2.4GHz帯の無線による原子力発電所内でのデータ伝送の検討

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カテゴリ: 第7回
1.はじめに
原子力発電所では、機器の運転状態に通常と異な る兆候が認められた場合、温度計・圧力計等のセン サや指示計・記録計を現場に仮設して傾向監視をす ることがある。放射線量率の高いエリアに設置した センサから放射線量率の低いエリアに設置した指示 計・記録計までケーブルを布設する際、作業時の被 ばく線量が多くなる場合がある。被ばく線量を少な くして傾向監視をするには、センサ出力を無線によ り伝送することが有効と考えられる。一方、原子力 発電所の核計装や放射線計測は重要でありかつ非常 に微小な電流を扱っており、これらに影響を与えな いことが求められる。ここでは、核計装や放射線計測に影響を与えない で現場のセンサ出力を伝送するシステムの適用性に ついて確認を行った。
2. 候補の選定AirSenseCHNO選定Air Sens 所内でセンサ出力を無線伝送する場合、ule nodate 線計測・被ばく線量測定器に影響を与 前提であり、無線端末が小型軽量であ 時間がかからないこと、一度に多数の 送信した場合にもデータ伝送できるこ ー交換等が不要で長時間連続で傾向監図1 ZigBee 端末図2 UWB 端末 と、安定的にデータ伝送できること等3.1 配管による影響 力をデータ伝送できる無線方式としてZigBee 方式、UWB 方式とも無線端末は、傾向監視対象の近くの機器・配管に固定することになるた 原子力発電所内でセンサ出力を無線伝送する場合 核計装・放射線計測・被ばく線量測定器に影響を与 えないことが前提であり、無線端末が小型軽量であ り設置作業に時間がかからないこと、一度に多数の センサ出力を送信した場合にもデータ伝送できるこ と、バッテリー交換等が不要で長時間連続で傾向監 視ができること、安定的にデータ伝送できること等 が要求される。 センサの出力をデータ伝送できる無線方式として連絡先: 辻建二,〒459-8522 名古屋市緑区大高町北関山 20-1, 中部電力(株) 電力技術研究所, 電話:050-7772-2875, E-mail:Tsuji.Kenji2@chuden.co.jp 3. 伝送特性の比較 ・ 通常、無線によるデータ伝送をする場合、送信端 末から受信端末間に障害となるような機器がほとん ど設置されないという場合が多いが、原子力発電所 はコンクリートの壁で四方を囲まれており、扉は鉄 製で常時閉されている場合が多い。また、機器・配 管が多数複雑に配置されている。このような通常と 異なる環境において、ZigBee 方式と UWB 方式の比 較を行った。 1使用した ZigBee 方式、UWB 方式のそれぞれの無 線端末を図1、図2に示す。 方式のそれぞれの無 3.1 配管による影響 * ZigBee 方式、UWB 方式とも無線端末は、傾向監 視対象の近くの機器・配管に固定することになるた め、送信端末を 125mm 中の鉄管との距離を 0~ 100mm の間に位置させたときの影響を確認した。そ のときの試験方法を図 3 に、測定結果を図 4、 図 5 に示す。 - 486 -4.影響2.4GHz 前置增幅器 [1]。この SRNM 計装 態で異常が 力発電所5 台を直結図3 配管影響確認方法 配管との距離 0cmの時■受信レベルムパケット到達率 配管との距離 10cm の時■受信レベルムパケット到達率100パケット到達率(%)hress-90 -100 0.1110100 との距離 10cm の時■受信レベル▲パケット到達率Ligdte Vw Zigbee Y OPOT E 100 して無線伝送する「中継機能」がある。またデータ送信に必要な時間以外は休止状態となる。そのため、 データ送信端末とデータ中継端末から影響を受ける . 可能性があることから、使用する端末は2台とし、 また電波を連続発信させた状態で確認を行った。その結果、核計装に指示計の変化や警報の発生等 くの異常な動作は認められなかった。放射線計測機器についても同様に実施したが、異常な動作は認められなかった。100 原子力研修センターや浜岡原子力発電所での確認 送受信端末間の距離(m) 図4 ZigBee の配管影響特性状況を図6・図7に示す。 この距離 0cm の時 ■受信レベル Aパケット到達率※浜岡原子力発電所の敷地内にある研修・訓練用施設 配管との距離 0cmの時■受信レベルスパケット到達率 配管との距離 10cmの時■受信レベル▲パケット到達率パケット到達率(%)100.110100送受信端末間の距離(m) 図5 UWB の配管影響特性図53.2 地下機械室での確認より原子力発電所に近い状態での特性を比較する ため、日立製作所中央研究所の建物の地下機械室に て伝送特性の比較を行った。その結果を表1に示す。表1 データ伝送結果 距離パケット到達率(%) 特徴ZigBee 1 UWB 10 機器・配管により見通せない100 10 13 同上100 10 15 金属扉とコンクリート壁で隔離100 同上100 機器・配管により見通せない100(m)1020253.3 3.3 ZigBee 方式の選定 「UWB 方式の出力 0.1mW、ZigBee 方式の出力 1mW と出力の差はあるが、図4、図 5、表1の結果から、 原子力発電所のような場所においては、ZigBee 方式 の方が適していることが判明した。