すべり軸受の早期ラビング検出技術について

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カテゴリ: 第7回
1. はじめに
すべり軸受は、タービンや高圧ポンプなどの大型 の回転機器や空気圧縮機などの高速回転機器に用 いられている重要な機械要素である。すべり軸受は 油膜により非接触状態で回転している為、転がり軸 受と比較すると異常の発生頻度は低いものの、施工 不良や熱変形、あるいは異常振動が原因でラビング (接触)が発生し、損傷に至ることがある。このラ ビング現象を軽微な段階で検出することができれ ば、すべり軸受の損傷を未然に防ぐことができる。 特に、石油化学や発電所などといった設備をすぐに は停止できないプラントにおいて、異常を早期に検 出することは、メンテナンスを行う上で非常に重要 なポイントとなる。しかし、従来のすべり軸受の診 断技術では軽微なラビングを検出することは困難 であり、異常がある段階まで進展した場合しか検出 できない。また、AE(アコースティック・エミッ ション) 法によるすべり軸受の摩耗損傷検出の研究 [1][2]がなされているが、AE センサでは損傷原因とな りうる低周波数の振動をとらえることができない 為、状態監視方法としてはセンサ及び計測系が2つ必要 になってしまうというデメリットがある。軽微なラビングが発生すると、加速度レベルの上 昇幅は低いものの、発生スペクトルに回転周波数の 規則性を持った側帯波が明確に発生することを確 認し、その検出方法としてケプストラム解析法が有 効であることを実験により実証した。ケプストラム解析法は設備診断の分野では転がり軸受や歯車 [5110の損傷検出への応用が報告されているが、現場 への定着は進んでいない。筆者らは、このケプストラ ム解析法によるモニタリング装置を製作し、現場での重 要回転機器の状態監視を実施している。定期検査時や定 修後における試運転時にて軽微なラビング現象が検出で きれば、施工不良の修正や更油、油温の適正化などのメ ンテナンス対応により焼き付きトラブルへの進展を未然 に防げるという効果があり、安定化運転や定修周期の延 長に寄与できる。 2.すべり軸受ラビング試験 すべり軸受と主軸との間の隙間を徐々に狭めて いくことで人為的に軽微な接触状態(ラビング状 態)を作り、この時の振動の変化を観察する試験を 実施した。 2.1 試験方法供試軸受(軸径 100mm,材質ホワイトメタル)の 両端を転がり軸受で支持し、すべり軸受と主軸間の 隙間0.3mm の中央値 0.15mm(非接触状態)から0mm (接触状態) の間で供試軸受ケーシングを押しボル トで移動させてラビング状態を変化させた。この試 験回転数は 1200rpm, 1800rpm, 2800rpm にて実施 した。圧電型加速度センサを供試軸受ケーシング部に、 温度計を供試軸受内部へ設置して計測した。 2.2 試験結果
回転数 1200rpm と 1800rpm ではギャップ 0.01mm にした段階から加速度 O/A 値の上昇が見られるも のの、その上昇幅は 0.02g 程度であり非常に低い。506加速度波形を観察すると、ギャップ 0mm 時では 振幅変調が見られるが、ギャップ 0.01mm 時(軽微 なラビング状態)では非接触時との差異は見られな い。 - 波形の形状を数値化にて比較するために、式(1) による歪度B」、式(2)による尖度 B およびピーク 値を O/A 値で除した波高率といった無次元パラメ ータ値を求めた。___B = f(x-x)““ p(x)dx/s me-1- B = f(x-x)* p(x)dx/x““m-2- Fig.1 に回転数 1200rpm における無次元パラメー タ値の比較を示す。ラビング発生時のギャップ 0mm 時では尖度や波高率は高くなっているが、軽 微なラビング状態ではほとんど非接触時と変化が ない。歪度はラビング時でも大きな変化が見られなNon-dimensional parameter valueCrest factor ---Kurtosis B1 +- Skewness B20.150.10101 Gap(mm)0.05Slight rubbingRubbingFig. 1 Comparison of non-dimension parametervalues (1200rpn)加速度スペクトルでは、ラビングを起こすことによ り、2k~6kHz 近傍のスペクトルの上昇が見られた。 特に 2.8kHz 近傍に着目したズーミングスペクトル (Fig.2) を見ると、軽微な状態でも主軸の回転周波 数の規則性を持った側帯波が発生していることが わかる。これは非接触時には見られない特徴であ る。つまり、加速度のレベルや波形には大きな差異 は見られないが、軽微な状態でもラビングが発生す ると側帯波の発生という明確な差異が見られる。