転開始までに NRC の審査を受けて認 可を取得する予定である。また、上記の認可を受けた TS を US-APWR の Generic TS (GTS) と位置付け、RMTS/SFCP は Plant-specific TS(PTS)に対するオプションとしてい る。PTS は、GTS をベースにし、個々のプラントの 特性値や固有な設備の規定を追加した TS で、 US-APWR 初号機を Comanche Peak サイトに建設予 定の Luminant 社(在テキサス)は、RMTS/SFCP を 一同 3/4 号機の PTS に採用する予定である。3. RMTS における RICT 評価方法RMTS では、その時点でのプラントコンフィギュ レーションに応じた PSA の結果に基づいて CT の延 長の可否を判断する。PSA 結果より得られる CT は Risk-informed Completion Times (RICT)と呼ばれる。RICT 計算に適用されるリスク基準は、主に ICDP<10-5 及び ILERP<10-6 で、RICT の上限 (Back-stop CT)は30日と定められている。さらに、 万一、コンフィギュレーションに変更(ex. 他の機 器の同時故障)が生じた場合には、12 時間以内に RICT を再計算するよう決められている。図2 に RMTS における RICT の評価例を示す。機 器 A が運転不能となった場合、そのコンフィギュレ ーションに応じたPSA の結果と Back-stop CT から初 期 RICT が 30 日に設定できる。その5日後、機器 A に加えて機器 B が運転不能となった場合、そのコン フィギュレーションに応じた PSA の結果より RICT は 27 日に再設定される。さらに、20 日後、機器 A が復旧すると、そのコンフィギュレーションに応じ た PSA の結果と Back-stop CT から RICT は 30 日に 戻る。RMTS の認可を取得できれば、上述したような Configuration Risk Management Program (CRMP) 業者の判断で自由に実行できるようになる。図1 US-APWR1X| dasRICT Threshold。Component A inoperable30 day Back-stop5Component A & B inoperableI Component A inoperable図2 RMTS におけるRICT の評価例(NEL 06-09 より引用)図2参考文献 [1] Regulatory Guide 1.174, An Approach forUsing Probabilistic Risk Assessment in Risk-Informed Decisions on Plant-Specific Changes to the Licensing Basis Rev.1, USNRC,Nov.2002. [2] Regulatory Guide 1.177, An Approach forPlant-Specific, Risk-Informed Decisionmaking :Technical Specifications, USNRC, Aug. 1998. [3] NEI 06-09, Risk-Informed TechnicalSpecifications Initiative 4b Risk Managed Technical Specifications (RMTS) Guidelines,Nuclear Energy Institute, Nov. 2002. [4] NEI 04-10, Risk-Informed TechnicalSpecifications Initiative 5b Risk-Informed Method for Control of Surveillance FrequenciesRev.1, Nuclear Energy Institute, Apr. 2007. [5] (社)日本原子力学会年会, US-APWR TechnicalSpecifications におけるリスク情報の活用(1) 活用の具体的内容について,三菱重工業(株)2009年3月 [6] (社)日本原子力学会年会, US-APWR TechnicalSpecifications におけるリスク情報の活用 (2)PSA 整備計画,三菱重工業(株) 2009年3月 [7] ICAPP'09, Risk-Informed Approach in US-APWRTechnical Specifications, Mitsubishi Heavy Industries, Ltd, May 2009.464“ “US-APWR 保安規定におけるリスク情報の活用“ “黒岩 克也,Katsuya KUROIWA,高橋 浩道,Hiromichi TAKAHASHI,佐治 悦郎,Etsuro SAJI
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