4. 影響の有無の確認 12.4GHz 帯の無線周波数の核計装機器への影響は、 前置増幅器入力側が一番厳しいことが知られている」 [1]。この知見をもとに、原子力研修センター※の SRNM 計装の前置増幅器や、電離箱に接触させた状 態で異常が発生しないことを確認した後、浜岡原子 力発電所5号機第4回定期点検中に、ZigBee 端末 2 台を連続発信させた状態で、核計装機器の前置増幅 器から1mの距離から徐々に接近させて密着させた。 * ZigBee 方式は他の ZigBee 端末からの無線を中継 して無線伝送する「中継機能」がある。またデータ 送信に必要な時間以外は休止状態となる。そのため、 データ送信端末とデータ中継端末から影響を受ける 可能性があることから、使用する端末は2台とし、 また電波を連続発信させた状態で確認を行った。その結果、核計装に指示計の変化や警報の発生等 の異常な動作は認められなかった。放射線計測機器 についても同様に実施したが、異常な動作は認めら れなかった。 * 原子力研修センターや浜岡原子力発電所での確認 状況を図6.図7に示す。パケット到達率(%)図6 原子力研修センターでの確認状況 (SRNM 前置増幅器に接触させた状態)図7 浜岡原子力発電所での確認状況 (主蒸気管モニタに接触させた状態)5.原子力発電所内での伝送特性の確認 - 浜岡原子力発電所5号機第4回定期点検時に、タ ービン建屋2階のヒーター室にて ZigBee 方式の電 波の到達状況を確認した。その結果、実用できる距 離として 30m 程度が目安であることを確認した。 - 487 - ービン建屋2階の 雰囲気放射線量率 ZigBee 端末をヒー の観点からは 100 6. 耐放射線性の確認 - 放射線量率の高いエリアでの連続使用を考慮する と、ZigBee 端末がどの程度までの放射線に耐えられ るかを確認する必要がある。Co-60 による y線を用 いて、~100Gy/h の放射線量率にて照射した。その 結果、照射線量が 100Gy を超えると破損する可能性 が高いことを確認した。原子力発電所運転中に急き ょ温度計等のセンサを仮設して傾向監視をしなけれ ばならない場所のうち、放射線量率の高い場所はタ ービン建屋2階のヒーター室である。ヒーター室の 雰囲気放射線量率は数 10mSv/h であることから、 ZigBee 端末をヒーター室に設置した場合、耐放射性 の観点からは 100 日程度は使用可能であることを確 認した。 照射特性を図8に示す。1000照射線量率(Gy/h)ZigBeo24 ZigBee破損」破損0.110001000010 1 1001 照射線量(Gy)図8 ZigBee 端末の Co-60 による照射特性. システム構成の検討7. システム構成の検討 7.1 温度の目安測定 1 日立製 ZigBee 端末は標準でサーミスタを接続可 能であり、目安程度に温度を把握できればよい場合 は、測定対象にサーミスタを接触させるだけでよい。 この場合は検出器であるサーミスタへも ZigBee 端 末内の電池にて電源供給されており、そのときのデ ータ採取間隔と電池容量にて決まる測定可能時間は 図9のとおりとなる。1000100電池寿命(月)1010100100001000 動作周期(sec)図9 ZigBee 端末のサーミスタを使用する場合の測定可能時間100電池寿命(月)10図97.2 温度等の精密測定原子力発電所運転中に傾向監視したいデータとし ては、温度・圧力・振動・加速度等があげられる。 これらの検出器の出力を、ZigBee 端末の 4-20mA の 入力端子に入力することによりデータ伝送が可能と なる。検出器駆動用の電源を供給する必要があるた め、ZigBee 端末内部の電源とは別に蓄電池を用意し、 DC/DC 変換器を介して供給することとした。熱電対 を使用する場合の構成を図 10 に示す。熱電対温度変換器(100TCA)14-20mA端子「Airsense Inセンサノード|(AS30010651)熱電対 (タイプT)熱電対端子4-20mA外部アンテナ電顕リチウム電池 (CR123A)小型携帯端末 機器用インターフェース DC24V/55mAコネクタ(18ピン) 出力端子 DC12V/DC24V変換器 (NT12-2450.9)入力DC212V/14mA 100 出力端子 産業用鉛蓄電池 (SunXtenderシリーズ)」図10 温度等精密測定する場合の構成 8. まとめ 原子力発電所で、通常と異なる兆候が認められた 機器の傾向監視のための方法として、センサ出力を ZigBee 方式の電波にてデータ伝送することが有効 であることが確認できた。今後は、小型軽量で長時 間測定が可能となるシステムを検討するとともに、 実際に温度計等のセンサデータをデータ伝送して実 用性を確認する。 参考文献 [1] 山田 泉他, ““RFID 電波に対する原子力プラント計装の耐性評価,““日本原子力学会「2009 年秋の大会」 - 488 -“ “2.4GHz 帯の無線による原子力発電所内でのデータ伝送の検討“ “辻 建二,Kenji TSUJI,増田 亮太,Ryota MASUDA,福井 琢也,Takuya HUKUI
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