TAGNO:1200ギャップ0.15 S-01A00135POS: 01 Sam00303DIRHODOU2,020K0.0004 0.0002 00003 0.00032,631K 2.636%AGOLI 加館HPFI12.013 10,00000.15mmはかるの...3300TAGNO:1200ギャップ009 s-o/Armoame50KHE DIRTHPOS:01 s-Peda00431() 2,642K10,0006 2,70250,0004 2.653K0.0002 2,6728 10,0003 2.601 10,0003AGOLILPF.2,610 0,000AVE10.03mmPO9:01DIR:HTAGNO11200ギャップ0.01 sorato0909100)Rotational frequency2.00K0.0047 2.04110.0040 3,000K ,9040 2,020K0,0036 2,061K 0,0031ADOL.加 LPE HPFDOK2.751 0.002910.01mm200031DIRIH中の人とんんんんんんんんんんんんんん] TAGNO:1200ギャップ)POS 1 01 S- 0 002251まったのは2400~ Rotational frequency200200K 0.0022 2.0GpK0,0032 2.741K0.0031 2,769800030 2.000 ,0026AOO11 加湿度 LPFEBOK2010 0.0010YE AK0.00mm batatawathtana na maraming theFig.2 Zooming spectrum near 2.8kHz (1200rpm)ズームスペクトルにて発生している側帯波の規 則性を解析する手法としてケプストラム解析を適 用した。ケプストラムはスペクトルのスペクトルで あり、規則性を持ってスペクトルが発生していると その周期がケプストラムにて表示される。Fig.2 で は回転周波数 20Hz の規則性を持って側帯波が発生 しているので、この場合では 50ms(=1/20Hz)のケ フレンシーがケプストラムに発生することになる。回転数 1200rpm において得られた周波数範囲 1k ~5kHz の加速度波形をケプストラム解析した結果 を Fig.3 に示す。つまり、Fig.2 のスペクトルのケプ ストラム解析結果である。軽微なラビング時(ギャ ップ 0.01mm)及びラビング時(ギャップ 0mm)に おいて明確に回転周期のケフレンシーが発生して いる。これは先に述べた様に、軽微なラビング状態 においても Fig.2 に示す側帯波が回転周波数の規則 性を持って発生していることを示している。これは 加速度波形が、回転軸の偏心に起因して発生する回 転周波数により変調を受けているためと考えられ る。5071.00 CEPSTALL REAL-1,0000、10.15mm62,500m150,312ms106.571m1.00 CEPSI A REAL10.03mmHhan62,500m50.312ms43.745m-1.00 ~0000x 1.00 CEPSI AH REALRotational period....-10.01 mm62.500m0,0000han150.312ms1917.122m1.00 CEPSTAR REALRotational period0.00mm-162.500mX:50.312msって。 (s) her 1,000 Fig.3 Cepstrum analysis (1k~5kHz : 1200rpm)加速度レベル, 波形の形,変調成分を示す各パラ メータ値におけるラビングの検出能力の比較を行 うため、正常状態に対するラビング状態の比(SN 比)による比較 (Fig.4-6 参照)を行った。12108SN ratio6Quefrency -3-Crest factor -a-Kurtosis - - Skewness | --0/A-value426日00.20.050. 150 1Gap(mm)Fig.4 Comparison of parameter values (1200rpm)654SN ratio-+-Quefrency -S-Crest factor |- Kurtosis -- Skewness 1-0-0/A-value10.00 10.20.1510.05 Gap (mm)Fig.5 Comparison of parameter values (1800rpm)302520SN ratio15- Quefrency 一番-Crest factor #KurtosisSkewness - 0/A-value1050.00 10. 20.15011 Gap (mm)00.050Fig.6 Comparison of parameter values (2800rpm)* 各回転数においても、ケフレンシーの比率が特筆 して高いことがわかり、軽微なラビング状態を感度 良くとらえることができている。つまり、すべり軸 受のラビング現象を早期に検出することができる と言える。3.すべり軸受片当たり試験- ラビング試験で使用した試験装置の下部に荷重付 加装置を製作し、すべり軸受に荷重を掛けて片当た り状態を発生させ、この時のケフレンシーと加速度 O/A値、軸受内部温度のトレンドの比較を Fig.7 に 示す。これよりケプストラム解析は初期ラビングの 検出感度が高く、従来のオンライン監視を行ってい る加速度 O/A 値や軸受温度がほとんど変化してい ない段階においても明確に異常を検出できている。 片当たり試験後は、すべり軸受に非常に軽微な接触 痕が確認された。(Fig.8 参照)25202015SN ratioQuefrency(mV) + Acceleration O/A(g) +Bearing temperature(°C)10501Gap 0.15mmSlight rubbing0Load (kN)Fig. 7 The result of the sliding bearing rubbing test(1800rpm)- 508 -Henni188 189190191Fig.8 Picture of the sliding bearing after the test4.すべり軸受モニタリング装置参考文献 [1] 佐藤式断技術(1989) [2] 和田」よるイ 過程の 1835-1 森田 断にお 学会 101-10 Courre rollingMech 1 [5] RandalcepstruConf V [6] El Bad従来の振動オンラインモニタリング装置にケプ ストラム解析機能と回転周期ケフレンシーレベル のトレンド機能を搭載したすべり軸受状態オンラ インモニタリング装置を開発し、現場の状態監視に 活用している(Fig.9 参照)。これは可搬型のコンパ クトな装置であり、例えば重要機器の定修後の立ち 上げ時からある短期間のモニタリングや待機設備 の健全性を確認する試運転時の期間といった状態 監視にも対応できる装置としており、回転数が変動。従来の振動オンラインモニタリング装置にケプ ストラム解析機能と回転周期ケフレンシーレベル のトレンド機能を搭載したすべり軸受状態オンラ インモニタリング装置を開発し、現場の状態監視に 活用している(Fig.9 参照)。これは可搬型のコンパ クトな装置であり、例えば重要機器の定修後の立ち 上げ時からある短期間のモニタリングや待機設備 の健全性を確認する試運転時の期間といった状態 監視にも対応できる装置としており、回転数が変動 する場合に対応できる様に回転軸からフォトプロ ーブで回転数を検出し、その回転数から回転周期を 自動計算してケフレンシーをモニタリングする。Monitor screen2009e -TRESSIOPER STEINEFESTフルールraks||B5おさむThe monitoring equipmentFig.9 The equipment for monitoring the slidingbearing 5.結論 * すべり軸受にラビング現象が発生すると、軽微な 状態でも加速度スペクトルにて回転周波数間隔の 側帯波が発生する。この変調成分に着目した状態監 視方法にてすべり軸受の異常早期検出が可能であ る。この解析手法として、ケプストラム解析の適用 による方式を提案した。 - 軽微なラビング状態では、加速度レベルや軸受温 度はほとんど変化が見られないが、ケプストラム解 レベルや軸受温 ケプストラム解- 509 - では性能良く軽微なラビングを検出できている。 この方式によるモニタリング装置を製作し、現場 析では性能良く軽微なラビングを検出できている。この方式によるモニタリング装置を製作し、現場 での状態監視に活用している。今後は、さらに診断 対象設備の拡大を図り、水力発電所における水車や 離島のディーゼル発電機といった省人化されてい る発電所への遠隔診断や原子力発電所などにおけ るすべり軸受を持つ待機設備や非常用ディーゼル 発電機などの健全性評価への展開を図る。 佐藤文也:““AE計測法を用いた回転機の異常診 断技術”,電気学会論文誌C, 109[3], 145-152 (1989)和田正毅,水野万亀雄:”摩擦・摩耗のAEに よるインプロセス計測に関する研究 焼付き 過程のAE計測““,精密工学会誌, 56[10], 1835-1840 (1990) 森田登,上野貴博,中西悠二:““電動機故障診 断における音響ケプストラム分析の試み““, 電気 学会回転機研究会資料, RM-05[140-161], 101-104 (2005) Courrech J, ““New techniques for fault diagnosis in rolling element bearings”, Use New Technol Improv Mech Readliness Reilab Maintainnab, 83-91 (1987) Randall R B “Advances in the application of cepstrum analysis to gearbox diagnosis”, 2nd Int Conf Vib Rotating Mach 1980, 169-174 (1980) El Badaoui M, Cahouet V, Guillet F, and Daniere J, “Modeling and Localized Tooth Defects in Geared Systems““, Trans ASME J Mech Des, 123[ 3],422-430 (2001)“ “すべり軸受の早期ラビング検出技術について“ “迫 孝司,Takashi SAKO,徳茂 廣太郎,Koutaro TOKUMO
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